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【特集】 防災教育のあり方


  東日本大震災では、多くの子どもや教職員からも犠牲者が出た。全国学校安全教育研究会長を務め、自校で地震防災教育を長く実践する東京都板橋区立高島第一小学校の矢崎良明校長に、このたびの大震災への思いや今後求められる有事対応、防災・減災教育のあり方などについて聞いた。

自校にふさわしい有事対応の策定を

保護者への通知と共有化

 ――このたびの大震災をどう見ましたか。
 確率論では、学校の教育活動中に子どもたちが震度6弱以上の大地震に出遭う可能性は約20%。95年の阪神・淡路大震災以来、震度6弱以上の地震は日本で17回起きていますが、今回の東北地方太平洋沖地震以前に教育活動中に起きた大地震は00年10月の鳥取県西部地震の1回だけでした。このような状況は学校にとって「幸運だった」と捉えられる一方、私は大地震が学校で実際に起きたときの対応について大きな危機感を抱いていました。そんな中でとうとう、今回の大震災を迎えてしまったという思いがあります。

 ――震災の教訓と有事対応のポイントは。
 このたびの震災では、震源地に近い被災地に加え、広範な地域に被害や影響を与えました。地震直後の首都圏では電話や交通網の不通・混乱などが生じ、都内各校でも様々な対応が図られました。全児童を即帰宅させた学校もあれば、全児童を校内に待機させ保護者に迎えに来てもらった学校もあります。各対応によって「(交通マヒのため)両親が職場から帰宅できず、子ども独りが家で待つ状況を作ってしまった」「(電話不通などのため)保護者との連絡が取れず、校内で夜を越す子どもが多数出てしまった」など様々な課題が生じたことも明らかになりました。そんな多様なケースの把握が、今後の有事対応への貴重な材料となります。

 多様な状況を踏まえると、唯一の対応策はありません。今回の対応にもそれぞれ一長一短があります。大事なのは、今震災を機に各校が自校にふさわしい有事対応を策定するとともに、保護者への通知と共有化を図っておくことと考えます。
 その際、メールやウェブサイト、固定電話など震災時にも比較的つながりやすい連絡手段を採用することや、地域にある危険要素やエリアなどを把握しておくことが大事です。加えて、学校単独ではなく、地域、自治体単位で共通の対応内容を策定・周知することが理想です。有事の際には校区を越えて保護者同士が連絡し合う場合も多いため、学校ごとに対応が異なると混乱を生じる可能性があるからです。
 本校では、今震災の各校対応を参考に、震災時の対応策をさらに改善しました。具体的には、震度に応じた基本対応を作り、保護者に周知するようにしています。例えば震度5強以上では全児童を学校待機にして保護者に迎えに来てもらうようにし、震度4~5弱の場合はエリアごとに集団下校させる――などです。この際も、「直下型」「震源地との距離」などに応じた対応を柔軟に考慮し、震度だけで単純に判断しないようにしています。有事の連絡手段は電話ではなく、学校のホームページを活用するようにしています。今震災で有効だった「ツイッター」にも注目し、今後、利用を検討したいと思います。



複数の状況による避難訓練を

 ――これから求められる防災・減災教育は。
 今震災の教訓も踏まえつつ、今後の防災教育を考える上で、私は83年の日本海中部地震を経験した子どもたちへのアンケート結果を重く受け止めています。「地震についてもっと学んでいたら行動も違っていた」と多くの子どもが答えており、地震への理解を深める学びの必要性を痛感していました。
 そこで本校では、東京大学地震研究所と協力、連携しながら、いくつかの地震学習を実施しています。
 1つは同研究所の「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」の一環として校内に設置した地震計を活用した学習です。授業では、地震計の側で子どもたちが飛び跳ねて人工の揺れを起こして振動を計測した後、08年岩手・宮城内陸地震(M7・2)の実際の揺れの計測データとの比較・検証を行いました。すると、子どもたちが地震計のすぐ側で力一杯ジャンプして起こした揺れも、実際の地震波やエネルギーのデータを比較すると全くかないません。このような体験学習で、地震の力を実感的に理解させることにもつなげています。
 同プロジェクトで設置した地震速報も活用し、速報の仕組みとなる地震波の伝わり方を実験を通して体験的に学ぶ授業などを理科と位置づけながら行っています。
 地震計などの活用はどの学校でもというわけにはいきませんが、理科学習と関連づけながら地震の科学的理解を図る授業は進められるでしょう。
 例えば小6の理科単元「大地のつくりとその変化」では、「地震による土地の変化」を発展学習として学んだり、「地震時の土地の液状化」を理解するため、砂と粘土を使った再現実験などもできるでしょう。そのほかにも、地震時に各地の震度データを集計し、同じ震度の地域にチェックを入れながら「同心円」を結び震源地を導き出すことや、東大地震研究所発行の「地震の世界分布図」を活用し、地震発生エリアとプレートとの関係を地球規模で俯瞰する学習などもできるでしょう。
 また本校では、児童が校内を探索し、地震時に倒れそうな書棚などの危険な状況や箇所をチェック、記録する「校内安全マップづくり」を行うことも検討しています。
 防災・減災教育では、地震の科学的理解を通して「自ら危険を予測し、危機回避の行動を取れる子を育てる」ことが最も重要です。そのため、状況に応じた適切な行動がとれる避難訓練も大事になるでしょう。
 本校では「倒れてこない、落ちてこない場所に避難しましょう」を合言葉に、複数のバリエーションによる避難訓練を年間5回実施しています。具体的には、地震警報を出す場合と出さない場合、授業中・休み時間などの状況別、さらに、校舎内と校庭に出る避難方法や具体的な対応を教師が指示する場合としない場合といったものです。
 地震はいつ来るか分かりません。そのため一律に「机に隠れて」などの行動や対策だけでは不十分です。様々な場所や状況にあっても適切な安全行動が取れるよう、柔軟な思考と行動を磨く訓練を積むことが大事です。
 一連の訓練の結果、本校児童は、トイレにいた場合は落ち着いて入り口付近に身を寄せ姿勢を低くしたり、音楽の授業中には持っていた音楽袋を頭巾代わりにして頭を保護するなど、冷静な判断と行動力が身に付いており、今震災でも同様の行動が取れました。そのことで、学校だけでなく、あらゆる生活場面でも防災意識と行動力が高まります。

 ――全国の先生にメッセージを。

 天災は忘れた頃にやってきます。今震災を大きな教訓に、教員、子どもが共に危機意識を高める防災教育を進めていってほしいと思います。
 同研究会事務局・同校/℡03(3939)2098。




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