第4回 英語ヒアリングテストの導入は慎重に 平成15年2月6日(木) 上西 俊雄(元辞書編集者)
センター試験に英語ヒアリングテストの導入が検討されているという。
ヒアリングテストとなると音響効果の等質な試験場を全国的にどう確保しするかというハード面の問題がある。相当程度の技能があれば、スピーカーの音が割れようが問題ないかもしれないが、センター試験とは技能を見るためのものではあるまい。技能が問題であれば、イギリス英語で訓練された学生にとってアメリカ英語でのテストはとても公正とは言えないであろう。
英語教育についてはさまざまな施策がなされ続けている。バブル期に黒字減らしのために始まったとされるALT はまだ廃止になっていないから、多少は効果があるとされているのであろう。技能教育なら、英語話者であればイギリス人だろうとアメリカ人だろうとあるいはカナダ人だろうとオーストラリア人だろうとおかまいなしというのは変ではあるまいか。ヒアリングテスト導入となればALT 採用方法まで見直すのであろうか。
ヒアリングテストといっても聴覚だけが試されるわけではなく、結局は英語の理解力が試されるのである。
理解力なら読解力にも共通する。我国では四技能というときヒアリングとスピーキングを一組とするが、脳中の作用に即していえば片や入力であり、片や出力である。技能訓練の場においてはヒアリングとスピーキングがペアとなるのは仕方がないかもしれないが、知的訓練の場ではヒアリングはむしろリーディングと共通しよう。
しかし我国では音声言語としての英語と文字言語としての英語は別ものとする風潮が強い。英語辞書における発音記号の跳梁やカナ表記の跋扈に見られるごとく我国ではアルファベットが表音文字であるということは等閑視されてきた。もちろんアルファベットは発音記号ほど厳密ではない。しかしその厳密でないのが英語なのである。
文字言語ではnews 一つのものが音声言語では方言によりニューズとヌーズに分かれ、nude ニュードとヌードに分かれる。ニューズかヌーズあるいはニュードかヌードかで単語を認識する方法をwhole-word method 。この方法では発音を単位から組み立てていない。音声言語としての英語教育が技能訓練に堕しがちな所以である。news をニューズと発音し、nude をヌードと発音して、音の単位を混同する人は少なくない。ニューもヌーもいわば同じ音素であって、その実現形式が異なるだけだという風になって初めて方言の差異が吸収されるの
である。
言語は二重分節をすると言われる。文は単語より成り、単語はさらに音素より成るというわけである。文字言語に即して言えば単語はアルファベットより成る。このアルファベットを読み書きできれば文字言語としての英語への第一関門は通過したことになる。このときアルファベットの書き方の上手下手という技能は問題にはならない。音声面でも第一関門をしっかり通過させることが必要なのである。それがないままのヒアリングテストは本末転倒ではないだろうか。
|