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――新しい義務教育を考える――

[H20年3月27日]

第57回 生活実態調査をどう活用するか(2)


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■「連携」から「一貫」へ

 

最近、各地の動きとして小中連携の動きが伝わってくる。
 実はベネッセで教務主任対象の調査を実施しているが、「次のような指導や取り組みを実施したり、充実したりすることに賛成ですか」という設問でもっとも高かったのは「小・中学校の連携」であった。90%に近い。
 小中連携の動きは、最近の各地の動きからみても、中学校がより必要性を感じているという印象が強い。
 その背景に、学力形成や生活態度にかかわる問題傾向が中学校に入ってきた段階で顕在化して、その指導に手間取っているという状況があるためでないか、と推測する。
 それは端的にいえば、生活実態調査が示すように、子どもの側に問題がみられることは確かである。小学校も努力しているが、指導が徹底しないという実態はどこの学校にもみられる傾向であろう。
 そこで、小学校、中学校それぞれが学校のやり方で指導し卒業させるという、従来型の教育では十全な指導ができないという認識が広がってきたといえる。
 そこで、小・中学校9年間を見通した計画的な指導が考えられないか、ということがある。
 ただ、これまでも小中連携という掛け声はみられたのである。だが、それは教師が集まって相談する程度で終わっていた。むしろ、相談する時間さえ確保するのが難しく、立ち消えになることも多かった。

 最近、そうした動きの反省から、例えば大阪府吹田市では9年間を見据えて「連携」から「一貫」の教育へ転換している。注目したいことである(『VIEW』1月号)。

 ■発達に応じた生活態度の形成

 これからの教育で重視されることとして、当該学年の教育内容をきちんと身につけて進級・進学しているか、ということがある。学習指導要領の内容レベルは到達目標化されるのである。
 したがって、学力形成において小学校の1年生は学年の教育内容をきちんと習得・履修して2年生に進級することが求められる。6年生は小学校の課程を修了するだけの真の実力が求められるようになる。
 そのことでは、各教科の内容は学習指導要領に内容が明記されているから、ある程度明確な基準を持ちうるが、生活態度の形成はそうはいかない。
 小学校でテレビ漬けをやめさせてほしい、家庭学習の習慣形成をしっかり身につけてほしいという願いはあるが、それは保護者などとの「共創の教育」によって進めるしかない。
 一方、中学生になるとテレビの視聴時間が長くなり、また夜更かしが増加する。部活動の影響で家庭学習の時間も縮小気味である。中学校固有の生活態度の指導が必要である。
 そうした生活態度にかかわる課題は山積しているが、手をこまぬいているだけでは解決にならない。
 そこで例えば、小学校低・中・高学年、中学校前期・後期に分けて、自己管理能力や人間関係形成能力など、子どもの生活実態に即した指導のカリキュラムを作成する。
 当該学年で可能なかぎり指導を強化することで、生活態度の形成の積み上げを図るのである。教科とは違って生活態度の形成は難しいだけに、教師それぞれが可能な方法を具体的に作りあげることが重要である。

 ただ、それを学校まかせにしては容易に進展しないであろう。教育委員会が音頭をとる必要がある。教育上必要とされながら、今回の学習指導要領改訂で最も欠落しているのは生活態度の形成である。(おわり)

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[H20年3月10日]

第56回 生活実態調査をどう活用するか(1) 学校・家庭・地域による共創の教育を


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■生活習慣形成へ関心を高める

 

全国学力調査の実施とともに、子どもの生活実態調査を行ったが、むしろ学校では、この調査に関心を示したところが多いと感じる。
 教師が一生懸命によい授業を創り上げようと努力しても、結果として子どもの成績は、朝食を食べている子、家族で話し合う子、忘れ物をしない子、家で宿題をする子、などが「よい」とはっきりデータに示されたのであるから、家庭のしつけ第一、と考えざるを得ないであろう。
 学力向上に生活習慣の確立がいかに重要かということが、調査からわかってきたのである。
 このことは、保護者に生活実態を理解してもらうチャンスでもある。
 最近の家庭は、テレビ漬け、夜更かし、家庭学習なし、の実態が多い。親は、子どもってそんなものだ、と考えている傾向があって、問題傾向に気づいたときにはかなり手遅れになっている、ということがある。
 中には権利のみを主張する「自子中心」の親もみられるようになった。
 そこで、国全体のデータ、自校のデータを広報し、さらに学級の保護者会などで話しあう。
 保護者の子どもの生活実態の理解には、難しい説明はいらない。今回の調査で示されたように、朝食をきちんと食べているかどうか、家族で話し合いの時間や場を持っているかどうか、忘れ物をしないかどうか、家で宿題をするかどうかなど、基本的なデータでよい。生活習慣が成績に大きく影響することをわかってもらうことが大切である。
 データの提供は、言葉よりも数倍の説得力を持つことから、保護者の関心を集めることは確かである。

 ただ、学校としては小6、中3のみのデータでは不十分であるから、全校の生活実態を調査する。それをデータ化して保護者会などで具体的に話し合う。

 ■地域の教育力を高める

 文科省は平成20年度に地域ぐるみで学校を支援するモデル事業を始めるという。中学校区ごとに「学校支援地域本部」を設置し、地域教育協議会を置くとしている。
 この試みはぜひ成功させてほしい。最近はあまりにも学校や教師の負担が多くなっていて、自校のみで地域との連携を推進することが難しくなっている。この事業が学校支援の輪を広げる契機になり、具体的な支援の方策を創り出すことを期待している。
 一方、今回の生活実態調査は保護者が具体的によくわかり、実行できる方策を含んでいる。子どもの毎日の生活を通して取り組める内容である。教師の指導も可能である。
 ただ、子どもの生活習慣は徐々に身につくのであって、指導の速効性はあまり期待できない。それだけに指導する側も忍耐を必要とする。また、生活習慣や生活規律を重視する家庭や学校の雰囲気も重要である。
 そして何よりも重要なのは子ども個々が、よい生活習慣を確立するために自ら努力する姿勢や態度であって、そのためには学校と家庭の協力や連携がきわめて大切である。
 最近は、学校力や教師力が低下している、家庭教育も地域の教育力も低下している、とする声は大きい。確かにそういう面はあるが、嘆いてばかりでは教育そのものは決してよくならない。必要なのは、教育を再構築する具体的な方策と実行であって、その意味でも地域の子ども一人ひとりの豊かな成長を願う、学校と家庭、地域が共に支えあい、創り上げようとする教育が必要である。
 これから重視される教育の基盤は、学校と家庭、地域が協力し、連携を強める「共創の教育」である。


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[H20年3月3日]

第55回 全国学力調査の検証と活用(4) 調査問題から日常の授業への発展を


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■問題形式に着目する

 

前回A学習とB学習の交互作用について書いたが、基礎知識の定着をしっかりやらないと子どもに確かな力はつかない。
しかし、「考える場」を設定せずに、知識的な内容を繰り返し指導すると機械的な暗記になってしまう。  授業とは難しいものであるが、長時間の単元を指導する場合はB学習が主になることが多いであろう。そこで単純にA学習とB学習の交互作用ではなく、B学習の中にA学習を挿入する方法も考える。
 例えば、「考えさせる」授業の展開があって、「わかった」と子どもは納得したのだが、授業時間が終わりになったために、練習のようなスキルをやらないでしまうと十分に定着しないものである。よくみられることである。
 学習材の単元構想を十分考える必要がある。
 そのことで全国学力調査をみると、小学校国語にPISA型読解力的な問題がある。「新聞記事を書く(環境問題)」というのがあるが、身近な生活にみられる紙の消費のことから、資料として「世界的な紙の利用」についての文章説明と、「紙、板紙の生産量の世界上位8か国」の統計図表が提示されている。
 それを正しく読み取って記事を書くのである。今後の国語学習にとって興味深い問題である。
 PISA型学力の導入によって、文章による物語、解説、記録などを「連続型テキスト」といい、数学的なデータや図表、写真などを「非連続型テキスト」として、両者の組み合わせによる読解力の必要がいわれているが、この問題はまさに新しい試みである。しかも、全国的な正答率が最も低かったものである。
 そこで、このような問題を授業で指導する場合は、問題形式に注目して類似の学習材を探しだし、じっくり取り組む必要がある。

 ■「あめんぼはにん者か」の学習材


 ただ、現状では非連続型テキストを組み合わせた学習材はあまり見当たらない。

 そこで、「あめんぼはにん者か」(学校図書4年上)という学習材を紹介したい。PISA型読解力を指導するのにきわめてぴったりだからである。
 ただし、PISA型学力を想定してこの学習材は書かれたものではない。動物行動学の権威である日高敏彦氏の書き下ろしである。
 あめんぼは水の上を忍者のようにすいすい渡っていく。それはなぜ可能なのか、何のためにそうするのか、という説明文である。
 そこで説明文の中に「どうして」「ところで」「なんのために」「このように」「けれども」「しかし」「ですから」という関係語句がたくさん出てくる。しかし、そうした言葉だけでは十分説明できない。そこで写真を6枚用意して、言葉で足りないことを補う。また、写真を言葉で補う。
 動物の科学的な知見を子どもに与えるために、言葉による説明では足りず、写真というビジュアルな資料によって補うという、その意図によって書かれたものである。
 これまでの国語の読解は、言葉と文章を通して文字や言語を認知したり、語意や文章の意味を読み取ったり、また要点や要旨から筆者の意図などを把握してきたが、非連続型テキストと連続型テキストを並行しながら読み解くことで一層認識の世界が広がるという、リーディング・リテラシーを身につける必要がある。
 私たちの周囲には、新聞や雑誌、書物など、リーディング・リテラシーを必要とする世界があふれているのである。
 日常の授業にその学びを取り入れる努力が必要であって、何よりも教師が多様な学習材への関心を持つことが重要である。


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[H20年2月4日]

第54回 全国学力調査の検証と活用(3) A学習・B学習の交互作用の実践を


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■ダイヤグラムによる傾向分析

 

学校がシンプルな形で実施できる全国学力調査の検証は「正答率分布図」のみでは十分でない。次に行いたいのはダイヤグラムの作成である。
実際作ってみると、学力傾向がかなり見えてくる。  例えば、小学校国語Aはかなりよくできているように見えるが、全国的には「話すこと・聞くこと」や「話す・聞く能力」が落ち込んでいる。 一方、国語Bは、それらよりも「書くこと」「書く能力」「読むこと」「読む能力」が落ち込んでいる。
 さらに、中学校では国語AもBも「話すこと・聞くこと」「話す・聞く能力」のどちらもかなりよい。そして、「書くこと」「書く能力」「記述式」が落ち込んでいる。
 このような一見矛盾する傾向はなぜ起きたのであろうか。問題の質を分析する必要があって今回のみの検証では十分ではないであろう。数学の問題傾向についても同じように「記述式」が弱い。
 ともあれ、ダイヤグラムで自校の成績の傾向を把握することが重要である。そこから指導方略が見えてくるからである。
 例えば、中学校国語でいえば、「文章の中心になることがらを、短時間で簡潔にまとめられる指導」「やや長文の文章や複数の文章を短時間で読めるようにする指導」など、指導方策を具体的に考える。
 ただ、新たに学習材を探すことは難しい場合もあるであろう。
 そこで、現在使用している教科書を用いながら、指導のあり方を変えていく工夫が必要であろう。

 ■A学習とB学習の視点を変える


 ところで、今回の学力調査の結果から「基礎」は十分できる、これからは「活用」に力を入れるべきだ、という声を聞く。はたしてそうか。

 わが国の学力構造の実態は、全国学力調査では「高く」、国際学力調査であるPISA型学力調査では「低い」という結果なのである。国内調査のレベルが国際標準に達しているかどうかは、きわめて疑問である。
 それだけではない。「基礎」を学ぶことと、「活用」を学ぶことでは同じ学習スタイルでよいかという点でも疑問である。
 かつてATI(適性処遇交互作用)という教育理論があったが、今回の調査が問題Aと問題Bに分けたとき直感的にそれが思いだされた。簡単にいうと、理解の遅い子ども群と理解の早い子ども群に分けて学習させた場合、例えば、プログラム学習のような基礎を積み上げる学習ではあまり差がみられないが、問題解決学習のような場合は、圧倒的に理解の早い子群がよくできるというものである。
 百マス計算はどのような子どもでも成績がよい結果がでるが、ある事象についての問題解決を行わせると、結果に差が生じてしまう。
 しかしながら、問題Aと問題Bを同じ授業場面では指導しにくいのである。しっかり理解させ繰り返し練習など行うことと、ものごとを追究的に深く考えさせることとは同一ではない。
 そこで、問題Aを主に指導する場面を仮に「A学習」といい、問題Bを主に指導する場面を「B学習」として区別してみる。A学習は基礎的な内容の指導であるから、短時間(15分とか)の授業や自学自習、家庭学習でもかなり可能である。
 一方、B学習は集団討議のような形で課題追究するために、授業の展開を多様に工夫する必要がある。
 この両者の授業展開を、一方に偏よらせず交互に行う。「基礎」は「活用」の母体であるから、交互に行うことによって学びが相互に関連しあうことをねらうのである。


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[H20年1月14日]

第53回 全国学力調査の検証と課題(2) 学力向上への学校の方略が課題


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■難しくなった学力維持

 

平成19年末は重要な情報が山積した。10月の全国学力調査結果の発表、11月の中教審教育課程部会の審議の「まとめ」の発表、そして12月にはOECDの国際学力調査結果の発表である。
 特に、OECDの調査結果はわが国の学力の低下傾向をはっきり示していて、暗い気持ちにさせられた。
 今回は06年の実施で3回目であるが、1回目は00年である。03年の2回目は「読解力」が急激に低下してわが国に大きなショックを与えたが今回はそれ以上の低下で、次のような落ち込みである。
 「読解力」は8→14→15位、「数学的リテラシー」は1→6→10位、「科学的リテラシー」は2→2→6位。
 1回目から数えて7年という短い期間にこのように低下した要因は何であろうか。生徒が学んだ学力の質が大きく影響を与えていると考えられないか。
 周知のように3回目の生徒は、現行の学習指導要領を中学生当時から学んでいる。中学生からの「ゆとり世代」である。そのことがモロに影響しているとすれば由々しい問題である。
 さらに、09年には4回目の調査が実施される。対象者は小学校3年生ごろからの「ゆとり世代」である。さらに順位が低下すると推測される。
 ある中教審の委員が今回の順位を見て「次期学習指導要領で回復できる」と語っていたが、09年まで2年しかない。移行時期も中途である。楽観できる状況ではない。学力維持はきわめて難しいといえる。

 ■学校はどう取り組むべきか


 PISA型学力の課題は直ちに学校の指導に反映しない。むしろ全国学力調査をどう検証し、活用するかからスタートすべきである。

 その取り組みは、全国各地で多様であろうが、ある市では今回の全国調査の結果発表後、各学校の教務主任に自校の課題をまとめさせた。
 ただ、その報告をみると、ある程度課題の把握はあっても、そうした課題をどう解決するかという方略になると、あまり実効性のある手立てが見えなかった。
 つまり、学力向上の取り組みに必要な子どもの学力状況は把握できたが、学力をどうすれば向上できるかという、具体性のある実施方略の構想が難しく戸惑いがみられる。
 そこで最初は、シンプルな形で検証を行うことが必要であろう。
 例えば、自校の子どもの「正答数分布図」が示されているが、それを活用する。「知識」に関するA問題と、「活用」に関するB問題では明らかに分布図の形が異なっている。
 A問題は右肩上がりで、満点に近いほうがほぼ高くなっている。学力レベルを設定してすべて正答することを求める問題設定である。到達度評価にみえる。
 このような場合は、誤答傾向の多い子どもへの指導が重要である。また、下学年の問題も提示されているので、誤答する子どもが多い場合は、その学年での指導を強める。
 それに対してB問題の分布図はなだらかな曲線を描く。あまり偏りがみえない。全問正解が難しかったのである。そこで各問題への正答・誤答傾向に注目するだけでなく、問題に向き合う思考態度やプロセスに注目したい。
 中学数学で無回答が3割もみられた問題があることから、新たな指導方略が必要である。

 そのためには正解に至る思考のプロセスを重視したり、生活に生かす問題設定を工夫して知識の活用を図るなど、教師の創意ある指導がほしい。考えたことを文章にまとめる作業などを繰り返し行うことは「活用」問題への対応としては効果的だと考える。

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[H19年12月10日]

第52回 全国学力調査の検証と活用(1) 市町村や学校の取り組みが重要


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■画一的な学力調査の結果?

 

全国学力調査の結果が10月25日に発表されたが、そのニュース性はほぼ当日のみで終わった。
話題性がないのは都道府県の成績が平均から上下5%程度とまるで差がなかったせいでもある。知識を測るA問題は良好な結果であったし、心配された知識の活用を測るB問題も決して低いものではなかった。  テレビ漬けや睡眠時間の不足など生活実態が及ぼす成績への影響も従来行った抽出調査と同じような結果であった。サプライズはなかったのである。教師たちの感想にみられたが、「わが国の学力は全国どこも同じようだ。画一的な成績だ」という点がむしろ驚きであった。
 そのことから一部の新聞が調査は「いらない」と提言しているが、今回の調査は国の政策への反映が目的というよりも、悉皆調査であることから市区町村や学校それぞれがどう検証し活用するかが重要であって、それは地域にとって大きな課題になり得るものである。
 実際、全国画一的な調査に見えながら、結果の発表後、いくつかの県を訪問したが、明らかに抽出調査の時と異なった反応がみられた。
 抽出調査の場合は全国的な傾向を聞いても他人事のように受けとめて実感が湧かない感じであったが、今回は違っていた。自校の課題への積極的な対応が感じられた。特に「活用」問題に関する関心が高まっていたし、子どもの生活実態が成績に大きく影響することに実感を与えるものでもあった。
 それは全国調査の実施結果が今後学校教育に大きく作用する予感を感じさせるものがあった。
 その意味で学校や市区町村が己の課題として調査結果に正対し、検証し、活用することを通して子どもの学力形成に取り組むなら、新たな学校教育のあり方が展開できる可能性が開かれると考える。

 ■地域の教育格差はどうか

 今回心配されたことに学力調査の結果に地域格差が表れるのではないか、ということがあった。都道府県では一部を除いて格差はあまり生じなかったが、北海道新聞が公立校について都道府県別の4科目平均正答率を順位で示していた。

 それによると、小学校の成績は高いのに中学校の成績は低い県がある。いくつかあげると、京都(小6位→中26位)、東京(同7位→30位)、広島(同8位→25位)、千葉(同12位→35位)、埼玉(同20位→33位)、神奈川(同27位→34位)などである。

 高学力者が私学に流れている県である。つまり、中学校の順位はあてにならないのである。
 一方、小学校は秋田(1位)、福井(2位)、青森(4位)、富山(5位)、鳥取(9位)、石川(11位)と日本海側がなぜか上位に並んでいる。ただ、その理由はよくわからない。
 そこで私の勝手な推測であるが、例えば秋田県の場合、今年の新任教諭の採用は30人ほどであった。秋田市に出向いたとき、わずかに2人と聞いた。つまり、長年教師の採用枠は極めて厳しいものがあった。そうすれば当然ながら優秀な教員が採用される。
 また、教員もベテランが多くなる。そうした学校が学力向上に励むなら子どもの成績はよくなるはずである。日本海側の他の県の状況は秋田県とあまり変わらないのではないか。
 学力向上の要因は多様で把握が難しいが、一方では東京圏のある市の成績は秋田県以上であったところもある。
 学力向上策を国にのみ依存することは誤りである。また、県レベルでは広すぎる。市区町村レベルでの取り組みで実感できる対策を講じることが必要である。全国学力調査の主体的な活用こそ重要なのである。すでに検証と活用に取り組む市区町村が現れているが、今後の成果を期待したい。


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[H19年11月19日]

第51回 道徳性・社会性育成の課題(3) ユニットによる確実な定着方策が必要


教育創造研究センター所長 高階玲治

 ■ユニットで定着を図る

 

東京・品川区のように9年間を見通したカリキュラムの作成は重要である。
個々の教師におまかせではなく、地域として、学校として一貫性のある教育実現を目指す指導方略が必要である。  例えば、「道徳の時間」は1時間1主題のために、主題が定着したかどうかの吟味がないままに次々と移っていく。「正直に生きる」という主題での4年生の授業では「百点を10回とれば」という副読本の内容を話し合って終了である。
 いわば、真に子どもの問題として生き方に反映できていない、表面的な理解で終わっていることが、課題なのである。
 市民科の場合は違う。数時間のまとまりを持つユニットで構成されているため、子どもの生活意識を掘り起こす時間的な余裕がある。
 例えば、4年生に「けじめのある生活をしよう」という単元がある。品川区立源氏前小学校の実践を例にしたい。
 1教時 「けじめ」のある生活ができているか考えよう。
 2教時 「けじめ」のある生活をするために手立てを考えよう。
 3教時 他学年に伝えよう、「けじめ」のある生活。
 3教時が「けじめ」のある生活を考え、まとめる学習であるが、1・2教時のおり「けじめ」ができなくて困る場面を(1)登校時間(2)給食時間(3)学習時間(4)休み時間(5)掃除の時間(6)教室移動――に分けて学習していた。

 3教時目を参観したが、何よりも子どもにとって生活に結びついた切実感のある学習であることが大切で、授業態度はきわめて積極的であった。

 ■生活に反映できる切実感が大切

 3教時目の授業で、最初に投げかけた教師の問いは、「けじめはできたかな」であった。
 それは全員が「NO!」であった。次は「できるけじめはありましたか」の問いかけは全員が「YES!」であった。
 抽象的な言葉として「けじめ」を教えるのではなく、「やればできる」「努力すれば達成できることがある」という実感や実践意欲づくりが重要なのである。けじめを必要とする場を分けて考えさせたことが、リアルな受け止めになっていた。
 そのためには、教室の話し合いだけではリアルな実感が育たない。また、自分たちだけの経験でも不十分である。授業以外に、高学年の給食時間や掃除の見学などを行ってやり方を学んでいた。生活に生かす方策がかなり考慮されていた。
 その上で、「見習いたいことや考えたこと」をまとめてグループごとに全校集会で発表する。
 この形は、いつでも可能ではないが、生活実践に向けた子どもなりの決意表明が考えられていた。
 さらに、一人ひとりに確かに定着したかどうか、学習を終えた10日ほど後に、さらに確認している。
 道徳性や社会性の育成は、副読本を読むだけでは十分ではない。実際に身につくまで繰り返し学習してこそ定着するのである。そのための定着の度合いを確認する評価の工夫もまた重要である。

 確かに、生活規律など基本的な生活習慣は、繰り返し指導の場を設定しないと身につかない。

 市民科は、学年の発達に応じたカリキュラムを編成しているが、教師たちの「繰り返し指導しなければなかなか身につかない」という声が多い。「基本的な生活習慣が身についていない子どもが多くなっている」ことが大きな要因である。道徳性や社会性育成の方略が一層求められるのである。

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