[7月29日]
日野原さんが道徳の特別授業
「命とは自分が持っている時間をどう使うかです」――。横浜市立希望ヶ丘小学校(塩見幸代校長、児童数617人)は6月23日、『生きかた上手』『十歳のきみへ』などの著書で有名な日野原重明聖路加国際病院理事長を招き、終末期医療の普及などに尽力している経験を踏まえ、「いのちの授業」と題する道徳の特別授業を行った。
この特別授業は、同校児童が読書感想文や合唱曲を贈ったことがきっかけで実現したもの。6年生と合唱クラブ員の子どもたちが体育館に集まり、他学年児童も教室のテレビで授業参観した。
オープニングの歓迎合唱では、子どもたちの歌声に迎えられた日野原さんが指揮をしながら登場。和やかな雰囲気の中で子どもたちの年齢を尋ね、その数から計算式を考えさせたり、最近訪問したモンゴルの話題から同国の位置などを問いかけるなど、様々な教科を絡めて学びの楽しさを実感させた。
学校標語の「夢・希望・未来」にも目をとめ、将来の夢についても子どもたちに尋ねた。野球選手を目指している子には持参したバットを手渡し、イチローをまねした実演を求めて「夢・希望・未来」を踏まえた生き方とは、上を向いて人生を生きることなどと語り生き生きとした人生へのエールを送った。
続いて「『命』の教育とは、自分が持っている時間(寿命)をどのように使うか考えることです」などと話し、左手の握りこぶしを胸にあてさせ、今を生きている証である心臓の大きさを実感させたりした。
そして「大人になるとは自分の時間(寿命)を人のためにどう使っていくかも大切」などと他者との関係についても話しを深め、良い人生を送るための考え方などを楽しくアドバイスした。
[7月22日]
いじめ調査「特定の子が加害者ではない」
特定のいじめっ子、いじめられっ子はいるのか。いじめの発生件数にピークはあるのか。いじめの未然防止と事後対応の取り組みは同じでよいのか。これらの疑問に対して、国立教育政策研究所生徒指導センターが行った「いじめ追跡調査2007-2009」が導き出した答えは、すべて「否」だった。いじめのイメージを正確につかみ、適切な取り組みを行う上で、同追跡調査がたいへん重要なポイントを示してくれている。
■個人を特定し3年間計6回調査
07年から09年にかけて実施された同調査は、前回の「2004-2006」に続くもの。詳細な分析を行うために、個人を特定できる形で、小学校4年生から中学校3年生までの児童生徒を対象に、学年進行にそって追跡していった。1学年あたりの児童生徒数は、おおむね800人。
3年間毎年、新学期が始まって3カ月弱後の6月と、夏休み明けから3カ月弱後の11月に、学級単位で一斉に、計6回にわたって調査を実施した。調査票記入に際しては、教師や友人の目を気にして回答をためらうことがないように、調査票の配布時にシール付きの封筒を配布し、回答後はすぐに、各自で封入できるように配慮した。
調査は、全国の状況を推測する際の根拠となりうる地点として、大都市近郊にあり、住宅地や商業地、農地なども域内に抱える地方都市を選び、その市内にある全小学校13校と全中学校6校を対象とした。
分析結果はこのほど、冊子にまとまられた。調査から明らかになったいじめの主要な実態は、一部のマスコミ報道や印象判断から一般に広がっている認識とは、大きく違っていた。
■被害者も加害者も大きく入れ替わる
日本では被害経験率が「からかう・悪口」「軽くぶつかる・叩く・蹴る」に比べて高い「仲間はずれ・無視・陰口」のいじめについて、3年間6回の調査にわたって「週に1回以上」という高頻度であったと回答した被害経験継続児童は3人(0.4%)、まったく経験がなかった児童は164人(21.5%)、調査のどこかの時期で何らかの頻度で被害経験をした児童は596人(78.1%)だった。加害経験については、継続した児童は1人(0.1%)、まったく経験がなかった児童は172人(22.6%)、調査のどこかの時期で何らかの頻度で加害経験をした児童は588人(77.3%)だった。
中学校では、同様の被害経験が継続した生徒は4人(0.6%)、まったく経験がなかった生徒は231人(34.0%)、調査のどこかの時期で何らかの頻度で被害を経験した生徒は444人(65.4%)。加害経験については、継続した生徒は4人(0.6%)、まったく経験がなかった生徒は188人(27.6%)、調査のどこかの時期で何らかの頻度で加害を経験した生徒は488人(71.8%)だった。
つまり、いじめに常習的にあっていると考えられるのは、児童で1000人に4人、生徒で1000人に6人という割合。また、小学校で8割弱、中学校で7割前後が、いじめの被害者にも加害者にもなっていた。
ここから、「クラスに数人程度」の特定の「気になる子ども」だけが「いつも」「いじめられている」あるいは「いじめている」といった一般的なイメージとは大きく異なる状況が浮かび上がってくる。被害者も加害者も大きく入れ替わっているというのが、現実の姿であることが、調査から裏づけられた。
また、ネットいじめが注目されているが、社会的・教育的な関心の高さなどから、06年から07年にかけて、減少傾向にあった。
■ピークはなく常に起こりうる
06年秋、「いじめが原因で自殺」との報道が相次ぎいじめ問題がクローズアップされた。こうした取り上げられ方によって、いじめが「社会問題化」したのは、それまですでに、ほぼ10年おきに2回あったので「いじめの第3のピーク」と表現されることがある。
だが、前回の04―06年、今回の07―09年の各追跡調査のどちらからも、いじめにピークがあったとは考えにくいという結論が得られた。
小学校の「仲間はずれ・無視・陰口」の「週1回以上」の被害経験率を見ると、04―06年調査では、05年夏が最大となっているが、「ピーク」と呼べるほどの増減が見いだせるわけではなかった。
同じ内容を07―09年調査で見ても、男子では09年夏、女子では07年夏が最大だが、やはり、「ピーク」と呼べるほどの増減が見いだせるわけではなかった。
同様のことは、小学校の加害経験、中学校の被害経験・加害経験においても当てはまっていた。
ここから、「いじめはピークを過ぎた」などといった考えは誤りで、やはり、「いじめは常に、どの学校でも、どの学年でも、誰にも起こりうる」との認識が重要であることが、あらためて確認できた。
■友人ストレッサーの軽減を
「いじめは常に、どの学校でも、どの学年でも、誰にも起こりうる」という現実は、いじめ加害が家庭環境や個人的な資質に問題があるかどうかは必ずしも関係しておらず、その時々の状況で起きている、ということを意味している。
それでは、いじめを引き起こすストレスや、そのストレスをもたらす要因(ストレッサー)はなんだろうか。
分析によると、いじめ加害に直接的にも間接的にも最も影響を与えていると考えられるのは「友人ストレッサー」だった。次いで間接的な効果をもたらすものが「競争的価値観」。これらから「不機嫌怒りストレス」が募っていく。
そして、▽適当な相手=自分が勝てそうで、都合の良い口実やきっかけがあるなど▽適当な方法=自分にとっては簡単で、大人に見つかりにくく、見つかっても言い逃れができそうなど――が見つかれば、いじめが発生するリスクが最大になる。
ここから、いじめ予防策が見えてくる。事後対策では、特定個人への指導に重点が置かれるが、誰にも起こりうるいじめを予防するためのポイントとなるのは――。
(1)友人ストレッサーの軽減=勉強や容姿や自分のしたことで、友だちからからかわれたり、ばかにされたり、悪口を言われたりすることが大きなストレスになる。集団の中で他者から認められる喜びに気づき、自ら進んで他者や集団に貢献することが誇りになるような学級経営や教育活動が確実に行われることが肝心。友人からの支援を実感できるようにすることが大切。
(2)競争的価値観をいたずらにあおらない=競争そのものが良くないのではない。児童生徒を励ましたり頑張らせたりする際に、いたずらに「勝ち負け」を強調したり、相手をおとしめたりするような表現を用いたり行為に出たりするようなことは避ける。
全体的には、ストレッサーを軽減し、学校・学級の社会的支援の拡充が重要。大人であればストレスの対処法を教示するのが選択肢の重要な1つとなるが、発達途上にある児童生徒に、まず対処法を教えても、対処しきれずに悩んでしまう。
[7月19日]
映像教材「知っていますか薬物の真実」
「まさか、ウチの学校で薬物やってた奴がいたなんてな〜」「悪いことだと分かっていて、なんで薬物なんてやるのかなぁ」「薬物はダメ。薬物は犯罪。でも、人を殺したわけじゃないのに」「学校で習ったじゃない」「じゃあ、なぜダメだか、自分で考えたことある? ちゃんと説明できる?」
学生の彼と彼女が、ケータイでそんなやりとりをするが、学校で聞いたことを知識としては思い浮かべるが、「どうなっちゃうの?」「なぜダメなの?」の疑問に、確信をもって答えられるだけのものは、持ち合わせていない。映像教材を見る生徒にとっても、状況は同じだ。
東映教育映像部がこのほど制作した「知っていますか 薬物(ドラッグ)の真実〜体験者は警告する」(文部科学省選定作品、DVD、VHS、21分)は、“本当はどうなんだろう”との疑問に、体験者自身が生徒に深く伝わる言葉で真実を語っていく。
「たえず薬のことが頭の中にある。それは地獄だ」と語るのは、中学校2年生のとき、不良仲間から勧められ、断れなくて吸ったシンナーから覚せい剤などに手を染めていった藤根元さん。
「薬に支配されているロボット。おれの人生これでおわりかと思った」と話すのは、やはり中学校2年生のとき、好奇心からシンナーを吸い、覚せい剤に走ってしまった橋仁さん。
2人とも、妄想や幻聴などに悩まされ、口から泡を吹いて倒れている惨めな自分を自覚しながらも、薬物から抜け出さずにいた時期の壮絶な姿を赤裸々に語る。
また、自ら命を絶った仲間や、誤用して死にたくもないのに絶命した友、フラッシュバックで天ぷら油に両手をつっこんだ旧友などについて話す。
そして、薬物に手を出してしまったころに、その後に味わうことになる状態を知っていたら、決して薬物はやらなかっただろうとも。
また、誰にも迷惑をかけていないとの考えが、どんなに独りよがりだったことか、とも。
薬物についての客観的な知識とともに、体験した当事者の語りが、なによりも響いてくる。
中学校学習指導要領の保健体育では、「薬物乱用については覚せい剤と大麻」を取り上げ、適切な指導をするよう定められているが、どのように指導してよいのか苦慮している、との学校現場の声は多い。
その点、訴える力が大きいこのような教材映像はたいへん有用で、21分という構成は、授業時間内にじっくりと観させて授業を組み立てる上でも、よくできている。
中・高校の保健体育だけでなく、生徒指導や薬物乱用防止教室などでも、たいへん役立つ教材である。指導の手引書とワークシートが付いている。
埼玉県立越谷総合技術高校で生徒指導主任を務める長岡邦子教諭が監修し、日本ダルク本部と日本薬物対策協会が協力した。
[7月15日]
博物館と連携した体験学習プログラム
学校と博物館の効果的な連携に向けて国立科学博物館はこのほど、学校における科学的体験学習の質の向上に資することを目的に、『自然科学系博物館の学習資源を活用した授業で使える科学的体験学習プログラム集(プログラム概要・学習活動案)』を作成した。全国20施設の自然科学系博物館と連携して開発した、小・中学校向けの科学的体験学習プログラムを64種類収載している。学校における理科授業活性化に貢献するものとして注目される。
■20施設と連携して開発
新学習指導要領では、理数教育の充実を強く打ち出している。小・中学校理科の「指導計画の作成と内容の取扱い」では、「博物館、科学学習センターなどと積極的に連携、協力を図るよう配慮すること」と示し、博物館の学校教育への貢献が強く期待されている。
そこで、国立科学博物館では、博物館の学習資源を活用した科学的体験学習プログラムを新学習指導要領に沿って開発に取り組み、その成果をまとめたもの。
自然史系博物館、理工系博物館・科学館、水族館、動物園、植物園など全国20の自然科学系博物館と提携し、小・中学校の理科を中心に利用可能なプログラムを64種類開発した。
プログラムは、小・中学校教師の使いやすさを考慮して「プログラム概要」と「学習活動案」という共通様式により記載されている。
■博物館利用授業のイメージを
「プログラム概要」では、タイトルを示すとともに、関連のある学習指導要領の内容、体験した児童生徒に期待できる学習のねらい、活動内容の概略、指導計画一例などを提示。学校、博物館、野外のどこで展開可能なプログラムなのかも示され、さらに、「博物館の活用」として、プログラム実施において活用可能な博物館の学習資源を列挙しているのが特長だ。
例えば、「デジタル地球儀で雲の動きを見てみよう」のプログラムでは、博物館から「デジタル地球儀投影セット一式(コンテンツ入りノートパソコン、風船式半球スクリーン)が貸し出し可」とされ、利用に供している。
「学習活動案」では、活用する教科の単元とプログラム名を示すとともに、単元と学習指導要領のねらい、使用教材、授業展開などを提示。ここでも使用教材で、どのようなものが博物館から貸し出してもらえるかがわかるようになっていて、具体的な授業実践に役立つようになっている。
さらに、より効果的なプログラムの活用場面や実施にあたってのポイントを述べた「プログラム活用の工夫」も参考になる。
また、合わせて「学習指導要領と科学的体験学習プログラムとの関連を示す体系表」も小学校、中学校ごとに作成。活用する単元や博物館種に応じて、プログラムを選択することが可能だ。
これらを合わせて実際の授業をどのように展開していくのかを検討しイメージをまとめていく、という仕組みである。
同博物館では、今後も継続的にプログラムの改良・充実に取り組んでいく考えで、特に、学校が博物館をより活用しやすくなるように、教師、教育委員会、博物館によるネットワークの構築を推進していくという。
[7月12日]
「わくわくするメディア」を活用した授業
愛知県岡崎市立羽根小学校(大岡久芳校長、児童数676人)では、平成19年度から、文部科学省の「先導的教育情報化推進プログラム」委託事業を受け、情報機器などを「わくわくするメディア」として活用し、それを通して「伝え合う子」「練り上げる子」の育成を目指して授業実践に取り組んできた。
■研究の構想
学習活動においてメディアを利用し、次の3つの力を育てたいと考えた。
(1)根っこの力=基礎的基本的な知識や技能
(2)伝え合う力=自信をもって自分の考えや思いを伝え、他の考えや思いを受け入れる力
(3)練り上げる力=様々な考えや情報を受け入れ、自らの考えや思いを再構築する力。
そして、次の3つをメディア利用の手だてとし、実践を進めてきた。
<1>学習の効率化を図るための利用
<2>児童の考えや情報を効果的に伝えるための利用
<3>児童の考えや情報を共有化するための利用
■授業実践
▽根っこの力の習得
1年生の算数科の学習で、2人に1台パソコンを用意し、プリント教材ソフトを利用し、引き算の計算練習をした。早くできた児童がペアの児童に計算の仕方を教えたり、問題を解き終えると、1人が答えを言い、一緒に答え合わせをしたりするなど、かかわりながら学習を進める姿が見られた。自分のペースで学習を進めることができるので、児童は意欲的に取り組むことができた。また、間違えた問題は次のプリントにも出題されるので、着実に計算力を身に付けることができた。
▽伝え合う力の育成
3年生の社会科の学習で、デジタルカメラを利用した産地調べを行った。スーパーマーケットに出かけ、グループに分かれて品物の産地を調べ、デジタルカメラで撮影した。その後、取材した内容を学級で発表する場を設け、児童自身がデジタルカメラを操作して大型ディスプレーに提示しながら発表した。
画像を示すことで、全員が集中して発表を聴くことができた。また、発表者も画像を使って分かりやすく伝えることができた。
メディアを利用することで、分かりやすく、自信をもって、自分の調べたことを伝え合う姿が見られた。
▽練り上げる力の育成
5年生の理科の学習で、デジタルカメラと電子情報ボードを利用し、流れる水のはたらきを追究した。
グループごとに、石の大きさや斜面の角度によって、砂や小石がどこまで流されるのかを実験し、結果をデジタルカメラで撮影した。その後、結果の画像を電子情報ボードに提示し、気づいたことを、児童が画面に書き込みながら発表した。
電子情報ボードに提示することにより、結果の比較や具体的な根拠を学級全体で共有することができ、一人ひとりの学習を深めるのに有効であった。
■かかわりが深まった
メディアを利用することで、自信をもって伝えたり、他の考えを受け入れて自分の考えを見直したりする姿が見られるようになった。
これらの活動を通して、児童間のかかわりが深まり、児童の人間関係力をはぐくむことができた。(近藤浩之研究主任)
[7月5日]
学校管理下での熱中症予防
暑くなってくると、ことに運動部などで心配されるのが、熱中症だ。スポーツによる熱中症の事故は、無理と無知によって健康な人にも起こるが、適切な予防措置さえ講ずれば、防ぐことができる。したがって、熱中症をよく理解し、暑いときのスポーツ活動では無理をしないことが大切である、と日本体育協会は訴える。
■要因に子どもの身体リテラシー不足
熱中症による事故では、死亡事故が例年のように報じられる。その原因の1つには、無理を押して運動したことが必ず挙げられる。ではなぜ、そこまで無理をしてしまうのか。
その背景には、ヒトの優れた体温調節機能が関係する。その優れた体温調節機能が備わっているがゆえに無理ができてしまう、と日本体育協会スポーツ科学研究室の伊藤静夫室長は、熱中症のメカニズムついて次のように説明し、予防について助言する――。
あらゆる動物にとって、体温調節は生命を左右する重要な身体機能。体がオーバーヒートしないように、二重三重の安全装置が組み込まれている。暑くなれば、汗をかいて熱を放散する。これは自動制御系で働くことから、自律性体温調節という。ヒトではこの発汗機能がとりわけ優れている。
一方、発汗機能に劣る動物では、行動で体温をコントロールする行動性体温調節を用いてこれを補う。何のことはない、日陰に移って休むのである。しかし、この簡単な調節方法は、体に負担をかけず、コストパフォーマンスの高い重要な体温調節機能であり、人間にとっても暑いときに体に無理をさせない安全装置でもある。
この行動性体温調節機能を無視して、無理を重ねることが熱中症事故につながるのである。
幼児期にはまだ十分な行動性体温調節はできないが、発育とともに学習されていく。体温調節機能に限らず、走跳投の基本的な動きや体の処し方、他者とのコミュニケーションなど、こうした生活生存に欠かせない基本的な身体スキルを「身体リテラシー」と名づけている。
身体リテラシーは、日常の身体活動や遊びを通してごく自然に養われるものであった。しかし、人類は人工的な環境を発達させることで、その学習の場をどんどん奪っている。夏にクーラーが欠かせない生活は、その分、身体リテラシーを後退させる。
■指導者には変調見逃さないスキルを
暑いとき、喉の渇きに応じて水を飲むと、渇きがいやされて体液が回復されるが、決して飲み過ぎないとか、体調が悪くなれば、はっきり意思表示ができる――。こうした身体リテラシーは、自律性体温調節と行動性体温調節の絶妙なハーモニーによって成り立っている。
しかし、本来自然に備わるべき身体リテラシーが、いま、危うくなっている。それだけに、大人のケアが必要とされている。
夏のスポーツ活動は、子どもたちが身体リテラシーをはぐくむ上での絶好の機会となる。半面、それだけのリスクを伴うことでもある。熱中症をよく知り、無理をさせないという原則を守っていただきたい。
そして、子どもが発する体調のサインを見逃さないでほしい。指導者には、子どもを的確に観察するこうしたリテラシーも求められている。
[7月1日]
へき地と市街地の学校が交流学習
へき地の学校と市街地の学校が交流学習を行うなかで、互いに豊かな体験を積み重ねていく取り組みを、財団法人みずほ教育福祉財団(森信博理事長)が支援している。このほど、今年度の「へき地教育研究助成(交流学習)」の2年継続助成校への助成金贈呈式が東京都千代田区のみずほ銀行本店で行われた。助成金(各校50万円)が贈られたのは、長野県信濃町立古海小学校、岩手県遠野市立附馬牛小学校、徳島県那賀町立北川小学校。市街地の交流相手校児童は、へき地の学校を訪れ、自然を様々に体験し、心の豊かさをはぐくんだ。
■長野県信濃町立古海小学校(2学級・7人、1級/山間地)
同校は、信濃町の東北端に位置し、隣県新潟の妙高山を望む豪雪地帯にある。屋上にクレーンで除雪車8台を引き上げたこともあるほど。交流相手校は、同校から約40キロの新潟県上越市立谷浜小学校(児童数71人)。上越市の北端、海岸に面した地区にあり、校区には谷浜海水浴場があって観光業と漁業が盛ん。
古海小学校では自校山間地域の環境調査を行っており、臨海地で環境調査を積極的に行っている学校を探し、谷浜小学校と交流することになった。
昨年度は6月末に1泊2日の日程で、古海小学校児童が谷浜小学校に出向いた。互いの環境調査を報告し合い、谷浜の浜辺で自然の営みの「宝探し」などを行い、山と海がつながっていることを実感した。
今年2月には、谷浜小学校児童が古海小学校を訪れ、クロスカントリー・アルペンスキーを楽しんだ。古海小学校児童によるスキーの手ほどきで、谷浜小学校児童はみるみる上達した。
そんな取り組みによって古海小学校児童は、自分たちが行っている環境調査への意欲をますます高め、視野を広げ、自校以外の友だちとのつながりから互いを思いやる心も深まったという。同校の教員にとっても、児童の新たな側面を発見でき勉強になったという。
■岩手県遠野市立附馬牛小学校(6学級・68人、1級〔今年度は準1級〕/農業・山間地)
同校は、遠野市の市街地から12キロ、早池峰山を望む景勝地にある。附馬牛は、およそ1200年前から早池峰信仰の中心として開かれ、遠野郷文化発祥の地ともいわれている。交流相手校は、同校から約70`の岩手県山田町立山田南小学校(児童数304人)。三陸海岸に面した住宅地にある。
昨年度の交流学習は、附馬牛小学校5年生9人と山田南小学校5年生53人の間で行われた。
6月に体育授業交流とカキ交流、7月にいかだ交流を行いに附馬牛小学校児童が山田南小学校を訪問。山田町水産センター周辺で、地元漁業者の協力によりカキの養殖いかだや水揚げなどを体験した。10月には山田南小学校児童が附馬牛小学校を訪問し、山里交流として遠野の文化探索を行った。
附馬牛小学校児童は保育園時代から一緒に遊び共に学んできたので、山田南小学校の大勢の児童を前に「どきどきした」というが、「南小との交流会で私が学んだことは自分から積極的に行動するということです」「僕が学んだことはいつまでも怖がっていてはだめだということです」と感想を書き、「とてもいい体験ができました」と、喜びと自分の成長を実感した様子を述べている。
■徳島県那賀町立北川小学校(4学級・20人、2級〔今年度は3級〕/山間地)
同校は剣山南麓に位置し、那賀川の水源地帯にある。日本有数の多雨地域で山林が広がる。交流相手校は同校から約80キロの徳島県阿南市立見能林小学校(児童数457人)。臨海地にあるが、商業と農業が盛んで、住宅も多い。
昨年度は、6月に北川小学校児童が見能林小学校を訪問。大きな体育館で北川小学校児童は、マイクなしで自校を紹介し、校歌を体育館中に響きわたる声で歌った。見能林小学校の児童も教員も、その堂々とした態度に驚いた。午前中は授業とゲームで交流し、午後には北の脇海水浴場で清掃活動をした。北川小学校児童にとって大きな自信をつかんだ1日だったという。
8月には、見能林小学校4年生児童が北川小学校を訪れ、幼稚園児も合流した総勢100人ほどが久井谷に行き、川遊びを楽しんだ。久井谷は北川小学校から2.4キロのところにあり、水生生物の調査活動をしている川だ。地域の高齢者がボランティア活動をしているすよりの会が用意してくれたいかだ2枚も、川遊びを盛り上げた。ペコペコになったお腹を、同会がつくってくれたあめご雑炊が満たしてくれた。
こうした交流を通して北川小学校児童は社会性が大いにはぐくまれ、地域の人たちとの結びつきに改めて気づき、自他を大切にする態度が深まったという。
[6月28日]
「演劇授業」でコミュニケーション教育
子どもたちのコミュニケーション力の育成を目指そう――と、鈴木寛文部科学副大臣の肝いりで、先月設置された「コミュニケーション教育推進会議」(平田オリザ座長)の各委員は6月18日、東京都杉並区立富士見丘小学校(淺川佳代校長、児童数311人)の「演劇授業」を視察、生のコミュニケーション教育を学んだ。
◇
同校の淺川校長は、同会議の委員の1人でもあり、5月26日に開かれた同会議の第1回会合で、同校の実践を紹介した。そんな経緯もあって、今回、委員による「模擬授業」の視察になったもの。
同校は、全学年2学級の計12学級で、区内では平均的規模の学校。平成16年度から3年間、区教委の課題研究指定校として、「演劇を取り入れた『総合的な学習の時間』の創造」に取り組んだことをきっかけに、これまでコミュニケーション力の育成をねらいに「演劇」をカリキュラムに位置づけ、国語の「対話」活動と連動させて特色ある学校づくりを進めてきた。
学校全体では、1〜5年生で外部講師による演劇ワークショップを年1回実施。6年生では、年間を通して35時間、多くの実演家の協力による授業を行い、年度末には「演劇」の公演を実施した。全校児童はもとより保護者、地域住民をはじめ、区内外の教育・演劇関係者が参観するなどの成功を収めた。
今年度からは単元「えんげき」を創設、教員主導によるコミュニケーション授業を計画している。
この日、特別活動室で行われた授業視察は、劇作家で演出家の平田座長が先生役となり、5年生全員(45人)が参加した「模擬授業」(90分間)。子どもたちはグループに分かれて「台本をもとにした簡単な劇作り」「オリジナルの台本作り」に挑戦した。
あらかじめ用意された台本は、「朝の教室風景」。今朝のテレビ番組の話題でワイワイとうるさい教室に先生が入室。転校生の自己紹介のあと、得意科目や趣味などをめぐり、児童間でやりとりするという筋書き。
各グループは、そのオリジナル台本をもとに、劇的要素を取り入れながら独自色を出そうと、語尾など細かい表現に気を配るなど、互いに協力し合いながら独自の台本に仕上げていった。
参観していた委員からは、「台本作りを通して、子どもたちのコミュニケーション能力は大きく向上するという気持ちをいだいた」などと評価していた。
[6月24日]
初任研で様々な自然体験講座
体験活動の充実が新学習指導要領で改めて重視されるなか、埼玉県では、公立小・中・高校と特別支援学校の初任者研修に、様々な自然体験講座を設けている。県立総合教育センター江南支所が行う今年度の体験講座では、授業に自然体験を取り入れる際のヒントとなり、教員のスキルの向上などにも役立つ内容を意識して、ネイチャーゲーム体験や田畑での農業活動などをプログラムに設けた。参加した初任者らには、それぞれの授業活用へのインスピレーションを得る様子が見られた。
■3つの演習から1つを選択
同県では、農業などの自然体験を取り入れた教育を大事にしており、教員研修でも、各種の自然体験講座を長く実施してきた。そんななかで、県立総合教育センター江南支所の今年度の初任者研修でも、多様な体験講座が行われている。今年は、小・中学校教員の体験講座に、3つの演習(自然体験活動、環境調査、農業体験)を設定し、その中から1つを選択する形で進めた。
また昨年の研修生の要望を受け、室内活動を減らし、戸外での体験を充実するようにしたり、体験後の振り返りで「体験を学びに変える」視点も学べるよう配慮した。
「自然体験活動」では、授業に生かせる自然体験を意識して構成した。そのうち、自然を舞台に様々なアクティビティーを行うネイチャーゲームの活動では、ゲームを生かすことでクラスの人間関係づくりに役立つことなどを学んでもらった。また、鳥の巣箱制作もプログラムに設け、作った巣箱を教員に持ち帰ってもらい、それぞれの学校に設置してもらうことで鳥の観察や環境学習などにつながるよう配慮した。
また、「環境調査」では、教育センター敷地内の川の水を採取し、パックテストによる水質分析を行う。さらにこの講座では、現状把握だけでなく、水質改善のためにはどうすべきかという検証を深めることで、行動につながる学びを実現することを大事にしているとする。
そして「農業体験」では、教育センター内にある田畑で、各種農作業の流れを専門家の指導を受けながら実際に体験できるようにした。
一方、高校と特別支援学校の教員への体験講座では、「食農教育」を柱に、「作物」「園芸」「畜産」の3つの講座を設け、田畑での農作業、牛やポニーへの餌やりなどの活動を経験してもらう。
同センターの仲山嘉彦指導主事は、「『食』にかかわる流れを体験するなかで『食』の大切さを改めて実感してほしい」とし、この講座では、授業での直接活用よりも「子どもたちの体験不足がいわれるなかで、教員自身が体験の機会を少しでも増やし、体験と学びの意義を深めてくれたら」などと願いを込める。
■楽しい体験から系統性のある学びを
6月16日に実施した高校教員の体験講座では、埼玉県内から約60人が参加。午前、午後で2つの講座に参加し、フィールドで汗を流した。
「作物」講座では、水田につかって田植え作業に取り組んだ。作業前にはスライドで稲の育ちについてレクチャーを受け、埼玉で約20%のシェアを誇る「キヌヒカリ」を植えることなどを学んだ。泥水に足をつけて作業するなかで「何か生き物が通った」などの声も上がり、参加教員は多様な生き物の営みを体で感じながら、田植えに励んでいた。
「園芸」講座では、畑で育ちつつあるナスやキュウリの手入れを体験。茎をうまく支えるための支柱立てやネット張りを行うなかで、指導者からは茂り過ぎた葉や茎を適時引き抜くことで、農作物が危機感を持ち、成長力を高めることなどを指摘し、「子どもたちの教育とも関係するかな」などと投げ掛けていた。
「畜産」講座では、牛舎で牛の飼育の流れや肉の等級などについて解説。その上で、牛の餌やりやポニーのブラッシングなどを体験した。その際、近年の環境問題を踏まえ、飼料のトウモロコシがバイオエタノールとして利用されていることもレクチャーし、飼料が燃料として利用されるなかで、燃料消費中心の先進国と飢えに苦しむ途上国との問題などを投げ掛け、飼料から世界を見つめる視点なども提供していた。
参加教員からは「体験活動を授業に取り入れる際に、楽しいと感じさせるものはこれまで問題があるのかなと思い込んでいた。しかし、きょうの講義を通じて、楽しいと感じる体験は系統性のある学びを実現する要素として有効なんだということが理解できた」という感想などが聞かれた。ほかにも「実験の意義を再認識できた」「もらった稲を学校に持ち帰り、ペットボトルで栽培してみたい」など、参加者がそれぞれ有意義な成果を得た様子がうかがえた。
[6月21日]
言語活動で「思考・判断・表現力」育む
各教科の言語活動を通した思考力、判断力、表現力の育成に昨年度から取り組んできた埼玉大学教育学部附属中学校が5月25、26の両日、研究協議会を開き、その成果の一端を公開した。この3つの力を教科ごとにどうとらえるかを明確にし、学習の工夫なども整理しながら追究を図った。国語科では、既習事項を確実に定着させながら、それを活用する学習を系的に位置づけることに気を配り、1年B組では、説明文を題材に図表が本文の理解にどう役立っているかを読み解きながら、両者の関係への理解を深める授業などを行った。
■一覧表で学びの改善・充実図る
同校(大保木輝雄校長)では、平成24年度の新学習指導要領の全面実施を前に、平成20年度から言語活動に着目した研究を進めている。
研究に際しては、まず生徒たちの言語能力の実態をつかもうと聞き取り調査を実施。教科ごとの調査結果からは、「各教科で身につけた知識をうまく活用できていない」「集団のコミュニケーションで他の生徒を思いやる意識が不足している」などが共通課題として浮き彫りになった。
一連の課題を踏まえ、文科省の言語力育成協力者会議(第8回)配布資料の「言語力育成に関する整理用一覧表」をもとにまず各教科で実践すべき言語活動とそこではぐくむべき力を整理しようと一覧表を作成。一覧表では(1)感受・表現(2)理解・伝達(3)解釈・説明(4)評価・論述(5)討論・協同の5項目ごとに各教科の言語活動を分類し、それぞれの活動で育てたい力を明記して、目当てを持った確かな学習につながることを図った。
これらの取り組みで各教科での言語活動が充実するなか、今年度からは「言語活動がすべての学習での思考力、判断力、表現力の手立てになるもの」ととらえ、より研究を深めていくようにした。具体的には、各教科で高めるべき思考力、判断力、表現力を明確化し、そのための学習の工夫をどうするかを整理しながら学びの改善・充実を図った。 例えば理科では、思考力を「問題を見いだし、観察・実験を計画する能力」とし、表現力を「科学的な概念を使用して考えたり説明したりする能力」などととらえ、観察・実験を重視し、「課題提示→予想→観察・実験→結果の整理→考察」という流れによる問題解決型の授業を充実させるなどの視点を設けた。
各教科も「知識・技能を活用する社会科学習」などの研究主題を掲げ、実践の在り方を追究。国語科では「生きてはたらく国語の力の定着を図る授業の創造」をテーマに授業づくりを深めた。授業では5項目の分類表を生かし、「視点を変えたりほかの事象と関連づけたりして、多面的・多角的に物事を見ながら的確に分析する技能(解釈・説明)」などを見定めた展開を進めていった。
■文章と写真を比較し読みを深める
そのうち、阿部靖史教諭による1年B組の国語の授業では、文章とそれにかかる図表との関係を考えさせることで、ものの見方や考え方を広げる読みの工夫を図る展開が公開された。
使った教材文は、海中でクジラが発する鳴き声の目的や仕組みを説明した文章。
阿部教諭は説明文を生徒に読ませ、掲載されている写真が本文を分かりやすく説明するために役立っているかを尋ねた。写真は、海を泳ぐクジラの様子をとらえただけのもの。当然、生徒からは「本文との関係がこの写真では分かりづらい」という回答が挙がった。
そんな生徒の感想をもとに、次に阿部教諭は、ほかの本から抜き出した複数の写真や図表を提示。それぞれには、クジラが小刻みな音を発しながら、その反響で位置や形などを知る「エコロケーション(反響定位)」の仕組みや鳴き声の様々なフレーズなどが描かれている。そして今度は、これらの写真と図表を生かすことで、内容がより分かりやすくなる文章を選択させるようにした。
生徒たちは、写真と文章を比較しながら検討を深め、「クジラたちは、短く高い音と、長く続く低めの音の2種類を目的に応じて使い分けていた」という文章には、「クリック」と「ホイッスル」という2種類の鳴き声の「音波波形」を表したグラフ写真などを選び出していた。
最後に、文章と写真などの組み合わせを選択した理由について話し合わせることで、本文と図表の関係や、図表をもとにした本文の構造についての理解も深めていった。
[6月17日]
校内研修の充実策探る
校内研修の充実とミドルリーダーの育成を焦点に研修を推進――。全国教育研究所連盟(委員長・素川富司国立教育研究所長)は6月3、4の両日、和歌山県和歌山市のホテルアバローム紀の国で平成22年度の研究発表大会を開催し、今年度新たにスタートする第20期共同研究の構想を固めた。教員の指導力向上のため教員研修に焦点をあて、校内研修およびミドルリーダーの育成を2本の柱とし、それぞれの具体的な充実策を模索していく。
共同研究は、同連盟に参加する全国の教育研究・研修機関すべて(現在は215機関)が協力して、現今の教育課題について3年間継続研究するもの。これまで19期にわたって取り組まれており、その成果は学校教育に大きな示唆を与えてきている。
今回の第20期共同研究のテーマは「実践的な指導力の向上を図る校内研修のあり方」。21年度で終了した第19期(平成19〜21年度)と同テーマである。
その背景としては、教育研究所・センターの研修機関へのシフトチェンジの流れがある。近年、教員の資質向上への期待が高まる中で、多くの教育研究機関が研修機関へと性格を変えてきている。それを踏まえ、共同研究においても、これまで取り上げてきた教育内容などに関するテーマではなく、前期から研修に焦点を当てることになり、さらに、2期続けての継続研究となったのである。
今回の研究の柱は2本で、「若手教員やミドルリーダーの育成」と「校内研修に対する支援」である。若手教員やミドルリーダーを育成するためのICTの活用や大学との連携などの戦略、そして、校内研修の活性化では研究主任を育成したり、指導主事が学校を訪問して校内研修を支援するなどの戦略に焦点を当てて研究を進める。
具体的な研修手法としては、各研究所・センターにおける先進的な研修事例の収集と分析、そしてアンケート調査の実施と分析を予定。加えて、22年度福井県、23年度石川県、24年度愛知県において研修集会を設けて研究協議などを行うことにしている。
研究体制は、同連盟に参加する東海北陸地区の機関を研究運営委員とし、事務局は富山県総合教育センターが務める。
教員の研修については、学校としての取り組みと教育研究所・センターからのアプローチが軸であり、その相互の関連を強めていくことが求められている。さらに、大都市圏では教員大量採用時代になり、若手教員が増えることに伴い、若手と中堅層の充実が急務となっている。その両面からも、今回の共同研究には大きな期待がかかるところだ。
[6月14日]
子ども司書が町の図書館で大活躍
「子ども司書」が町の図書館で大活躍――。福島県矢祭町では、日本初の「子ども司書」を育てて2年目になる。昨年度14人の第1期生児童に続き、今年度はそれを上回る19人が「矢祭子ども司書講座」を第2期生として受講している。活躍の場は、07年に、全国から寄贈された図書をもとに開館された「矢祭もったいない図書館」。子どもたちは、読書の楽しさや喜びを、学校や家で、みんなに伝えられるようにがんばっている。
今年度の受講生は、町内小学校の4年生8人、5年生7人、6年生4人(女子18人、男子1人)。主催するのは、矢祭町教委と矢祭もったいない図書館。同館の運営委員、図書館教育連携推進校(同町立東舘小学校)教職員、社団法人俳句協会ほかボランティア団体が指導にあたる。
月1、2回、年間を通して全15回行われる講座に参加し、12単位以上を取得する。講座の内容は、(1)日本十進分類法(NDC)による図書の分類と配架について(2)図書の検索、受付・登録・貸出・返却について(3)パソコン講座(4)読み聞かせの技能・選書――などと本格的。県立図書館などの視察研修旅行や手づくり絵本教室、ジュニア俳句スクールなども行われる。
修了検定も行われ、講座期間中に読んだ本の感想と講座から学んだことに関する感想を書いて提出する。修了者には、来年2月20日に「矢祭子ども司書認定証」が授与され、未来への希望の証として矢祭もったいない図書館内に名前が掲示される。
こうして生まれた子ども司書が活躍する同図書館は、05年の町民アンケートで図書館を求める声が多数上がったのをきかけに、07年に開館。建設に多額の経費がかかるので、06年に全国に本の寄贈を呼びかけたところ、約43万冊もの善意が集まった。この寄贈本を、公民館の脇にあった柔剣道場を改修して収めたのがこの図書館だ。
現在、蔵書は一般図書39万冊、児童図書6万冊に及び、そのうちの約6万冊が、町民ボランティアの手で整理され、開架されている。県内で3番目に多い蔵書数があり、中でも美術関連図書の充実ぶりが定評だ。
5月15日に行われた開校式・オリエンテーションでは、受講生を代表して、東舘小学校6年生の鈴木美穂さんが「私は本が大好きです。子ども司書の認定を受けた友だちは、いろいろな本のことをよく知っています。その本のことや調べ方などをいろんな場所で教えたりしていました。私は、もし、今年も『子ども司書講座』があったら、ぜったいに参加しようと考えていました。読書の楽しさや喜びを学校や家で、みんなに伝えられるよう努力したいと思います。そして、大人になっても、『あのとき「子ども司書講座」に入っててよかったなあ』と言えるようにがんばりたいと思います」などと、抱負と「誓いの言葉」を語った。
また、昨年度同町の手作り絵本コンクールで審査委員長を務め、同町の子ども読書のまちづくり応援団長を務めるノンフィクション作家の柳田邦男さんが、昨年に引き続き応援メーッセージを寄せた。この中で柳田さんは「小学生時代に本が好きになり、よく本を読んだことがどれだけ自分の心の成長に役立ったかわからないほどです。君たちは、自分から進んで図書館の司書のことを学ぼうとしたのですね。すばらしいことです。本の世界の奥深さや広さを学び、一層本に対する興味を強くするでしょう。その学びは、きっと君たち一人一人の人生の『心の財産』になると思います」とエールを送った。
子ども司書の取り組みは、昨年度に高知、広島の両県が県ぐるみで始め、今年度には、島根県出雲市、青森県板柳町、栃木県小山市で展開される。
なお、今年度の「子ども読書活動優秀実践」で、矢祭もったいない図書館の金澤昭館長が、文部科学大臣賞を受賞している。
[6月7日]
教員と児童のICT活用力を育成
和歌山県教育委員会(山口裕市教育長)は、インテル株式会社と放送大学の中川一史研究室の協力で、県内の公立小学校の教員、児童のICT活用能力を育成することになり、5月27日、和歌山市内で連携のための調印式を行った。今後、「児童1人1台のパソコン環境、電子黒板の活用、ITサポート体制の構築」などを目指すことになった。
同県では、長期総合計画に示した教育方針「未来を拓くひたむきな人間力を育む和歌山」を実現するため、昨年3月、県として初めて「教育振興基本計画」を策定した。
その基本的方向の1つとして、子どもの自立をはぐくむ学校教育の推進を掲げ、高度情報化社会に対応した教育として、ICT利活用の促進を図る計画だ。
今回の取り組みは、市町村との連携、ICT利活用による先進的授業のための教員研修や教育方法の研究、児童1人1台のパソコンと電子黒板活用、地元IT企業によるITサポートなど、ICT利活用による広範な教育改革を実行する。
研究対象校の教員に向けては、インテルの情報教育支援プログラム「インテルTeach」の研修を実施する計画。
教員に対しては、児童がICTを最大限に活用しながら、ICT活用力や問題解決力、協働力、思考・判断力、コミュニケーション力などを効果的に習得するための指導法を学ぶ。児童に対しては、インテルが教育用途に開発した小型ノートブック「インテルクラスメイトPC」を研究対象校に提供し、児童1人1台のPC環境で授業を行う。
また、放送大学の中川研究室が中心となり、研究対象校でのICT利活用授業計画、教員研修、授業指導、評価を行う「プロジェクト」を発足させた。同研究室は、このプロジェクトを実行する「T21実行委員会」を設立し、授業開始後も対象校のICT利活用授業の経過調査や指導を行うとともに、授業の質向上の支援と、ICT利活用教育評価指標の確立を目指す。
今回の事業では、インテルが和歌山県の地元IT企業と連携し、学校に対するITサポートの提供、ヘルプデスクの設置を行い、教育現場でのICT利活用を支援。さらに、将来の学校ICT支援員の派遣によるIT業務の雇用創出やITサポートの人材育成など、同県のICT産業振興にもつながる地域学校ICT支援モデルの構築を推進する。
なお、同県教委は、インテルと放送大学とともに、この6月から同県内の小学校4校を対象に、ICT利活用促進を開始する計画で、「この成果を、高度情報化社会に対応した教育の推進に役立てたい」としている。
また、これまで文部科学省をはじめ、都道府県教委や市区町村教委、中教審などの諸会議、さらには、各校長会などの各教育関係諸団体が連携協力しながら、その責任においてそれぞれの立場や民意を代表して、様々な教育政策立案に関与してきたが、そうした教育政策立案システムと今回発足した「熟議」と「熟議カケアイ」はどうかかわり合うのかなど、課題は多い。
文科省では、初めての試みであり、出てくるであろう様々な課題に対しては、恐らく「走りながら考える」ということなのであろうが、立ち上げた以上、当事者意識をもった熟議を通して、教育関係者の民意がより反映できる意義ある政策立案システムとなるよう一層の努力を期待したい。
[6月3日]
サイトで情報モラル教育を支援
千葉市教育センターは、小・中学校での情報モラル教育への支援に力を入れている。検索方法が工夫された情報モラル教育に関する指導案111例をはじめ、ワークシート、各種指導資料などをホームページに収載し、現場における効果的な授業実践をサポートしている。
■サイト上に豊富な指導資料を収載
ネット上で起こる誹謗中傷やメールによる「いじめ」など、児童生徒をめぐる情報に関する問題は、依然として教師や保護者を悩ませている。
こうした状況を踏まえ、同センターでは平成20〜22年度の3年にわたり「情報モラルの効果的な指導法に関する研究―『千葉市小中学校版情報モラル教育カリキュラム』の改善と活用を通して」に取り組むこととなった。
これまでの2年間の研究では、情報モラルに関する実態調査の実施と分析、それに基づく情報モラル教育カリキュラム試案の作成とその改善などを進めてきた。その中で学校現場にすぐに成果を与えると思われ、特に注目されるのが、ホームページによる情報モラル教育の指導資料などの提供だ。
同センターでは、ホームページを教育センターと同市内の小・中学校、特別支援学校などを結ぶ「千葉市学校教育情報ネットワーク(Cabinet)」として構築している。このサイトを通じて、「千葉市小中学校情報モラル教育カリキュラム」「千葉市情報モラルコンテンツ」を提供している。
ここには、各教科・領域などの指導ですぐに使うことのできる情報モラル関係の指導案、ワークシート、各種指導資料が豊富に収載されており、適宜授業実践で活用できるようになっている。指導案については、授業のねらい、授業の流れ、この授業で活用する教材や資料など、指導上のポイントや留意点などが示され、これが111例も用意されている。さらにワークシートなどが添付されている題材もある。
■実態に合わせた資料提供方法を工夫
これだけ収載コンテンツが多いと、検索のしにくさが懸念されるが、検索の仕方に工夫しているのも、この取り組みの特長のひとつ。学校現場では指導資料をカリキュラムから探すだけではなく、すぐに指導したい事例に合わせて探したいというケースが多いことから、「カリキュラムからさがす」「キーワードからさがす」の2つの入り口を用意した。
「カリキュラムからさがす」では、小・中学生の発達段階に合わせて希望の学年をクリックすると、その学年用のカリキュラムが開く。「メールするときに気をつけることは何だろう」「インターネットの情報は本当に正しいの?」など指導したい学習内容をクリックすると、その指導案が表示され、印刷やダウンロードができる。
一方、「キーワードからさがす」では、情報モラル教育の指導内容のカテゴリーとそのキーワードが配された対応表(表)が示され、指導したいキーワードを選んでクリックする。さらに、そのカテゴリーの指導案一覧表が示され、そこから希望の指導内容を選ぶのである。
この仕組みで、指導したい内容の指導資料をすぐに見つけることが可能となった。さらに同センターでは、このサイトの積極的な活用を促すためにPR用のリーフレットを作成し、現場に配布している。
21年度のこの情報モラルカリキュラムへの総アクセス数は、1004件にのぼったという。
現在、このサイトは当然のことながら、同市内の全小・中学校からアクセスすることができるが、それ以外でも一部分を閲覧することが可能なので、参考になる。
同センターURL=http://www.cabinet-cbc.ed.jp/
[5月31日]
珪藻で環境学習を様々に展開
地球上の光合成の20〜25%を担い、地球環境の維持に大きなかかわりをもつ珪藻をテーマにした様々な教育活動を考えるシンポジウムが、東京学芸大学でさきごろ行われた。会場には、教員や研究者などが集い、珪藻を扱った中学校、高校の理科、環境学習などの実践が発表されたほか、博物館での講座導入やアメリカでの珪藻研究の様子なども報告された。
シンポジウムでは、地球環境の保全などに大きな役割を果たす珪藻を扱った様々な学びが発表された。中学校と高校の各教員からは、フィールドワークやシミュレーションソフトなどを生かした理科や、環境教育での授業例が話された。ほかにも、対象に応じた博物館のイベント講座、珪藻をモチーフにした造形教育の取り組みなど、珪藻の魅力や意義を理解してもらうための様々な実践が報告された。
そのうち、東京都新宿区立牛込第一中学校の金井塚恭裕教諭は、前任校の同区立落合中学校での珪藻の数を調べる水質調査学習を報告した。
新学習指導要領では、身近な環境調査を交えた学習が求められているが、都心の中学校の現状では、環境調査の場所の確保や入試などの関係もあり、観察をからめた授業が行いにくい状況がある。そんな課題を踏まえて同教諭は、生物部の水質調査データを理科の授業に生かす展開を工夫し、事前準備にかかる労力を軽減させたという。
生物部では、03〜08年の間に毎月、校内の人工池と学校に隣接する公園の池の水をそれぞれ採取し、7項目によるパックテストを実施。この採取データを活用して理科の授業を進めた。水質調査では、人工池はアルカリ性で、自然池が中性など、水質の酸性度と硝酸塩(NO3)が大きく異なることが分かり、次に各池の珪藻の種類を調べた結果からは、自然池で13種類、人工池で9種類という違いが判明したとし、珪藻が水質に及ぼす影響などへの理解が深まったとした。
また、埼玉県大宮高校の平岩真一教諭は、理数科の学校設定科目「スーパーサイエンス生物環境」での授業例として、珪藻を生かした地域の川の汚濁調査学習について話した。
この学習では、珪藻採取による個体数の分析などを通じて、河川の汚濁指数を割り出す力などを育てようとした。そのためフィールドでは、珪藻採取と調査のもととなるプレパラートづくりなどを学ばせたほか、採取した珪藻を識別珪藻群ごとに分類し、汚濁階級指数を割り出す計算なども指導した。
まとめでは、クラス全体の調査結果から、地域の川の汚濁指数を計算し、「2.31(水質階級・β中腐水)」という結果を導き出すとともに、パックテストでの水質調査の結果との比較もさせた。これによって、珪藻を使った水質調査が可能なことを学ぶとともに、珪藻と環境の関係が密接である事実を学ばせたなどと話した。
東京都立両国高校附属中学校の黒田淳子教諭は、珪藻から水質判定などが行えるシミュレーションソフト「SimRiver」を使った同校の学校設定科目「人と自然」の授業について話した。
「人と自然」は、自然界の生物同士の関係や人と自然とのかかわりなどを総合的にとらえる姿勢を育てる学習。その中の「自然と環境保全」の学習には、珪藻を使った水質判定や河川の水質調査といった内容が盛り込まれており、この学習に同教諭は「SimRiver」を活用した。
ソフトには、中央に川が流れ、各流域には住宅地や工場など、人の生活領域を配したグラフィックが映し出される。流域を選択すると、それぞれの環境条件に応じた珪藻が表示され、教室にいながら人間の生活活動と環境のかかわりなどを学ぶことができる。
生徒らは、パソコン画面上の各流域を選択し、自然豊かな上流域と住宅密集地である下流域との珪藻分布などを学習して「水が汚いと珪藻が減り、珪藻を食べる生き物も減り、その生き物を食べる生き物も減る」「どんな小さな生き物でも大切にしないと最後には人間が困る」などと話し、人間生活と環境を関連づけながら、珪藻を通じた生態系や食物循環、指標生物への理解を深めていったという。
[5月27日]
発達障害は2歳児までの予防が重要
平成19年度に特別支援教育が改正学校教育法の下に施行されから、今年度で4年目を迎えた。学校現場で特別な支援のあり方が注目される中で、2歳までの日本の伝統的な育児法が発達障害を予防することを、金子保前国際学院埼玉短期大学教授・さいたま市教育相談センター所長らの研究グループが提言した。共著『発達障害を予防する子どもの育て方』(メタモル出版)によると、2歳まではテレビなどを見せず、あやしたり話しかけたりするといった伝統的な育児が脳科学の研究領域からも有効性が認められるという。また、金子所長らは、特別支援学校の設置や支援のための教員配置よる対応は後手であり、財政面からは予防策よりもコストが高くなると指摘している。
金子所長によると、埼玉県の発達障害児の発現率は、40年前には1万人に1人だったものが、現在は1万人に1500人から1800人と高率になっており、特にこの10年間で割合が高くなってきたという。
日本の伝統的な育児法とは、▽2歳まではテレビやDVDなどを見せない▽目を合わせて話しかけたり、あやしたりする▽添い寝をして話しかける▽子守歌を母親が歌う▽育児に父親が参加する▽たかいたかい遊びやくすぐり遊びをする――といった、昔はよく行われていたもの。
本書では、いまの若い親の世代に昔からの育児法をわかりやすく示した「金子式全人格発達法」として紹介されている。
このような金子式育児法について、同研究グループの片岡直樹川崎医科大学名誉教授・kids21子育て研究所長は、多くの事例をもとに、テレビ・ビデオ・DVDに頼らない子育てが望ましいと指摘している。
また、同研究グループの澤口俊之前北海道大学教授・人間性脳科学研究所長は、金子式育児法を脳科学の知見をもとに、有効性を指摘する。併せて、脳生理学研究からの発達障害の予防の推進を呼びかけている。
金子所長らによると、同県では発達障害教育関係の支援費用として、障害児支援教員の配置に幼稚園1園当たり年間400万円を、小・中学校では同支援教員を特別な教育的支援が必要な児童生徒7〜8人に1人配置するために年間500万円を支出している。特別支援学校を増設した場合、児童生徒100人に教員40〜50人の規模で約3億円かかる計算となる。
金子所長は「発達障害の治療指導は困難が多く、予防の方が簡単だ。ただし、治療は2歳までという発達の臨界期があり、それ以降は発達支援が非常に困難になる。障害児支援教員の配置や特別支援学校の設置の費用に比べて、出生届の時点で本を配布し、保護者に実践してもらうことの方が、多くの子どもたちが健全に育つことができる上に、教育行政の視点からみると、費用も少なくてすむのではないか」などと語っている。
[5月24日]
『学び合い』で理解深め生きる力
学びについての臨床研究をもとに、子ども同士の『学び合い』の学習を提唱している西川純上越教育大学教授の考え方を取り入れた実践が、全国各地で少しずつ広がりを見せている。現在、埼玉県上里町立七本木小学校(荻原昌子校長)で教壇に立つ杵淵眞教諭もそんな『学び合い』を授業に取り入れている。6年前から始めた『学び合い』によって、「自分と仲間の相互利益という考えをもって、一人ひとりの子どもたちがクラス全員が分かるようになるための行動を起こすようになった」と話し、授業以外の学級活動でも、互いを大切に励まし合いながら、あらゆる作業に意欲的に取り組むようになるなど「学力向上」と「生きる力」の双方が育っているという。
■学習者同士が教え学ぶ関係築く
西川教授提唱の『学び合い』とは、子どもたちの学習行動を追った臨床研究をもとに、教師による一斉指導の限界とそれに対する学習者同士の学び合いの効果を明らかにしたもの。例えば学習における子どもたちの誤答の検証では、これまでの研究で同じグループに分類していた誤答内容でも、一人ひとりの子どもの誤解はすべて異なっていることを明らかにし、教師1人が同時に多数の子どもを教えることの困難さを指摘した。
さらに、教科学習におけるエキスパート・ノービス研究(専門家と初心者の理解などのギャップ)では、知識・技能の高さと教授能力の高さは必ずしも一致せず、教え手と学び手の認知ギャップが適度なときに教授は成立するということを導き出した。これは「何も考えなくても自転車に乗れる大人は、なぜ子どもが自転車に乗れないのかが分からない」という事態でもあり、知識・技能が高い教師が常に最善の教え手ではないのを示唆している。
このようなことから同教授は、学習者同士が教え、学ぶ関係を築く学び合いの意義と必要性を強調し、学校の実践に『学び合い』を生かしてもらうための普及と啓発にも取り組んでいる。
そんな『学び合い』の授業では、教師は目標設定や評価を行う一方で、学習の仕方はそれぞれの子どもたちに考えさせる流れを取る。その上で、子どもたちは、教室を移動しながら、様々な友人と相談したり、自分なりの方法を掘り下げたりと、自由闊達な学び合いを進めていく。
その際、みんなが目標に達成することを一人ひとりに意識させることが、この学びの特長で、このことで子どものかかわり合う力と学力を相乗的に高めていくことができる。
■授業でも学級経営でも
そんな『学び合い』を6年前から教科指導や学級経営に生かしているのが杵淵教諭。
『学び合い』では、「自分とクラスにとって良いことは? という考えが根づき、それぞれの子どもが目的に沿った自由なグループ学習や個別学習を行うようになった」とし、「子どもたちの間に良い関係性も築かれていき、教師が指示や注意をすることがなくなる」とその効果を話す。
『学び合い』を通じた3年生国語の実践例では3つの方法をもとに漢字をクラス全員で習得していく授業が展開された。
冒頭、この日の3つの学習とその目標を説明。『学び合い』では、基本的に教員はこのような共通の目標設定を全員に呼び掛け、子どもたちの学びの様子を見届けながら適切な助言を送る役割を担う。
複数の漢字を組み合わせたストーリーを創作しながら、子どもたちがオリジナル漢字を作って楽しく学ぶ「漢字に親しむ」という単元の学習では、「有」の字を10個書いて「ありがとう」と読ませたり、「旅」と「鳥」を組み合わせて「わたりどり」と読ませたりするアイデアなどが次々に出てきた。子どもたちは仲間とグループを作ったり、ひとりで教科書を読み進めたりと教室内を自由に移動し、互いのストーリーを批評し合ったりしながら、漢字習得を深めていった。
子どもたちは「先生は何も教えないよ。みんなで教え合うから分かる」と、この一連の学習の魅力を口々に話す。
現在、同教諭は、教科指導はもとより、学級経営にも『学び合い』の考え方を取り入れており、「子どもたちの『関係』がはぐくまれてくると授業効果も高まり、学力向上につながる」と、その意義を強調している。
[5月17日]
身近な生物でオリジナル動画教材
今年の千葉県「魅力ある授業づくりの達人」にも選ばれた、千葉県市原市立牧園小学校(武田敏雄校長)の荒木正範教諭は、身近な自然に生きる様々な昆虫や生物の生態を動画ムービーに収め、それをオリジナル教材にすることで、子どもたちの実感を伴った理解につながる理科授業を実現している。動画教材は、子どもたちが慣れ親しんだ学校敷地内の様々な場所で撮影し、人工池でシオカラトンボが捕食する様子など、約20種類の生き物の営みを収録した。荒木教諭は、同教材を活用することで身近な自然からその仕組みや関係に気づいてもらうとともに、自然体験に向かうきっかけづくりになればとし、さらに季節の変化を敏感に感じ取る感性の育成にもつながればなどと、教材への思いを話す。
■校地や学校周辺を撮影ポイントに“身近感”
校地や学校周辺の地域の自然を追ったこの動画教材は、3年前、荒木教諭が千葉県長期研修生として新たな理科教材の開発を考える中で見いだしたもの。その意図については「テレビ番組などによる大自然の営みを収めた立派な映像教材は数多いが、身近な自然と生き物の生態を追った映像教材はあまりない」とし、この教材によって「子どもたちに身近な自然からたくさんの発見をしてもらい、自然体験の機会につながればうれしい。そして、四季に応じた自然の変化をとらえる力や、課題を見いだす感性も磨いていってもらえたら」という願いも込めている。
当初は、「結構労力もかかるし、無理では?」との声もあったそうだが、荒木教諭自身が身近な自然探索を続け、様々な生き物の生態を確認していく中で教材開発も進んでいったという。
制作にあたっては、ホームビデオを片手に1日1時間、校地内や地域の自然を巡り、昆虫や鳥などの様々な生態を粘り強く観察し、1年間をかけて収めていった。収録の際には、子どもたちがよく知る学校敷地内の建造物などを映し込むようにして、身近な場所で起きていることを印象づけるよう工夫した。
学校敷地内の人口池では、シオカラトンボを題材に、捕らえた虫をコースロープ上で食べる様子を数十秒にわたって収録した。ほかにも、学校の壁に、泥やワラを運んで巣づくりをするツバメの様子や、早朝にセミの幼虫が土中からはい出て成虫になろうとするところをムクドリが襲いかかる様子など、約20種類の生き物の生態動画を撮影し教材を完成させた。
■単元のねらいに沿って活用
授業では、これらの動画教材を単元のねらいなどに沿ってうまく活用するようにした。例えば、身近な自然とふれあいながら、生き物のつながりを学ぶ「生き物と養分」「生き物のくらしと自然環境」では、ムクドリに食べられるセミの動画などを見せることで、身近な自然の営みから食物連鎖の仕組みをより実感的に理解させる授業をデザインできるようにした。
また、子どもたちの発見を生き物マップにまとめる学習なども行い、導入で動画コンテンツを使うことによって効果的な授業づくりに生かした。子どもたちは、普段何気なく見ていた身近な自然を、動画教材で見つめ直すことで生き物への興味・関心を抱きつつ、食物連鎖や共生などの視点を経ながら自分なりの自然探究に役立てていたという。
■新聞づくりで言語力育成も視野に
各単元のまとめ学習では、言語力育成も視野に新聞づくりを実施した。ここでは、それぞれの自然調査の発見を、自然の成り立ちとの関係からつなぎ合わせたり、整理したりすることで、自然の仕組みへの理解を深めていくことを目指した。セミ採りの体験を新聞にまとめた子どもは、自分の住む千葉県市原市で採取するセミは大半がアブラゼミだが、宮崎に行ったときには、その多くが「羽が透明で大きいセミだった」ことを報告。「鳴き出すとすごくうるさくなって耳をふさぎたくなる」などの感想を交え、地域ごとにセミの種類や生態が異なることなどに気づいたことを紹介していた。
ほかにも、季節に応じた様々な生き物の発見が報告され、ジバチがエサのイモムシを土中の巣に引っ張っていく様子を詳細にまとめた内容や、「学校の周辺にこんなに生き物がいるとは思わなかった」との感想の声が数多く聞かれるなど、子どもたちの気づきやフィールド観察への意欲を促す上で、同教材が大きな役割を果たしたことを荒木教諭は指摘する。
これまでを振り返り、「動画教材づくりは一見労力がかかりそうだが、自分たちの学校の自然を見渡し、生き物の基本的な生態を知ることで、どんな先生でも収録し、制作することができる」と話し、一方で、「理科では実験などの準備に多くの時間がかかることから、動画教材をもっと単元のねらいに沿ってパッケージ化するなど、多くの先生に使ってもらえる工夫を施したい」などと今後の目標も示している。
[5月13日]
教員研修の充実に向け全教連が共同研究
全国教育研究所連盟(委員長・素川富司国立教育研究所長)はこのほど、第19期共同研究をまとめ、「実践的な指導力の向上を図るこれからの教員研修の在り方」と題する報告書を刊行した。教員の指導力向上のための教員研修、校内研修および支援体制の2つの側面からそれぞれの充実策が多数収載されており、今後の取り組みに多くの示唆を与える内容となっている。
■実践的な充実策を探る
全国228の国公民間立の教育研究機関で組織する同連盟では、その時々の教育課題をとらえ、全組織をあげて共同研究として取り組んできている。今期はその第19期にあたり、東北地区の各教育センターが運営委員会を組織し(事務局・福島県教育センター)、平成19〜21年度の3カ年にわたり研究を推進してきた。
研究のねらいは、教員の資質能力向上に向けて、各学校における日常的・計画的な校内研修の工夫・改善と、教育センターなどによる教員研修や学校・教員支援の望ましい在り方について実践的な視点から迫ろうというもの。
研究内容は、協働性や同僚性を重視した校内研修体制モデルや実践的な指導力向上に結びつく授業研究モデルの有効性について検証などを行う「実践的な指導力の向上を図る校内研修の在り方」、教員のライフステージ並びに学校・教員や教育委員会などのニーズに応じた研修システムの有効性の検証などを行う「実践的な指導力の向上に向けての支援体制の構築」の2つの柱に分かれている。
3回開催した全国研究集会を中心に、研究推進委員会、運営委員会において研究を推進、全国の教育研究所・センターの先進的な教員研修の実践事例の収集と分析検討を行い、成果をまとめた。
報告書では、2つの研究の柱それぞれに沿った各教育研究所・センターの実践事例を多数収載し、教員研修充実のための具体策が学べるようになっている。
■学校の組織力を生かす
1つ目の柱「実践的な指導力の向上を図る校内研修の在り方」では「組織力を生かした校内研修の確立」「授業研修を核としたこれからの校内研修の在り方」をテーマに7つの実践事例を掲載。
これらをまとめ、学校の組織力を生かした研修体制づくりに必要な要素として、「学校経営の目標の明確化と共有化」「研修主任、ミドルリーダーの育成」「授業研究の工夫・改善」「教員一人ひとりの学校経営への参加意識の醸成」の4点を提示。具体策としては、リーダーを中心とした校内人材育成(OJT)研修、授業評価シートを活用した研修講座などを示している。
また、校内研修をサポートするものとして、校内研修ハンドブックや校内授業研究進め方ガイドブックなどの手引、ワークショップ型研修、単元構成力を重視した研修、自己課題の明確化を図る研修、ポイント授業観察など研修スタイル例が提示されており、役に立つ。
■関連機関との連携など示す
2つ目の柱「実践的な指導力の向上に向けての支援体制の構築」では、「教員のライフステージに応じた研修の推進」「学校・教員等のニーズに応じた研修への支援の在り方」「eラーニングを活用した研修への支援の在り方」「教育センター等と大学・関係機関との連携の在り方」をテーマに、14の実践事例を掲載、2〜4年次研修の在り方、OJTの在り方、ミドルリーダー育成の具体策などを示している。
また、学校や教員のニーズに応じた研修を実現するためには、支援するシステムづくりが重要であるとして、具体的には「学校訪問、要請訪問、出前講座を組み合わせた研修支援」「リーダー研修の実施」「地区のモデル拠点校の構築」「他機関との連携強化と研修内容の整理・統合」「校種別のニーズを把握した研修の設定」などを強調している。
同連盟では6月3、4の両日、和歌山県和歌山市のホテルアバローム紀の国で、平成22年度の研究発表大会を開催する。大会では、この共同研究の成果が発表される予定になっている。
■解説=学校現場を支える研修機関へシフト
近年、教員の資質向上が強く求められるようになる中で、全国に設置されている教育研究所も、それに合わせてその性格を変更するようになってきた。
従来は研究機関としての色彩が強かったが、初任者研修や10年経験者研修などの実施に伴い、教員の研修機関としての性格と機能を強めてきている。従来の研究所・センターの名称を、研修センターに変更した機関も少なくない。
その集合体である全国教育研究所連盟は、全機関が協力して実施する共同研究を昭和32年の第1期から取り組んできた。これまでは、個別化教育、自己教育力、情報教育、環境教育など、時宜にかなった教育課題をテーマとして取り上げてきた。
しかし、センターの性格の変遷に合わせて、近年の共同研究では教員研修に焦点をあてるようになり、今回の第19期では、研究所・センターの使命として教員研修の充実を正面に据えたのである。
続く第20期(平成22〜24年度)でも、同じ「実践的な指導力の向上を図るこれからの教員研修の在り方」を主題とすることとしている。研究所・センターの粋を集めた教員研修の充実策が打ち出されることに、期待が寄せられるところだ。
[5月6日]
OJTの実践でガイドブック
東京都教職員研修センターはこのほど、OJT実践ガイドブックをまとめた。この中に、OJTの進め方や学校での実践事例が示されている。授業後の時間を使った授業改善事例では、板書や使用した教材をその場にそのまま残してOJT担当者などと授業を振り返ったり、学級の基本的な生活習慣の改善事例では、主任教諭などが帰りの会を参観し、連絡帳の記入を徹底させるなどの指導上の留意点を助言するといった取り組みが収載されている。
このガイドブックは、「都教育人材育成基本方針」や「OJTガイドライン」に示された人材育成や教員が身につけるべき力についてまとめたもの。この中で、OJTで力を伸ばしたい教員がガイドブックの「OJT推進力分析シート」を活用し、おおむね達成できている項目にマル印をつけて自己分析し、自らのOJTを推進する力を把握するといった活用が推奨されている。
自己分析の結果、同シートの40の分析項目のうち、「他の教員の指導から学び、自己の指導を改善できる」が課題である場合には、OJTを効果的に実践するための18要素のうち、関連のある「教員相互の高め合う雰囲気の醸成」「教員相互の授業参観の実施」などについて取り組む。具体的には、相互の授業参観や、参観した教員が授業者に助言・指導を行うのが望ましいとされた。
また、実践事例には、忙しい中で短時間でもできる「授業終了後の時間を活用した授業改善」や「学級の基本的生活習慣の改善」「若手教員が自校のエキスパートから学ぶミニ校内研修会」などが集録されている。
「授業終了後の時間を活用した授業改善事例」では、授業間や放課後などの5分間を指導改善のために活用する。
短時間での指導方法の確認や情報交換を可能にするために、職員室の座席配置や担当学級の教室配置を可能な限り若手教員とベテラン教員が近接するようにする。校内のOJT担当者は、放課後に、授業で活用した板書や使用した教材をそのまま残して、OJT担当者などと一緒に授業を振り返る。板書内容と指導展開の工夫について、板書の適切な量とスピード、効果的な色チョークの使い方、発問・指示の改善、家庭学習の取り組み状況の確認をすることができる。
「学級の基本的な生活習慣の改善事例」では、主任教諭などが帰りの会を参観し、児童生徒の実態と教員の指導状況を把握する。
主任教諭は忘れ物が増えないようにするために、帰りの会での連絡帳記入を徹底させたり、黒板に持ち物や提出物の締め切り日を明示するコーナーを設置したりするといった取り組みの留意点を助言する。
「若手教員のためのミニ校内研修会の事例」では、同研修会を毎週決まった曜日に30分程度実施する。講師は、主幹教諭、主任教諭、中堅の教諭が務める。新学習指導要領を踏まえた道徳の授業の基本や授業改善の視点と個別課題の見直しなどについて、質疑応答などを行う。
研修では、電話応対のマニュアルや通知票所見の書き方などの配付資料を用意しておくのも有効。研修でのやりとりの記録は校内で共有できる指導資料にできるほか、講師を務める教諭の自らの専門分野の振り返りの機会となる。
この実践ガイドブックは、同センターのサイト(http://www.kyoiku-kensyu.metro.tokyo.jp/)からダウンロードすることができる。
[5月3日]
達人の授業力ってなんだ?
千葉市教育センターはこのほど、教師力に関する研究報告をまとめた。ヒアリングなどによる調査の結果から見えてきたのは、達人の授業力には子どもに寄り添う姿勢が根幹にあり、達人の授業をただ真似るのではなく「授業を創り出す基本的な力」を身につけることから始めるのが望ましいことだった。また、自らを伸ばした要素の分析からは、「できない理由」を探すのではなく「実施できるアイデア」を考えていく前向きな取り組みの中から徐々に自己の成長を促していったことも分かった。
同研究では教師力を解明するために、全国の授業の達人29人からヒアリングを行い、達人の授業力を4つの大項目と19の小項目に整理した。
大項目は、(1)子どもを伸ばす基本的な力(2)授業を深める基本的な力(3)授業を創り出す基本的な力(4)自分を伸ばした要素とした。
研究では、大項目をさらに詳細に整理。その小項目は(1)▽聴く力▽見る力▽話す力▽対話力を育てる力▽自由な空気作り(2)▽一瞬の対応▽課題・ゆさぶり▽体験▽興味関心・ユーモア▽主体性・ささやき・ほめる▽学習習慣の形成(3)▽授業構成・教材研究▽教材探し▽省察(4)▽自分が伸びた時期▽授業研究▽独自の研究会▽理想の教師▽オンデマンド研修(各教師が必要に応じて自由意思で研修するもの)▽やりがい感――とされた。
ヒアリングなどを分析した結果、達人の手だてや考え方は全員が確実に持っており、独自の指導姿勢や具体的な指導技術となり、子どもたちに還元されていた。
具体的な学習状況を設定すれば、達人は子ども集団の反応や動き、子ども一人ひとりのつぶやきなどを具体例をあげて説明できた。ただ、授業の進め方やその詳細な中身については独自性が強く共通項でくくることができなかった。
達人の多くは、授業を創り出す基本的な力が授業の根幹を揺るぎないものにすることを認識していた。報告書では、「この点が、達人の技を容易に一般化できない理由となっている。達人の授業で見られる技のみを追っても、表層的な模倣による狭い世界での独りよがりであり、達人のような授業は展開できない。このことから模倣は授業では見ることのできない『授業を創り出す基本的な力』から始めるべき」と分析した。
小項目の多くが子どもに寄り添う力として総括できることから、達人の授業力には子どもに寄り添う姿勢が根幹にあることも分かった。
自分を伸ばした要素から見える達人の成長していく過程は、多くの課題を抱えた1人の人間が教師として生きていきながら、その取り組みを通して自分に向き合い、徐々に自分の成長を促していくというものだった。
また「できない理由」を探すのではなく「実施できるアイデア」を考えていく傾向もみられた。
[4月29日]
授業力を育てるには
若手教員の授業力の向上は、学校現場の大きな課題である。本紙「ステップアップ! 20代教師」面で、「若手教員の悩みに答える―明日からの教師力のレベルアップ」を好評連載中の、岩手県軽米町立笹渡小学校の佐藤正寿副校長に、授業に関する若手教員への指導のポイントについて聞いた。同副校長は、これまでの取り組みの成果を『「力をつける授業」成功の原則』としてまとめ、このほど刊行している。
■実態に対応できない若手教員
――佐藤先生には、教育新聞社主催の「新規採用教員採用直前セミナー」で講師も務めてもらっていますが、最近の若手教員をどのように見ていますか。
自分たちの時代よりもいまの若手教員は優秀だと思います。採用前にしっかりと勉強をしてきていますし、礼儀正しいです。ただ、教育にかける情熱がもっと表に出てもいいかなと思います。「おもしろい実践をしよう」と学年会で積極的に提案したり、子どもとどんどん遊びや雑談でふれあったり、というようにです。同僚と実践交流で激論になるぐらいが若手教員としてはちょうどいいのではないか、と思っています。
――若手教員の授業を観察し、どのような感想をもちますか。観察する際に留意している点は。
研究授業などでは、まずはきちんと授業の流れを下書きして、それをもとに発問や指示をしていますね。それ自体は準備として当然なのですが、あくまでもそれは指導案ですから、子どもの実態に応じて変化をしなければいけません。
しかも、その準備を1つの方法でしか考えていないので、「子どもたちの実態に対応できない」ということをしばしば見かけます。
複数のパターンの準備をいかにしておくかが、若手教員の授業の場合には重要になってくると思います。私も授業のコメントをするときには、プランの代案を具体的に提示するようにしています。
■自分で考えた技術は身につく
――若手教員に授業の基礎技術を指導する際に留意していることはどのようなことですか。
基礎技術は、具体的に教えなければ意味がありません。その点では、参観授業で代案を示すことが一番です。例えば、個別指導をするときに、若手教員はどうしてもつまずきのある子だけに目が向きがちです。「どういう考えで個別指導をしていますか」と聞くと、「できていない子を中心に」と答えます。「では、早く終わった子への個別指導は?」と聞くと、「それはあまり考えていません」という答えが返ってきたことがありました。
ここで「個別指導についての基本的な考え」をまず教えます。つまずいている子だけではなく、作業が早い子にも個別指導は必要だということです。あとは具体的な方法を教えます。直接、「こんな方法があります」と紹介することが多いのですが、時間があれば、「どんな方法が考えられますか」とアイデアを出させてからアドバイスをするときもあります。自分で考えた分、指導技術は身につくようです。
――同様に、教材研究に関する指導についても教えてください。
「教材研究」を「授業の方法を考える」だけと考えている教員がいます。例えば、物語文であれば、授業の流れや発問をすぐに考えるケースです。その前に、その物語文自体の研究をするように指導しています。自分なりの読後感、読解した教材分析、作者がこの物語文を書いたときの背景、作者のほかの作品などです。もちろん、いまのレベルのもので構いません。最初は深くなくてもいいのです。ひと通り終わったら、今度は関連書籍を購入します。1冊だけではなく、複数購入することです。それらを読んで自分の読みの甘さを自覚することで、教材研究の観点も身につくでしょう。
■指導の成果を著書として刊行
――学校管理職として若手教員と接する際に、最も留意しているのは。
その教員に応じた接し方をすることを心がけています。例えば、研究授業の事後評価であれば、「厳しくどんどん指摘して伸びる教員」もいれば、「2つほめて、1つ注意する」のが合っている人もいます。子どもと同様に、様々なタイプがありますから、「職員室の担任」(副校長)として、個々の接し方を変えています。
その際に役に立っているのがコーチングです。「では、学級のルールを確立するために、何をしたらいいでしょうか?」といった「未来質問」もよく使う手法です。一方的な指導ではなく、あくまでも本人が課題となっていることを自分で考えることが大切だと思っています。
――著書『「力をつける授業」成功の原則』(ひまわり社刊)には、若手教員が学ぶべき内容が数多く収載されていますが、最も強調したかった点は。
授業とは、一言でいえば「教えたい内容を、工夫した方法で指導し、子どもたちに力をつける場」ということです。授業に臨む教師は、「教える内容」「工夫した方法」を事前に準備し、結果的に「力をつける」ものにならなければいけないと考えています。
この本は、私自身が実践し、子どもたちに力をつけた指導の原則についてまとめたものです。特に1章の「授業の基礎技術」は、繰り返し読んでいただきたい。むろん、指導技術や授業スタイルも「これで完成」ということはないと思っています。
発問の原則を身につけて一定のレベルに達しても、教材や子どもたちが変われば、新しいものを作り出す必要が出てきます。
そういう意味では、あくまでも「現段階での授業論」です。私自身も継続して精進しようと思っています。
[4月22日]
国語好き育てる学級運営と授業づくり
「一読総合法」など様々な国語教育の実践研究・提唱に取り組んでいる児童言語研究会では、「楽しく力のつく国語の授業づくり」を掲げた今年度の国語セミナーを4月から開催している。東京都文京区の区民センターで行われた4月10日の第1回セミナーでは、元東京都東大和市立第一小学校教諭の白須富夫さんが講師となり、1年間を見通した学級運営と国語の授業づくりのアイデアを提案。全員が安心して意見を出し、相手の意見に耳を傾けることができるクラスづくりを視野に、あいうえおや早口言葉を織り交ぜた文章をみんなで音読する実践や、一読総合法による説明文の読みの事例などを示した。
■発言力を学級運営と授業の双方で
1年間をかけて行うこのセミナーでは、すべての子が生き生きと活動に参加できる読みの授業づくりや、音読・表現読みの力の高め方、説明文での読みの視点など、各地の実践者が持つ様々な国語授業の手法やアイデアを紹介しながら、参加者同士がスキルアップを図っていくことを目指している。
今年度の第1回セミナーには、小学校教員を中心に12人が参加した。学級開きを迎える中で、講師を務めた白須富夫さんは、「みんなの学び合いに向けて、それぞれの子どもが安心して意見を話すことができ、一人ひとりの意見をきちんと受け止められる学級づくりと授業づくりを大事にしたい」と自身の授業観を挙げ、「みんなで考える楽しさ」「知的好奇心の伸長」「学級での所属感」「発言する力」などを学級運営と授業の双方ではぐくんでいくための視点や技を示した。
■音声化する学びで集中力が高まる
国語好きを育てるための音読学習の例では、子どもたちは音声化する学びが好きだとして、五十音を絡めた文章を使った「あいうえおたいそう」という学習を説明した。参加者は、「あさひがのぼるよ アエイウエオアオ……」などの文を実際に音読し、全員またはパートごとの音読によって読みの力や学びへの集中力がはぐくまれることを確認していた。
また、「おあやや、親におあやまり……」などの文を使った「早口ことばで表現読み」では、仲間同士で早口読みを競わせたり、文章の意味をそれぞれに解釈させることで文章に親しめるようになったり、読解力を磨くことができるようになったりすることを学んでいた。
そのほかにも、状況に応じた声の大きさや出し方を明示した「声のものさし」の掲示によって、音声表現への意識をはぐくんだり、100字詰め原稿用紙を使った「ひとこと作文」で作文アレルギーを軽減し、考えを要約する力をはぐくむなど、他教科や学級活動にも生かせる数多くの技術を披露した。
■集団で読みの力を高め合っていく
後半は、同研究会が提唱する「一読総合法」を使った様々な文章の読みの学習を考えた。
一読総合法とは、一定の読み方を教え込むのではなく、個々の読みを集団で比較・検証しながら、読みの力を互いに高め合っていく学び。
トルストイの文学作品「たね」を題材にした学習例では、段落ごとの文章表現に子どもたちを着目させ、それぞれの意見を記述する展開によって、スモモを隠れて食べてしまったワーニャと、そのことに気づいたお父さんとのやりとりへの読みを深めた経過などを報告した。
また、地域のフィールドワークを絡めた説明文「イチリンソウ」の読みでは、実際の授業記録をもとに、一読総合法の1人読みと話し合いの流れを参加者が体験した。
文章前半の、イチリンソウの特徴を示した記述では、「白い花びらは『がく』であることを初めて知った」という意見が出る中、「『がく』が花びらの外側にあり、花を守る役目をしている」といった新たな知識や、「『がく』と書くと分からない子も多いから、みんなが分かるように花びらと書いたのだと思います」など、実際の子どもたちの記述から文章表現の見方が深まっていったことを参加者は実感し、それぞれの授業展開や発問の工夫に生かそうとしていた。
そのほかにも、文章のタイトルとなっている「イチリンソウ」に着目しながら、「葉っぱの中に一つしか花が咲いていないから、そう名づけられたのかな?」などと読みを深めていく「題名読み」の方法なども併せて紹介した。
学級づくりに向けた技では「人間電気リレー」という活動も報告。活動は、グループごとに男女混合の輪をつくり、スタートに合わせて相手の手を強く握って反応を次々に仲間に伝え合うというもの。ゲームを楽しみながら男女間のカベを取り除き、クラスメートとの相互信頼をはぐくむのに効果的だとして、学級開きで子どもたちの人間関係を築いていく際のウォーミングアップにもなると話した。
[4月19日]
姉妹学級で読み聞かせ
長野県富士見町立富士見小学校(渡辺文雄校長、児童数427人)では、「ふるさと・友を大切に自分を高め未来に夢を持ちがんばる富士見の子」という学校目標のもと、図書館教育では「心を豊かにし、自ら学び続ける子どもを育てる学校図書館」という目標を立て、それを具現化するために取り組んできた。また、どの学年・教科で、何をねらいに、どんな図書館資料を使って指導・支援をしていくか明確にするリストなどを作成している。
まず読書活動での取り組みとして、月・木曜日の朝に15分間の読書タイムを日課に位置づけている。どの学級も1人1冊用意して、時間いっぱい熱心に本を読む姿がある。クラスによっては保護者や担任による読み聞かせをしている。
春と秋には読書旬間を設けている。春は貸出の促進や利用指導に取り組み、秋は読書指導を中心に利用指導の深まりをねらっている。読書旬間中は朝読書の時間を毎日とり、読書に親しむ時間を確保している。
各クラスで多くの保護者による読み聞かせも実施されているほか、職員による読み聞かせも企画している。児童玄関前にどの教室でどんな本を読んでくれるか掲示し、そのポスターを見て子どもたちは、自分の好みのお話を聞きに行っている。
また、1年生と6年生、2年生と4年生、3年生と5年生ごとに姉妹学級を組んでおり、読書旬間中は姉学級の子どもたちが、妹学級の子どもたちに読み聞かせをする「ペア読書」を行っている。
姉学級の子どもたちは妹学級の友だちに喜んでもらいたいという相手意識をもち、様々な工夫を考えて実践していた。
そのほか職員からおすすめの本をポスターに描いてもらい、児童玄関前に掲示している。子どもたちの選書の幅を広げるきっかけとなっている。
保護者ボランティアによるお話会も学年ごとに企画し、子どもたちは、仕掛け絵本や紙芝居などに、目を輝かせて聞き入っていた。
図書委員会の活動は貸出をする当番活動のほかに、たくさんの人にきてもらえる図書館を目指していろいろな企画をしている。「本さがしゲーム」「○×クイズ」「パネルシアター」など楽しい企画に多くの児童が集まり、お話や図書館の分類に目を向けるきっかけになっていた。
「読書郵便」による子ども同士の本の紹介も、読む意欲を刺激しあう場となっている。
環境を整えることにも力を入れている。使いやすい書架の配置・配架はもちろん、本に興味を持たせるために、図書館だけでなく、廊下や図書館入り口付近に様々な掲示や展示をしている。
また、何を読んだらいいか迷っていたり、学年にふさわしい選書ができなかったりする子のために、諏訪教育会図書館教育委員が選んだ学年別おすすめ本リストを読書カードに付けている。
次に情報利用活動での取り組みとして、どの学年のどの教科において、何をねらいとして、どんな図書館資料を使って指導・支援をしていくか明確にするための「図書館利用指導体系」「育てたい情報活用能力」「各学年の図書館年間利用指導計画」「各学年参考図書リスト」を作成している。
この計画に沿い、全学年で図書館教育を行っていくために、職員研修の場を設定し、共通理解を図っている。
週1回、時間割の中に「図書館の時間」が割り当てられており、司書による本の読み聞かせや本の紹介を行っているだけでなく、調べ学習の時間としても利用している。また、情報活用のスキルを身につけるために、司書教諭による百科事典や年鑑の使い方の授業を行ったりしている。
富士見小学校では学校教育の中に図書館教育を位置づけ、全職員によって実践していることが大きな力となっている。(文責・宮坂文子司書教諭)
[4月15日]
ALTとの授業を効率化
英語教員が多忙なため、外国人英語講師との打ち合わせの時間が取れないことが多く、カリキュラムの連携と指導効率の向上が外国語授業の課題の1つとなっている。そんな中、この問題を解決する潟Zイガンスピークの「リンクインシステム」による公開授業がこのほど、日本学園中学校(谷川平夫校長、東京都世田谷区)で実施された。同システムの特長は、▽読む・聞く・話す・書くの4技能統合型の授業を実現▽日本人教員と外国人講師がカリキュラムを共有し連携して効率的に学習を進められる――などだ。同校講師のショーン・グリーン先生は、1年生のクラスで、同システムによる外国語授業を行った。新学習指導要領の重要事項である「言語活動の充実」を実現した授業だった。
公開授業の学習目標は「into」や「around」など方向性や場所を示す言葉のニュアンスの違いを理解するとともに、適切な表現ができるようになること。
同システムでは、日本人教員が日本語で学習内容を説明し、英語の発音などの練習をする。これを受け、次の授業で外国人講師が、前回学んだ内容を英語だけで指導する。
このとき、独自開発の教材が使用され、ネイティブな発音による英語表現が生徒にしみこむように、様々な場面や人物を設定したトレーニングが繰り返し行われる。
1単位時間に「読む・聞く・話す・書く」の4技能を取り入れ、テンポよく豊富な活動が進められるのが、同システムの特長の1つだ。
授業開始時には自らの表現に自信がみられなかった生徒もいたが、リズミカルに繰り返して発音し、英語活動に参加したことで、クラスのほぼ全員がニュアンスの違いに応じた表現ができるようになった。
同システムの教材は、日本の英語教育の現場を知るイギリス人、アメリカ人、オーストラリア人、日本人の英語教育専門家のチームによって研究・開発されたもの。
コミュニケーション・エンジニアリングに基づき、指導効率を上げるために、日本人教員が指導した学習内容を、ネイティブの指導者がさらに掘り下げるカリキュラム構成になっている。そのため、ネイティブの外国人講師と日本人教員が生徒の習熟度などについての情報を事前に打ち合わせしなくても、生徒の情報を共有できる。
Benesse教育研究開発センターが平成20年度に実施した「公立中学校における英語教育の実態と教員の意識」に関する調査によると、ALTが授業に参加する頻度は1クラスあたり「週1回程度」か「月2、3回程度」が多かった。授業中の指導方法は、90%の学校が「発音練習」「音読」「ペアワーク」「文法の説明・練習問題」などだった。教員の90%は「CDやテープなどの音声教材」「自作プリント」などを使用していた。
公開授業を行った同校の谷川校長は、「日本で一般的に行われている英語の授業では、国際的に通用するような英語力はつかないと感じ、導入した。日本の子どもに適したシステムだと思う」などと話す。
スティーブン・オーストウィック同社取締役社長は「このシステムは、日本人教員が多忙で、外国人講師との打ち合わせの時間も取れないという、私自身の体験もきっかけとなって生まれた。小学校では外国語活動が5・6年生で実施されている。このシステムは、中学校での導入にとどまらず、公立小学校での外国語活動でも効果を発揮するものだ。今後は、日本の学校で、社会科や数学の授業を英語で行う取り組みを進めていきたい」などと語った。
同校=〒156―0043東京都世田谷区松原2―7―34/рO3(3322)6331。
同社=〒140―0013東京都品川区南大井6―24―14/рO3(5493)8193。
[4月12日]
見て触って試して考える科学教育
「見て、触って、試して、考える科学教育を」と呼びかけて活動しているNPO法人体験型科学教育研究所(秋山仁理事長)はさきごろ、これからの体験型科学教育を考える第3回フォーラムを、東京都新宿区の学習院女子大学で開いた。国内外の学校での体験型科学教育の事例などが紹介され、マサチューセッツ大学ボストン校のアーサー・アイゼンクラフト特別名誉教授からは、実験によって四角形の中にある小円の面積を求める間接的測定の効果を実感させる報告などがあり、今後の授業のあり方についても活発な議論が繰り広げられた。
■実感を深めながら視野を広げる
フォーラムでは、体験とコミュニケーションの重視が謳われた新学習指導要領もにらみながら、アメリカの研究者の意見や各校での特別授業の取り組みの報告などを織り交ぜ、今後の体験型教育のあり方や子どもたちに伝えていきたいものなどを話し合った。
そのうち、アメリカの教育事情も織り交ぜ、体験型科学教育の意義などについて基調講演したアイゼンクラフト特別名誉教授は、「人は自分にとって必要性や関心が薄い問題については学びの意欲がわかず、学びも深化しにくい」と指摘。そのため「教師は、それぞれの勉強がなぜ必要なのかを子どもの関心に引き付けながら指導していく力がとても大事になる」などと語った。
その上で、授業づくりでは、「子どもたちがどのように世界を見つめているかを受け止めながらも、実験を通じて、異なる様々な視点を持たせてあげたい」と、子どもが実感を深めながら視野を広げていける展開が重要だとした。
そして、学んだことを子どもたちが様々な状況の中で活用していく力を育てることも、一人ひとりの学びの深化につながるとし、教師は「なぜこのテーマにこだわるのか」「この学習が子どもたちにどう役立つのか」「一人ひとりの子どもの人生にとってこの学習の重要性は何か」という点をもう一度意識しながら実践にあたってほしいなどと要望した。
講演の後半には、愛知県東海市立横須賀中学校で行った特別授業の様子などを紹介。同特別名誉教授が指導した授業では、物を直接計測する方法以外に、大きさを比例や確率によって測る間接的計測法を学ぶ実験を実施した。
生徒たちは、1円玉の円の面積を、この間接的計測法で求めてみる実験を体験した。紙にかいた50平方センチの四角形の中に1円玉の大きさをなぞった小円が9つ書かれており、そこに、目をつぶって鉛筆で50回、点を打つ。円内に点が付いた数と紙幅・エリアとの面積比較によって、1円玉の面積を割り出した。生徒たちは「へぇ〜!」と大いに感嘆したという。
またこれらの方法が、直接計測が不可能な原子核の大きさの計測に使われたなどと、20世紀初頭の科学者の知恵についても説明し、生徒の科学する心の視野を広げ、後押ししたと語った。
■興味津々を引き出す工夫を
このあと、様々な実験授業を提供するガリレオ工房を主宰し、同研究所の理事でもある滝川洋二東京大学特任教授が授業を報告した。
滝川特任教授は、レールの上を進む鉄球を粒子に見立て、温度の高低によるブラウン粒子の動きの違いを、磁石を挟んだ実験でモデル化して示した。
1つの鉄球を転がして止まっているもう1つの鉄球にあてる場合と、3つを2つにぶつける場合と、静止している4つの鉄球の衝突側に磁石を置いて1つの鉄球をあてる場合の実験について、それぞれ衝突後の鉄球の動きを生徒に予想させた。生徒たちは、磁石を挟んだ場合が最も勢いよく鉄球が飛び出す結果に興味津々だったという。
その後も、磁石を細かく砕き、粉状にしても磁力が働くかどうかを考えさせるなど、予想を膨らませながら、実験を楽しむ学習に取り組んだなどと話した。
■課題に向き合う科学者の姿から考えさせる
今後の体験型科学教育について話し合ったパネルディスカッションでは、同研究所副代表の松田良一東京大学准教授が「子どもたちには、各時代の科学的課題に当時の科学者がどう向き合ったのかを考えさせていくような授業が必要」と提言した。
また、秋山理事長は「単に勉強を教えるのではなく、勉強の仕方や楽しさを伝える学びを考えていきたい。五感を総動員しながら子どもたちの感動を呼べる授業を実現したい」などと抱負を述べた。
[4月8日]
言語活動を充実させ確かな学力
千葉市教育センターはこのほど、新学習指導要領の重要事項である言語活動の充実を通した「確かな学力の育成を目指す教科指導法に関する研究報告書」をまとめた。わかる授業を具現化する指導法の確立に向けた実践授業を行い、独自に全国学力調査B問題の追跡調査や意識調査を実施したところ、記述式の問題の正答率が向上するとともに、自分の考えを他者に伝えることへの抵抗感がなくなったなどの成果がみられた。全国学力・学習状況調査の結果をどのように活用すれば授業改善に結びつくのか、有用なモデルともなる取り組みとなった。
同研究は言語活動の充実について、(1)目的を持たせた言語活動を展開し言語生活を耕す(2)問題解決プロセスで考え表現する(3)学習プロセスでメタ認知活動を促す――の3つの視点で進められた。
具体的には、(1)については、言語活動を生活に生かすことを考え、言語活動を活動に組み込む(2)については、問題解決のプロセスで、説明する、論述するといった、考えを表現する言語活動を意図的に組み込む(3)については、複数のテキストを読ませ評価する活動を取り入れる、同じテーマで異なる意見を持つ他者と交流させる、学習の見通しを立て振り返る場を作る――といったものだ。
小学校5年生の国語に学習指導要領で新たに加わった「新聞を読む」の実践授業では、視点(1)を生かして、児童に「新聞の名解説者になり、ニュースを紹介する」ことを意識させた。見出しやリードなどの記事の読み方を学んだ後、2つの記事を読み比べ、同じ事実ついての扱いが、新聞によって異なることを学んだ。朝の会に、新聞記事を紹介するスピーチを帯単元として取り入れた。
算数・数学の言語を、言葉以外にも、数や式、図表、数学用語などを含むものとして、それらを使って考え、説明し、伝え合うという活動を言語活動ととらえた。児童生徒は自分の考えや問題解決のプロセスを算数・数学的表現を使って、例えばノートに図や式で書き、あいまいだった思考を整理して言語化する。
もう1つの重点を、グループや全体の場での考えの交流、その交流の中で有効な練り合いの場とした。
こうした取り組みにより、全国学力・学習状況調査時点の結果にどのような変化がみられたかについて、昨年4月と12月に、意識調査と記述式問題調査(B問題の追跡調査)を実施したところ、考えを他者に説明したり書いたりすることへの抵抗感が減少したほか、実践した学級では、式や言葉で説明する記述式問題の正答率が向上した。
このほか、ノートやレポート、作品における記述の評価や児童生徒の発言や感想の分析も行われ、児童生徒の学習意欲の向上がみられた。
報告書では、これらの実践の成果を受けて、確かな学力を育成する指導モデルを示した。このモデルでは、言語活動で身につけさせたい力を明確化し、学習の見通しをもって使わせたい表現・語彙を提示した。これは自力解決や、グループやクラス全体での意見交換、振り返りを通じて目標の達成に迫るものだ。
また、わかる授業を具現化する指導法として、(1)言語活動のねらいを明確にして単元を構成する(2)第1次でゴールを意識させ、見通しを持たせる(3)児童生徒に各プロセスでの振り返りをさせる(4)ノートやレポートに自分の思考過程を書かせる(5)意見交流の場を共感、共創の場にする(6)国語科と各教科の相互連携を図る(7)身につけた日常を生かす場をつくる(8)言語活動の基盤を充実させる――の8つのポイントを提言した。
[4月1日]
子どもの言いなりの親困ります
いわゆる「モンスター・ペアレント」の予備軍が幼稚園でも問題になっていることが、このほど国公立幼稚園長会(会長・岡上直子東京都練馬区立光が丘さくら幼稚園長)が実施した規範意識に関する調査結果から分かった。それによると、「保護者への対応で教員が困難を感じていること」の回答では、約50%が「(保護者が)子どもの言いなりなってしまっている」と答え、どの勤務年数の教員も困難だと感じていた。また、幼稚園では鬼ごっこやゲームなどルールのある遊びを通して規範意識を育てようとしているが、その意図への保護者の理解が低いことが課題とされた。
調査は昨年10〜11月、全国の教員1200人、保護者3000人、地域関係者800人を対象に実施された。
このうち、教員が対応に困難を感じている保護者の姿勢は、(1)子どもの言いなりになってしまっている(2)わが子の非を認められず、相手を攻撃する(3)わが子に対して「よい子」であることを過剰に求める(4)すべて幼稚園でやってほしいという依存的な態度が目立つ(5)子ども同士のけんかを子ども同士に任せておけず、保護者が頻繁に口を出す――の順に多かった。
特に、「(保護者が)子どもの言いなりなってしまっている」と答えた教員は約50%に上り、どの勤務年数の教員も、この点を困難と感じていたことが分かった。
「学級での規範意識を培うための取り組み」(3つ選択)の回答は、(1)時には葛藤や失敗も経験させながら子ども自身が規範意識の大切さに気づくようにする(2)自分の考えを主張するだけでなく、相手の視点からも考えられるよう仲介する(3)教師は子どもの心のよりどころとなるよう受け止める(4)学級の決まりやルールについて学級全体で確認し、子どもたち同士で守れるようにする――の順に多かった。
これらの回答を勤務年数別に見ると、(1)は15年以上の教員に多く、(3)(4)は5年未満に多かった。選択肢のうち「親子で遊ぶ活動を取り入れ、親子の絆を深める」とした回答は最少だった。
「規範意識を培うための取り組みは大切だと思うが実践できていない理由」(当てはまるものすべて選択)の回答では、「計画的に指導することが考えにくい」が最多で勤務年数別では20年以上の教員に多かった。
2番目に多かったのは「大切だと思うけれど何をどうしてよいか分からない」で、5年未満に多かった。3番目は「指導するきっかけが見つからない」だった。
一方、教員・保護者・地域関係者の三者が回答した項目をみると、「しつけで困難だと思うこと」の回答で三者すべての割合が高かったのは、「素直に非を認められず言い訳をしたり、謝れなかったりすること」「悪いことでも友だちに引きずられてやってしまうこと」「注意されても、していることをやめようとしないこと」などだった。
「大人の見ていないところでやってはいけないことをしてしまうこと」を挙げたのは教員が51.4%、地域関係者が29.8%、保護者が22.5%で、意識の違いが大きかった。
「子どもの規範意識を培うための有効策」については、「家族とのふれあい」「手伝いや当番」「グループ活動」が多かった。この有効策について三者間で差が大きかったのは「鬼ごっこやゲーム」で、教員の25.8%がこの“遊び”を規範意識の醸成と位置づけているのに対して、そう思っている保護者は6.1%、地域関係者は8.1で、教育者側の意図や意識との隔たりが目立っていた。
同協会では「理屈で伝えるよりも、鬼ごっこやゲームなどのルールのある遊びの体験が規範意識を培うことにつながっている。このことが保護者に理解されにくいことが分かった」などと分析している。
[3月29日]
人権教育で人とかかわり合う力
東京都の人権教育プログラムを生かし、外国人や障害者、HIV感染者というテーマで人権教育に取り組んできた東京都東久留米市立小山小学校(鈴木啓一校長)が、さきごろ研究発表会を開き、今年度の実践成果を報告した。研究では、人権尊重の正しい理解と豊かな心をはぐくむことを視野に、仲間同士や異学年、地域など、様々な人々とコミュニケーションし合う学習を設定。学んだことを自分が置かれている環境や生活に置き換えて思考したり、様々な人とかかわり合う力を培おうとした。
■体験から問いが生まれ心に入っていく
授業では、視覚障害者への質問などを通して交流を深める3年生の総合的な学習と、電車内で出会った視覚障害者への手伝いを題材にした教材文から、障害者への思いやりや親切について考える4年生の道徳が公開された。
そのうち、川端真喜子、並木勝啓両教諭のTTによる3年生の総合的な学習「共に生きる」は、児童らが視覚障害者と交流を図ることで、障害のある人の生活の様子を理解したり、その気持ちや願いに気づいていくことをねらいにしたもの。そのため、授業には地域の視覚障害者をゲストティーチャーに迎え、児童が様々な質問をしたり、折り紙指導を受けたりするなど、様々な交流の機会を設定した。
冒頭、病気で徐々に視力を失っていったいきさつを語ったゲストティーチャーの大塚さん。自らの境遇を嘆き、高校時代には絶望の中で泣き暮らす毎日を送っていたと話すが、ある時、ラジオ放送で点字やマッサージの技術を学べる学校を知り、徐々に技を磨いていく中で、人生への希望を抱けるようになったなどと、これまでの人生の一部を丁寧に語っていった。
そんな大塚さんの経験に真剣に耳を傾けていた児童らは、その後、前時のアイマスク体験などを振り返りながら、視覚障害者の生活上の苦労や、こんなことが改善されればという点を知ろうと、大塚さんに次々に質問をしていった。
自身のアイマスク体験から、階段の昇り降りが怖かったと振り返る児童は、大塚さんに「階段が怖くないのですか?」と質問。すると、大塚さんは「よく使う駅の階段などは段数を覚え、体に降りる感覚を覚え込ませているので、階段の始まりと終わりだけを杖で確認したら、後は問題なく降りられます」などと回答。
一方で、ありがたい支援のあり方として「階段の長さや段数を具体的に話してくれるとありがたいですね」などと話し、児童らはそんな声を聞くことで、視覚障害者の状況と思いをより深く理解し、具体的な支援についても学ぶことができたようだった。
その後は、大塚さんから普段の生活で使っている様々な生活道具を紹介してもらったり、特技である折り紙を指導してもらったりした。
折り紙は、もともと絵が好きだった大塚さんが絵の代わりとして取り組み始めたもの。いまでは折り紙によって自由な作品を限りなく創り出せることに大きな喜びを感じていると語り、複雑な折りの手順を一つひとつ見せ「ハートのトチ袋」の完成を目指した。児童らは、目が見えない大塚さんが的確な指示を出していることに驚きながら、有効な助けを受けて、次々に折り紙を仕上げていった。
最後に、大塚さんの人生の、これまでの努力を見習いながら、障害者の願いをくみ取った支援や、懸命に生きることの大切さなどを、児童らは語っていた。
■コミュニケーション力磨き自分の痛みとして実感する
東京都の人権教育プログラムを活用したこの研究では、「自分らしく学び、伝え合う子どもの育成」を主題に、児童に様々な人とかかわらせる中でコミュニケーション力を磨き、多様な背景をもつ人々への正しい理解と共感の心をはぐくもうとした。
そのため、友だちや異学年、地域など、多様な人々との交流による学びの機会を豊富に設けているのが特長で、低・中・高学年ごとに、外国人、障害者、HIV感染者等、の3テーマを設けて、あらゆる教科を絡めた系統的な学習展開を図っている。
「HIV感染者等」をテーマにした高学年の取り組み事例では、道徳の中で新型インフルエンザ感染者の受けた偏見や差別を新聞記事などで理解するとともに、それらの状況を、疑似体験で実感する学習などを実施した。
体育では、HIV/エイズについての正しい理解を踏まえ、偏見や差別をなくすために、一人ひとりに何ができるのかを考えさせた。
そのような学びの結果、児童が、具体的な事実から偏見や差別をとらえられるようになったり、偏見や差別を受ける人の気持ちを自分の痛みとして実感できるようになったりするなどの成果が見られるようになったという。
[3月22日]
ことわざで日常生活の1場面を表現
「言葉の学び手が育つ国語教育の創造」を継続テーマに、今年度の研究に取り組んできた東京都小学校国語教育研究会(会長・邑上裕子新宿区立落合第四小学校長)が2月26日、落合第四小学校で研究大会を開いた。今回は、子どもたちの言語生活に根差した単元開発や、基礎・基本を踏まえた活用力を培う指導の工夫を柱に、5部会(聞く・話す、読解読書、作文、書写、言語)で、授業と教材開発のあり方を討議し、同校での公開授業も行った。3年1組では、日常生活の1場面を、ことわざや慣用句と結び付けながらクイズにする授業を行い、仲間同士の出題などを通じて、ことわざや慣用句に親しむ展開が行われた。
■言語感覚などを磨く授業を展開
同研究会では、継続テーマについて7年間、追究してきた。研究では、3年1サイクルで、(1)単元構成(2)学習過程(3)指導と評価――という各観点の考察を深め、今年度は特に、新学習指導要領が示す「習得→活用→探究」に注目し、副主題に「児童自らが習得し、活用することを促す単元の開発と指導の工夫」を設け、言語の基礎基本的な知識・技能の習得と、それを有機的に活用する単元開発や指導の工夫を探っていこうとした。
研究にあたっては、(1)聞く・話す=筋道立てて考え自己実現を図る話し合いの指導(2)読解読書=児童自らが読む力を習得し活用する単元の開発と指導の工夫(3)作文=言語生活に根ざした書き手が育つ学習指導の工夫(4)書写=めあてをもち主体的に学ぶ力を育てる書写指導(5)言語=言葉への関心を高め言語感覚を磨く学習指導の展開――の5研究部会ごとにテーマを設け、実生活で生きて働く言語能力の習得とそのための具体策を考察していった。
そのうち、聞く・話す部会では「筋道立てて考え、自己充実を図る話し合いの指導」を目標に、生活に生きる単元開発と指導の工夫を考えた。
例えば、付箋紙を生かした話し合いボードの利用では、現状と解決策の関係を押さえながら、比較・整理する思考を高めることができたという。ほかにも、子どもたちが日ごろ知りたいと考える話題を取り上げて「アイデア事典」にまとめさせる学習では、事典を生かすことで、子どもたちの話し合いの意欲が高まったり、普段の生活に生かす状況も作り出せたりしたなどの成果があったという。
また、今年度の重点課題として、伝統的な言語文化に親しむための単元開発と指導の工夫に取り組んだ言語部では、やさしい文語調の短歌や俳句、さらに情景が想像しやすい万葉集などを学習材として使う工夫を進めたほか、物語の読み比べなどを通じて、子どもたちに古典の内容や表現の違いに気づかせ、言語感覚を磨いていく指導を図ったなどとした。
■クイズづくりで楽しく学ぶ
会場校の落合第四小学校では、各学年・クラスで公開授業が行われた。そのうち、言語研究部による3年1組の授業では、西田佳子東京都文京区立汐見小学校教諭と佐藤泰子落合第四小学校教諭がTTで、子どもたちが日常生活の1場面を取り上げながら、それをことわざや慣用句で適切に表現したクイズづくりを楽しむ学習を展開した。
この授業では、クイズ問題づくりを通して、子どもたちがことわざや慣用句の意味を日常生活に結び付けて考える力をはぐくもうとした。
そのため西田教諭は、冒頭に自校の子どもたちが作ったことわざクイズを見せたり、「ことわざってどんなもの?」と確認しながら、児童のやる気を奮い立たせ、さらに、子どもたちがこれまで収集してきた新聞の切り抜きや、「ことわざ集めカード」などを振り返らせ、それぞれのクイズづくりを励ます支援を進めていった。
そんな励ましを受けて子どもたちは、自分の選んだことわざや慣用句を前に、改めて辞書で意味を調べたり、友だちと確認し合ったりして問題を次々に作成した。
「頭隠して尻隠さず」を使った問題を作った児童は、「かくれんぼをしている時に、木にかくれたけど、かげから少し自分のすがたが見えてしまいました」というエピソードを問題として設定。また、水族館にアシカショーを見にいった際、妹がショーよりもお菓子を食べることに夢中だったことを出題し、仲間からの「『花よりだんご』だ」の答えに「正解」とうれしそうに答えた児童もいた。
また、問題づくりの中では、問題(日常生活の出来事)と答え(該当することわざや慣用句)を考えるのはもちろん、その答えとなることわざや慣用句の「意味」についても記述させるようにし、クイズを行いながら、ことわざや慣用句の確かな習得を図る工夫も忘れないようにしていた。
[3月18日]
学校林での体験が探究的学びに
学校敷地内の自然を生かした体験学習などで様々な人とのかかわりや一人ひとりの子どもの気づきを深める生活科・総合的な学習に取り組んできた東京都日野市立旭が丘小学校(中島和夫校長)が2月25日、公開研究会を行い、これまでの成果を発表した。研究は、体験活動を充実することで子どもたちが主体的に課題を発見し、探究する力を発達段階に応じて養おうとしたもの。その際、子どもたちの気づきを大事に探究的な学びにつながる学習プロセスを探ったり、様々な教科と関連した指導計画づくりにも工夫を凝らした。4年生の総合的な学習では、雑木林での炭づくり体験などを振り返り、昔の生活の知恵に理解を深めたり、炭の様々な側面を下級生に伝える力を磨く授業などが行われた。
■「伝える」ための工夫を練る
この日、公開された4年生の総合的な学習は、単元「雑木林に親しもう〜3年生に炭のことを伝えよう」と題したもの。
この単元では、身近な自然を生かした体験学習の充実を目指して、地域の人たちや異学年とのかかわりを盛り込むことで、子どもたちが相手と目的意識を持って豊かなコミュニケーション力、探究心をはぐくめるようにすることをねらった。
池本憲昭教諭が指導する4年3組では、単元中盤部の授業として、子どもたちにこれまで体験した雑木林での炭づくりを振り返らせながら、グループ討議で、下級生に伝えたい炭についての発表内容や方法を見いださせようとした。
話し合いでは、雑木林での探索やゲストティーチャーに学んだ炭づくりの知識などをもとに、それぞれの子どもたちがよいアイデアを出そうと頭をひねった。
一方、グループの話し合いでは、進行係や記録係などを置くようにして、「話題性はどうかな?」「意見を整理し、話が逸れたら元に戻そう」などの視点を意識しながら、実りのある意見交換を実現しようと努めた。
その結果、「炭焼きで食べ物がおいしくなる秘密」や「炭からできるもの」など、テーマに沿ったたくさんの発表内容や方法が提案されたが、同教諭はその際も、「3年生に興味を持ってもらうということを忘れないようにね」などとポイント指摘し、話し合いの目標を子どもたちに確認させるきめ細かい支援を図っていた。
そんな話し合いを経て、「炭焼きで食べ物がおいしくなる」を取り上げたグループでは、科学的な根拠については「調べるのは難しそう」と思い悩む様子も見られたが、「炭でおいしく○×ゲーム」と名づけたクイズや、パワーポイントによる簡易なアニメを盛り込むなど、発表内容については下級生を見据えた工夫を数多くしていた。
また、「炭からできるもの」を考えたグループでは、炭から「石鹸がつくれる」「きれいな水が作れる」ことを教えてあげたいとし、炭からつくれるものについてクイズなども交え、下級生に発表したいなどと、同じく下級生の様子を視野に様々なアイデアを提案していた。
■雑木林が他学年や地域の人との交流の場に
このような授業づくりの背景として、同校では昨年から、「自然や人とのかかわりを大切にして自ら学ぼうとする児童の育成」を主題に生活科・総合的な学習の研究に取り組み、子どもたちが地域の自然や人と意欲的にかかわるための地域教材の開発、他教科と関連した探究的な指導内容、計画づくりを模索してきたことが挙げられる。
その際、学校の特色に着目し、同校敷地内にある雑木林などを自然体験の場や地域人材との交流の場として生かすことを大事にした。そして、子どもたち一人ひとりの学習意欲や課題意識を高めるため、仲間や異学年、地域の人たちとの交流学習を発達段階に応じて数多く設定し、気づきと発見の質を高めていきたという。
そのため、低学年では「自然や人にときめき、ひらめき、感じる心の育成」を目標に、雑木林での体験学習を毎週水曜日に位置づけ、発見や表現の力を養おうとしたほか、様々な人と進んでかかわったり、かかわりを大切にする力などをはぐくもうと、2年生が1年生を楽しませる出店を工夫する「おもちゃランド」の活動などを設定した。
中学年では「自然や人に親しみを持って調べる児童の育成」を掲げ、年間を通して、雑木林に親しんだり、インタビューなどで人とかかわる活動などを行った。その際、(1)課題設定(2)情報収集(3)整理分析といった学習手順を意識させる工夫や、自分の学習課題を持って追究する力と、自分と異なる意見を聞いてグループでまとめる力の双方を育てた。
高学年では「広げて考える児童の育成」として、地域の自然に触れたり、幼・保育園児と交流する学習などを実施。6年生と1年生が雑木林での体験を共有しながら、6年生が四季の雑木林の発見を新聞にまとめて1年生から感想を得るという授業などを行い、互いにかかわっていく力や相手の反応から課題探究を深める力などを相互に高めようとしたことなどを報告した。
[3月15日]
授業のアイデアや指導スキルを磨く
教員同士が交流を深めながら、ライブ感あふれる授業・教材講座で指導スキルを磨く「教師みらいプロジェクト」(フューチャー・ドリーム子どもサポート研究所主催)が2月13日、横浜市教育会館で行われ、各地から参加した教員が研鑚を深めた。漢字学習と音読を取り上げた講座では、部首が分かりにくい漢数字をもとに学びを広げたり、表現された情景を心によく感じながら音読したりするポイントが指摘され、「クラスづくりによって学び合う文化を」との視点が強調された。
同研究所では、各地の教員が日々の実践から見いだした授業や教材づくりのアイデアを定期的な講座を通じて提供している。
今回は、世代に応じた教員の主張の場や、各講師が練り上げてきた授業の技を、実際の授業展開を再現しながら学んでいく講座などを行い、実践的な指導力を高めるために役立ててもらおうとした。
群馬県富岡市立一ノ宮小学校の大谷雅昭教諭の体験的実践講座では、小1・小2プロブレムや、中・高学年での学級崩壊などの課題を踏まえ、低学年のうちに、子どもたちに学校で学ぶことの楽しさを教え、授業で一人ひとりの居場所を作ってあげることが重要と指摘し、個と学級をまるごととらえながら、子どもたちが自ら育っていくための授業の技と考え方を提案した。
その際、子どもたちを見る視点として同教諭は、研究課題などを軸にした詳細な分析(ミクロの視点)や、学期ごとの変化をみつめる評価(マクロの視点)だけでなく、日々の子どもたちの学びや学級集団の様子をつぶさに見つめる中で、子どもが成長に向かうターニングポイントをとらえていく「潮目を読む力」を大切にしていこうと強調した。
■漢数字「四」の部首ってな〜んだ?
◇興味を高めて学び合う−クラスづくりで学び合う文化を◇
大谷教諭は授業講座で、子どもたちが小学校生活に慣れ、新出漢字の数も増えてくる2学年時の指導を重視したいとし、この時期の子どもたちに、学びの自信と意識を育てるためとして、漢字や漢文を使った音読学習を提案。
実際に参加教員と声を合わせながら、指導のエッセンスについて理解を深めてもらおうとした。
同教諭はまず、音読で大切なこととして、(1)大きな声で読む(2)正しく読む(3)心を込めて読む――の3つを指摘。その上で、新出漢字を次々に読む練習や、漢字の書き順や部首、字源などに着目しながら、クイズを織り交ぜて仲間とのやりとりを活性化する指導例などを提案していった。
そのうち、漢字の部首を考える学習例では、「『四』という漢字の部首は何かな?」などと同教諭が質問。参加教員からは「『一』かな?」などの意見が挙がる中で、「正解は『口』です」と、一見しただけでは、部首が分かりにくい漢数字を出題することで、仲間と試行錯誤しながら、漢字の構成を楽しく学んでいける知恵などを伝授した。
そして、子どもたちの学習参加を促す技として、某クイズ番組をまねた「ファイナルアンサー?」との声かけをしたり、「間違っていることを言えることも大切!」などと、子どもたちに発表の勇気を持たせ、様々な思考を促すための工夫についても説明を加えた。
そのほかにも、国語教科書の「ふきのとう」(光村図書・小2)を例題に、情景を感じ取りながら文章を読む力を高める音読指導についても紹介した。
最初に、参加者がそろって一通り音読をした後、同教諭は、この文章冒頭の「よが あけました」では、「夜が明ける時は、もう少し静かではないかな?」と指摘。続く、竹藪の葉が「さむかったね」「うん、さむかったね」と語り合うシーンでは、「もっとしみじみささやいている様子では?」などと、文章の描写を意識しながら、それぞれの情景にふさわしい読みができるよう、声かけのポイントを示していた。
また、教科書の表記に着目した読みでは、本文より大きな字で書かれているタイトルなどに着目して「タイトルは本文より字が大きいね。この部分ははっきりと大きな声で読もう」などと話し、具体的な読みの視点と意識を高めるコツなどを挙げていた。
最後に一連の指導の目的について、「声を出すことで元気が出る。そんな元気の相乗効果が高まるクラスづくりによって学び合う文化をつくっていくことが大事」などと語りかけた。
[3月11日]
年間時数を確保する取り組み
中学校で新学習指導要領が全面実施になる平成24年度からの、年間授業時数1015時間プラス余剰25時間を確保する東京都多摩市の取り組みが、このほど、東京都千代田区立神田一橋中学校で実施された「学校経営実践研究発表会」(主催・東京都中学校清和会)の中で発表された。三浦純幸多摩市立多摩中学校主幹は今年度の取り組みから、新型インフルエンザなどによる学級閉鎖があったにもかかわらず、ほぼ予定どおりの授業時数が実施できたことのほか、基礎学力の定着がみられ、道徳の新たな内容項目の実施が可能になったことなどを報告した。
三浦主幹によると、同市では平成20年度から、新教育課程検討委員会を設置して新学習指導要領の全面実施に向けた検討を進めてきた。この中で24年度には年間授業時数1015時間プラス余剰25時間を確保する方針が出された。
同校では昨年度の実績を踏まえて今年度、(1)週28コマで年間1040コマ以上・1030時間の実施を目標にした(22・23年度は段階的に増やし、1055コマ・1040時間以上の実施を目指す)(2)年間授業時数だけでなく、各教科時数も24年度並みに実施する。段階的に増えていく教科については「学校選択」の形をとり、授業内容や持ち方を早い段階から各教科で検討していく(3)学校行事の精選は、これまで行ってきたため、できる限り現行のままの学校行事を実施してきた。
平成19年度以降の同校の授業日数の確保の方法は、開校記念日と都民の日を通常授業とし、20年度には振り替え休日を取らない土曜授業を2日(「学校公開と学校説明会」を計2日)設定した。今年度には振り替え休日を取らない土曜授業を4日(「学校公開と1年保護者会」「美化活動、終業式、学活」「学校公開と学校説明会」の計4日)設定。来年度には、振り替え休日を取らない土曜授業を5日(「学校公開と1年保護者会」「学校公開とPTA親睦会」「学校公開と学校説明会」「学校公開と道徳地区公開授業」を計5日)設定した。
授業時数を確保するため同校では、(1)文化祭前7日間、運動会の昼の練習実施日3日間、学期の初めと終わりの12日間などにより毎年「45分授業の実施日数を同様に行う」(2)テスト日数は、1学期末テストの3日間と2学期中間テストの2日間、期末テストの3日間、学年末テストの2日間とし、1校時は授業を実施した。テスト最終日は、給食後に一斉委員会の日を設定した(3)運動会の学年練習や全校練習の回数を減らすために、朝練習で学年種目、昼練習で縦割り種目、放課後練習で個人種目の練習を行った。各練習は3回ずつ実施した(4)2・3学期の始業式には3時間授業、終業式には2時間授業を実施した(5)総合的な学習の時間を29コマ目と考え、35時間分を時間割に組み入れず、実施した。
この時間には、1年生の職場訪問4時間と事前事後学習6時間、2年生の職場体験5日間など、3年生の修学旅行関連の20時間や先人に聞く会など、全校の活動として地域環境学習など――が、ぞれぞれ盛り込まれた。
これまでの取り組みを通して、▽新型インフルエンザで学級閉鎖があったものの、ほぼ予定どおりの授業時数が実施できた▽学校評価の教員アンケートで教員からの改善を示唆した意見はまったくなく、来年度に向けての意識が高まった▽学校選択を行った教科では演習的内容が多くなり、基礎学力の定着がみられ、習熟度が高まった。新学習指導要領の指導内容を見据えた授業が実施できた▽道徳の新しい内容項目の「感謝の心」が実施できた――などの成果がみられた。
一方、課題点としては「振り替え休日のない土曜授業」の実施日数とその内容の検討などがあげられた。
[3月8日]
移行措置2年目の課題でシンポ
新教育課程の実現に向けての課題は何か――。財団法人総合初等教育研究所は2月20日、国立オリンピック記念青少年総合センターで第13回教育セミナーを開催した。「新しい授業づくりと評価をめぐって」と題するシンポジウムを行い、移行措置2年目に向けて「時間の確保がカギ」などと課題などが指摘された。
シンポジストは、安彦忠彦早稲田大学教授、清水静海帝京大学准教授、向山行雄東京都中央区立泰明小学校長(全国連合小学校長会長)の3氏。コーディネーターは北俊夫国士舘大学教授。
小学校では、新学習指導要領の正式実施が平成23年度となり、移行措置は22年度が最終年度となるが、安彦教授は「この1年間の移行措置の実践を振り返れば、問題を発見できるはず。その解決の見通しをつけることが23年度の実践に望まれることだ」とした。
具体的なポイントとしては、(1)授業時数の確保が適切にできたかをチェックする(2)新しい教科内容の吟味、教材研究・開発の推進――の2点をあげるとともに、「言語活動と結びついた活用型学習のあり方の研究が目玉となるだろう」と指摘した。
続いて向山校長は、3点の課題に言及。「教育内容が増え、指導時数も増える。この中で子どもと向き合う時間、また教師が指導力を高めるための研修の時間が的確に確保できるか」「新教育課程の趣旨を理解するために、学校管理職はチェックポイントを示した点検シートなどを開発して自校の教職員に実施するべきである」「予算の制限がある中で、教材、教具をどれだけ整備することができるか」などをあげた。
清水准教授は、移行措置期間中に、取り組まなくてはならないことばかりに目を向けすぎると、視野が狭くなってしまうことが危惧されるとして、「教育活動に必要なことすべてに、広く目を向けることが、いまあえて大事」と強調した。さらに、若い教師は教育内容が増える経験がないことから「平成12年度以前に教職に就いた教師を、いかに生かすかがカギ」とした。
[3月1日]
言語力で道徳的価値の自覚へ
「新教育課程に基づく新しい授業づくり」を主題に実践研究に取り組んでいる財団法人総合初等教育研究所は2月20日、国立オリンピック記念青少年総合センターで第13回教育セミナーを開催し、その成果などを報告した。国語、算数、理科、社会、道徳の5分科会が開かれ、それぞれ「言語力・活用力を伸ばす」ことを目指した実践研究が発表された。道徳分科会では、表現活動を取り入れた指導などについて協議が行われ、言語力を伸ばすことが道徳的価値の自覚につながるとされた。
■「包み込まれ感覚」を育てる実践を
道徳分科会の研究発表は、長谷徹東京家政学院大学教授、関祐一東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、茂呂佳江東京都江戸川区鎌田西小学校教諭、齋藤道子東京都文京区誠之小学校主任教諭が担当した。
「働く楽しさ・役立つ喜び」をテーマにした小学校1年生の道徳教育、自分の思いを表現し、相手の思いを理解する2年生の授業、子どもの心に響く感動的な資料を創造し活用した3年生の授業の実践が報告され、かかわりの中で自己の生き方についての考えを深める取り組みの重要性、特に自尊感情をはぐくむ実践で「包み込まれ感覚」(自分の身近にいる人が自分を温かく包み込み、愛してくれているという感覚)を確立していくことが、個の道徳性の発達に有効であることが示された。
また、言語力・活用力を伸ばす道徳授業の工夫・改善のポイントとして、(1)状況に応じた自分なりの考え方・感じ方がもてる(2)友だちの考え方・感じ方を受け入れることができる(3)友だちの考え方・感じ方と自分の考え方・感じ方との異同が考えられる(4)友だちの考え方・感じ方との異同を考えるとともに、自分なりに取り入れることができる――の4つがあげられた。
こうしたポイントを道徳授業に生かす場合の授業展開の工夫については、「話し合いを中心にした授業=“書く”ことよりも“発表する”場面が多くなる」「指導者や子どもたちとの単発的なやりとりではなく、子どもたち相互の話し合いが続く授業=1人の子どもの発言をもとにして、発言が発展していく授業。『賛成です』『反対です』『付け加えます』という発言が出る授業」「発問を絞り、子どもたちの発言の機会を多くする=基本的な発問は2〜3程度の絞り、発言の機会を多くするとともに、じっくりと話し合いの時間を取る」ことが求められる点が指摘され、特に学級経営の重要性が強調された。
■言葉の能力を生かした道徳で
発表に続いて、文部科学省の赤堀博行教科調査官が講評と、道徳教育と言語力の育成についての講義を行った。
道徳教育で重視される自分自身、他者、自然や崇高なもの、集団や社会との「かかわり」においては、その媒介を務めるのは言葉であり、道徳教育を進めるに当たって言語の果たす役割は極めて大きいと考える赤堀調査官は、「具体的な指導は言語を媒介として行われる。児童自身が自らの生き方を多面的に考える場合には、豊かな言語力が求められる」「言葉はコミュニケーションや感性、情緒の基盤であり、道徳の時間においても言葉を生かした教育を配慮しなくてはならない」などと述べた。
道徳の時間の指導については、「資料の内容や登場人物の感じ方や考え方を考える」「友だちの考えを聞いたり、自分の考え方を伝えたり、話し合ったり、書いたりする」「ねらいとする道徳的価値にかかわる様々な体験を通して感じ、考えたことを、言葉を用いて生かし合ったりする」など、言葉の能力を生かして学習に取り組ませることが重要であるとした。
道徳の時間での表現活動を取り入れた指導として、話し合い、書く活動、板書、説話を取り上げ、それぞれ工夫点を説明するとともに、「道徳の時間は言語力を高めることを目指すものではないが、これらの指導を展開することにより子どもたちの言語力の高まりが期待できる。このことが、道徳的価値の自覚および自己の生き方についての考えを深めることにつながる」と有用性を強調した。
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