ヘッダー
紙面ピックアップ
[スッテップアップ 20代教師]

保護者対応が若手教師の重い課題に

こんなときどうしたら?事例から対応を考える

  学校教育の現場では、児童・生徒の指導だけではなく、保護者対策も教師の仕事の上で大きな比重を占めるようになってきた。特に、経験のまだ浅い20代の若い教師にとって、保護者の多くは年上で、その対応は大変重い課題である。そこで、先輩の教師たちから、これまでに保護者からのクレームで対応に苦慮したケースについて聞き、そこから保護者対応のポイントを探ってみた。事例を示すとともに、アドバイスもまとめた。

ほかの保護者に電話で触れ回る

【ケース1(小学校・40代女性)=「うちの子は悪くない! みんなもそう言っている」】

担任をしている小学校4年生のクラスで、A男とB太が大げんか。理由を聞いてみると、悪口を言った、言わないという些細なこと。ここは、けんか両成敗と考え、2人とも叱って、その後に仲直りをさせた。  ところが、翌日、A男の保護者から猛抗議。  「けんかの原因はB太だ。うちの子はまったく悪くないと言っている。えこひいきじゃないか」  そこで、昨日の経緯を2人から聞いた話をもとにきちんと説明したが、まったく納得せず、「だいたいB太は普段から乱暴で、ほかの子は困っているんだ。みんなもそう言っている」と言い出す始末。  その後、クラスのほかの保護者にも次々と同意を求める電話をするなど、大きくまわりを巻き込む様相になってきた。

【対応のポイント=挑発に乗らず、十分に話を聞き、事実を記録して、静観する】

A男の保護者にはささいなことでも大騒ぎする傾向があった。そこで、担任はあえて反論や論争をせず、言い分を十分に聞き、それを出来事の経緯とともにきちんと記録し静観することとした。  保護者の間にかなり電話をかけたようだが、A男の保護者の性格を知っているほかの保護者は、普段から仲良くしている者でもまったく同調せず、そのうちA男の保護者からのクレームも収まった。  担任からほかの保護者に連絡をしたり反論をせず、保護者の挑発に乗らなかったことがよかったようだ。保護者の言う「みんな」は、文字通りの「みんな」ではないことが多いので要注意である。

わが子にだけ過剰な対応を求める

【ケース2(小学校・30代男性)=「うちの子は話すことが苦手なんだ。ほかの子どもよりもっと細かい配慮をしてくれないと困る」】

担任をしている小学校2年生のクラスのC子は、吃音もあり、話すことがまったく苦手。家庭では結構話すらしいが、学校ではまったく話さない。集団に入ると緊張が高まってしまい、話すことができず、コミュニケーションをとることができなかった。  保護者は、このことを非常に気にしており、担任に対していろいろな注文をつけてくる。授業の進め方ばかりではなく、座席や班割り、ついには教室の掲示にまで細かい対応を求めてくるようになった。

【対応のポイント=気持ちを共感的に受け止め、子どものがんばっている姿を伝える】

親心というものは、教師の子どもを思う気持ちよりもはるかに強い、という当たり前のことをしっかりと認識して、保護者の言い分を十分に聞き、共感的に受け止めるようにして、可能な限りの対応を試みた。  児童への対応では、話さなくてもきちんと学校での生活が送れているかを細かく観察して記録をとった。例えば、あいさつの時、言葉は出なくても口を動かしていることなどをていねいに見て、気づいてあげるようにした。音読などは、教師がそばに行って子どもと声をそろえて読む、詰まらずに読めたら大いに誉める、などという対応をして、話すことへの意欲を高めるようにした。  こうした取り組みにより、C子は徐々にクラスの中でも話すことができるようになってきた。そのがんばっている様子を、折に触れて保護者に伝えていくと、保護者もだいぶ安心するようになり、過剰な注文をしてくることがなくなった。  話を十分に聞き、できることとできないことをきちんと伝えたこと、子どもの成長の様子をその都度報告したことなどで、担任は、保護者から信頼を得られた。

娘を守って学校に猛反発

【ケース3(中学校・40代教師)=「うちの子はいじめられているんだよ。あんたたちには、それがわからないのか」】

担任をしている中学校2年生のクラスのD美が、いじめの被害を訴えてくるようになった。机や靴の中に画びょうが置かれていたことから始まり、制服のスカートが切られる、体育着に絵の具を塗られるなど、次第にやり口がエスカレートしてくるようになった。  しかし、調査しても、どうもいじめの実態が把握できない。だれがこんな嫌がらせをしているのかわからなかった。面談にきたD美の保護者からは「あんたたちは何をやっているんだ」と激しくなじられた。  だが、結局、これらの出来事はD美の自作自演だとわかった。本人が自虐的に、教師の関心を引きたいがために行ったことが判明した。  経緯を保護者に説明したところ、わが子の非を認めたくないことから逆上。一方的に学校側を非難することで子どもを守ろうとし、事態は泥沼化した。

【対応のポイント=担任が1人で抱え込まず、学年や学校で組織的に対応する】

学校に反発して親子の絆を確かめ合うという側面もあり、そこが対応のポイントとなった。短期に解決することを目指さず、中長期的な視野で取り組むこととして、出来事の背景や原因、経緯や問題を複雑化している要因など、正確に多面的に把握するように努めた。保護者の理解を求めるための説明責任として、指導の裏づけになる根拠や記録をとっておくなどに配慮した。  こうした対応は、担任1人でできるものではなく、同じ学年の教師、それから校長、教頭の管理職にもきちんと報告し、組織的に対応を進めた。保護者との面談では、ほかのベテラン教師にも同席してもらい、正確な情報の提供と粘り強い話し合いで保護者の理解を得ることができた。

ベテラン教師から一言アドバイス

■言葉遣いが重要。誤解があってどんなに腹が立っても、冷静に相手を立てて話す。電話ではうまく伝わらないので、顔をあわせて話すことも必要である。
■若いということは、それだけで保護者を不安にさせる。そこで、@わからないことは正直にわからないという謙虚な態度Aだが、そのままにせず、解決しようとする前向きな姿勢B何よりも大切なことは、いつも勉強をする――ということなどを心がけている。
■新卒のころ、ベテラン教師から次のように教わった。「直接保護者に認められようとするより、子どもに認められるよう努力しろ。子どもがついてくれば、保護者は認めてくれる」
■生徒指導の経過、面談の様子はきちんとメモに残しておくこと。ささいなことのうちに、保護者に連絡すること。日頃から一声かけて誉めておいたりして児童・生徒本人を大切に育てること。
■授業をしっかりと行う。教科指導がきちんとできていれば、保護者もこちらの言い分を理解してくれることが多い。
■トラブルがあった際の保護者との面談は、1人では行わない。できれば、保護者より年齢が上のベテランの教師に同席してもらうようにする。
■学年主任、教頭、校長への「ほうれんそう」(報告、連絡、相談)を密に行う。その際、自分の考えは最後にまわし、事実だけをできるだけ正確に報告し、アドバイスを得るようにする。
■普段から保護者との信頼関係を構築するよう努力する。例えば、気になる出来事があったらその日のうちに連絡をする。欠席したら連絡を兼ねて様子を尋ねる電話をする。何もなくても連絡帳で子どもがよくできたことなどを連絡する。ちょっとした配慮が大切である。
■今の時代、保護者対応は仕事の一環と考え、トラブルはあって当然というくらいの気持ちで、あまり悩まないことも大事。誠意が伝われば、味方をしてくれる人が必ず出てくる。

(9月21日付「ステップアップ 20代教師」紙面から)

 


教育新聞社ホームへ

教育新聞社E-mail:kyoiku@kyobun.co.jp
所在地:〒110-0005東京都台東区上野3-17-7
TEL03-3832-3571 FAX03-3832-3570


    Copyright(c) Kyoiku shinbun coporation.
    本サイトに掲載の記事・写真・図表などの無断転載を禁止します。
    著作権は教育新聞社またはその情報提供者に属します。