社説 Opinion
秋田、福井の学力向上策 全国共通の貴重な教育資料に
2012年1月19日号掲載
昨年12月28日に開かれた文科省の全国的な学力調査に関する専門家会議(梶田叡一座長)は、学力向上策を遂行する上で、極めて重要な報告書を発表した。
それは、田中博之早稲田大学大学院教職研究科教授を代表者とする研究グループの「全国学力・学習状況調査において比較的良好な結果を示した教委・学校等における教育施策・教育指導等の特徴に関する調査研究」(文科省委託研究報告書)である。
この調査研究は、「比較的良好な結果を示した」秋田、福井両県教委と小・中学校への訪問・インタビュー調査、全国学力・学習状況調査結果のデータ分析などを駆使して、両県の教育施策と学校での教育指導などの特徴を明らかにしたものだ。
その結果、両県の学力の高さを生み出す共通の要因は、(1)教員の授業力向上に対する教育行政の積極的で計画的な指導や支援(2)学校の外部組織・団体の積極的な働きかけと研究活動の推進(3)学校における管理職と教員の協力関係と教員全員の共通理解に基づく熱心な学習指導(4)児童生徒の素直さと真面目さ(5)家庭の安定と家庭の教育力の均質な高さ(6)厳しい自然を生き抜く勤勉で連帯感のある地域や風土――にあることがわかった。
特に、両県の児童生徒の学力の高さは、「教育委員会や教員の取り組みに独自性があるというよりも、各学校における教員が協力し合って、よりよい授業を求めて研究し、効果が上がるまで徹底的に実践していることによるもの」と分析している点が注目される。
例えば、両県の学校では、管理職と教員間の〝対立的関係〟がないばかりか、「管理職が立案する学校改革ビジョンに教職員が協力して取り組むという状況がある」という。すなわち、校長のリーダーシップが発揮されやすい教育風土が備わっていることを挙げている。
また教員間の協力が保たれている要因としては、学習指導の面での「教員間の意識の温度差」「指導に熱心な教員とそうでない教員」「思考力や表現力を育てる授業が得意な教師とそうでない教師」がほとんど存在せず、教員間で授業力のレベル差が小さいことを挙げている。
さらに、両県の教員が積極的に取り組んでいることの1つに、独自の家庭学習の充実策がある。「両県では、宿題だけでなく、自主学習をこつこつ毎日行えるように、子どもたち一人ひとりに自主学習ノートを持たせている。小学校では、年間にそれが5冊になるまで積極的に行わせている」とし、教師はその取り組みが〝やらせっぱなし〟にならないように、毎日、全員の宿題と家庭学習ノートの点検を欠かさず実施しているとのことだ。
こうした取り組みは、他県ではあまり見られないもので、特筆に値する。
朝学習以外に基礎的な学習を行う時間を特設していることも、両県の特色だ。例えば、小学校では午前中の2時間目と3時間目の間にある休み時間や5時間目が始まる前にも、プリント学習を行う時間、放課後のいわゆる児童保育の時間にも基礎学習に時間に当てている。
教員の熱心な指導によって、児童生徒が集中力の高い授業を受け、それが学力向上に結びつく――という事実を重く受け止める必要がある。
その意味でこの報告書は、国や地方の教育行政に対して、学力向上の実現のための環境整備に全力を尽くすことを約束させた貴重な教育資料ともいえよう。











