特集 Special issue

【特集】教師力を探る 第4回 教員は探求者として育成

 2011年8月25日号掲載


 韓国や上海が必死に受験を目ざして勉強しているのに比べれば、勉強は学校の授業だけ、学習塾もなく、取り立てて受験勉強もせず、70日の夏休みはたっぷりと人間づくりというフィンランドが高学力グループに属しているのは、何とも不思議なことである。

 教師の力量が優れているからだというのが、大方の見方だが、どこがどう違うのか。フィンランドの学校では、教科書に書いてあることを教えなくても、教科書以上のことを教えてもよい。
 義務教育期間にあたる16歳までは、他人と比べるテストはない。だから、教科書で指定された知識や技能を覚えればよいというような教育をする必要はない。テーマに沿って、どのような具体的知識を配列するかは個々の教師に任される。
 もう一つ、フィンランドの教師には、いわゆる教員評価というものがない。子どもは一人ひとり違っており、その違った子どもたちを相手にするわけだから教師も違ったことをしていて、どの教師が優れているかは決めがたいということになっている。

 フィンランドの教師は、探求者として育てられる。これが最大の特徴だろう。79年から小学校の学級担任教員も4~5年かける修士課程に入学させている。現在では6年弱の修了年限が目標だが、実際には6・5年かけて修了する。学部教育は、現在3年制であるが、すでに5年制の大学も出現しており、今後5年制に移行する動きが見られる。
 教師養成期間長期化に踏み切ったのは、「技士としての教員」から「専門家としての教員」へという資格向上が、「探究的教員」「探究型教員養成」という理論で裏付けられているからである。言い換えれば、自らの教育活動を改善できるような「探究的志向」「探究的思考」をもてるように、アクション・リサーチなどの方法を身につけるように養成する。

 つまり、教師は日常的な教育活動を実践しながら自らの授業を研究する探求者なのだ。テーマを設定し、調査し、実行することができることが、修了判定の要件である。ほかに、リストアップされた国際的に有名な文献から4冊を選び、教育理論を説明できなくていけない。
 もう一つの特徴は、教育学部教員の半分ほどは、教育実習を指導する教師養成学科という教職センターのような組織に属することである。教育実習は20週ほどあるが、実に厳しい。指導案をワープロデータで作っておくと、実習時間には指導担任がパソコンでそれに問題点を書き込んでいく。しかも、大学側から教員も加わり、授業終了直後の休み時間に、その場で講評を始める。このような大学教員は、実践経験者であるというだけでなく、博士号をもつ理論家でもある。

 05/06年度には、フィンランドにもボローニャプロセスが導入されたので、3年間の学士180単位(ECTS)とそれに続く2年間の修士60単位というように国際基準に沿っている。
 教育学部に入学すると、教育学領域の授業を受ける。これは、教育学部教育学科の教員が担当する。小学校教師になる場合には、教育実習を20週ほど必要とする。教育実習は、教育学部教師養成学科の教員が担当する。
 校長など管理職、あるいは行政職に就く場合には、教育学領域の授業のみ履修すればよい。小学校以外にも教科担当教師や特別支援教師の資格を取る場合には、個別の教科または専門の授業を受け、さらに教育実習が加わる。
 教育学部以外に入学して、教科担当教師を目指す場合には、個別の教科の学習はそれぞれの学部で行い、これに加えて教育学部の教科担当教師養成プログラムに申し込むことになる。
 ただし、①教職課程を履修するためには試験がある②教職課程は60ECTS、1年間の学習と見なされるが、教職課程を履修する時期・期間は自由である。実際には、1~1・5年かかる③個別学問と教育学との二重学位を取ることも可能である――などの特徴がある。 
(福田誠治都留文科大学教授)


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