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【 新 連 載 】

言語力を育むアプローチ
−コミュニケーションに向けた『7つの力』−

東京都八王子市立七国小学校 矢島一彦教諭




【第1回】 研究4年目で見えてきた話し合い指導の特性


現代は「コミュニケーションが不足している」といわれています。コミュニケーションの不足から生じる誤解や偏見が、気持ちのすれ違いを生んだり、人間関係をこじらせたりしている例はたくさんあります。  そんな時代に相手の言うことを無視したり沈黙したりしていては、お互いの考えていることが伝わりにくいと考えます。そのため相手の言うことをきちんと理解しようとすることや、自分の言いたいことを的確に伝えられるということは、これからの時代を生きていく子どもたちにとって、とても大切なことなのです。

 子どもたちの友だち関係からも同様のことがいえます。「いい」「だめ」をはっきり言えない子どもが多いことから、相手にスムーズに伝えるのは簡単ではないけれども、どうしても伝えなければならないときにはきちんと言おうとする意識をもたせ、実践する力をもたせたいと考えています。  そして、すべてそうとは限りませんが、友だちとの遊びや過ごし方がゲームをすることだったり、漫画を読むことだったりでコミュニケーションが少ないという実感があります。会話があっても、「おー」「すげえー」「やったあ」というような短い言葉で済んでしまうことも多いです。外遊びが減り、友だちとの関係やコミュニケーションを学ぶ場が少なくなっていることも否めません。

 一方、授業の様子をみると、発表会形式の場では上手にスピーチすることができるのですが、相手の話を聞いて答えたり質問したりするような双方向のコミュニケーションである「話し合い」を進めるという意味では、課題が残ります。  相手の気持ちを考えず、一方的に強い言葉で自分の言いたいことを言ってしまったり、相手の話が終わる前に話し始めたりするなど、相手の話を聞こうとしない傾向も見られます。  このような実態を意識して、コミュニケーション能力の育成を中心とした研究を平成17年度から進めた結果、情報や気持ち、意志を分かりやすく伝えたり、受け止めたりするためには、「7つの力」(度胸、語い力、理解力、応答力、論理力、説得力、プレゼン力)が必要であると考えました。

 さらに、コミュニケーションの4原則(笑顔で、目を見る、うなずく、相づちを打つ)と、相手を受け入れる姿勢(受容)を身に付けることも不可欠であることが分かってきました。  この結果を踏まえ、平成19年度は、普段の授業などの実態から一方通行になりがちな子どもたちの「話し合い」を見直したいと考えました。話し合いというのは話している人と聞いている人との共同作業です。一方通行の話し合いは、決して人間関係の改善にはつながりません。

 そこで、本校では「人の話を聞くことは話すことよりも難しい」ということを念頭に置き、「話し合い」を知的な共同作業としてとらえ、相手の話を積極的に聞き、受け止める指導に取り組みました。  さらに、「聞く」ということは先天的なものではなく、訓練によって身に付く技術であるという視点で、話し手から聞き手という一方通行になりがちなスピーチの指導を改め、双方向の会話や対話ができる子どもを育てる指導を繰り返し行いました。  そして、平成20年度は、3年間の研究成果を踏まえ、話し合いを支える「7つの力」を発達段階に応じて系統的に指導することに取り組んだのです。



【第2回】朝のモジュールで話す・聞く力の基礎


朝のモジュールの時間(年間/国語・算数18時間)のうち、国語では主に「コミュニケーション能力」「漢字の読み書き」「単作文」「詩の暗唱」「文法」の指導を行っています。  そこで今回は、「話すこと・聞くこと」の指導として各教科の学習で基礎的・基本的な役割を果たすモジュールの時間に焦点を当てて話を進めていきます。

 モジュールは15分という短い時間です。内容を吟味し、指導の仕方を分かりやすく効率的にして、多少のプレッシャーを受けながらも子どもが安心して取り組めるようにします。  学習の基本的な形式ですが、例えば子どもを2〜4人のグループにします。話し手1人に対して聞き手は1〜3人ということになります。慣れないうちは聞き手の数を少なくして行うのが効果的で、特に話すことが苦手な子どもには有効です。  話す時間の目標は1分です。はじめは1分間話せない子どもが多いですが、徐々に慣れてきます。肝心なのは1分間話せた時の聞き手の対応です。聞き手全員で話し手に対して称賛の拍手をすることが非常に効果的です。  また、1分間話せても話せなくても、終わった時には「ハイタッチ」をして、その努力を労います。たとえ一言も話せなくても「ハイタッチ」だけは必ず行います。これによって話し手は「仲間であること」「認められていること」を自覚し、次からも安心して参加できるようになります。  以前、私の学級にもまったく話せない子どもがいましたが、学習を始めて1カ月ほどで仲間に入り、声を出せるようになりました。

 次に、聞くことについては、「聞いて受け入れる(共感)」ことを基本として取り組んできました。  日本には古くから「聞き耳を立てる」「耳を傾ける」「耳を澄ます」などの表現があります。これらの言葉には、話し手がその時にどんな状況で、どんな思いを抱いて話しているかを踏まえ、相手の考えを想像して聞く態度を身に付けさせたいという願いが込められていると考えます。  具体的には、次のモジュール形式の中で、以下の点に注意して指導しています。  話を最後まで聞く、話に反応しながら聞く、メモを取りながら聞く、相手が話しやすい態度で聞く、自分の考えと比べながら聞く、話の中心をとらえながら聞く、相手の立場を考えながら聞く、感想や意見をもちながら聞く、事実と感想・意見を区別しながら聞く――。

 以上のような考え方を踏まえ、高学年の場合、簡単な話し合いの活動としては、「昨日やったことを時間を追って説明しよう」とか「見たテレビで心に残ったことを説明しよう」などがあります。  いずれも、「きのうのことを説明します。1つ目は○時ごろ□□をしました。それは…でした。2つ目は…」や、「私は〜です。なぜかというと…だからです」のような、基本型を使って「話す・聞く」の学習をしていくことを基本としています。  このように繰り返し学習していくことで、子どもは人とかかわることに慣れ、「話すこと・聞くこと」に自信をつけていきました。

 子どもたちからは、「いままで話すことは苦手だったけれど、いまはすぐにでも話したくなるほど自信をもちました。こういうのならいつでもやりたいです」との思いをはじめ、「話が苦手なぼくにでも、みんなと話ができた。ぼくにもこんなことができるんだと思った。何かとてもおもしろくなってきた」「言おうとしていることを自分の中で変えて言ったり、忘れてしまったことをまったく違う内容で話したりする自分に驚きました」といった感想を、自分の言葉で伝えてくれました。




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