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[3月8日]

移行措置2年目の課題でシンポ

 新教育課程の実現に向けての課題は何か――。財団法人総合初等教育研究所は2月20日、国立オリンピック記念青少年総合センターで第13回教育セミナーを開催した。「新しい授業づくりと評価をめぐって」と題するシンポジウムを行い、移行措置2年目に向けて「時間の確保がカギ」などと課題などが指摘された。
 
 シンポジストは、安彦忠彦早稲田大学教授、清水静海帝京大学准教授、向山行雄東京都中央区立泰明小学校長(全国連合小学校長会長)の3氏。コーディネーターは北俊夫国士舘大学教授。
 小学校では、新学習指導要領の正式実施が平成23年度となり、移行措置は22年度が最終年度となるが、安彦教授は「この1年間の移行措置の実践を振り返れば、問題を発見できるはず。その解決の見通しをつけることが23年度の実践に望まれることだ」とした。
 具体的なポイントとしては、(1)授業時数の確保が適切にできたかをチェックする(2)新しい教科内容の吟味、教材研究・開発の推進――の2点をあげるとともに、「言語活動と結びついた活用型学習のあり方の研究が目玉となるだろう」と指摘した。
 続いて向山校長は、3点の課題に言及。「教育内容が増え、指導時数も増える。この中で子どもと向き合う時間、また教師が指導力を高めるための研修の時間が的確に確保できるか」「新教育課程の趣旨を理解するために、学校管理職はチェックポイントを示した点検シートなどを開発して自校の教職員に実施するべきである」「予算の制限がある中で、教材、教具をどれだけ整備することができるか」などをあげた。
 清水准教授は、移行措置期間中に、取り組まなくてはならないことばかりに目を向けすぎると、視野が狭くなってしまうことが危惧されるとして、「教育活動に必要なことすべてに、広く目を向けることが、いまあえて大事」と強調した。さらに、若い教師は教育内容が増える経験がないことから「平成12年度以前に教職に就いた教師を、いかに生かすかがカギ」とした。



[3月1日]

言語力で道徳的価値の自覚へ

 「新教育課程に基づく新しい授業づくり」を主題に実践研究に取り組んでいる財団法人総合初等教育研究所は2月20日、国立オリンピック記念青少年総合センターで第13回教育セミナーを開催し、その成果などを報告した。国語、算数、理科、社会、道徳の5分科会が開かれ、それぞれ「言語力・活用力を伸ばす」ことを目指した実践研究が発表された。道徳分科会では、表現活動を取り入れた指導などについて協議が行われ、言語力を伸ばすことが道徳的価値の自覚につながるとされた。
 
■「包み込まれ感覚」を育てる実践を
 道徳分科会の研究発表は、長谷徹東京家政学院大学教授、関祐一東京学芸大学附属世田谷小学校教諭、茂呂佳江東京都江戸川区鎌田西小学校教諭、齋藤道子東京都文京区誠之小学校主任教諭が担当した。
 「働く楽しさ・役立つ喜び」をテーマにした小学校1年生の道徳教育、自分の思いを表現し、相手の思いを理解する2年生の授業、子どもの心に響く感動的な資料を創造し活用した3年生の授業の実践が報告され、かかわりの中で自己の生き方についての考えを深める取り組みの重要性、特に自尊感情をはぐくむ実践で「包み込まれ感覚」(自分の身近にいる人が自分を温かく包み込み、愛してくれているという感覚)を確立していくことが、個の道徳性の発達に有効であることが示された。
 また、言語力・活用力を伸ばす道徳授業の工夫・改善のポイントとして、(1)状況に応じた自分なりの考え方・感じ方がもてる(2)友だちの考え方・感じ方を受け入れることができる(3)友だちの考え方・感じ方と自分の考え方・感じ方との異同が考えられる(4)友だちの考え方・感じ方との異同を考えるとともに、自分なりに取り入れることができる――の4つがあげられた。
 こうしたポイントを道徳授業に生かす場合の授業展開の工夫については、「話し合いを中心にした授業=“書く”ことよりも“発表する”場面が多くなる」「指導者や子どもたちとの単発的なやりとりではなく、子どもたち相互の話し合いが続く授業=1人の子どもの発言をもとにして、発言が発展していく授業。『賛成です』『反対です』『付け加えます』という発言が出る授業」「発問を絞り、子どもたちの発言の機会を多くする=基本的な発問は2〜3程度の絞り、発言の機会を多くするとともに、じっくりと話し合いの時間を取る」ことが求められる点が指摘され、特に学級経営の重要性が強調された。
■言葉の能力を生かした道徳で
 発表に続いて、文部科学省の赤堀博行教科調査官が講評と、道徳教育と言語力の育成についての講義を行った。
 道徳教育で重視される自分自身、他者、自然や崇高なもの、集団や社会との「かかわり」においては、その媒介を務めるのは言葉であり、道徳教育を進めるに当たって言語の果たす役割は極めて大きいと考える赤堀調査官は、「具体的な指導は言語を媒介として行われる。児童自身が自らの生き方を多面的に考える場合には、豊かな言語力が求められる」「言葉はコミュニケーションや感性、情緒の基盤であり、道徳の時間においても言葉を生かした教育を配慮しなくてはならない」などと述べた。
 道徳の時間の指導については、「資料の内容や登場人物の感じ方や考え方を考える」「友だちの考えを聞いたり、自分の考え方を伝えたり、話し合ったり、書いたりする」「ねらいとする道徳的価値にかかわる様々な体験を通して感じ、考えたことを、言葉を用いて生かし合ったりする」など、言葉の能力を生かして学習に取り組ませることが重要であるとした。
 道徳の時間での表現活動を取り入れた指導として、話し合い、書く活動、板書、説話を取り上げ、それぞれ工夫点を説明するとともに、「道徳の時間は言語力を高めることを目指すものではないが、これらの指導を展開することにより子どもたちの言語力の高まりが期待できる。このことが、道徳的価値の自覚および自己の生き方についての考えを深めることにつながる」と有用性を強調した。



[2月25日]

 安全教育の在り方で研究大会

 地震防災、不審者対策、情報安全など、学校における子どもの安全教育のあり方を幅広く考える全国学校安全教育研究大会が、2月12日、東京都板橋区立高島第一小学校(矢崎良明校長)で開催された。同校の授業公開では、地域安全マップ作りを通して町なかでの危険回避の意識をはぐくんだり、携帯電話の利便性と問題点を話し合いながら、自分にとって良い活用策を考える実践などが行われた。6年生では、理科の学習に位置づけて地震波の伝わり方を実験で確認する授業を行い、子どもたちはP波とS波の違いと、その原理を生かした緊急地震速報の仕組みなどに理解を深めていった。
 
■防災・不審者・情報社会が3大課題
 研究大会を主催したのは、全国学校安全教育研究会(会長・沢田明東京都台東区立谷中小学校長)と、東京都学校安全教育研究会(会長・矢崎良明会場校校長)。研究会では、防災や防犯など幅広い分野にわたり、子どもたちの安全教育のあり方を探っている。大会では、これまでに起きた子どもを狙った学校内外での傷害事件、携帯電話やインターネットで頻発しているトラブル、さらに、日本が世界有数の地震国であることなども踏まえて、(1)地震防災(2)不審者対策(3)情報安全――を大きな課題として研究に取り組んできた。
 実践では、この3つの課題を通じて「自他の生命を尊重し、安全のための行動ができる子どもを育てる」ことを目標にするとともに、「危険を予測し、自ら回避できる能力」も合わせてはぐくんでいきたいとしている。
■理科の単元学習で地震波実験
 そんな視点から、会場校となった高島第一小学校は、都教委の安全教育推進校にも指定され、全学年で様々な安全教育を推進してきた。
 そのうち、 学外協働の取り組みの事例では、東京大学地震研究所などが進める「首都直下地震防災・減災特別プロジェクト」に協力し、校内に地震計を設置。授業では、地震計の前で子どもたちがジャンプをしてその結果を計測するとともに、実際の地震データとの比較などで、地震の持つエネルギーがいかに巨大なものかを体験的に理解できるような展開を図った。
 6年生では、おもりをバネでつないだ全長8メートルの波動伝搬装置を使い、地震のP波(縦)とS波(横)の違いを理解する授業が行われた。
 授業は、理科の「地球と宇宙」の学習にも位置づけ、体育館に実験装置を設置して進められた。
 実験ではまず、指導者の浦田昌史教諭が、糸で吊ったおもりを縦方向に揺らしてP波(縦)を作り出し、次に、横方向に揺らしてS波(横)を再現。子どもたちに波の特長を観察させながら、それぞれの伝達時間をストップウオッチで計測させた。
 複数設けた観測地点のうち、震源に最も遠いポイントで計測した子どもからは、「P(縦)波は3.78秒で、S(横)波は4.66秒だった」などと報告。そのほかの結果も交えて何回か実験を繰り返す中で、揺れの波は、「P(縦)波の方が伝わり方が早く、S(横)波の方が遅い」ということを実際に目にしながら学んだ。
 そんな波の性質を知った上で、浦田教諭は、実際の地震でも、「最初の揺れ(P波)と次の揺れ(S波)に時間差ができるね」と指摘し、同校の避難訓練でも使っている「緊急地震速報」は、このP波を初期微動としてとらえ、警報を鳴らす仕組みであることを説明した。
 そして、その時間差の中でできる効果的な対応についても考察し、子どもたちは、教室だったら「机の下に身を隠す」と回答するとともに「理科室では実験器具の火を消して避難路を確保するため窓を開ける」など、状況に応じた対応についても考えを深め、科学知識の裏づけと現実に即した防災教育に取り組む様子が報告されていた。



[2月22日]

心のカードで思い深める

 愛知県設楽町立清嶺小学校(佐々木千明校長、児童数20人)は、平成20年度から道徳教育の研究を進めてきた。温かい地域に守り育てられている純朴な子どもたちだが、生活の現代化や少子化の影響を受け、子ども同士の関係が固定的になっている傾向が見られた。こうした人間関係を改善するためには、互いに認め合い、励まし合って、共に高め合う関係を築いていく必要があると考え、基盤となる道徳の授業の改善に取り組んだ。

 ◇授業づくりの実際◇
 低学年の実践を例に、授業づくりの実際をまとめると――。
 (1)資料分析
 年間計画には、内容項目とねらい、そして複数の資料を掲載している。資料を選択し、主人公の心の動きを押さえ、発問と予想される子どもの反応とを図式化することで、1時間の授業の流れと中心となる場面を押さえる。本時は資料「かぼちゃのつる」の、涙をぽろぽろこぼしたときのかぼちゃの気持ちを中心に考えた。
 (2)展開
 ▽導入の工夫
 導入では、クイズや映像などを取り入れて、短時間で、本時のねらいや資料に対する興味関心を高めるための工夫をしている。しかし、事前アンケートで、6人中4人がわがままをしていないと答えていたので、ここでは残りの2人に、わがままをした経験を発表させて、内容項目への理解を図った。
 ▽資料提示の工夫
 資料の提示では複式学級であることに配慮して、毎回両学年が無理なく理解できるよう、読み聞かせ、紙芝居、パネルシアターなど様々な方法を取り入れている。本時は、かぼちゃのつるを実際にどんどん伸ばしながら、話を進めていった。
 ▽思いを深める工夫
 中心発問では、子どもたちの意見をもとにした話し合いを通して、ねらいに対する考えを深めるようにしている。そこで、自分の考えをまとめるためにも、友だちの考えをしっかり把握するためにも、心のカード(個々の色を決めた短冊状の画用紙)に思いを書いて黒板に張り、それを見合いながら話し合いを進めている。
 学級のほとんどが、「ぽろぽろ涙をこぼしているかぼちゃは勝手なことをしなければよかったと思っている」という意見だったので、それをもとに話し合った。
 すると、「自分が悲しい思いをして、やっとみんなの悲しい気持ちがわかった」「わがままをすると、みんなが困るだけじゃなくて、自分も困ることになるんだ」といった意見が出て、深まりが見られた。
 (3)評価
 まとめでは、最初、わがままはしたことがないと答えた子どもも、「お母さんに宿題を先にしなさいって言われてもテレビを見ちゃうよ。ちょっとずつ直していくよ。かぼちゃ君もそうしてみたら」というような手紙を書くことができた。
 授業で使用したワークシートや心のカードは道徳ファイルにつづり、その子の変化を確認したり、その後の指導に役立てたりしている。
 ◇成果と課題◇
 子どもが自分の思いを自信を持って表現できるようになり、友だちの考えを認めることができるようになってきた。
 課題としては、子どもたちの考えをさらに深められるような教師の手立てを工夫する必要がある。(文責・金田光代教務主任)



[2月18日]

3つの力で学びをつくる

 横浜国立大学教育人間科学部附属横浜小学校(金子佳代子校長)は、「子どものまなざしから『共に学びをつくりあげる力』をはぐくむ学校」を主題にした今年度の研究成果を1月22、23の両日、教育研究集会で発表した。研究では、「共に学びをつくりあげる力」として、(1)思考・追究力(2)意思決定力(3)かかわる力の育成に着目し、これら3つの力をダイレクトにはぐくむために、同校が独自に設けた生活総合科・総合単元学習と各教科との学びの関係などについて探究した。その際、両学習を結んだ基礎基本と活用の関係を明らかにする「学習プロセスプロジェクト」や、3つの力のあり方と育成を探る「ベース力プロジェクト」も立ち上げ、子どもを主体にした授業の具体化を図った。
 
■学びの実態をより詳細に見取る
 研究主題については、平成18年度から目標に掲げ、継続的な実践研究に取り組んでいる。これまでは、共に学びを創る力の要素として、教科学習における「聞く力」を視点に研究を深め、子どもたちが切実感や必要感を持って仲間と課題に向かう時に「聞く力」が育つことを見いだせたなどとする。
 昨年度からは「共に学びをつくる力」のベースとして、(1)思考・追究力(2)意思決定力(3)かかわる力――の3つの力に着目しながら、学びの活用力をどのように育てていくかについても研究を探めていった。
 研究ではまず、3つの力をダイレクトに育てることを目指す生活総合科・総合単元学習に着目して推進。同学習における子どもたちの姿をもとに、学びの活用力や深化につながる思考→判断→表現というサイクルでの「思考プロセス」を明確化し、それを基準に教師の働きかけや効果的な授業改善を実現したなどとした。
 そんな蓄積から、今年度は「共に学びをつくりあげる力」を、生活総合科・総合単元学習と各教科との関係から考えていこうとした。その際、教科での基礎基本とそれがどのように活用・探究に結び付くかなどを考えるために「学習プロセスプロジェクト(GP)」を立ち上げた。
 同プロジェクトでは、「共に学びをつくりあげる力」に向けた「教科学習を支える力」がどのような場面で現れるかなどを検証しようとした。その結果、「課題を見いだす力→自分なりの疑問や課題を見いだしている姿」など12項目を見いだし、それぞれの力を視点に、子どもの学びの実態をより詳細に見取れるようになったなどという。
 また、3つの力をさらに探究していくために、「ベース力プロジェクト(BP)」を立ち上げ、学習の中で3つの力のかかわりを見つめながら、「思考・追究力」と「意思決定力」の密接な関係などに理解を深めることができたなどとした。
■意見や作品の比較などを意図的に
 2年3組の生活総合科では、子どもたちがアイデアを巡らせて「屋台」を開き、他学年や特別支援校の児童らを招いて交流を深めようとする活動を実施した。
 この時間では、どんな「屋台」を作っていくかをグループで話し合いながら、「思考・追究力」をはぐくむために、仲間の意見と比較しながら自分の考えを深めたり、「かかわる力」を深めようと、様々な意見の間で折り合いを付けたりした。
 また、3年3組の図画工作では、ボール紙で様々な版画のピースを作り、組み合わせや着色を工夫しながら創造力あふれる紙版画作品を完成させる「ぺったん くるくる はんから広がる世界」と題した授業が行われた。この授業でも、仲間の作品との比較などを通して、各自の創作アイデアを高めたり、伝え合う力の向上などを図った。
 山型のピースを作った子どもは、それを組み合わせて海面に浮かぶ「クジラ」を表現。クジラの体を青く、海の波を黄色で表現して大海原を悠々と泳ぐ様子を作品にした。また、山型のピースに、細長い首に見立てたピースを追加して、見事な白鳥を描いた児童もいた。



[2月15日]

環境教育の時数減など課題示す

 東京都小中学校環境教育研究会は2月2日、「豊かな人間性を育む環境教育」をテーマに第45回研究発表会を東京都葛飾区立西小菅小学校(深津郁子校長)で開催した。新学習指導要領の移行措置期間の中で、発表会では、都内公立小・中学校への環境教育アンケートの結果なども公表。環境教育の指導時数は小・中学校ともに年間12時間以内が95%で、前回(02年)調査の25〜35時間より配当時数が半分以下に減少していることなどが分かった。授業では、ごみの減量や自然エネルギーなどを扱う同校3〜6年生の実践が公開され、4年1組では学外協働として、プロ・ナチュラリストの指導で校庭の様々な自然にふれる「身近な自然と親しもう」が行われた。
 
●環境教育の時数は02年比で半減以下
 同研究会(会長・竹田雄二郎東京都青梅市立第一小学校長)では「豊かな人間性を育む環境教育」を掲げ、各校での環境教育の充実と普及に力を入れてきた。今回は、葛飾区立西小菅小学校を会場に、同校3〜6年生の教科(社会、理科)と総合的な学習に位置づけた環境教育の授業を公開するとともに、都内小・中学校に実施したアンケート調査の結果も公表し、各校の環境教育の位置づけや学習内容などを検証した。
 調査は、都内公立小・中学校全校(小学校1333校と中学校637校の計1970校)に調査票を配り、回収された239校(小学校163校、中学校76校、回収率12.1%)のデータをもとに分析を行った。
 それによれば、「環境学習に取り組んでいる」小学校は160校(98.1%)、中学校は67校(88%)の合わせて227校(95%)。そのうち、具体的な指導時間や内容を尋ねると、「年間指導計画や全体計画の有無」では、小学校の73校(45%)、中学校の22校(35%)が「ある」と回答し、「どの教科で実施しているか?」では、小・中学校とも、80%が総合的な学習、65%が教科という結果となった。
 さらに、「今年度の指導予定時数」は小・中学校ともに「年間12時間以内」が95%という回答で、前回調査(02年)で最多だった「25〜35時間」に比べて半減以下となっている現状が明らかとなった。
 これらの結果を踏まえ同研究会では、多くの学校が学力向上、英語教育、生活指導などの教育課題を抱え、環境教育にしっかりと取り組めない状況にあることや、取り組んでいても時数を減らしたり、体験だけの学習になってしまったりするなどの課題を指摘した。
 その上で、新学習指導要領下で確かな環境教育が実施できるよう、各教科・領域における環境教育の学習内容や該当単元を示した一覧表を作成し、普及していきたいとし、そのほかにもESDを取り入れた環境学習の例示や発達段階に応じた指導内容の明確化など、様々な対策を図っていくことも報告した。
●ナチュラリストの指導で発見がいっぱい
 授業公開では、地域の自然や学校菜園などを生かした環境教育に取り組んでいる同校の特長が示された。
 4年1組では、プロ・ナチュラリストの佐々木洋さんの支援を受け、子どもたちが校庭で様々な自然とふれあいながら、たくさんの発見をしていく総合的な学習「身近な自然と親しもう―冬の巻」が行われた。身近な自然探索から、そこに生きる生き物と自然とのかかわりに関心を深めていくことを目指したもの。
 児童は、夏には近くの荒川河川敷で動植物の観察などもしてきた。
 佐々木さんがプロの視点で、まず注目したのは、校庭脇にある花壇だった。よく見ると、花壇の表面に、細かい粒状の土が盛り上がっている所がある。何気なく見ていたら見逃しそうだが、佐々木さんはそんな場所をすかさず示し、「これは何かな?」と子どもたちに尋ねた。あれこれ考える子どもたちだったが、じきに「ミミズのウンチだ」という声があがると、佐々木さんは「当たり!」と子どもたちをほめ、自然観察の楽しさをぐっと盛り上げていった。
 続いて佐々木さんは、ミミズのウンチが植物の重要な栄養になっている一方で、ミミズがたくさんいる土の中には、ミミズが大好物のモグラもたくさんいるなどと説明し、「校庭の土の中にも、動物たちの様々な世界が広がっているね」と、多様な生き物がつながり合う生態系への気づきも促していた。
 その後も、人工池では「夏にいたアメンボはどこにいったのかな?」と問いかけたり、落ちていたマテバシイ(ドングリ)を手に、「穴の開いた実は虫が入った跡か出た跡か?」など、クイズを交えながら自然への関心をはぐくむアイデアを次々に展開。
 子どもたちも、佐々木さんからの指摘を受けることで、夏と比べて一見何事もないように見える冬の自然の中に、多くの生き物のドラマがあることを学び、次の課題もつかんでいたようだった。



[2月11日]


 「仁篤」を養う道徳授業づくり

 「仁篤の涵養」を主題に、昨年度から、相手を慈しみ、思いやる心をはぐくむ道徳や各教科の授業研究に取り組んできた東京都足立区立第十二中学校(根岸順一校長)が、1月29日、同校で研究発表会を行った。道徳推進教師を配置した全校指導体制や、評定尺度法による授業評価の改善などを実施し、様々な人とのかかわりの中で、慈しみの心や思いやりの態度をじっくり養っていけるような授業づくりを目指した。3年1組の公開授業では、生徒たちが、江戸時代の「傘かしげ」や「こぶし腰浮かせ」などの礼儀作法を実演、考察しながら、時と場に応じた礼儀や態度の重要性を理解させる展開が公開された。


■仲間とかかわる活動をふんだんに
 「ストレス耐性の欠如」「善悪の判断力の弱さ」「人間関係が構築できない」といった生徒の課題から、この研究では「仁篤の涵養」を主題とし、道徳教育を軸に相手を慈しむ心や思いやりの態度を培う授業づくりを2年間にわたって追究してきた。
 その際、研究主題の「仁篤」を、「情け深く相手を思いやること」ととらえ、授業では、様々な仲間とかかわる活動をふんだんに取り入れるようにした。そして、生徒が慈しみの心や思いやりの態度をじっくりはぐくんでいくとともに、善悪の判断や決まりを尊重する姿勢なども身に付けられるようにした。
 具体的には、@生徒の実態調査を行い、育てるべき態度の明確化を図るA指導法の工夫・改善に向けた研究協議会の実施B各学年に「道徳教育推進教師」を配置し、役割分担を明確化した全校指導体制の構築C生徒会や地域連携によって生徒自身の実践的な活動を実現する――という4つのポイントを押さえて研究を進めた。

■実感を伴いながら考えを深める
 そんな背景のもと、授業づくりでは、生徒同士や生徒と教師とのやりとりを大事に、互いの思いを劇やロールプレイで実感的に考えていける展開を工夫した。
 2年生の実践では、校内行事の「合唱コンクール」を題材に、「ルール」を守る大切さについて、意見を交換しながら考えていく実践を行ったなどと報告。自分と相手の考えを確認し合うことで、確かな道徳心や仲間への信頼心などが育ったという。
 また、授業づくりを検討する研究協議会では、KJ法によって各々の授業の良い点や課題点などを拾い上げ、具体的な議論の視点とした。さらに、5段階による独自の評定尺度法を使ったブレーンストーミングによって、授業課題の明確化と協議の活性化を実現したなどとする。
 「授業構成をどうするか」という検証例では、「導入が長すぎて時間が足りなくなったのでは」や、「授業目標につなげる中心発問が弱いのでは」などの意見をもとに、「資料提示の仕方」「生徒に思考を促す発問だったか?」など8つの評価項目ごとの検証を実施。各項目の5段階評定を目安に、より具体的な改善策を図ることで質の高い授業を実現したなどの成果を挙げたという。

■「平成しぐさ」についても考えた
 各学年の公開授業のうち、3年1組の道徳では複数の「江戸しぐさ」などの実演と検証を通じて、相手への思いやりや礼儀のあり方を考える実践を高橋正人教諭が行った。
 ある広報誌に描かれた「傘かしげ」や「こぶし腰浮かせ」などの「江戸しぐさ」を導入とし、その知恵を気づかせるようにした。
 続いて、そんな「江戸しぐさ」の数々を生徒がグループで実演。「傘かしげ」グループでは、傘をさした2人が対面する際、互いに少し傘を傾けながら傘がぶつからないようにすることで、双方が道を気持ちよく通行できることを紹介。自分たちと他グループの演技を見つめる中で、昔の人が各しぐさに込めた礼儀作法と相手への思いやりなどを学んだ。
 その後は、雪かきの仕方など、各地域に伝わる思いやりのしぐさも見つめながら、現代の生活に生かせる“平成しぐさ”についても考察。普段の教室掃除や満員電車でのリュック前抱えなどの活用も考えながら、相手への思いやりを行動や態度にする重要性についても実感させていた。
同校/рO3(3605)2734。


[2月8日]

 ノート記述から実態把握し学習支援

 子どもの学びの深化や見取りに役立てるノート活動などに力を入れることで、自ら学び、考える子を育てる社会科学習を追究してきた東京都八王子市立第四小学校(岡島政吉校長)が1月27日、研究発表会を実施し、その3年間の成果を公開した。研究では「学習問題を自分ごとにして学ぶ」子どもを育てるため、一人ひとりのノート記述から実態把握や学習支援策を進めたのが特長。その結果、子どもたちの課題を丁寧に見取った効果的な授業や教材づくりを実現した。6年2組の小単元「日本と関係の深い国々」の公開授業では、教室内に設けた4カ国のブースを子どもたちに巡らせ、各国への興味とそれぞれの追究意欲を引き出す学習が進められた。その際、調べたい国の選定や、理由などをノートに記述させることで、教師の支援の手立てにも役立てていた。
 
 同校では、これまでの研究成果や子どもたちの課題をもとに、平成20年度から「自ら学び、考える子を育成する社会科学習」を目標に掲げ、授業研究に取り組んでいる。
 その際、社会科での「自ら学び考える子」という目標を、「学習問題を自分ごととしてとらえて活動する子」とより具体的に位置づけ、そんな子ども像に迫るための実態把握と学習計画などを検証授業によって明確にしようとした。
 検証授業は各学年・単元ごとに行い、子どもたちの考える姿を仮定しながら学びの変容プロセスなどを記録した。具体的には、各クラスから観察児童3人を学級担任が選定し、それぞれの子どもたちから導き出された学びの実態や課題をもとに、すべての子どもたちへの指導の手立てを考えた。そして、検証の際には、子どもたちのノートの記述をよりどころとし、学習における子どもの考え方の変化や教師の発問への反応などを分析することで、一人ひとりの子どもの実態をとらえたより効果的な学習を実現できるようにした。
 3年生の単元「野菜をつくる農家の仕事」では、地元・八王子市の農家の人をゲストティーチャーに迎え、専門家の意見から農業に携わる人々の工夫や努力を理解させようとした。
 その際、子どもたちには専門家による継続的な問題提起の意識を持たせようと、ゲストティーチャーが来校しない時の代弁として、ペープサート(紙人形)を活用する工夫などを織り交ぜた。そして、ある観察児童を検証したところ、ペープサートによって学習意欲の向上や単元への集中、発言の活性化が見られたなどと確認することができ、実効性のある学習を確立できたという。
 また、5年生の単元「わたしたちの生活と情報」では、ノート記述から「自分の意見が書けない」「コメントが短い」傾向が見られる子どもを見取りの対象とし、働きかけの方法を探った。その結果、具体的な「誰か」の意見に対して「どう考えるか」という指摘をしたり、子どもたちの意見をまずは肯定的に受け止めてコメントを返すなどの確かな指導の視点を持つことができたなどと語った。
 さらに、この授業では、子どもたちが一番の情報源として挙げるテレビを題材に、新型インフルエンザの流行がどう伝えられているかを考える身近でタイムリーな展開を工夫した。そんな学習により、子どもたちの意欲の向上や自分ごととして課題に向かう様子が生まれ、主体性のある記述が目立つようになったなどの効果も報告されていた。
 そんな研究背景のもと、6年2組の公開授業では、単元「世界の中の日本」の小単元「日本と関係の深い国々」の授業が行われた。
 この小単元では、日本とつながりが深い国々の暮らしなどを調べることで異文化への関心や理解、尊重心をはぐくむのが目標。この時間は、4カ国(中国、タイ、オーストラリア、アメリカ)ごとのブースを教室内に設け、各国にちなむ食べ物や衣装などをそれぞれ展示。子どもたちに各ブースの展示物に触れさせながら、外国への興味や追究課題をもたせようとした。
 様々な物があふれた各ブースに、子どもたちも興味津々。中国ブースでは、扇子で扇いだり、紙幣を手に「中国のお金は『元』だっけ」などと話し合う様子が見られた。
 そして、ひと通り各国を巡ったところで、指導者の山北雅史教諭は、これから調査を深めていきたい内容を絞り込ませ、調査内容と予想をノートにまとめさせた。
 また、調査では、日本との違いなどを意識しようなどと指摘し、中国の服を調べたいとした子は、日本での着物の着用なども視野に、「チャイナ服は普段は着ていないと思うし、どんな時に着ているか知りたい」などとそれぞれ考えを表明しあい、互いの調査の刺激や参考としていた。



[2月1日]

 どの教員でも取り組める「言語活動」

 東京都足立区立千寿常東小学校(岡正見校長)は昨年度からの2年間、同区教委の研究奨励校として、「読みを深める常東手段〜物語文の指導法の工夫」を研究主題に、教師の授業力と児童の国語科の学習力を共に向上させる実践研究を進めてきた。この取り組みは、新学習指導要領の重要事項の1つである言語活動の充実について、国語科でどの教員でも取り組むことができる具体的な手だてを実証したもの。
 
■見通しのある単元の流れ
 同校では研究主題を深めるため、独自の“常東手段”として、@単元の学習指導過程の工夫A習得事項の系統化B重点とする基本的な言語活動の系統化C常東手段をふまえた授業評価(ルーブリック)の4つの取り組みを進め、同時に児童の読書活動の推進や言語活動環境の整備に取り組んできた。
 その特長は、教員の誰もが見通しをもって単元の指導ができる過程をつくった点だ。単元の流れを、@大づかみに読むAくわしく読むB感想をまとめるとした。このことは、児童も見通しをもって授業を受けることにつながった。
■児童の学習がぶれないしかけ
 また、重点化した基本的な言語活動を展開し、児童の学習がぶれないしかけとして、▽音読(連れ読みや一文読み、役割読みなど)▽書く(書き抜きや吹き出し、手紙など)▽交流(身体表現や読み合い・聞き合いなど)▽読書(読み聞かせやブックトーク、本の推薦など)が、低・中・高学年ごとに系統立てて取り入れられた。(表)
 同校では、大内敏光日本国語教育学会常任理事を講師に迎え、校内の授業研究を定期的に実施してきた。授業者の常東手段の実践度合いや授業評価を、教員が相互に行い、校内での常東手段の共通理解を図ってきた。
同校での勤務3年目の教員は「授業をどう展開したら児童に物語を楽しませられるのかが、これまで十分に分からなかったが、まず全体を読ませ、より詳しく読ませることで子どもたちが意欲を持てるようになった。場所、時、あらすじ、出来事の視点を子どもたちに持たせる大切さが分かった」と語る。同校4年目の教員は「子どもが発問してこなかったり、良い意見が出てこなかったりしたとき、大内先生のアドバイスを思い起こして、叙述をもとに子どもたちが想像を広げていくことができた」などと、これまでの実践を振り返った。
■1月21日に研究発表会
 1月21日に実施した研究発表会には、全国から教員ら204人が参加した。このうち、5年生の公開授業では「大造じいさんとがん」の作品について、「大づかみに読む」「くわしく読む」「感想をまとめる」の3つの学習活動が行われた。1組の「大づかみに読む」授業では、登場人物の把握を一人読みで、出来事を一文での表現で、あらすじを感想で、それぞれとらえた。2組の「くわしく読む」授業では、人物の心情をサイドラインの書き込みで、行動については意見を交換した。3組の「感想をまとめる」授業では、中心人物の心情・変化について児童が小グループごとに意見を交換した。
 同区教委の齋藤幸枝教育長は、同校の実践研究について「どの教員でも取り組むことができる具体的な工夫は、足立区だけでなく、小学校教育の充実に広く寄与するもの」などとコメントを寄せた。



[1月28日]

 英語活動で豊かなコミュニケーション力

 豊かなコミュニケーション力を育てる英語活動を追究してきた東京都江戸川区立二之江小学校(小林省三校長)が1月20日、研究発表会を行った。各学年ではぐくみたいコミュニケーション力の素地として、低学年では「楽しむ」、中学年では「表現する」、高学年では「伝える」を明確化しながら、英語らしい発音と、文章にこだわりすぎない体験的な英語の交流活動を工夫した。また、ALTに任せきりの活動にせず、担任が自ら活動に加わって子どもたちの変容を見取る授業運営を心掛けている。2年1組の公開授業では、食べ物カードを使ったゲームなどで、仲間同士で楽しく英会話をしあう様子が見られた。
 
■担任とALTの役割明確に
 国際化の一方で、適切な人間関係を結べない子どもが増加しているという課題も背景に、この研究では、英語活動を通して、どんな場面の誰とでも思いを伝え合おうとするコミュニケーション力の向上を目指した。
 また「英語をうまく話せない」という理由から外国人との交流に消極的な子どもが多い状況も踏まえ、授業づくりでは、「英語はきちんとした発音や文法で話さなければいけない」という思い込みを軽減する交流の楽しさを実感できる体験活動を工夫するようにした。
 具体的には、学習を通して身に付けたい「コミュニケーションの素地」を低・中・高学年ごとに明確化しながら、仲間とのかかわりを通して、外国の人や言葉・文化に興味を持たせる学習を設定するようにした。
 低学年では「楽しむ」を目標に、英語で数や体の名称、気持ちを表す言葉などをチャンツやリズムに合わせて繰り返し聞く学習を実施。子どもたちは自然に英語を覚え、喜んで口ずさむようになった。
 中学年では「表現する」を課題に、動物や食べ物の言い方を学んだり、互いに好きなものを伝え合うゲーム、役割分担によるグループ活動などを進め、英語を進んで使おうとする様子が見られたなどとした。
 そして、高学年では、「伝える」を目標に掲げ、時間を表す英語表現などを学びながら、各自の1日を紹介するといった多様なゲーム活動などを実施。子ども同士が相談し合ったり英語でコミュニケーションしたりする活動に熱中できるようになったとする。
 活動にあたっては、担任とALTの役割分担を明確にすることも大事にした。担任は、活動案の作成や子どもの丁寧な見取りなど、授業の主導役を担い、ALTに任せきりにしない展開を重視した。そして、新しい単語や表現を使う授業では、担任とALTとのTTで、担任だけの授業では前回の復習や発展学習を行うといった、学習内容に応じた指導体制にも大きな配慮をした。
 そのほかにも、英語により一層慣れ親しむための教室掲示の工夫など、学習環境の整備にも力を入れた。
■チャンツや絵本で英語らしい音と表現
 公開授業のうち2年1組では、食べ物を題材にしたチャンツやカードゲームを楽しむことで英語のコミュニケーション力を高めていく授業が、担任とALTのTTで実施された。進行は担任が担い、合間に、ALTが発音を反復するようにした。
 最初は「バナナ」「チョコレート」など複数の食べ物の絵カードを提示しながら、それぞれの発音を練習し、音楽にのせてチャンツなどを楽しんだ。後半は、食べ物カードを使ったゲームを行った。ゲームは、子どもたちがそれぞれペアになってジャンケンをし、勝った方が欲しい食べ物を英語で告げ、負けた方が該当するカードを相手に渡すというもの。
 前半のチャンツでは、音楽に合わせて英語をみんなで口ずさむことで、自然に英単語とその発音に親しみ、続く、カードゲームで、仲間と楽しみながら学んだ英語を積極的に口にしながら、英語力と互いのコミュニケーション力の向上を実現できるようにしていた。
 最後は、様々な動物が登場する大型絵本で、生きた英語表現やリズムなどに慣れ親しめるようにしていた。英語表現での動物の鳴き声は、日本語のそれとは異なるので、異文化理解の入り口にもなっていた。



[1月25日]

 教育活動全体に「エンカウンター」取り入れる

 子どもたちの豊かな心の育成に向けて、あらゆる教育活動の中に構成的グループエンカウンター(SGE)などを取り入れた実践を追究している東京都杉並区立中瀬中学校(藤川章校長)は1月15日、その成果の一端を発表した。取り組みでは、豊かな心を発達段階に応じて育てていけるよう、子どもたちを「個」と「集団」の両面から見取るアセスメント(診断的評価)を行い、その結果を踏まえたグループエンカウンターやソーシャルスキル教育などを実施している。体験を通した人とのふれあいで、自己発見や他者の理解などを深めていけるようにし、3年生の国語では、エンカウンターを活用してグループやペアでの意見交換から、相手に分かりやすい話し方を考える「おすすめの本1分間CM」の授業などが行われた。
 
■「Q-U」を春と秋に全学級で
 同校の研究は「生きる力」を支える重要なベースとして、子どもたちの豊かな心を発達段階に応じて着実にはぐくむことを目指したもの。その際に、子どもたちを「個」と「集団」の両面から丁寧に見つめていくアセスメントに力を入れ、指導では、教育カウンセリング理論を使った構成的グループエンカウンターなどを生かすことで、子どもたちが体験から自他の発見、理解を深めていけるようにした。
 その第1段階であるアセスメントは、観察法、テスト法、面接法などを組み合わせて行う。
 例えば、テスト法では「Q-U(楽しい学校生活を送るためのアンケート)」や、自尊感情・ソーシャルスキル尺度などを使って学級満足度や自己肯定感を把握したり、面接法では、子どもたちが面接者を選ぶ「おしゃべりタイム」などを通して、教師が子どもの本音を理解できる状況を作り出したりしていった。
 そのうち、「Q-U」は、(1)学校生活意欲尺度(2)学級生活満足度尺度(3)自由記述アンケートで構成され、個人および学級の状況を見極めるのに大きな役割を果たした。
 アンケートでは、「私はクラスの中で存在感がある(承認得点)」「学級の人から無視されるようなことがある(被侵害得点)」などを問いながら、回答を「承認得点」「被侵害得点」などごとに集計。その結果は、(1)学校生活満足(2)侵害行為認知(3)非承認(4)不満足――の4つの群にプロットされて表され、生徒の学級満足度などを客観的に検証できるようになっている。
 同校では「Q-U」を春と秋に全学級で行うことで、生徒たちの変化やパターンが見取れるようになり、同時に集団と個人の関係を考慮した生徒理解がより深まったことなどを成果としている。
■「友達ビンゴ」などで豊かな受容力
 実際の指導では、集団と個に応じたそれぞれのアプローチを推進した。集団アプローチでは、体験を通して自他の発見や人間関係の深化を図ろうと、構成的グループエンカウンター(SGE)やソーシャルスキル教育(SSE)を実施。学級活動や教科、道徳授業にまで生かされた。
 そのうちSGEは、自己開示による相手との感情交流を通じて互いの気づきを深めていくもの。気づきを深め合う上での受容力が豊かな心の育成につながるとして、学年ごとにテーマ(1年生・ふれあい、2年生・自己発見、3年生・キャリア学習)を設定して取り組み、年間を通して様々な教育活動の中に位置づけている。
 春の学級開きでは、SGEの(1)自己開示(2)他者理解(3)スキンシップという原理を確認しながら、知り合ったばかりの友人をほかの人に紹介する「他己紹介(1年生)」や、進級してやってみたいことをビンゴ表に書き入れてゲームをする「友達ビンゴ(2年生)」などのエクササイズを取り入れ、新たな友だち関係を豊かにするためのしかけづくりなどとして活用している。
■国語の授業で良い人間関係はぐくむ
 公開授業では、そんなSGEを使った学級活動や教科(国語、英語、数学)の実践が行われた。
 3年A組の国語では、(1)相手の話を最後まで聞く(2)相手の話をばかにしない(3)相手にプラスのフィードバックをする――というSGEの約束を確認しながら、グループやペアで、課題になっている本の1分間コマーシャルを論評し合う展開が、小松真吾教諭と西村絵真教諭のTTで進んだ。
 取り上げる内容、順番、発声などを工夫しながら、なんとか相手に分かりやすいようにメッセージを伝えようとする生徒たち。SGEの約束を、全員が大事にしながら明確に意識する中で、発表する生徒たちはあまり緊張せず、聞く方も静かに耳をすます状況が生まれていた。
 そんな発表を互いに聞き合いながら、各グループでは、「分かりやすく説明できていた。でも、自分の考えをもっと入れても良かった」や「自分のことも比較しながら説明したのは良かった」など、それぞれの評価やアドバイスを丁寧に送り合い、同時に、良い人間関係をはぐくむ様子も見られていた。



[1月21日]

豊かな表現力や発想力をはぐくむ

 東京都足立区立綾瀬小学校の杉渕鉄良教諭は、音読や10マス計算などを生かした独自の指導技術の開発と実践に取り組んでいる。その授業づくりや考え方を示す講座「新教育のてつじん倶楽部」が1月9日、さいたま市の大宮ソニックシティで開催され、全国から教員60人ほどが参加した。講座では、教材文が表す情景を想像しながら情感豊かに音読を深める方法など、同教諭の実践アイデアの数々が提示された。グループ活動の中で人間関係を深めていくための展開、声がけなどにも具体的なアドバイスをした。
 
■授業のアイデアを分かち合う
 「新教育のてつじん倶楽部」は、杉渕教諭が、子どもたちとの日々のかかわりから見いだした授業のアイデアを、多くの教員と分かち合う講座。現場の具体的な悩みや課題を話し合いながら指導力を高める研鑚の場ともしている。
 今回は、同教諭の数多くの授業アイデアのうち、小学生を対象にした漢字の基礎指導から音読を取り入れた授業例などを紹介。漢字のつくりを分解しながら仲間と楽しく学ぶ知恵や、場面を想像しながら豊かな表現力をはぐくむ音読などを、参加教員が実際に体験しながら学んだ。
■発見が学ぶ楽しさに結びつく
 漢字の基礎指導では、複数の漢字の中から「カタカナ」が発見できる漢字を選び出すなどの学習アイデアが提案された。この方法は、機械的な漢字習得の苦痛を軽減し、子どもたちが自発的・積極的に学習に取り組めるのがポイントだ。
 教員たちは、配布プリントに示された「回」「牛」「二」「父」「広」など200字以上の漢字を見つめながら、それぞれ「広→『ム』」、「二→『ニ』」、「回→『ロ』」などを発見し、漢字の構成に着目しながら、楽しく漢字を覚える楽しさを実感していた。
 一方、この活動では、それぞれの発見をグループで確認し合う作業なども大事にしている。そうすることで、仲間の発想に刺激を得て学習へのモチベーションを高めたり、「漢字の向きを変えてみたら」などといった子どもたちの発想力も豊かになるとして、教師による適切な声がけなどについても指摘していた。
 いくつかの問題文を題材にした「音読」学習の提案では、文章の場面を深く想像しながら、情感を込めた読みを深めたり、文章を自分なりのイメージに置き換えたりして、表現力のある読みの力を育てようとしていると話した。
■具体的なイメージをつかんで声に
 教材文「八郎」を使った音読では、打ち寄せる波の中で自身の思いを叫ぶ八郎の様子を思い浮かべながら、「海はおす」「八郎はおしかえす」という文章を、それぞれのパートごとに音読練習した。情景を想像しながら、1人もしくはパートごとに声を出させることで、豊かな表現力やクラス全体の学びの雰囲気を高めることもできるとした。
 また、教材文「木」を使った例では、「木は いいな、ことりが とまりに くるから ぼく、木になりたい」という文章から、それぞれが思い浮かべる「木」の様子を挙げさせ、具体的なイメージをつかみながら音読表現をするアイデアなども示した。
 そのほか、「10マス計算」を使ったクラス学習の例では、段階的に計算時間を少しずつ減らしていったり、カウントの数え方に英語を交えるなどの工夫を加えることで、子どもたちを学習に引き込んでいく知恵なども示唆していた。
 杉渕教諭は、「指導を通じて一人ひとりの子どもたちがどう育ったかを見取ることが最も大切。著名な実践家に学ぶ際も、外形だけをまねるのではなく、その意味を理解し、自分に合ったアレンジを少しずつ行えばよいのでは」などと、エールを送っていた。



[1月18日]

かかわり方深める道徳授業を工夫

 道徳の授業を中心に、思いやりの心をもって行動する子の育成を追究してきた東京・中野区立桃花小学校(井出良子校長)が昨年12月4日、同校で公開研究会を開いた。研究では、自らの生き方を深く問う道徳授業を追究し、豊かなかかわりを味わわせるための体験活動も工夫。さらに「聴く」「話す」活動を全教育活動で重視し、互いを大切にしたかかわり方や思いやりの心の基盤づくりにも力を注いだ。その際、より良い発問とその受け止め方を練習したり、紙芝居などを使った子どもの心に響く資料提示にも工夫を凝らした。5年1組の公開授業では、約束を巡る“すれちがい”を題材に、不足していた点を考える展開が進んだ。
 
■思いやる姿勢やスキルを強化
 豊かなかかわり合いを通して、相手の気持ちを考え、思いやりのある行動ができる子どもを育てようとしたのが同校の研究。そして、道徳教育を、教科、学校行事、特別活動などといった全教育活動の中に位置づけるとともに、思いやりの心をはぐくむ基盤の強化として、「聴く」「話す」活動などを充実させているのが特長だ。
 具体的には、あらゆる学習の中に、「『はい』と返事をして最後まで話す」や「話す人に心を寄せて最後まで聴く」といった指針を設け、互いを思いやる「聴く」「話す」姿勢やスキルの強化を図っている。
■発問や発言の受け止め方に配慮
 そして、思いやりの心を具現化するための「各学年のめざす児童の姿」を、低学年では「相手の話をいっしょうけんめい聴く子」、中学年では「相手を気にかけ声をかけられる子」、高学年では「相手の気持ちを考え支え合う子」とし、一人ひとりの子どもたちが自身の生き方の課題を深く感じながら、考えを深化させていける道徳の授業づくりをした。
 さらに、教材文を使った授業などでは、子どもたちがストーリーの中の様々な表現や言葉に着目しながら、それぞれ考えを深められるよう、登場人物の言葉や時代背景などを押さえたり、前の発問で話し合ったことを受けて次の発問につなげるといった発問の仕方や発言の受け止めにも気を配った。
 また、子どもたちが知っている話を使ったり、語り聞かせ、紙芝居などの資料演出によって、ストーリーに子どもたちを引き込むことなども大事にしたとする。
■経験に照らし相手の立場を考察
 5年1組の道徳の公開授業では、教材文「すれちがい」(文溪堂)を使い、ピアノの稽古の約束をめぐる2人の女の子、よし子さんとえり子さんのやりとりを読み解きながら、相手を思いやる心などについて考えた。
 教材文は、2人それぞれのいきさつと心情を日記風の文章につづったもの。よし子さんは、えり子さんの電話を受け、ピアノの稽古に一緒に行くことを約束した。でも、待ち合わせ時間などを連絡してくるはずのえり子さんから音沙汰がないので、一方的に場所と時間を決め、えり子さんのお母さんに伝言して待ち合わせ場所に向かった。
 ところが、約束の時間になってもえり子さんが現れなかったので、すっぽかされたと思い込み、事情も聞かず、えり子さんを無視してしまった。
 一方、えり子さんは、家の事情などが偶然に重なり、よし子さんへの電話が遅くなるとともに、相手の不在で連絡をつけることができなかった。
 そんな中、おつかいから帰ったえり子さんは、よし子さんからの待ち合わせ時間を遅れて聞き、待ち合わせ場所に急いだが、よし子さんには会えず、ピアノ教室で事情を話そうとしたが、よし子さんは話を聞こうとせず、不愉快な気持ちを持ってしまった。
 橋本淳子教諭は、こんな2人の“すれちがい”を考えるため、まず、それぞれの立場から気持ちを考えさせた。
 すると、自分自身の経験などとも照らし合わせながら、「電話してくれればいいのに」「どうせ約束を忘れているんだろう」などといったよし子さんの思いとともに、「あやまっているのに」「訳ぐらい聞いてほしい」などのえり子さんの気持ちが子どもたちから出された。
 その上で橋本教諭が、「2人には何が足りなかったのでしょうか?」という問いを投げ掛けると、子どもたちはそれぞれの立場に立って「えり子さんの理由も聞いてあげれば良かった(よし子)」「2人で時間を決めておけば良かった(えり子)」などと発表。2人の気持ちを見据えながら「こうすれば良かった」という視点と方法を考えさせることで、相手の立場や心情をより深く理解できる力を持たせようとした。
 その際、えり子さんとよし子さんの状況を子どもたちがより深くくみ取れるよう、それぞれの気持ちを表したイラストを提示したり、締め括りで、自分に置き換えて振り返る力を高める学習なども工夫した。



[1月14日]

 キャリア教育で学習意欲向上に成果

 キャリア教育実践の成果は、学習意欲の向上と将来の夢を描ける生徒が増えたこと――。岩手県教育委員会はこのほど、県内の小・中学校を対象とした「キャリア教育の推進にかかわる現状調査結果」をまとめた。同県内の小・中学校のキャリア教育実施率が高いこと、その成果があがっていることなどがわかった。
 
■小・中学校で高い実施率
 同県は、キャリア教育に力を入れており、キャリア教育の全体計画を作成するなど積極的な取り組みが目立つ。この調査は昨年11月、同県内すべての小学校409校、中学校191校を対象に実施されたもの。
 キャリア教育に取り組む小学校は90.2%、中学校は86.9%と高い割合。その具体的な取り組み内容を見てみると、「全体計画を作成」が小学校87.5%、中学校74.9%、「人間関係形成、勤労観・職業観、将来設計等を位置づけた教育活動を実践」が小学校67.2%、中学校71.7%、「キャリア教育推進のための校内組織がある」が小学校51.1%、中学校74.9%となっており、同県では校内組織を確立し、全体計画を作成して、キャリア教育を推進していることがわかる。
 教育課程上の位置づけは、小学校が「総合的な学習の時間」85.1%、「教科」79.7%、中学校が「総合的な学習の時間」84.8%、「特別活動」70.7%となっている。
 キャリア教育に取り組んだことの成果については、小学校が「地域、企業、保護者等との連携が深まった」55.5%、「授業等における学習意欲の向上が見られた」51.6%、「日常の会話や挨拶等、コミュニケーション能力が高まった」47.4%、中学校が「将来の夢を描ける生徒の数が増えた」73.3%、「目的意識をもって進路選択する生徒が増えた」63.7%、「地域、企業、保護者等との連携が深まった」62.1%などがそれぞれ上位で、多くの成果があがっている様子がうかがえる。
■職場体験を積極的に実施
 キャリア教育における中心的な取り組みである職場体験について中学校における状況を見ると、実施している日数は「2日以上」が70.2%と7割を超え、「3日以上」も45.2%と半数近い。「5日」も6.9%だった。時数は1年生が7.7時間、2年生が14.0時間、3年生が9.2時間であった。内容は、実際に職場を訪れ、就労体験を行うことが多かった。成果については、「将来の夢を描ける生徒の数が増えた」が90.0%と高い数値を示している。
 一方、小学校でも職場体験の実施率が高く、52.3%と半数以上が実施している。内容は職場見学が中心で、3〜5年生で実施されていることが多い。その成果は「学習意欲の向上が見られた」が41.1%と最も多かった。
■キャリア教育でフォーラム開催
 同県教委では、キャリア教育のさらなる発展を目指し、2月10日に同県一関市立川崎公民館で「キャリア教育推進フォーラムinいわて」を開催する。一関市立山目中学校、萩荘中学校、本寺中学校、同県立花泉高校の実践発表などが行われる。



[1月11日]

 移行措置に理数教員の時数増で対応

 全日本中学校長会はこのほど、新学習指導要領移行措置に伴う課題に関するアンケートの結果をまとめた。それによれば、約80%の学校が今年度、移行措置に伴う時数増に理数担当教員の授業の持ち時数を増やして対応していることが分かった。ただ、その対応により「教材研究の時間減少」や「少人数指導等の縮減」、理科担当教員を「学級担任から外し」たり、「教務主任等重要な校務分掌に充てられなく」なったりしているなどの課題が明らかになった。
 
 調査は昨年7月に実施され、各都道府県の中学校長会事務局を通じて703校(小規模校=1〜8学級、中規模校=9〜14学級、大規模校=15学級以上の各5校、1県当たりほぼ計15校)から、「移行措置に伴う時数増への対応」や、「時数増への対応に伴う学校運営への影響」などについて回答を得た。
 その結果、「移行措置実施に伴う時数増への対応」を学校規模別にみると、小規模校上位5位の項目は、「理数担当教員の授業持ち時数を増やした」をトップに、「学校全体の教員は増やさず、人事異動により理数担当教員の充実を図った」「少人数指導・ティームティーチングの時間を縮減」「免許外教員により対応した」「長期休業期間を短縮して授業日数を増やした」の順だった。
 中規模校では、小規模校と同様に「理数担当教員の授業持ち時数を増やした」がトップだったが、2位は「少人数指導・ティームティーチングの時間を縮減」、3位は「学校全体の教員は増やさず、人事異動により理数担当教員の充実を図った」、4位は「非常勤講師が増員された」、5位は「長期休業期間を短縮して授業日数を増やした」だった。
 大規模校では、トップは小規模・中規模と同じ「理数担当教員の授業持ち時数を増やした」だった。2位は小規模校と同様の「学校全体の教員は増やさず、人事異動により理数担当教員の充実を図った」、3位は「少人数指導・ティームティーチングの時間を縮減」、4位が「非常勤講師が増員された」、5位は「長期休業期間を短縮して授業日数を増やした」だった。
 移行措置に伴う時数増を「免許外教員により対応した」割合が小規模校で特に高く、小規模校の課題となっていることが分かった。
 小・中・大規模校の全体の結果は、大規模校の項目順と同じだった。
 また、「移行措置実施に伴う時数増への対応により生じている学校運営への影響」の回答では、小・中・大規模校全体の上位5位の項目は「理数担当教員の負担増により、教材研究の時間減少などから教育の質確保が困難となっている」が最も多く、次いで「特に支障はない」「少人数指導等の縮減により、きめ細かな指導が困難となっている」「理科担当教員の負担増により、理科担当教員を学級担任から外している」「理科担当教員の負担増により、理科担当教員を教務主任等重要な校務分掌に充てられなくなっている」の順だった。「特に支障はない」は28%で、3割近くの学校が支障を感じなかったようだ。
 学校規模別にみると、小・中・大規模校に共通して、1位と2位は「教材研究の時間減少などから教育の質確保が困難になっている」と「特に支障はない」だった。3位以降は異なり、小規模校では、3位と4位は「理科担当教員を教務主任等重要な校務分掌に充てられなくなっている」「理科担当教員を学級担任から外している」、5位は同率で「少人数指導等の縮減により、きめ細かな指導が困難となっている」「免許外教員の増により、授業の質の確保が困難になっている」だった。
 中規模校の3位以降は「少人数指導等の縮減により、きめ細かな指導が困難となっている」「理科担当教員を教務主任等重要な校務分掌に充てられなくなっている」「理科担当教員を学級担任から外している」の順だった。
 大規模校は、全体と同様の項目順だった。
 小規模校では、中・大規模校よりも「免許外教員の増により、授業の質の確保が困難になっている」の割合が高く、5位に入ったのが目立った。



[1月1日]

道徳的実践力の育成目指す

 道徳の時間の特質を踏まえた授業展開と、教科、特別活動、生活指導との関連を図った指導で「かがやく子ども」の育成を実現――。東京都豊島区立さくら小学校(関口純一校長、児童数388人)は平成20、21年度の2年間、文部科学省道徳教育実践研究協力校として研究に取り組み、規範意識や道徳性にかかわる意識、自尊感情の高まりなどに手応えを感じているという。
 
■心に響く道徳授業を探る
 研究テーマは、「豊かな『かかわり』の中で輝くさくらの子―心に響く道徳授業の充実をとおして」。主な研究・実践の場は次の5点である。
 (1)道徳の時間の特質を踏まえた授業の工夫―授業研究(2)心が躍り心に響く「心の体験」の場の工夫(3)習慣化し規範意識を高める生活指導の充実(4)子どもたちの心をはぐくむ教育環境の整備(5)家庭・地域と連携を図った道徳教育の推進
■効果的な指導を多数開発
 道徳教育の要である道徳授業については、特に力を入れており、「その特質を踏まえた授業展開の工夫」を軸として多様な取り組みを展開。指導過程の基本形を押さえ、実践では次のような工夫をしているのが特長だ。
 ▽見方や考え方を深める動作化・役割演技
 ▽児童の興味・関心を高める資料展示
 ▽考えを深め広める「心のノート」の活用
 ▽資料理解を深め、多様な見方や考え方を整理する板書
 ▽互いの考えを深め合う話し合い活動
 ▽見方や考え方を広げる場の設定
 ▽多様な視点から学ぶ人材活用
 ▽心に響いた体験活動を生かす
 ▽資料理解を深める複数時間扱い
 ▽事前アンケートを生かした導入
 ▽自らを見つめる「振り返り」
 ▽児童の実態に応じて指導に生かす評価
 ▽教科等との計画的・関連的な指導
 昨年11月27日に開催された研究発表会の公開授業においても、これらの工夫が多く見て取れる授業が展開された。
■児童の前向きな姿勢を生み出す
 6年2組の西山智教諭の授業では、『お母さんへの手紙』(東京書籍)が資料となった。難病の主人公が手術を受ける前の心情をつづった母親への手紙をもとに、「生きることのすばらしさ」を感じさせる授業だ。
 冒頭、1学期に実施した、近隣の出産間近の妊婦さんによる出前授業「いのちってあったかい」を振り返り、「生命のすばらしさを感じた経験」を思い出させたのに続き、資料を読んで話し合いに入る。
 原稿用紙を拡大提示して、生きることに対する主人公の思いをより深く感じ取れるようにする「資料掲示の工夫」。小グループで主人公の思いについて話し合うことで、一人ひとりが自分の考えを表現し、かかわり合いの中で様々な意見を聞いて考えを深めるようにさせる「話し合い活動の工夫」。主人公に向けた手紙を書かせて、児童が自他の生命を尊重して生きていくことの大切さについて思考を深めているかを見取り、指導に生かしていく「評価の工夫」。
 これらの指導を展開した結果、授業のまとめで児童からは「主人公は前向きに生きていてすごい。ぼくもつらいことがあっても、前向きに生きていきたい」などの発言があるなど、生命尊重の心をしっかりつかんでいる様子がうかがえた。
 また、4年1組の伊藤はるみ教諭の授業では、資料『温かいことば』(学習研究社)を資料に、相手の立場になってものごとを考えさせる気持ちを育てる授業が行われた。
 ここでは、事前に児童に対して行ったアンケート調査の結果を示し、興味・関心を高め、ねらいとする道徳的価値の方向づけや動機づけを行ってから授業を進めた。
 展開では、児童が自分の考えや感じていることを深めたり、高めたりするために登場人物3人の気持ちを整理して板書する工夫や、児童の見方や考え方を把握するために、振り返りの場面においてワークシートを活用する工夫などが見られ、相手の立場に立って考えることの大切さに気づかせていった。
 いずれの授業も「道徳的価値の自覚」「自己の生き方について考えを深める」ということを通して、道徳的実践力の育成を目指したものであった。
■児童の声を生かした生活指導
 「習慣化し規範意識を高める生活指導の充実」の取り組みでは、児童の声を生かした「さくらしぐさ」と「さくらのルール50」が目を引く。「さくらしぐさ」は、人にやさしく人への思いやりが伝わるしぐさを、児童たちから募集し、それらをまとめたもの。一方、「さくらのルール」は、児童が「かしこく」「やさしく」「たくましく」育つようにとの願いから、これもやはり、児童の声を生かして策定した。「ガードレールや白線の内側を歩こう」「授業中は、しんけんに勉強しよう」「決められた時間を守ろう」など50のルールから成っている。
 ともに年間指導計画に位置づけ、基本的な生活習慣の定着や規範意識の高揚に役立てている。
 このほか、「心の体験」の場の工夫では、「縦割りで会食などを行う『なかよし班』活動」「児童が手作りで工夫して出展する『さくら小まつり』」の取り組みがある。
■輝く子どもの姿を実感
 これらの実践の成果を同校では、「道徳の時間の特質を踏まえた授業展開の仕方について、教員の共通理解が深まり、効果的な指導の工夫が多様に開発された」「意識調査では、児童は道徳授業を肯定的に受け止め、指導の重点にかかわる道徳性への意識が高いことがわかった」などとまとめている。
 また、関口校長は「高いハードルを越えようと本気でがんばる姿や、人への思いやりややさしさが伝わる言動から、『かかわりの中で輝くさくらの子』の姿にたくさん出会うことができる」としている。


[12月21日]

活用の授業で学習意欲を喚起

 活用力の育成には、学習内容の全体像が見通せるように、現実社会の文脈と結びつける教材開発が有効。活用の授業は学習意欲の喚起につながる――。「キー・コンピテンシーに基づく学習指導法のモデル開発に関する研究」(平成21年度科学研究費基盤研究B)を進めている研究グループ(代表・下田好行国立教育政策研究所総括研究官)は12月5日、その研究成果として、公開授業を群馬県藤岡市立東中学校(岸正博校長)で開催し、活用力の育成に向けた授業の在り方を発表した。
 
■生徒の状況に即した教材を開発
 当日は、吉田俊久埼玉大学名誉教授ら外部講師4人と、同校の金谷佳奈子教諭による4つの特別授業が公開された。
 研究テーマは、教科で学んだ断片的な知識を「ホリスティックな」(全体像と関連づけた)視点で再構成し、学習内容と現実社会を結びつける「生徒の状況文脈に即した教材開発」を柱としたもの。
■楽しく飛躍する授業で
 3年3組では、四方義啓名古屋大学名誉教授による数学の特別授業「イチローのキャッチングの秘密―放物線と落下地点の計算」が行われた。「イチロー選手が守備の際、いち早く打者のフライの落下点を予測して動けるのはなぜか」という投げかけを切り口に、二次方程式やその考え方が放物運動に必ず現れ、それが活用できることを学ぶ授業を行った。
 四方名誉教授は初めに「お手玉遊び」などの実演を通じて、自由落下させたお手玉の落下距離と時間(t)の関係を生徒に実感させ、落下距離は概算で5t2乗であることを導いた。そこから進んで、放物運動が落下運動と等速運動の合成であることを生徒自身に気づかせた。さらにピタゴラスの定理を使って、打ち上げ角度から放物運動をした物体の飛距離が導き出せることを学んだ後、二次方程式と因数分解を使って、落下地点の解を導き出した。授業は、この計算を使って、水鉄砲を離れた的に当てる実験を行って幕を閉じた。
 このように、数学と現実社会の接点とその展望を生徒に提示するため、細部や既習事項にとらわれず、大胆に飛躍し、生徒の興味を引きつけ、学習意欲を喚起する授業展開となった。 
 生徒には展開が速くて難しい授業に思えたが、どの生徒も、数学の世界の面白さに生き生きとした表情を見せていた。活発な発言をした生徒は、数学が得意な生徒だけではなかったという。
 四方名誉教授は「活用力をつける授業では、生徒を信頼して、ある程度学習内容から飛躍することも必要。また、教師自身がどれだけ楽しんでその教材の世界を提示できるかが大切だと思う」と話した。
■有用性の実感伴う学びを
 続いて、特別授業の講師らにより「学習意欲を高める学習の方法」と題したシンポジウムが行われた。
 その中で下田総括研究官は、「PISAの結果では、日本の子どもたちは、科学への関心や知識の実生活での有用性の理解が、とても低いことが明らかになった。学校で得る知識と現実社会との結びつきを、実感を伴って示す活用の授業は、学習意欲の喚起にもつながる」と話し、教科書をなぞる授業から、学習内容の全体的な見通しが持てるような活用場面と結びつけた授業への転換を求めた。
 同校の岸校長は、「活用力をつける授業ができるようになるには、生徒にその下地となる力が必要。本校では、生徒会活動の活発化に取り組むことで、普段から表現やコミュニケーションの力を伸ばす土台づくりを行っている」と話した。



[12月17日]

道徳資料の分析と「山」の設定が要

 新学習指導要領で道徳教育推進教師が打ち出されるなど、道徳教育の充実が強く求められているが、その軸となる道徳の授業づくりをどのようにしたらよいかをテーマとした研究協議が、11月に兵庫県西宮市の関西学院大学で開かれた日本道徳教育学会で行われた。道徳資料の取り扱いなどについて提案され、資料分析と「高い山」の設定がポイントとされた。
 
■道徳的価値に気づかせる資料分析
 道徳の授業では、道徳資料をどのように扱うかが授業の成否のカギとなっており、「道徳授業づくり」と題する課題研究で、そのあり方について研究協議と提案が行われた。
 まず、京都府城陽市立北城陽中学校の村田寿美子教諭が、登場人物が道徳的に変化するタイプの資料について、「道徳の授業づくりに欠かせない1つの要因は、資料分析である。その方法は、資料の特質によって違いはあるが、共通点は資料内の道徳的価値に気づかせ、自分を見つめさせることで、生徒自身に道徳性を育てることがねらいである。資料を十分に読み込み、分析することで授業を充実させたい」として、分析の手順を示した。
 「資料を読む」ことについては、(1)ストーリーを読む(2)登場人物の心を読む(3)主として主人公の道徳的変化を読む(4)人間を読む――の手順を示すとともに、「人間を読むとは、一般的な人間の姿を資料から見つけ出すことである。道徳的価値だけに注目していては、人間本来の弱さや醜さに共感的理解を示すことなく、日常から離れた理想論を展開することになってしまう。教師も生徒も、人間としての弱さをもちながらも、自分の生き方を追求する自覚があってこそ、生き方のモデルになる」と解説した。
 次に「読むこと」に続く資料分析の手順については、(1)場面に分ける(2)中心場面を決める(授業の山場を作る)(3)中心発問を決める(4)中心発問に対する「予想される生徒の反応」を考える(5)主題、内容項目、ねらいを確定する(6)場面整理をする(省く、まとめる等)(7)基本発問と期待される反応を考える――とした。
 その上で、「資料分析は、授業の展開をどうするかを考えながら行うのではなく、教師自身が自分の感性で、純粋に読み込むことが大切である。生徒の反応を通して、教師も授業ごとに資料に対する読みが深まり、自分の感じ方、考え方が変化していく。その経験の積み重ねが、道徳の授業の楽しさへと導いてくれる」とした。
■より高い価値を自覚するために
 続いて、関西学院大学の横山利弘教授が、授業構成の仕方に言及。まず、「道徳は心の教育であるから、心が育つとはどういうことなのか、はっきりさせる必要がある」として、「心は心理的、精神的働きなので、心の働き、知情意の働きを考えてみるとわかりやすい。心が育つとは、情においてこれが細やかになること、知は判断が確かになること、意は意志が強くなることである」「心の教育といいながら、行動の指導や言葉づかいの指導に終始していることが多い。知情意の働きに目を向けた指導が必要」と説明した。
 資料の選択にもふれ、「いい資料というのは、教師が読んでも心を揺さぶられる読み物である。また、授業の“山”を作ることができるものがよい。心情を育てるなら、感情の動きが出ているもの。判断力を育てるには、主人公がどのように判断したかを問える場面のあるものを選ぶ」などと、選び方について示唆した。
 授業については“山”の必要性を強調、「きょうは、ここを考えさせたい、わかってほしいというところが授業の“山”である。わからない状態から、わかる状態になって、初めて子どもたちは学ぶのである。主人公の気持ちを聞く道徳では、子どもがいまの自分で解釈できることだけを発言する。そうであれば、新しいことは学ばない。わかっていると思っていることが、本当はそうではないという部分を見いだして発問することで、より高い価値を自覚する」などと、“高い山”を作ることの重要性を述べた。
 また、教師が資料を読む際には、主人公が道徳上の問題で、どのように行動し、考え、道徳的変化をしていったのかを起承転結で構図化すると、子どもたちに何を考えさせるのかがわかってくると指摘した。



[12月14日]

 どうしたら相手に伝わる話ができるかな?

 「自分の考えや思いを豊かに伝え合う児童の育成」に向けて、2年間の国語科研究に取り組んできた、さいたま市立新和小学校(高良晴雄校長)が11月17日、同校で授業研究会を開いた。研究では、「相手、目的、場面・状況、方法、評価」の5視点の言語意識を明らかにしながら話す力を強化したり、様々なグループ編成を織り交ぜ、一人ひとりの子どもたちに発表への自信を持たせる指導を追究した。6年1組国語の公開授業では、学級討論会を開き、理由や具体例を意識しながら説得力のある話し方や相手の意図を聞き取る力をはぐくもうとした。その際、たくさんの論点を整理するためにイメージマップを活用したり、全員が討論に参加できるよう2グループの編成なども工夫した。
 
■国語科中心に全教育活動で取り組む
 新学習指導要領が謳う「思考力、判断力、表現力」の育成や、その基盤となる言語活動の充実も視野に、この研究では、国語科を中心にした全教育活動の中で、子どもたちが言葉で考えや思いを豊かに伝え合っていく力をはぐくもうとした。
 言葉のやりとりにおける5つの視点(相手、目的、場面・状況、方法、評価)に着目しながら、話す力を伸ばす学習活動を工夫するとともに、一人ひとりの子どもたちへのきめ細かな指導、支援のあり方も探っていった。
そのうち、話す力を伸ばすための学習活動では、全学年の学びで、言語意識の5つの視点を共有しながら、発達段階に応じた様々な話し合い活動を進めている。
 1年生では、ペアで互いに伝えたいもののヒントを出し、その答えを見つけるクイズ形式の授業「わたしはなんでしょう?」などを実施。相手や目的などを意識しながらメッセージを交わし、それぞれが送ったヒントを分析し、検証しながら相手に届く言葉の視点を楽しく学べるようにしている。
 ほかにも、ワークシート(聞き取りメモ)を活用し、第三者の聞き手が話し合いグループに、的確なアドバイスや良い点などを指摘できる活動を盛り込んだり、朝の会や国語の授業の冒頭に、すべての子どもたちがスピーチに取り組む「トークタイム」なども盛り込み、人前で話をする経験や友だちの話を興味を持って聞く力を育てている。
 一方、個に応じたきめ細かな指導・支援の工夫では、子どもたちの状況に応じたペア、グループでの話し合い活動を設定するようにし、一人ひとりが確実に話したり、聞くことができたりするように配慮している。
 その際、毎時間の学習を振り返るための学習カードや、学習変容を見取る補助簿なども活用し、確かな学びの定着にも役立てている。
 また、相手に応じた発声量を意識させる「声のものさし」や、「自分の考えと比べながら聞く」などのポイントを示した「聞き方・話し方」掲示物を教室内に張り出すなどして、「話すこと、聞くこと」の力をていねいに伸ばしていく工夫を施している。
■2グループで全員が討論に参加
 公開授業のうち、6年1組では、国語で、2グループによる学級討論会が行われた。討論の課題テーマは「動物園の動物は幸せか、不幸せか」。「幸せ」「不幸せ」の双方の立場に立った両グループが、その正当性を主張して検証していくもので、この時間では、特に理由や具体例を交えて、「説得力のある話し方」ができるようになることを目指した。
 前半の討論では、不幸せグループから、動物たちが自由に動けないことから、「檻の中でストレスがたまってしまう」などといった意見が出た。幸せグループからは、草食と肉食の檻が別々になっているので「安全に暮らせる」などといった意見が主張された。
 互いの意見を聞いて指導者の山崎巨裕教諭は、両グループに、意見を支える理由や具体例をもっと考えようなどと指示。すると、後半、幸せグループが、肉食動物に食べられてしまう草食動物の写真を提示し、「このように悲しいことが動物園では起こりません」と主張。逆に不幸せグループからは、園内の動物のストレス状況として、檻の柵を噛んだり、不自然に首を振り続けたりする動物がいることなどを詳細に指摘するなど、より説得力を持つメッセージの方法について理解を深めていた。
 また、様々な意見を明確化しながら、筋道だった議論を進めていけるよう、イメージマップを生かした活動も重視しているという。



[12月10日]

 企業から研修受け教師が環境講座

 静岡県御殿場市立南中学校(湯山伸彦校長、生徒数482人)では、毎年11月下旬の土曜日(週休日)に、総合学習の一環として、地域の人たちが講師となって、地域に伝わる伝統料理や芸能など様々な体験活動を行っている。今年でこの体験学習も10年目となり、現在では21講座を開設するまでに至っている。
 
 生徒は、この多様な講座の中から、希望するものを選んで参加する。
 今年はさらに充実したものにしようと、講座の1つに、探究的な活動を意識して、理科や技術・家庭科などの教科で学習した電気エネルギーを切り口にしたESD(持続発展教育)についての取り組みを設け、『TEPCO環境・エネルギー講座』と題して行った。これは、東京電力三島支社の全面協力で実現したもの。
 講座の特徴は、従来型の企業による出前講座を発展させたもので、事前に教職員を対象にした研修会を開き、この研修を受けた教職員が当日の講座の講師となること。本校でも事前研修会に校長や教頭など12人もの教職員が参加した。ほかにも、市学校教育課、社会教育課、商工観光課の人たちも受講した。
 企業人が講師役ではなく、教職員が行うことで、担当した教師がほかの学校へ異動しても講座を受け持つことができ、企業が貸し出してくれる教材を活用して、幅広く展開することができる利点がある。
 11月28日の当日は、東電三島支社から担当職員2人が来校し、火力発電と原子力発電の大型模型やヒートポンプに関する教材を生徒数分用意してもらった。講座を担当したのは技術・家庭科の松井安正教諭。2部構成で展開した。
 第1部は「エネルギーについて」と題し、身近な素材として、「レジ袋1枚を作るために必要なエネルギーを、自転車でこいで作りだすには何分かかる?」というクイズから始めた。そして、発電の仕組みについての説明では、普段の授業では用意できない火力発電や原子力発電の模型教材を使って、理解しやすいものとした。
 第2部では「環境から生物多様性」と題し、遺伝子、種、生態系の3つの観点からの説明をした。その中の生態系では、私たちの身近なものも生かされている例として、新幹線の騒音を軽減するために、パンタグラフにはフクロウが羽音を立てずに飛ぶ消音の仕組みが、早く泳ぐための競泳用水着にはサメの肌の表面のギザギザが生かされていることを、実物標本を見て実感した。
生徒は、午前中の約3時間の短い時間ではあったが、20人が受講し、事後アンケートでは生徒全員が「大いに役立った」「役立った」と答えた。「火力・原子力発電の模型がリアルで本物の発電所にいるみたいだった」「普段何気なく使っている電気が環境面に大きく影響していることに気づき、これから意識して使おうと思った」など、普段の授業とは一味違った感想を持った生徒が多かった。
 同校は、文科省から3カ年計画の「学力向上推進事業」を受けている。来年は最終年で、本発表が予定されている。総合学習はもちろんのこと、普段の授業のさらなる充実を目指し、学力向上に向けて、研修に励んでいる。



[12月7日]

 「ジグソー学習」を全学級で公開

 全国協同学習研究会(会長・杉江修治中京大学教授)、東京・東村山市立萩山小学校(山崎憲校長、児童数428人)主催による第39回全国協同学習研究大会が10月31日、「誰もが自己有用感のもてる学び合いのあり方」をテーマに、全国から100人以上の教育関係者と400人近い保護者を集めて開かれた。目を見張ったのは、同校が4年前から取り組んでいる算数科の「ジグソー学習」を全学級で公開授業したことで、協同学習による学習効果の素晴らしさを立証した。
 
    開会式では、今回の大会会長を務めた山崎校長が「協同学習は、1つの課題解決に向かって、チームの一人ひとりが自分の能力を最大限に発揮していくところが重要。しかもその能力は、自他ともに認められているものでありたい。子どもは、学校で学んだ確かな実感を求めている。そして、問題の解決のために、自分はこんな働きをしたいという自己有用感を感じたいのである」などと述べた。
 また、杉江会長は、「教師が研究した教材を『教える』のではなく、子どもが自ら習得するように『仕掛ける』ことまでを改善の視野に入れた実践研究が増えている。その中核にある考え方が『協同学習』である。ただ、協同学習は、グループ学習ではない。主体的に学ぶ態度をもち、学んだことがらを社会づくりに生かすという民主的な態度を持った子どもを育てるということが重要だ」などと強調した。
 これに先立ち、研究大会では、1〜6年生の全学級(15学級)で算数科における「ジグソー学習」の公開授業が行われた。単元は、1年生が「かたちあそび」、2年生が「長さ」、3年生が「水のかさ」、4年生が面積、5年生が「分数のたし算」、6年生が「線対称と点対称」。
 ジグソー学習とは、78年、米国のエリオット・アロンソン教授らによって考案された。学習集団を小集団に分け、「仲間による教え合い」を基本にしたもので、同校では、「グループ内で発揮される学習=協働学習の1つ」ととらえ、算数科で研究・実践した。
 ジグソー学習を実践した結果、多くの課題を残しながらも「学びを深めることができた」としている。  この後、6つの分科会での討議、学習文化研究家の梶浦真氏による「自己有用感を育てる“学び合い”の学習と指導」と題する講演があった。



[12月3日]

 道徳教育をどう推進するか

 校長の方針の下に、道徳教育推進教師が中心になって、全教師が参画できる体制の構築を――。文部科学省の谷田増幸教科調査官(道徳教育担当)は11月21日、兵庫県西宮市の関西学院大学で開かれた日本道徳教育学会第74回大会で「新学習指導要領の趣旨と進捗状況」と題して講演し、道徳教育推進のポイントなどを解説した。その要旨から、道徳教育先行実施の趣旨を押さえておこう。


 
■先行実施のポイントは
 小・中学校における道徳教育については、移行期間となる今年度から新学習指導要領による先行実施となっており、改訂の趣旨を踏まえた取り組みを推進しなくてはならない。若手教師としても、その趣旨をきちんと押さえ、的確な対応をすることが求められている。
 谷田教科調査官は、まず、今年3月に発表された日本PTA全国協議会の「教育に関する保護者に意識調査」の道徳についての結果にふれ、「6割の子どもたちは道徳の授業がおもしろかったといっている」「保護者は道徳の年間35単位時間は適当であると考えている」などの結果をあげ、「保護者は、道徳教育の授業では教師の指導の充実、心の教育の充実を望んでいる。この期待に応えてほしい」などと話した。
 続いて、小・中・高校の新学習指導要領における道徳教育の改訂の趣旨を説明するとともに、先行実施におけるポイントに言及した。
 推進体制づくりについては、校長の方針の明確化を強調し、「今回、指導計画の作成等については、『校長をはじめ』から『校長の方針の下に』と文言が改められ、校長が道徳教育の基本的な方針を全教師に明確に示すことが求められた。児童生徒の実態、学校の道徳教育推進上の課題、社会的な要請や家庭、地域の期待などを踏まえ、学校の教育目標の設定や教育課程の編成等とのかかわりにおいて、道徳教育における基本的な方針等を明示する必要がある」と校長のリーダーシップを求めた。
■全教師による協力体制を構築
 協力体制の整備については、新たに打ち出された道徳教育の推進を主に担当する教師である「道徳教育推進教師」の役割を明確化し、機能的な協力体制の下に道徳教育を充実させていくことを強調した。
 特に、協力体制については「それぞれの教師が主体的にかかわることができる体制にすることが重要。道徳の時間の充実が厳しく問われていることから、全教師が参画できる体制を構築する必要がある。他の教師との協力的な指導、魅力的な教材の開発、学習指導案の作成と検討、授業の評価などが日々の実践の中にしっかりと根づくような組織づくり、場づくりが求められる」とした。
 指導計画の作成については、改訂で道徳の内容との関連を踏まえた各教科における「指導の内容及び時期」を示すことが求められたことから、「各教科の目標、内容や教材などにおいて、内容項目とどのようなかかわりがあるかを明らかにする作業のもと、『各教科における道徳教育にかかわる指導の内容及び時期を整理したもの、道徳教育にかかわる体験活動や実践活動の時期等が一覧できるもの』を作成すると、年間を通して具体的に活用しやすい全体計画となる」などと示唆した。
 実践については、「教材や資料づくりも重要である。いいものができているので、これらの実践交流も進めていきたい。小・中学校間の交流も大事である。また、大学の教員養成段階においても、道徳の授業のよさを体感できるような工夫が求められる」などと指摘した。



[11月30日]

 気づきの質を高める学習活動を工夫

 第18回全国小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会埼玉大会が11月12、13の両日、さいたま市立春野、辻南小学校などで、「生活と総合で潤いと元気を!〜環境との出会いを通して、自ら探究する子どもの育成」をテーマに開催された。主催は、全国小学校生活科・総合的な学習教育研究協議会など。大会では、豊かな人間関係の育成と学ぶ意欲の向上に着目した生活科と総合的な学習を探究。身近な人、自然、社会と出会うための環境教育を工夫し、課題別分科会では、新学習指導要領の改訂ポイントを押さえた「学びのプロセス」「教師の役割」などをもとに、今後の実践づくりを考えた。
 
■見つける、比べる、例える
 同会の研究では、豊かな人間関係と学ぶ意欲の向上を、身近な環境の中で深めていくことを目指した。同時に、自ら探究する心を、子どもたちの気づきの質を高める中ではぐくもうとした。
 そのため、見つける、比べる、例える学習活動の工夫によって気づきの質を高めるといった学習改善のポイントが提案された。また、公開授業や課題別分科会の会場となったさいたま市立春野、辻南小学校では、子どもたちの「まちたんけん」でのインタビューなどを充実させるため、仲間同士でインタビュー練習をして、その意見をフィードバックする活動(春野小)などが報告され、各地の実践発表との意見交換などを交えて、今後の授業向上へのヒントとしていた。

■課題意識と言葉で伝える力の向上を図る
 そのうち、課題別分科会では、新学習指導要領の改訂ポイントを踏まえ、「気づきの質を高める学び」「学びのプロセス」「協同的な学び」などのテーマを設け、各地の実践報告が行われた。  体験や調べ学習を通じた言語力育成の取り組み事例では、小泉啓子島根県松江市立恵曇小学校教諭が4年生の総合的な学習で行った「環境ミュージカル」制作について報告した。
 この学習では、1年間を通した環境学習の成果を生かしながら、それぞれの子どもたちが「住みよい環境づくりのためにわたしたちにできること」を追究し、その思いをミュージカルにまとめるというもの。  1、2学期には、暮らしとごみの関係や地域の環境について体験活動などを交えて学び、それぞれの課題意識と、言葉で伝える力の向上を図った。その上で、学習記録や成果を振り返り、それぞれが伝えたいことを意見交換し、場面ごとのグループ協議を経て、みんなの思いをシナリオにまとめるようにした。  シナリオづくりでは、大まかなあらすじをみんなで話し合いながら、場面ごとのメンバーを決めたり、どんなせりふにするかのアイデアをそれぞれが考えていけるよう展開。
 そんな学習によって、どんな言葉を使えば的確に思いが表せるのかを子どもたちに考えさせ、教師も支援として表現力を高めるための比喩表現や倒置法などのアドバイスをおくるようにしたことなどを報告した。  さらに、シナリオ完成に向けた締めくくりの活動では、それぞれのシナリオを、せりふや使用資料などに着目しながらクラス全員で読み合うようにした。その後は、全員の読み合いから意見や感想を出し合って互いの表現力を磨くとともに、一人ひとりの思いをクラス全員が共有し、心をひとつにしてシナリオ完成と発表に向かえるようにしたという。  同大会実行委員会・埼玉大学附属小・齋藤博伸教諭/рO48(833)6596。



[11月23日]

 全教科で読解力向上に挑戦

 全教員が全教科を対象に「読解力の向上」を設定して、「読み取る力」「考える力」「表現する力」の3つの力を育成するという意欲的な取り組みをしてきた東京・江東区立亀戸中学校(園田満三校長、生徒数202人)は11月9日、2年間の研究成果を発表した。06年、OECDのPISAで、日本の子どもたち(15歳)の読解力の低下が浮き彫りにされたが、同校では、この難題に大胆に挑戦、今回の公開授業にこぎ着けた。研究実践の結果、(1)教員の指導に変化が生じ、授業の仕方が変わった(2)生徒の変容が感じられ、学力が向上した――などの成果をあげていることがわかった。
 
 同校は、通常学級6クラス(正規教員13人)、特別支援学級2クラスの小規模校。平成20、21年度の江東区教委の研究協力校として、「全教科で取り組む読解力の向上」をテーマに取り組んできた。
 PISA型読解力の向上に取り組んだのは、「学校では比較的学習に集中するが、家庭学習の時間は短く、趣味や遊びにあてる時間は多く、読書量もかなり少ない」という生徒たちの学習と生活の実態を、いかにして克服するかに基づいている。
 園田校長は、「PISA型読解力への取り組みを単純化し、その主な能力を『読み取る力』『考える力』『表現する力』の3つの力に焦点化し、そこに力を注ぐことで、読解力の向上の課題に対応することにした」と指摘する。
 同校では、PISA型読解力を「教材から必要な情報を読み取り、その意味を理解し、考えを深め、それらを活用して課題を解決する能力」と定義し、3つの力を通して、読解力の向上を目指した。
 これらの研究実践は、まさに学校が一丸となって取り組んだ。特に、研究推進委員会を中心に、授業研究や検証授業などを繰り返してきた。
 扱った教科は、国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育、技術・家庭、英語の9教科。その成果をみると、国語では「全体的に考えを述べたり、書いたりすることへの抵抗感が少なくなった」、社会では、「思いつきやひらめきではなく、資・史料や事実に即して考えるようになった」、数学では「文章題から諸条件を読み取り、仮定と結論との区別ができるようになった」、英語では「音読が上達し、英作文への抵抗感もなくなった」など。
 この日、一斉に行われた公開授業のうち、音楽(1年A組)と美術(3年B組)では、いずれも電子黒板を駆使した授業が行われた。見事に教師と生徒の間で学びの共有化が図られ、合唱や詩の朗読を通して、特に「表現する力」に成果を上げていた。
 研究の成果としては、(1)教員の指導の仕方に変化が生じ、授業が変わった(2)生徒の変容が感じられ、3つの力の向上が認められた(3)全教員が共通の目指す生徒像を持つことで、教育目標の実現に大きく近づけた――などをあげている。
 特に、生徒の変容が著しく、「生徒が黙って聞いているだけの授業が少なくなった。教室では、生徒が資料を読み取ったり、グループで話し合ったり、実験観察をしたり、調べたことを発表したりするなど、生徒主体の学習場面が増えた」としている。
 同校の研究を指導した堀内一男前跡見学園女子大学教授は、「生徒の学習に取り組む姿勢にエネルギーを感じ取ることができた」と絶賛していた。
 同校では今後、適切な評価の仕方を研究開発していくことなどを課題にしていきたいとしている。



[11月19日]

 地域協働学校で学力と進路を保証

 公立学校は、保護者や地域からの信頼を得ながら、共に連携して教育活動を展開し、子どもの学力保証と進路について成果が求められているが、校長は、そして学校は、これらに対して、どのように取り組んだらよいのだろうか。保護者・地域住民と連携する中で、生徒の学力と進路の保証を推進している東京・新宿区立四谷中学校(谷合明雄校長)は昨年度から、新宿区地域協働学校(コミュニティ・スクール)モデル校として実践研究に取り組んできた。放課後の基礎学力向上の取り組みにかかわる支援では、昨年度には年間延べ1100人を超える保護者・地域住民のボランティアがかかわるなど、組織的な取り組みが進められた。同校の2年間の取り組みをまとめた。
 
■オールB、オール3以上の成績に向け
 同区は今年3月に「新宿区教育ビジョン」を策定した。この中で、「地域協働学校の推進」が重要施策の1つとして示され、これを受けて、同校が平成20・21年度の新宿区地域協働学校推進モデル校の指定を受けた。
 また、同校は平成18・19年度に文部科学省のコミュニティ・スクール推進事業調査研究校として、地域の人材活用、地域の教材化に取り組んできた実績がある。
 同校が取り組む主な内容は、(1)確かな学力の獲得と学力保証(オールB、オール3以上の学力の獲得)(2)キャリア教育の推進と進路保証(自己の進路希望、適性に基づく進路指導の実践)(3)1単位時間45分、30こまによる必修教科の展開(4)放課後30分間の帯時間帯を活用した「補充と探究学習」の時間の設置および展開(5)3年間を見通した「四谷学」(総合的な学習の時間)の実践(6)事業推進部を中心とした組織的な教育実践(7)スクール・コーディネーターと連携した「地域に開き、地域と一体となった教育活動」の推進(8)幼保・小・中連携による一貫教育の推進。
■スクール・コーディネーターに依頼
 同校では各教科や「四谷学」、道徳の時間などの年間指導計画の中に、保護者や地域社会の人々の協力のもとに実施する授業を位置づけている。
 同校の学校運営協議会は、葉養正明国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長を学識経験者に迎えて、地域の民生委員やロータリークラブ、町会、同窓会などの地域関係者7人、PTA会長をはじめとした保護者代表5人、同校校長・副校長、四谷地区校長会、都立新宿高校長の学校関係者5人をメンバーとして、学校を側面から支援する活動を展開している。
 同協議会のもとに、今年度から、地域協働学校の8つの主な取り組みを実行する部署として「支援部」(取り組み内容は、教科指導、四谷学、職業講話、第7校時の数学・英語等の指導など)、「連携部」(子どもたちの健全育成と安全を目標に緑の羽根、赤い羽根募金活動、道徳授業地区公開講座、職場体験、地元のお祭りでおみこし担ぎなど)、「学校評価研究部」(生徒や教職員の自己評価、保護者・地域の学校関係者評価を基準として、第三者評価を実施する)の3つの部会が設置されている。
 昨年度には年間延べ1100人を超える保護者・地域住民のボランティアがかかわった実績がある。校務などで多忙な教員が積極的に地域の人材などと授業等の調整を行う余裕はないため、スクール・コーディネーターに依頼しておくことが、事業の円滑な推進に必須だという。
■7校時に地域ボランティアが年間を通して支援
 今年度、支援部では、スクール・コーディネーターのアドバイスのもとに、地域支援ボランティア20人が、年間を通して▽7校時(同校は45分週30こまの時程で年間を通して実施している)の数学の支援▽放課後の漢字検定教室開設による資格取得への支援▽四谷学への地域人材活用による支援▽夏季休業中の補習教室の支援▽特別支援学級の米づくり支援▽道徳や音楽など授業への地域人材活用による支援――を実施している。
 7校時の数学は、基礎・標準・発展・探究の4コースの習熟度別学習を実施。1回30分、年間約20時間分の教材は教員が準備し、地域ボランティアと打ち合わせた上で、授業で使用されている。生徒ひとりではできなかったことも、助けてくれる人がそばにいればできるようになることから、基礎クラスでの地域人材の活用は重視されている。標準・発展・探究クラスは、数学科教諭が中心となって授業が進められている。
 総合的な学習の時間「四谷学」は、3年間を通した活動。1年生は四谷地域を中心に江戸に学ぶ。2年生は鎌倉、3年生は奈良・京都といまの四谷に生きているかかわりを中心に学ぶ。漢検教室は国語の基礎学力向上をねらいとして、昨年度からスタートした放課後の取り組み。
 また、連携部では、地域参画に適した地域ボランティア活動を年間10件選出し、同時に地域の団体の責任者との調整会を実施する。1年生は全員が希望した、いずれかの活動に参加し、2・3年生は有志による参加を募っている。
 2年生対象の職場体験は、連携部委員である同校PTA会長が町会連合会の町会長会議で「地域の子どもは地域で育てる」をスローガンに学区域内の商店事業所での職場体験の完全受け入れを依頼した。地域の協力を得て、職種は飲食、理美容、ホテル、保育、博物館、トリマーなど多様なメニューで実施された。
■まちづくりの一環としての区民運動に
 支援部など各部会は、それぞれでの取り組みをほかの地区でも実施できるよう一般化するための検討を重ねた。その結果などを踏まえて、このほど、「学校と地域との連携」などについて提言がまとめられた。
 それによると、支援部の活動は、7校時の数学や四谷学への援助のほか、漢検への取り組みが計画的に進められた。人的支援体制も保護者の協力で形成できた。
 ボランティア活動は全体的に円滑に実施できた。今年度の道徳地区公開講座は2学年で地域住民による「職業講話」を実施。職業倫理について理解を深め、その延長線上で町会等の全面支援で職場体験が実現できた。
 町会等が主催する地域行事等への参加事業ができるようになり、まだ、地域の点レベルの実施状況ではあるが、同事業が都市型コミュニティづくり、まちづくりの一環として位置づけられ、保護者・地域住民と一体となった区民の運動として展開していくための足がかりができた――などと評価された。



[11月16日]

 学習評価・支援システムを開発

 財団法人パナソニック教育財団(遠山敦子理事長)の今年度第35回実践研究助成を受けた山形県酒田市立飛鳥中学校(梅木仁校長、生徒203人)では、生徒が学習意欲を継続させながら主体的に学校・家庭での学習を計画・実践していく「学習評価及び学習支援システム」の開発を進めている。授業ごとに生徒と教科担任がそれぞれ評価を積み上げ、個々の単元の学習を大切にしながら3段階評価の2以上を目指す先駆的な取り組みだ。2学期に入り、同システムの本格的な試行段階に入った同校を取材した。
 
■学習意欲向上と自主的学習を支援
 同市実施の学力調査(5教科)や全国学力・学習状況調査の結果から、同校では英語や数学に課題がみられた。生徒は宿題や復習に積極的に取り組むものの、予習に手がつかない生徒が多く、ゲームなどで勉強時間が不足している傾向が見られた。
 そこで、同校では、生徒の学習意欲向上と自主・自律的な学習活動を支援することが必要ととらえ、生徒が自己の学習をPDCAサイクルで進めるトレーニング・システムの開発を進めている。
■自己評価を通して学習計画力を高める
 生徒の学習サイクルは、(1)教科担任らが作成した「学習マップ」による学習目標の確認(2)授業の主体的な参加と計画的な家庭学習(3)自己評価の実施(4)デジタル「学習評価シート」への評価結果の入力(5)単元テストや定期テストなどの実施――の流れとなっている。
 生徒による自己評価は、「○」(よく取り組むことができた)と「△」(あまり取り組むことができなかった)で行われる。
 生徒は、朝と休み時間、放課後に、このマップに記入された自己評価結果を、パソコン教室の端末からデジタルの「学習評価シート」に入力する。すると、単元途中の「仮評定」(3段階)が自動的に表示される。この仮評定は、今後の評定の向上を目指して、生徒が学習に意欲的に取り組むことができるように工夫されたもので、同システムの特長の1つだ。単元の最後に、学び直しのチャンスを与えることによって、多くの生徒が学習目標に達成できるようになった。
 生徒の学習計画力を高めるために、月曜日から木曜日までの「帰りの会」では、その日の提出課題や家庭学習の目標時間、学習内容の予定を確認している。週末の金曜日には「帰りの会」が延長され、1週間の反省と土・日曜日の学習計画の確認を行っている。
 ただ、学習計画を立てることやその実施が困難な生徒もいることから、そのような生徒を支援する「Private Teacher制度」も実施されている。主に昼休みや放課後の時間に、1人の教員が2人程度の生徒を担当し、補充指導を行っている。
■保護者との学習状況の共有化に有効
 教科担任は、校内LANでネットワーク化された職員室やコンピュータ教室などの端末から評価結果などを入力する。この「学習評価シート」は、学習マップに対応したもので、「自己評価」「教師評価」の共通項目欄と、教科独自の「単元ごとの課題(学習ワークなど)」などの項目欄が設けられている。
 生徒は自分のIDカードと個人認証読み取り装置を使って、自分の評価シートを安全に呼び出すことができる。生徒は同シートの生徒欄だけに入力でき、教員の入力欄は生徒による改ざんができない仕組みになっている。生徒が入力した自己評価などの結果は、教員が一覧表で閲覧できる。
 教科担任は単元のまとまりごとに、授業中の様子や小テストの結果、提出物の提出状況などを総合して4観点の評価を実施し、その結果を「学習評価シート」に入力する。
 このような単元ごとの学習評価を積み上げ、年3回の定期テストと長期休業中の課題テストの結果を加味して、学年末の5段階評定が行われる。
 保護者には、7月と年度末の3月に行われる三者面談や12月の学級懇談会の機会に、生徒の単元ごとの学習状況や学年末の5段階評定を伝える。
 その際、同システムは、生徒の学習状況の共有化を図る上で、大変有効だという。



[11月12日]

 弱音を吐ける職員室を

 弱音の吐ける職員室づくりを――。諸富祥彦明治大学教授は10月31日、東京・文京区の茗渓会館で行われた日本心理検査協会、日本心理検査振興協会主催の「第17回教育講演会」(後援・教育新聞社など)で、「教師の悩みとその支援」と題して講演、保護者対応などで悩んでいる教師の支援策などについて語った。
 
■指導しづらくなった子どもたち
 まず、諸富教授は、現代の学校教育の実態を「教師受難の時代」と分析、「従前は教師というだけで子どもや保護者は言うことを聞いてくれたが、90年代以降はそれが崩れた」とし、教師の4つの悩みである多忙さ、クラス経営、保護者対応、同僚や管理職との人間関係について、次のように説明した。
 「作成しなくてはならない書類の量が、15年前と比べて約2倍に増え、その処理に時間をとられるようになった」
 「子どもが変化し、指導しづらくなった。しかっても反発がなく、フニャフニャして、緊張場面に入れない。人間関係が狭いので、クラス経営ができない」
 「教師をやめたいと思うきっかけの8割は、保護者からのクレーム、攻撃である。モンスターペアレンツとの言葉があるが、最近は父親からのクレームが多くなり、それも、たちの悪いものが目立つようになった」
 「教師をやめるかやめないかは、同僚教師との支え合い、管理職のバックアップがあるかどうかだ。これがないと、うつ病になることもある」
■保護者対応は必ずチームで
 特に、保護者対応については、「父親からのクレームは訴訟になることがある。これに対しては教委の協力を得て、法律家を交えた委員会を校内に組織し、ADR(裁判外紛争解決)を目指す必要がある」「教師は自宅の住所、電話番号、携帯電話番号を公表してはいけない。昼夜の別なく電話をされたり、押しかけられたりすることがあるからだ」「何にでも1人ではなく、チームで対応しよう。ベテラン、若手関係なくチームで対応する。家庭訪問も複数で行うべきだ。保護者と話す場合は、必ずもう1人教師がいて、話の内容をメモするようにしたい」などと提言する。
■笑顔、まめな連絡が必要
 また、嫌われる教師の要因としては、「えこひいきをする」「フットワークが重く、ずぼらである」「笑顔がない」などをあげ、好かれるためには「何かあったら、保護者にはまめに連絡する」「大きな声を出して笑う」などとした。
 保護者がクレームなどで来校した場合については「おもてなしの心」で対応することの重要性を強調し、「こういうときの保護者は、被害者意識をもっている。だから、玄関まで出向き、帰りも玄関まで送る。きちんとネクタイを締めて面会する。お茶やお菓子を用意する。そして、保護者が悪いとは思わないようにしたい」と述べた。
 さらに、ストレス解消を積極的に行うよう提唱、「ひとりカラオケは、教師の間でもブームである。これは手軽で、効果もある」「大きな声をあげながら、紙を破る」「アロマオイルを嗅ぐ。大脳に働いて効果的」などをあげた。
■「助けて」と言える職員室に
 まとめとして、このように悩んでいる教師を支援するポイントとしては、学年主任がカギであることを指摘。「学年主任がオープンな性格であると、ほかの教師が弱みを見せ、悩みを相談できるようになる。学年でその教師を支えてあげられるようになる」「いつでもあなたを受け止める、あなたを守るという雰囲気を管理職や学年主任がもっていて、苦しんでいる教師が『助けて』と言えるようになることが大事。『弱音を吐ける職員室』にすることが求められる」と、被援助志向性を重視することが必要と訴えた。



[11月9日]

 人間関係づくりで学校生活の満足度上がる

 ■「人間関係学科」を創設
大阪府松原市立松原第七中学校(糸井川孝之校長、生徒数305人)では、文科省の研究開発学校の指定を受け、7年前から新教科「人間関係学科」を創設し、人間関係づくりに取り組んでいる。  かつては荒れていた学校も、地域との連携や総合的な学習の実施、人間関係学科などの取り組みを通じて、いまでは極めて落ち着いた学校に変容している。しかも、単に落ち着いているということだけでなく、子どもと子ども、子どもと教員との関係が深まり、不登校生の減少、いじめの早期発見・早期解決が可能な状態になっている。



私たちは、子どもの変化をいち早く察知し、適切な支援を行っていくために、各学期末に学校生活満足度・ストレス反応・ストレス対処などの6つの尺度からなる「学校生活調査」、教育相談前には、被侵害度・自己効力感などを測定する「ほっとアンケート」を実施してきた。掲載したグラフにも表れているように、この7年間で子どもたちの満足度は上昇し、悩みは減少してきた。その結果、子ども同士のトラブルが大幅に減ったのである
■年間35時間のプログラムで
 人間関係学科は、参加体験型の学習である。人間関係の基礎になるソーシャルスキルトレーニング、自己認識や共感性を育てるための自己開示のワーク、問題解決のためのグループワーク、自己をコントロールするためのストレスマネジメントや感情対処、豊かな人間関係づくりのためのアサーショントレーニング、市民性を養うためのルールづくりや話し合いなどを数時間のパッケージにした年間35時間のプログラムである。  道徳の時間、総合的な学習、行事などとリンクをし、実際の学校生活に生かしていけるように組み立てている。この中では、子どもたちが楽しく、主体的に参加できるように、教員は場づくりや教具づくりに余念がない。この取り組みは、一昨年から校区の幼稚園・小学校とともに研究開発の指定を校区として受け、11年間のつながりをもとにした人間関係づくりに取り組んでいる。
■地域とともに大人モデルを示す
いまの社会は「成長社会」から「成熟社会」へと移行している。教員が熱意を込めて1つの方向を指し示せば、ほとんどの子どもたちが一斉に視線を向けてくれる時代は終わった。  生きていく上での指針が1つではなくなり、様々な基準や動機が生まれた。そして、社会はそれを容認したり促進したりしたのである。その結果がいまの社会であるといえる。  私たちは、このような社会の中であっても、持続可能な教育の1つとして、地域の中に理想の「大人モデル」や「地域モデル」を見つけながら地域の人たちとともに人間関係づくりを進めていきたいと思っている。(文責・深美隆司教諭)

   
[11月2日]

 道徳と学級活動を2時間連続で

 愛知県岡崎市立矢作北中学校(柵木智幸校長、生徒数906人)では、「自他の命を大切にし、よりよい人間関係づくりができる生徒の育成―道徳・特別活動におけるかかわり合いを中心とした授業を通して―」を研究テーマに掲げ、3年次を迎えた。道徳と話し合い活動(学級活動)の2時間連続授業を実施し、成果を上げている。
 
 研究は「岡崎市いのちの教育アクションプラン推進事業」と連動している。
 命の教育は喫緊の課題であり、本校職員も使命感をもって、実践と研究にあたってきた。
 特に文部科学省も子どもの「規範意識の涵養」と「自尊感情の向上」については繰り返しその必要性を指摘していることは周知の通りである。
 そこで目指す生徒像を「自分の学級が好きで、学校や学級ルールの中で行事や活動において積極的にかかわっていける生徒」「自他のよさに気づき、相互に意見を交わしたり、みがきあったりするかかわりのできる生徒」と設定した。
 研究主題にある「自他の命を大切に」できるように「岡崎市いのちの教育指導案事例集」にある道徳と特別活動の授業を実践研究してきた。各学期ともそれぞれ1回ずつの指導案が作られ、市内の全学級で実践されている。さらにこの授業効果を高めるため、本校では授業の「2時間化」を図った。
 また「人間関係づくりができる」ようにするためにジグソーメソッドを用いた道徳と話し合い活動(学級活動)の2時間連続授業を構想し、実践研究を積んだ。先行する道徳では、3または4クラス単位で学級を解体し、3分の1または4分の1ずつ、生徒を交ぜて授業を行う(カウンターパート学級)。後続する話し合い活動では、生徒は自分の教室に戻るが、通常の自分の席には着かず、別々の道徳を学んできた生徒の班を構成する(ジグソー学級)。そして「自分がどんなことを学んできたか」とともに、教師が与えるテーマについて話し合い、一定の結論を得る。それを全体に報告し、さらに話し合いを深める。
 手だてにおいては、「市指導案事例集の2時間化」と「ジグソー学習」を柱とし、これらの授業が奏功するように、常時の授業を中心として、さらに3つの手だてを講じた。自尊感情を育成するためにロールレタリングを年間単位で実施した。規範意識の涵養にモラルジレンマの授業を導入した。最後に、これらの道徳や特別活動の授業が、学校全体や学年の行事と連動するように「命の教育ベースカリキュラム」を、学年ごとに作成した。
 これらの実践の結果、徐々にではあるが、しかし確実に生徒たちは変化を遂げてきている。検証の手だてとして用いた「教師の見取り」においても、「学級集団心理検査Q-U」においても、また学校アンケートにおいても実証されている。
 人間関係形成能力が低い層の生徒を「はぐくみたい生徒」として、年間単位で見取ってきたが、徐々に仲間と意見交換をしたり、話し合い活動への意欲を高めたりできているのである。
 また、ジグソー学習の実践回数が多かった学年の方が、年度初めと終わりの比較において「親和的な集団」へと変化した学級数が増えたのである。
 さらに、年度初めと終わりに実施した生徒と保護者へのアンケートでは、本校の「命の教育」への理解や授業内容の浸透に関して、有意に上昇した項目が多く見られている。
 このように、いま子どもたちを取り巻く環境は、大変厳しい状況にあるが、日本学術会議が平成19年7月に出した「我が国の子どもを元気にする環境づくりのための国家的戦略の確立に向けて」と題する報告書は参考になる。
 報告書はその中で、「成育環境の変化への対応は、いずれも個別的な対策としてなされてきたに過ぎない。そのため、十分な成果が上がっておらず、体系的、また、予防的・長期的な観点から論じる必要がある」としている。
 児童虐待の解決のためには、学校・教職員が、このような長期的な視点に立ち、地域の諸機関と協力して、「子どもの健やかな成育」を前提に取り組む必要があろう。大きな成果を期待したい。



[10月29日]

 見いだす・考え判断する・表現する力を向上

 新学習指導要領の具現化も視野に、「自己を磨く児童を育てる授業の創造」を追究してきた埼玉大学教育学部附属小学校(清水誠校長)は、その成果と課題を10月13、14の両日、同校の第77回教育研究協議会で公開した。研究では「自己を磨く児童」を「自己の学びに価値を見いだし、学んだことを実生活や実社会に生かす子ども」ととらえ、(1)見いだす(2)考え判断する(3)表現する――の3つの力の向上に着目した授業改善を図った。そのうち理科では「目の前の自然に主体的にかかわり、問題解決の資質・能力をはぐくむ」を設定。5年生の単元「電流のうみ出す力」では、電流が磁石の働きを生み出すことを理解するため、電磁石の性質だけでなく、コイルの働きなどの仕組みに目を向ける実験を繰り返す授業などを行った。
 
■学習内容の価値に気づかせる
 同校では、昨年度から「自己を磨く児童を育てる授業の創造」を掲げ、各教科の授業研究に取り組んできた。研究にあたっては、子どもたちが人生に夢や自信を持てていないことや、結果だけを重視し、最後までねばり強く学んでいく姿勢に乏しいことなどが課題としてあがった。
 そのため、研究テーマの「自己を磨く児童」を「自己の学びに価値を見いだし、学んだことを実生活や実社会に生かしていく児童」ととらえ直すとともに、それに向けた児童像として、「自ら問題を見つけ、粘り強く学び続ける」「主体的に考え判断しながら問題解決に取り組む」「自信をもって自己を表現する」をそれぞれ設定した。
 この3点の児童像は、(1)見いだす(関心・意欲・態度)(2)考え判断する(思考・判断)(3)表現する(表現力)――の、はぐくみたいそれぞれの力を押さえたもの。各教科の研究では、これらのポイントを意識することで授業改善の具体化を図っていった。
 例えば、問題などを見いだすための学習では、学習対象の見つめ方や学習内容の価値に気づかせる工夫を重視し、学びを実生活・実社会に活用できるようにしたとする。4年生の理科単元「水のすがたとゆくえ」では、沸騰した水の量に着目させながら、子どもたちに「どうして水の量が減ったのか?」の予想を、根拠も含めて発表させることを繰り返した。このことで、既習内容も生かしながら、ゆげとの関係に着目した問題設定や、それを確かめたいとする意識が高まったとする。
 さらに、一人ひとりの実験アイデアをノートではなく、カードに書き込ませることで、発想が出やすくなり、互いの意見交換も活性化したとし、たくさんの客観的意見から実験の見直しにも有効に働いたことなども明らかにした。
 また、各教科指導では、子どもたちの自信を育てるために、自分自身の小さな変容に気づかせる支援を心掛けたり、問題解決的な学習では、常に学習目標(問題、ねらいなど)を意識させるようにした。
■結果を予想し検証を進める
 各教科の授業のうち、5年3組の理科では、単元「電流のうみ出す力」が公開された。この単元では「エネルギーの変換と保存」の理解のため、電流が磁石の働きを生み出す現象を様々な実験を通じて学ぶもの。そのため、学習では、電磁石の性質とその仕組みにも目を向け、コイルと鉄心の働きについての様々な実験と、その結果を積み上げていく展開を目指した。
 今時では、簡易コイルを使った前時の実験を振り返りながら、「コイルのどの位置に鉄心があれば、鉄心は磁石の力を持つか?」を考えた。
 この考察を進めるため、授業者の杉山直樹教諭は、(1)鉄心をコイル内側のコイル際に配置する(2)コイルの外側に鉄心を配置する(3)コイル内側の中央に配置する――の3通りの実験方法を提示。児童らは、最初にそれぞれの結果を予想しながら、その後、グループ実験を進めていった。
 それぞれの実験内容を押さえながらも、コイルへの鉄心配置などを様々に変え、自分なりの方法を探った児童ら。各自の実験方法とその結果、結果に基づく自分の考えを一覧できるチェックシートに、実験についてまとめ、既習内容も振り返りながら、段階的に学習の理解が深まるよう考慮した。
 結果報告では、「(1)鉄心をコイル内側のコイル際に配置する」と「(3)コイル内側の中央に配置する」で、全員が「小さな釘がついた(磁力が働いた)」と意見が一致。一方で、「(2)コイルの外側に鉄心を配置する」では、「かなり努力して1本だけついた」「全然つかない」などの意見が分かれた。
 それでも、多くの結果から、「コイルの内側に鉄心があると、磁石の働きが強くなるようだ」と共通認識するとともに、(2)の実験を「磁石の力が弱いのかな?」といった疑問とともに、再度検証する展開も進んだ。



[10月26日]

 観察・比較などで考え深め言語活動へ

 「生き生きと活動する子どもの学びを育てる」を課題に、理科・生活科の授業研究に取り組んでいる千葉県習志野市立東習志野小学校(澤田敏晴校長)は10月7日、公開研究会を行った。研究の副主題は「思考の深まりを促す表現力の育成」で、観察・実験の成果を表やグラフに整理して分析したり、発達段階を踏まえた言語活動にも工夫を凝らすなど、新学習指導要領を押さえた新たな単元開発も進めている。各学年の公開授業のうち、4年生理科単元「わたしたちのからだを調べよう」では、人の体のつくりをウサギなどの動物の体と比較して考える授業などが行われた。
 
■事実や根拠に基づく表現力に課題
 同校では長年にわたり理科・生活科の授業研究に取り組んできたが、その結果、「事実をもとに自分の考えを持つこと」や、「(実験などの)見通しを持って認識を深めていく力」「科学的な根拠に基づいて表現する力」に課題があることが分かった。
 そのため、この研究では、主題に「生き生きと活動する子どもの学び」を掲げ、子どもたちが五感を働かせながら問題に働きかける力などを育てるとともに、副主題に「思考の深まりを促す表現力の育成」を設定して具体的な授業づくりを図った。
 生活科では、自然とかかわる学習に、書く、作る、身体表現などのあらゆる表現活動を盛り込むことで、子どもたちの様々な気づきと学びへの関心・意欲を高めようとした。理科では、新学習指導要領の内容を意識しながら、観察・実験結果を表やグラフに整理し、予想や仮説と関連づけた考察を様々な言語活動の中で行うなどといった授業を目指した。
 その際、これまでの授業研究を振り返り観察・実験から結論を導き出す表現活動の工夫に力を入れたとし、「観点に沿って事象をじっくりと観察し、目に見えない力でも図や絵で表現する力」(3年)など、学年ごとに目指す表現力を具体化しながら、教材研究や表現活動を工夫した。
 また、これまでの研究成果を振り返り、問題をつかむ力をはぐくむ学習として、学びのスタート時の事象提示や出会いの場づくりを工夫したり、子どもたちの考えを深めさせたりするために、それぞれの解決方法の発案や検証の時間、さらに、場の保証や次の活動の目当てを持てるようにするための単元構成などにも力を入れた。
 各学年の公開授業のうち、1年生の生活科単元「しぜんってふしぎだね」では、学校周辺の自然探しとともに、それぞれの発見を発表したり、上級生との意見交換などを織り交ぜて、次の調査の有効な振り返りや意欲向上に生かしたりした。
■飼育しているウサギで実感的認識
 4年生の理科では単元「わたしたちのからだを調べよう」の中盤から後半の内容を3クラスがそれぞれ公開した。そのうち、3組の藤木美智代教諭のクラスでは、同単元の締め括りを実施。校内で飼育しているウサギを観察させながら、その体の特徴を興味を持って発見させ、さらに、人やほかの動物との対比を絡めながら、それぞれの体のつくりが生活や運動の違いと関連することなどを理解できるように授業を展開した。
 冒頭、藤木教諭は前時の復習として、掲示物などをもとに人の骨や筋肉の役割を確認させた。その後、「動物も人と同じような体のつくりなのかな?」という問いを投げ掛け、グループごとにウサギの体を観察させた。
 観察に際しては、ウサギの体のつくりを事前に予想しながら進めた。子どもたちも、普段飼育しているウサギの体を改めてじっくり見ようと、体をひっくり返したり、毛をかき分けたりして、首の長さや尻尾の形などを確認していった。
 そして、それぞれの発見は、ウサギをかたどったチェックシートに具体的なイラストなどを交えながら記した。実際に触れて発見した成果をもとに、発表では「ウサギの足の平は大きい」といった特徴や、「肋骨や背骨がある」「耳には骨がない」など、人体との比較を通じた体の違いや共通点などが挙がった。
 そんな意見を聞きながら、藤木教諭は続いてビデオ資料を放映した。映像には馬やライオンなど、様々な動物の体の構造が映し出され、「なぜ、ウサギの足の平は人より大きいのかな?」などと、それぞれの体の特徴的な部位の意味について、子どもたちが考えられるように促す質問が投げ掛けられた。
 すると、子どもたちからは「ウサギは跳ねなくてはいけないから、足の平が大きい」などと発言。ウサギの観察シートを生かしながら、ほかの動物の体のつくりも、それぞれの生活と密接に関係していることなどを理解したようだ。
 最後のまとめでは、足の速い動物から「速く走る方法を見つけました」や「今度は筋肉のことについて知りたい」といったそれぞれの気づきや課題も見いだされていた。



[10月22日]

 キャリア教育実践を支援

 若者の勤労観・職業観の未熟さが指摘され、キャリア教育の重要性が高まる中で、岩手県立総合教育センターはこのほど、『「中学校キャリア教育」実践の手引き』を作成した。学校現場における具体的なキャリア教育指導計画作成を支援するため、実践上のポイントや指導の方向性とそれに基づいた具体的な実践事例や指導計画などをまとめたもの。実践の推進に役立つ資料となっている。
 
 キャリア教育の重要性は強く認識されているが、学校での取り組みはまだ十分とはいいがたい。その効果的な推進のためには、キャリア教育のねらいを明確にし、全教育活動を通じて実践できるよう、全体指導計画を作成する必要があるとされているが、実際には教育課程のどこで、どのような指導を行うかといった指導内容や方法が明確になっていなかったり、職場体験などの活動が一過性にとどまってしまっているなど多くの課題が指摘されている。
 この手引きは、これらの課題を解決し、現場におけるキャリア教育の具体的な支援を目指したもの。キャリア教育の理解を目指した理論編である第1章「キャリア教育について理解しましょう」、キャリア教育の実践を支援することを目的とした実践編である第2章「キャリア教育を実践しましょう」、参考となる資料編である第3章「キャリア教育に関する参考資料」の3つの章で構成されている。
 第1章ではまず、キャリア教育について「児童・生徒一人ひとりが社会の中での役割や生き方を展望し、実現を図るために必要な意欲や能力を育てる教育」とし、その内容を、(1)発達段階に応じたものの見方や行動の仕方の育成にかかわる内容(2)自己と社会をとらえ自分を方向づける力の育成にかかわる内容(3)望ましい勤労観・職業観の育成にかかわる内容――などと説明。
 このほか、キャリア教育の必要性、どのような力を育てるか、進路指導とキャリア教育の違い、推進上の留意点、小中連携のあり方などをわかりやすく解説している。
 手引きの軸となる第2章では、キャリア教育について、推進の手順、全体計画の作成手順、全体構想表の作成手順、その視点を取り入れた学習指導案の作成、評価などがていねいに解説され、すぐに活用できる。
 例えば、推進の手順は「学校が育てたい生徒像を計画にする」→「学校教育目標、教育方針等にキャリア教育を位置づける」→「学校組織の分掌にキャリア教育推進委員会を設置」→「校内研修等でキャリア教育について共通理解を図る」→「キャリア教育の視点で教育課程を整備」→「家庭や地域にキャリア教育に関する取り組みを知らせる」→「キャリア教育の評価を行う」などとし、各段階における必要な取り組みを明示している。
 また、全体計画、全体構想表、学習指導案についても、示された手順に沿って進めれば作成できるような仕組みを示している。
 資料は、実際に学校現場で作成されたキャリア教育に関する計画などが収載され、参考になる。
 同センターでは、この手引きが学校現場で活用されることを望むとともに、キャリア教育は学校の中だけでは難しいので、家庭、地域、行政との積極的な連携を図ることを強調している。



[10月19日]

 模擬裁判など法教育の授業づくり

 東京都中学校社会科教育研究会では、模擬裁判や評議などを体験させながら、生徒たちに、法制度や社会運営に参画するための資質・能力をはぐくむ授業を探ろうと9月26日、東京・港区立朝日中学校で「法教育フォーラム」を開いた。公開授業には、都内の中学校6校、高校1校が参加。強盗致傷事件の裁判をロールプレーイングで行い、その後のグループ評議では、弁護士の助言なども得ながら、生徒たちは個々の証拠を整理する視点を学び、適切な判決に向けた話し合いなどに理解を深めた。また、教員と弁護士が顔を合わせ、法教育の授業づくりを共に話し合うワークショップなども行われた。
 
■法的なものの考え方を身に付ける
 「法教育」とは、法律の専門家ではない一般の人々が、法や司法制度と、その基礎になっている価値を理解し、“法的なものの考え方”を身に付けることを目指した教育。
 裁判員制度のスタートなども背景に、学校教育でも、法と市民としての在り方などをさらに考える学びの必要性が高まる中で、法教育では、これまで行われてきた公民的分野の内容に加え、(1)憲法、法の基本原理の理解(2)自由で公正な社会運営に参加するための資質・能力(3)日常生活で法を主体的に利用できる力――などを発達段階を踏まえ、系統的にはぐくもうとしている。
 そんな中で、港区立朝日中学校で行われた同フォーラムでは、都内の中学校6校と高校1校が参加し、生徒たちによる模擬裁判と、その陳述をもとに事件の証拠を様々な視点で評議する社会科授業を実施した。
■証拠の二面性に注意を向けさせる
 体育館に設けた模擬裁判所では、生徒が裁判長や検察官などに扮し、事件の起訴状を読み上げたり、冒頭陳述を行ったりした。事件は、男が高齢者を路上で転倒させた上、巾着袋に入れた現金を奪ったという強盗致傷事件を設定した。
 授業は、実際の裁判を感じさせながら進行。起訴内容について被告人とその弁護士は、お年寄りのお金を奪っていないと陳述。検察官は「被告人がズボンの左ポケットに自分の財布を入れつつも、右ポケットには、お年寄りが奪われたとする同額の1万円札4枚と5000円札3枚を裸で持っていた」などの状況を挙げ、事件経過を説明。被告人の弁護士からも「友人に貸した7万円の残り」であることや「奪ったとされる現金の入った巾着袋や封筒に被告の指紋が一切なかった」などの陳述をし、証人を交えた証拠の取り調べなどに進んでいった。
 その後、生徒たちは、一連の証拠と言い分をもとに、被告が有罪か無罪かを検証するグループ評議を実施。指導者の山田勝之教諭は、「ある証拠が有罪の証拠ともいえるし、そうとはいい切れない可能性もある」とし、証拠の二面性に注意を向けさせたり、「どの証拠を重要と見るかで判断が異なる」など、それぞれの証拠の重要度を考えさせたりして、話し合いのヒントを随所に与えながら、生徒たちの実りある議論をサポートしていった。
■多様な意見から総合的な判断を
 議論の結果、無罪と結論した生徒たちからは「現金が入った巾着袋に指紋がなかった」ことや、事件から20分後に2キロ先で被告人が発見されたことを根拠に「20分で2キロの移動は少々無理では」などの意見を報告。それに対し、有罪としたグループでは、現金の入った封筒にホチキス止めをしたとする被害者の証言通り、押収された封筒にホチキスの針があり、その穴、位置などが、被告人から押収した1万円札の1枚にも同じく付いていた事実などを挙げ、議論を互いに展開した。
 そして、一連の話し合いを見つめた弁護士からも「ある証拠を個別に評価するだけでなく、総合的に位置づけて考えることが重要」などのアドバイスがあり、2回の審議に有効に生かす様子が見られた。
 授業後の生徒からは、「様々な人の意見を聞くことが楽しくなった」「人を裁くことの難しさを感じた」などの感想が聞かれた。
 後半のワークショップでは、教員と弁護士などが顔を合わせ、これからの法教育について意見交換をした。
 話し合いでは、「学習には身近な題材を取り入れることが大切。そのことで、特別なものに見える『法』が社会生活に深くかかわり、必要なものであることを実感できる」などの意見が出て、教師の授業構想にも役立ったようだった。



[10月12日]

 就労体験などで高校中退者が減少

 埼玉県教委では、県内高校生の中途退学や学校不適応などへの対策の1つとして、平成18年度から、様々な体験活動を通じて生徒の目的意識や人間関係形成能力などを後押しする「自分発見!高校生感動体験プログラム事業」を実施している。同事業は、中退率が高い高校1年生を対象に5日間の就労体験を行う「フレッシュ高校生社会体験活動プログラム」と、仲間の力を集めて共通の課題を達成する“プロジェクトアドベンチャー”を生かした「ステップアッププログラム」の2つで構成。昨年度は、同事業に参加した高校20校の中退者数が全体で前年度比8.2%減となるなどの成果があらわれている。
 
■中退率が前年度比8.2%減
 高校生の中途退学などの課題を抱える埼玉県では、その克服に向けて具体的な原因などを調査。「学校生活に興味がわかない(目的意識の欠如)」「学業不適応(基礎学力の不足)」「人間関係が築けない」といった課題が浮き彫りになる中、平成18年度から、「自分発見!高校生感動体験プログラム事業」をスタートさせることとなった。
 当初のプログラムでは、先の課題を踏まえた3つの内容(フレッシュ高校生社会体験活動プログラム、リカバリープログラム、ステップアッププログラム)を盛り込んで実施。様々な職業人に学ぶ就労体験をはじめ、清掃や農作業を通じた自己の見つめ直し、グループで共に乗り越える冒険的な体験活動まで、多彩なアクティビティーを備えているのが特長だ。
 毎年、県内の高校20校(平成18、19年度は15校)が参加。生徒たちが社会に目を向けることで、高校で学ぶことの意義や目標を再確認し、仲間との人間関係づくりに役立てる、などをねらいとしている。そして、昨年度は、同事業に参加した全20校で、中退者が合わせて67人減(前年度比で8.2%減)となるなどの成果もあらわれている。
 4年目を迎える今年度の同事業では、中退率が高い1年生を対象に、5日間の就労体験を行う「フレッシュ高校生社会体験活動プログラム」と、“プロジェクトアドベンチャー”と呼ばれる、グループで協力し合いながら高い壁を乗り越えるといった冒険的な体験活動に取り組む「ステップアッププログラム」の2つを実施している。
■気が抜けない作業から自覚を深める
 そんな中、平成18年度からフレッシュプログラムに継続的に取り組んでいる県立妻沼高校(熊谷市、山本正校長)では、今年度も市内外の47事業所で、生徒が就労体験に汗を流している。同校ではこの体験を通じて、生徒たちに様々な仕事の一端にふれてもらうとともに、普段接する機会が少ない社会人とのかかわりを設け、あいさつや時間などの基本的社会ルールを守る大切さを自覚させたり、自分から人に働きかけるなど、人とかかわる上での基礎をはぐくむことを目標にする。
 さらに同校は、1年次の就労体験をもとに、2年次にはより突っ込んだ職業観・勤労観をはぐくむための職場体験を行う継続的な仕組みにも工夫を凝らしている。
 ほかにも、つまずき解消と基礎固めの学習として、1・2年生を対象に毎朝1時間の基礎・基本の学びを行う「カルティベートタイム」を実施するなど、きめ細かな教育を系統的に絡めて実践している。
 10月1日から始まった今年度のフレッシュプログラムでは、熊谷市内の受け入れ企業の1つ、ガラス製品加工の東工業株式会社で、生徒たちがほ乳びんなどの加工から箱詰めに至る一連の作業を体験した。
 ほ乳びんの箱詰めに取り組んだ生徒は、数十本のびんを束ねる機械を操りながら、次々に運ばれてくるほ乳びんを丁寧に段ボールへと収納。
 その際、生徒から「作業効率を良くするため、段ボールの配置など、身の回りを整理することの大切さを学んだ」などの気づきが挙がったほか、「ほ乳びんの中に空気が溜まっていないかを確認する検査が印象深かった。作業では気を抜くことができず、大変だったが、他の工程にも興味をもった」など、初日の緊張感の中で、仕事を通じた工夫や意識、今後の作業への期待などが芽生えたようだった。
■就労体験から卒業後に就職につながることも
 同社で、生徒たちへのサポート役を務めた同校OBは、「高2の修学旅行時に経験したガラス工芸の感動と、高1のこの会社での職場体験が重なり、入社へのきっかけとなった」など、同活動の意義を振り返る。
 また、同社業務・企画管理部の桐生竜太さんは「仕事の大まかな説明と考慮すべき状況を示すことで、生徒たちは思った以上に自分で考え、適切な作業に取り組むことを知った」とし、この活動を通じて、地域の企業としてのかかわりを深めながら、自社を理解してもらい、良い採用にもつながれば、などの思いを話す。
 同校でインターンシップなどを担当する山本美千代主幹教諭は、「地域の方に地域の子どもたちを育てているという意識を持ってもらえた。地域内での学校の存在意義も深まったようだ」などと成果を振り返り、この活動の教育的意義を、さらに浸透させたいとする。
 なお、同事業の昨年度の取り組みは、県教委が「エピソード集」としてまとめ、県内全公立高校に配布している。



[10月8日]

 専門家からアスリートの食事学を学ぶ

 体育科を併設して特色ある指導に力を入れているさいたま市見沼区の埼玉県立大宮東高校(廣川貞夫校長)では、今年度の3年生の総合的な学習の中で、トップアスリートの指導に携わる専門家からメンタルトレーニングや食事学などを直接学ぶ特別講座を実施し、生徒の学習意欲向上などを図っている。第2回目にあたる9月17日の講座では、サッカー日本代表チームの栄養士も務めた株式会社ニューレックスの菅泰夫さんが来校し「スポーツ選手のための食事学」について講義した。5大栄養素と運動の関係や試合に応じた食事の取り方などを説明し、「ダイエット」などに関した生徒の疑問にも答えた。
 
■「スポーツ講座」をさらに充実
 同校は、県内初となる体育科と普通科を併設した公立高校。体育科では様々な実技から理論に至るまでのスポーツ・体育関係のカリキュラムが充実している。種目別の専門教員の配置や豊富な体育施設などと合わせ、生徒のスポーツ・体育分野への強い意欲と関心に応えながら、その優れた運動能力を最大限に伸ばす教育が進められている。
そんな中で、これまで進めてきた3年生の総合的な学習のひとつ「スポーツ講座」をさらに充実させる取り組みとして、学外の専門家を招いた特別講座を今年度から進めている。オリンピック選手やプロ選手を指導するトレーナーや栄養士などを招き、そのノウハウや知恵を学んでもらうとともに、学業のモチベーション向上にもつなげようというもの。
 内容は、メンタルトレーニングやスポーツと食事の関係など。生徒の要望を踏まえた設定としており、体育科、普通科の両生徒が選択制で受講でき、全3回で実施される。
 講座の意義について同校では「専門家の直接指導を通じて、生徒たちが知りたいことや疑問を活発にやりとりし合う学びになれば」との思いを話すほか、「運動と栄養の関係などに着目しながら、スポーツは科学である点に理解を深めてほしい。スポーツへの認識を新たにしてもらえたら」という期待も込める。
■通常期と試合期で違う献立
 第1回目の講座では、各種スポーツサプリメントの開発や様々なプロ選手へのコンディショニング指導などに携わった江崎グリコ株式会社健康食品部の桑原弘樹さんを招き「トップアスリートのノウハウに学べ」と題した授業を行った。
 トップアスリートや自身の事例などを引きながら、効果的なプロテイン摂取の仕方や朝の目覚めを良くする方法などが伝授され、生徒からも「プロテインの飲み方を正しくすることで吸収率が上がるのにはびっくりした」など、専門家ならではの講義に高い満足感を得たことが報告された。
 そして、第2回目となる9月17日の講座では、サッカー、バスケットボールなどのトッププロチームで栄養士として活躍している株式会社ニューレックスの菅泰夫さんによる「スポーツ選手のための食事学」と題した講義が行われた。講義では、02年ワールドカップサッカー日本代表チームでの栄養士経験も交え、日本代表メンバーの実際の献立を写真で紹介するなどして5大栄養素(糖質、脂質、タンパク質、ミネラル、ビタミン)と運動の関係などについて楽しく説明した。
 各栄養素のバランスを意識しつつも、通常期と試合期での献立の違いを図で検討させ、試合期では、エネルギーのもととなる米飯(炭水化物・糖質)や、運動で失われるビタミン補給が重要として、みかんなどの果物を多めにするといったポイントなどを挙げた。
 また、試合日までの献立例なども説明し、炭水化物の摂取では、食べものの種類(おかゆ、バナナなど)と消化時間の違いについても解説しながら、「3、4時間前はおにぎり、カステラなどが良い」「直前はアメ、ブドウ糖タブレットなどをとると良い」などの実戦上の指摘をし、ほかにも、運動後における糖質補給のタイミングとグリコーゲン回復の関係を図で示したりしながら、アスリートに必要な栄養摂取法と食事の重要性について、説得力のある指導が進められた。
 この講義について菅さんは、「おやつのつまみ食いなどで食事を済ませるなど、最近、子どもたちの間で、食べることへの意識が貧しくなっているように感じる。授業では、単に良い食事をとろうと呼び掛けるのではなく、栄養素と運動の関係などにふれながら、食べることの楽しさや重要性について理解を深めてもらえれば」と語り、授業後には、生徒からの「ダイエットのための食べ方は?」との問いなどにも丁寧に答えていた。
 講義を受けた生徒からは、「試合前後に応じた食事のとり方を試してみたい」や「より細かい栄養素について理解が深まった。体育教師を目指しているので、人にもそんな知識を伝えられるようになりたい」などの感想が聞かれた。



[10月1日]

 活用学習のあり方示す

 4つのポイントで授業構想をしやすく――。福岡県教育センターが取り組んでいる「基礎的・基本的な知識や技能を活用する教科学習のあり方」と題する研究では、学習の仕組みを4つのポイントに簡略化して、活用の学習のあり方を示している。ホームページで閲覧することができ、授業を構想する際の格好の手引となっている。
 
 同センターでは、学校の教育力、特に教師の指導力の向上に重点を置いた研究を推進しており、その成果をホームページ上で公開している。
 この研究もその1つで、小・中学校の国語、社会、算数・数学、理科、外国語の学習において、単元内で習得した基礎的・基本的な知識や技能を、どのように活用していくかを示したもの。
 児童生徒の思考力・判断力・表現力を育成するため、基礎的・基本的な知識や技能を活用する学習の推進を図る方策を探ることがねらいだ。
 そのために、授業の中で「何を」「何へ」「どのように」活用すると、「どうなる」というように、学習の仕組みを4つのポイントにまとめたことが特色となっている。
 「活用」に対する考え方は、「学習対象は現実的な事象や複雑な事象になった場合に、児童生徒が既得の基礎的・基本的な知識や技能を用いて課題解決を図り、考える力を高めるとともに、知識や技能に新たな価値を見いだす」というもの。
 そこで、「活用」の学習指導では、次のように考えることが大切だとしている。
 「何を」にあたるものは、単元で習得した知識や技能。「何へ」にあたるものは教材、事象や場面など。「どのように」は、主体的追究を促進したり、言語活動を充実させたりする手立て。そして、「どうなる」は、学習の結果培われる思考力・判断力・表現力ということ。
 例を社会科でみると、「何を(知識・技能)」は「社会的事象に関する知識や概念・技能」、「何へ(教材)」は「意見交流、各活動などの自己表現の場」「異なる事象の追究」、「どのように(活用する)」は「具体的な事実をもとに理論的に解釈・説明・論述させる」「追究する視点や方法を明確にして追究させる」と示されており、この学習により「どうなる」である「社会的事象を多面的に見たり考えたりすることができる」「学び方をもとに主体的な問題を解決することができる」など思考力・判断力・表現力となるわけだ。
 同センターのホームページでは、この仕組みを用いた小・中学校の授業の構想例(実践例)が多数収載されている。その実践(単元)の「ねらい」「どのような基礎的・基本的な知識や技能を活用するのか」「そのためにどのような具体的な支援が必要か」「具体的な学習指導案」などが提示されていて、活用を軸とした授業を考える際に大きなヒントとなる。
 福岡県教育センターURL=ht tp://www.educ.pref.fukuoka.jp/



[9月28日]

 「水と生活」教材を無料提供

 水から持続可能な社会を考える――。洗剤などの生活消費財メーカーであるプロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン株式会社(P&G社)はこのほど、環境教材『水と生活』(監修・日本水フォーラム、日本持続発展教育推進フォーラム、協力・教育新聞社)を作成し、無料で提供している。
 
■社会科と家庭科で教材パッケージ
 水と関連の深い製品を製造販売している同社では、従来から、培った水に関する専門的な知識や技術などを用いて、水の節約などに関する啓発活動を行ってきており、その一環として小学校向けの「水に関する出前授業」を実施していた。
 今回、その経験を生かして小学校児童用の教材を作成。社会科、家庭科用の教材で、児童用のテキスト(ワークシート)、教師用研究編(手引)、授業で用いるパワーポイント・プレゼンテーション資料の3点で構成される教材パッケージとなっている。
 内容は、私たちの日常生活にとって欠かせない、そしてとても身近な「水」をテーマに、持続可能な社会を構築していくためのアイデアやヒントを提供。世界ではどれだけ水が使われているのか、使える水はどのくらいあるのか、水不足の国はどのくらいあるのかなど、世界における水の実態から、私たちの生活と水のかかわり、生活に使われる水がどのように確保されているかなど、水の周辺情報を収載している。
■指導要領、単元などに適合
 水問題について社会的視点、科学的視点から理解を深め、限られた資源のために自分に何ができるのかを児童に考えさせ、持続可能な社会に対し、「私たちにできることがある」ということを感じ取ってもらうことがねらいだ。
 それも、学校現場における実際の授業で、教師が活用しやすいように、社会科、家庭科の学習指導要領、学年の単元などに適合する形で作成しているのが特長。これまで学校現場での活動に取り組んできた同社が、その経験を生かしたもので、従来、企業のCSR活動で作成されてきた学校向け教材とは一線を画した内容となっている。
児童用テキストの構成は次の通り。
 ◇社会科(2種類)◇
 ▽3・4年生向け「わたしたちの生活と水」
 ▽5・6年生向け「世界と日本の水問題」
 ◇家庭科(2種類)◇
 ▽「おうちでできる節水の科学(食器洗い編I)」
 ▽「おうちでできる節水の科学(食器洗い編II)」
 教師用研究編には、このテキストをどのように活用すればよいか、具体的な学習指導案を収載。また、「持続発展教育(ESD)を理解するために」のページでは、持続発展教育を学校現場ではどのようにとらえたらよいかを説明している。
 CD-ROMで提供されるパワーポイント資料は、多様なデータが用意され、授業の内容を深めるものになっている。
 活用希望の学校に、教材パッケージは無料で提供される。問い合わせと申し込みは、P&G環境教室・教材事務局/03(3541)1058。



[9月21日]

 実社会に生きる力をはぐくむ

 群馬大学教育学部附属中学校(三田純義校長)は9月10、11の両日、「学びを生かし未来を拓く生徒の育成」を主題にした公開研究会をで開いた。研究では、実社会・実生活に生きる力をはぐくむことを視野に、生徒があらゆる教科、教育活動で身に付けた力を活用していけるようになるための授業展開や教材の工夫を追究した。その際、習得→活用→探究の流れや、各学習の横断的な展開などを重視し、国語では、論理的思考力、目的や相手に応じた意見表明力、表現力などをはぐくむために、地域をアピールする意見文の執筆などに取り組んだ。
 
■身に付けた力を活用する力に
 この研究では、学んだことを実社会・実生活にも生かせるようになることを視野に、3年間をかけて、あらゆる教科・学習活動で身に付けた力を、自ら活用する力としてはぐくんでいく授業づくりを追究した。
 そのためには、基礎基本的な知識・技能、それを生かすための思考・判断・表現力、さらに、目的意識を持って学習を進めていくための関心・意欲・態度のそれぞれの力を構造的、段階的にはぐくむことが必要として、3年間を見通した年間指導計画などを策定。各学年の発達段階や系統性に配慮しながらも、校内の学習内容や配列を、習得→活用→探究の流れに沿って改善していった。
 その際、各段階で習得すべき知識・技能を明確にし、それらが活用される場面設定を大事にしたとし、授業の中で、各段階の学びを確実に定着させるための反復練習の場を設けたり、学びの活用を意識した実生活・実社会とかかわる課題を工夫したなどとした。
 具体例としては、英語の活用段階の学習に会話イメージシートを使ったコミュニケーション活動を位置づけたり、理科の探究学習では最新の科学技術と関連させながら、調査やものづくり、野外体験をからめた課題解決学習を行ったりした。
 一方、活用力の要となる「言語力」を高める活動も各教科で重視。「教師と生徒、生徒同士での話し言葉が適切に使われる状況をつくる」などの教科共通の言語環境を整備したり、「意見→理由という順で自分の考えを簡潔に話し、書かせる」など、観点を持った指導で言語力の向上も図っている。
 ほかにも、生徒が自身の生活に結び付けた探究活動を行う「生き方総合」という学習を設けるなど、各学習の特性を見極めながら、習得→活用→探究の授業の明確化や、それに生かす教材開発が蓄積されてきたことなどを成果として報告した。
■ペアで評価し合い学びを深化
 各教科などの公開授業では、最終年度の研究を踏まえた実践が行われた。3年1組の国語では、ラジオ、テレビ、インターネットの特性を踏まえ、災害情報を入手するための効果的な手段を、根拠をもとに討議し合うパネルディスカッションの授業などが公開された。
 そのうち、2年4組の国語では、見本文の分析や仲間との評価を生かし、生徒たちがそれぞれまとめている地元群馬県のアピール文をどう充実させるかを考える授業を実施した。
 この授業では、実社会を通じた活用力の育成も視野に、生徒がそれぞれ見いだした県の魅力を県外の人などにアピールすることを想定し、説得力ある紹介文の視点や執筆力を段階的に身に付けていくことを課題にした。
 今時は、全6時間で設けた学習のうち、後半にあたる5時間目。これまでに身に付けた文章力をもとに、見本文との比較や仲間の評価を交え、生徒たちが良い文章に必要な視点を振り返り、さらに学びを深化させていく展開を目指した。
 そのため、指導した藤本裕一教諭は、冒頭、教科書教材「モアイは語る」を提示し、限りある資源の活用を指摘するこの文章の構成を生徒に分析させた。
 その際、効果的な表現として、イースター島の人口増加と森林減少の関係の記述を挙げ、統計資料やグラフにも着目させたり、序論と結論の双方で要点を主張する「双括型」の構成などをポイントとして指摘。ほかにも、効果的な体験談が有効なことなどを確認させた。
 そんな助言をもとに生徒たちは、ペアで、これまでまとめた文章を互いに評価し合い、相手に伝わる文章の視点を見定め、練り上げていった。
 尾瀬を東京の人に紹介する文章への意見では、東京電力が湿原の木道整備に協力したり、東京の人も尾瀬の自然の良さに注目している点などの記述が評価され、ほかの生徒も互いの評価を参考に、文章の追加や見直しを進めるなど、読み手を引きつける文章に、さらに磨きをかけたようだった。
 藤本教諭は、これまでの授業で、「モアイは語る」以外の題材として、自前でまとめた東京・矢切の渡しと群馬県内の渡し船を取り上げた文章を提示したことを説明。「ともすると、東京の魅力にばかり目がいきがちな生徒たちに、地元にも素晴らしい宝があることに気づいてもらい、執筆の動機づけや文章構成の見本にしてもらった」など、教材開発の工夫についても語った。



[9月17日]

 学びのナビゲーターで学力向上

 「学びのナビゲーター」で主体的な学びに導く――。東京・足立区立栗島中学校(室木忠雄校長、生徒数359人)は、生徒や保護者にわかりやすい授業計画書である「シラバス」と「評価カード」など、「学びのナビゲーター」の開発と活用で、授業改善と学力向上を目指している。
 
■詳細な学習計画書として
 研修と研究を重視することを伝統とする同校では、平成15年度から18年度まで、足立区の教育課題推進校として、「授業改善と評価」をテーマに学力向上のための研究に取り組んできた。
 この研究で得た学力向上のためのポイントは、(1)授業改善に真剣に取り組み自らの授業力を高めると同時に、精度の高い評価にしていくこと(2)生徒たちに、より学習意欲をもたせ、主体的な学びに導くナビゲーター的なものが必要である――の2点であった。
 そこで、15、16年度の2年間、シラバスの開発・作成に取り組み、17年度からは全校生徒に配布することができるようになった。
 シラバスは、各学年、各教科の単元または題材ごとに目標や学習内容、学習形態、使用教材、学習によって生徒につけたい力、評価方法などが記載され、学習の手順などがわかる詳細な学習計画となっている。その主な目的は、予習・復習のしやすさから家庭学習を促進することである。
■生徒、保護者にわかりやすく
 開発の際に最も留意した点は、12歳の生徒がこれを見て、わかりやすいと感じ、少しでも学習意欲がわくようなものにすることと、教師がシラバスを活用することによって授業改善がなされ、授業力の向上と精度の高い評価に結びつくようなものにならなくてはならない――の2点であったという。
 以後、シラバスは毎年、刊行されており、教科や教師によっては、毎日の授業で活用したり、単元の始まりや学習の節目で用いて、詳細な説明をするなどの取り組みが行われている。
 今年度も学年ごとに発行され、効果的に活用されているという(それぞれA4判50〜60ページ)。
 表紙裏には「シラバスって何」のページがあり、主体的な学びを促す学びのナビゲーターであること、保護者や地域への情報開示方法の1つとして開かれた学校づくりにも役立つことなどを説明。
 さらに、「学習意欲を高める」「生徒や保護者にわかりやすい表現で説明している」「授業改善に役立つ」「学校への理解と信頼につながる」「学校改善に生かす指標となる」などと特長を示している。
■評価カードと到達度確認テストも
 このシラバスとともに、授業改善と学力向上を支えているのが「評価カード」と「到達度確認テスト」だ。評価カードは、シラバスを活用していく中で、評価の対象となるものだけを抽出して作成したもの。各教科の単元ごとに観点、評価の材料、つけたい力とその評価(ABCの3段階)が示されている。
 各単元の目標を達成できたかを測るために、単元終了後に到達度確認テストを実施。テスト後、授業中の評価と合わせてその単元の評価を評価カードに記入。このカードをもとに、どこをどのように復習すればよいかをアドバイスする、というのが活用の流れだ。
 単元ごとの到達状況と改善点をいち早く把握させることをねらいとしており、シラバスと一体化させた活用を進めている。評価カードは、三者面談、学期末、学年末の年4回、保護者に手渡しており、これにより、保護者は子どもの「伸びた観点」「不十分な観点」がわかるようになっている。
 これらの活用について生徒たちの反応は、おおむね良好。シラバスについては、「年間の授業の内容が書いてあってよい」「勉強の内容がわかるので、予習するのによい」、評価カードについては、「苦手な観点や得意な観点が見やすい」「どこに力を入れ学習すべきかがわかる」などの意見を得ている。
 同校では、今後、これらのより有効な活用について、研究を深めていくという。



[9月14日]

 「わたしメッセージ」や「勝負なし法」

 相互理解を通じた豊かなコミュニケーション力をはぐくむための支援を行っている親業訓練協会(高木幹夫会長)は8月6、7の両日、同協会の「教師学講座」などを受講した教員らによる事例研究会を東京・武蔵野市の亜細亜大学などで行った。子どもたちとの人間関係づくりや授業活用例などが発表され、教師と生徒が率直な思いを明らかにしながら、クラス全体の絆を徐々に深めていけた事例や、「教師自身も考えや状況を率直に子どもたちに伝える」などのポイントが提案され、教員と子どもが信頼し合うコミュニケーションに理解を深めた。
 
◆相互理解で豊かな関係づくり
 同協会は、家庭や学校で、子どもと親・教師が互いを理解しながら豊かなコミュニケーションをする力を身につけてほしいと「親業講座」「教師学講座」などを開いている。講座はもともと、豊かな親子関係に向けた「親業講座」からスタートし、現在は、教師と子どもの絆を深める「教師学」や、中・高校生同士の「ユース・コミュニケーション」へと、対象と手法を拡大。豊かな人間関係をはぐくむことが質の高い授業にもつながるとして、各地の教員がクラス運営に役立てたり、実践などに生かす動きも広まってきている。
 講座はアメリカの臨床心理学者トマス・ゴードンの理論を下敷きに、(1)聞く(2)話す(3)対立を解く――という視点に着目したかかわりのスキルを磨くもの。
 「聞くこと」では、子どもの心を開き、本当の思いを話してもらうために能動的な聞き方を意識し、「話すこと」では、親、教師の権威による押し付けではなく、気持ちを素直に伝え合う「わたしメッセージ」を大事にすることなどがポイントになる。
 また、子どもの欲求と親・教師の思いがぶつかる状況下での「対立を解く」交流として、双方が納得できる「勝負なし法」を用いることなどを指摘。教師による一方的な権威の行使でも子どもたちの自由放任でもなく、相互理解を柱に、互いが思いを伝え、理解し合うためのコミュニケーションを提唱している。
 そして、各講座では、参加者が大人と子どもの役をそれぞれ担い、実際に声に出して反応を確認し合う体験学習を重視する。そのため、良いコミュニケーションの考え方とスキルを実感的に学ぶことができ、実際の授業に生かしやすいという特性を持つ。
◆宿題忘れに教師学を応用
 今回の事例研究会では鹿児島純心女子中学校の園元恭子教諭が、生徒たちの“宿題忘れ”という課題解決に教師学を生かした事例を発表した。
 同教諭は、これまでの指導で生徒たちに投げ掛けるメッセージが漠然としたものだったことを反省し、例えば「あなたがワークの復習をしていないと英語の基礎文法が定着しないことが心配よ」などと、生徒の行動で嫌だと感じたことと、そのために生じる具体的な影響を率直に投げ掛ける「わたしメッセージ」を意識した交流を取り入れることでクラス運営を改善したと報告。
 さらに「勝負なし法」というコミュニケーションでは、「ワークをしない生徒がいることで先生は困らないが、そんな生徒を見捨てられない思いもある」という教師の考えを生徒に率直に話す一方、「毎日宿題が多くて終わらない」「みんな宿題は嫌だけどやっている」など様々な生徒の言い分や思いを表明させるようにした。
 そんな、みんなの気持ちの尊重と共有を図ることで、宿題を忘れた子も「自分が怠けたせいでやってきた仲間を待たせ、みんなに申し訳ない」との反省を表明し、「全員揃ってから答え合わせをする」「学級委員がワークの提出日を目につくよう黒板に書いておく」など、それぞれを理解しながら、納得のいく解決策を見いだせるようになったことなどを話した。
◆生徒同士で聞く・話す力を高める
 ほかにも、各校の実践を紹介するポスターセッションも開催。生徒同士で聞く力、話す力を高める「ユース・コミュニケーション講座」を取り入れた横須賀学院中学校の報告では、全1年生を対象に良好な関係を結ぶための「能動的」「受動的」なコミュニケーションの訓練を行い、それぞれの思いをきちんと伝えつつ、相手の考え方も受け止める豊かな表現力をはぐくんでいるとした。
 いじめや不登校など多数のテーマで“教師学”が学校や授業でどう生かせるかを話し合う意見交換会も行われ、「授業・学級経営への活用」を話し合ったグループでは、「子どもの思いに耳を傾ける大切さを知りつつも、そうできない状況に悩んでいる。一方で自分の思いを表明し、子どもたちに知ってもらうことも大事なことだと実感した」などの意見が出されていた。



[9月10日]

 言語力を高めはぐくむ授業

 言語力をはぐくむ授業はどうあったらよいか――。財団法人学校教育研究所(長谷川貞夫理事長)は8月29日、東京・文京区の筑波大学附属小学校で、「誰もができる子どもの言語力をはぐくむワクワク授業づくり」をテーマに、「第3回RISE実践セミナー」(後援・東京都教委、教育新聞社など)を開催した。基調提案、公開授業、研究協議などでテーマに迫った。
 
■夢中になれるもので授業を
 セミナーは、早稲田大学の露木和男教授の基調提案「言語力をはぐくむワクワク授業づくりとは」でスタートした。
 自然の事象全般をテーマに、フィールドワーク中心の科学的探究活動を軸とした学習活動を子どもたちに提供している同教授は、子どもたちが言葉で表現する意欲を増す対象について、「経験を通した具体的なものであること」「1回性のワクワクするもの」「対象と一緒になれる、夢中になれるもの」などと説明した。
 また、言語力をはぐくむ授業の条件としては、「子どもの『私』を受け入れる」「ゆるぎない自己確認への共感」「言語で表現したいという内容の充実を図る」「その時々を精一杯生きようとしている子どもを温かく見守る」などをあげ、「考えるという脳の見えない働きは、すべて言語で成り立っている」と説明した。
■ほたるの成長写真で比べる
 公開授業を担当したのは山口県下関市立小月小学校の香月正登教諭。筑波大学附属小学校2年生を対象に授業を行った。
 取り上げた単元は、小学校2年生「国語」の「並べて、比べて読もう!」(学習材=『ほたるの一生』(ささきこん著、学校図書2年上の教科書に収載)。
 授業のテーマは「学習材の特性に応じた『思考の場』づくりによって、説明文『ほたるの一生』の順序や対比に着眼し、言語力を高める授業を考える」というものである。
 ほたるの成長の順序や対比に注目して話し合うことを通して『ほたるの一生』に対する筆者の見方に気づかせ、文末に新たな段落を加えさせようということがねらいだ。
 教科書には「たまご」「幼虫」「さなぎ」「成虫」のほたるの成長過程を表す6枚の写真が収載されており、これを教材に、成長の順序などを考えさせるのが授業の主な軸だ。6枚の写真資料を話し合いの話題としながら進めていった。
 授業は、「写真に合わせて、成長の期間を表わした線分図を並べる」〜「成虫の『10日間』の配置について話し合う」〜「『成虫になってから』と『成虫になるまで』を対比し、筆者の見方が表れた表現を探す」という展開。
 同教諭の的確な問いで、子どもたちが写真の順序を整理してとらえること、「成虫の10日間(産卵)」をほたるの一生のはじめにするのか終わりにするのかを考えること、「ようやく」「いよいよ」などの言葉から筆者の見方を探ること、などを「思考の場」として子どもたちの思考、表現が広がっていく様子がうかがえた。
 研究協議で同教諭は、「授業は少々盛り込みすぎであったが、子どもたちはよく考えてくれた」とまとめていた。



[9月7日]

 ロールプレイで実感を伴う理解

 東京都小学校社会科研究会(久保田福美会長)は、新学習指導要領の視点の理解と実践講習による授業力向上を図る夏季研修会を8月18、19の両日、東京・中央区立日本橋小学校で開催した。分科会では、都内教員が学年ごとに授業を紹介。ロールプレイを通じて子どもたちが警察、消防などの仕事にふれ、それぞれの役割や協力体制について実感的理解を深める事例などが報告されたほか、“子どもが食いつく学習問題”などをテーマに、参加教員のスキルアップに役立つ交流会なども行われた。
 
■消防署などの役割担わせて思考を深める
 研修会には、都内の小学校教員が参加し、新学習指導要領の内容を確認しながら、これから求められる社会科教育への理解と実践力を高めようとした。そのうち、学年別分科会では、楽しい活動を取り入れた授業アイデアや共感的に考える力をはぐくむ知恵などが提案された。
 単元「販売・生産」の“わたしたちのくらしと商店の仕事”の事例を発表した世田谷区立太子堂小学校の辻慎二教諭は、学区内に昔からある商店街に着目し、子どもたちに各商店を取材させる授業を展開。取材活動は、グループごとに、仕入れ先や努力していること、うれしいことなどの調査項目を定めながら行い、まとめと発表会を通じて、それぞれの意見を分かち合えるようにした。
 様々な意見を検証し合いながら、商店が行っている販売の工夫への理解が深まったという。
 また、江戸川区立大杉第二小学校の渡辺智史教諭は、実りある学びのために「つかむ→調べる→まとめる」という流れを大事にした学習を設定。ロールプレイを交えながら、事件・事故などの対処に関係機関がどのように連携し、立ち向かっているのかを理解させる授業を発表した。
 授業では、事故発生を想定しながら、子どもたちに警察署や消防署の消火係などの役割をそれぞれ担わせ、その際、「どのようなことに気をつけたか」を役割ごとのチェックシートにまとめ、発表させた。
 一方、このロールプレイでは各機関の動きを客観的に見つめるグループも置き、第三者の意見を生かした検討の工夫を行うことで、各機関の対処を深く理解できるようにしたことなどを挙げた。
■身近な学習材から疑問を生じさせる
社会科での表現活動と評価をどうするかや、地図・地球儀の使い方など7つのテーマを設けた交流会では、参加教員の授業力向上や教材研究の後押しを図った。
 「子どもが食いつく学習問題」を指導した桑原利夫同研究会元会長は、冒頭、「一人ひとりの子どもに確かな学力を身につけさせるためには、『問題解決型の学習』を重視する必要がある」ことを指摘。
 その上で、問題解決型学習を成立させるためには、「各単元の目標・内容を教師がしっかり理解する」ことや、「つかむ→調べる→まとめる」という子どもが主体的に学ぶための3段階の学習を設ける必要があることなどをアドバイスした。
 また、タイプ別の学習問題についても説明し、「聖武天皇は1200年も昔に、どうしてこんなに大きな大仏を造ったのだろう」など、論理的な思考をベースに「なぜだろう?」という原因追究を促す「疑問直結型」、「働く人の苦労や工夫が分かる紙芝居を作ろう」という「作業型」などを挙げ、それぞれの特性を踏まえ、子どもたちに応じた学習設定を行っていこうなどと呼びかけた。
 そのほか、子どもの知的好奇心を誘う教材や資料提示の工夫として、歴史上の複数の事実を対比しながら、その「矛盾点」や「変化」に着目させることなども挙げた。
 「社会科で身につける基礎・基本」について説明した松田博康同研究会元会長は、子どもたちが実感を持って学びを進めていけるように、見学や取材などの活動や、地図を使った読図指導などを段階的に組み込むことを指摘。
 指導計画では、「つかむ→調べる→まとめる」の学習過程を大事にしながら、「つかむ段階」では、子どもの実態に合わせた学習問題を設けて興味・関心を引き出そうと呼びかけ、地域に残る遺跡や学校の1日のごみの量など、身近な題材から疑問を生じさせる学習材の開発などを訴えた。
 さらに、「調べる段階」では、資料の比較や関連づけなどの“調べて考える”活動を重視し、ゲストティーチャーをうまく活用するのも効果的だとし、「まとめる段階」では、パンフレットや紙芝居など様々な表現方法を中学年から指導しておくことや、学習計画を立てる前にどのようなまとめにするかを提示しておくことが大事などと話した。



[9月3日]

薬物乱用防止教育で研修会

 薬物についての基礎知識を踏まえ、現状をリアルに知ることで青少年への薬物乱用を防止しようと、8月17日、「薬物乱用防止教育研修会」が東京・文京区の文京シビックホールで行われた。主催したのは、薬物のない世界のための財団・日本支部。教育新聞社が後援した。大学生の大麻使用や芸能人の覚せい剤乱用をはじめ、公立中学校の副校長までもが現行犯逮捕される中で、研修会に参加した中学・高校の教員、関心の高い市民らは、薬物の種類や症状、子どもたちを誘引する合法ドラッグなどの誘い文句の真意、予防教育のポイントなどについて、熱心に学んだ。
 
■基礎知識をレクチャー
 研修会で薬物の基礎知識をレクチャーした同財団・日本支部顧問の藤根元さんは、学校への出前授業も行っている。
 藤根元さんはまず、薬物乱用で相貌が一変した男女の写真を投影。ひっかき傷が多いのは、薬物を取り込んだ体内では、血液が泡立つように早く流れていく感じがするので、それがかゆみとなって皮膚をかきむしってしまうのだと解説。
 引き起こす症状によって薬物を大別すると、(1)興奮剤(覚せい剤、MDMA)(2)抑制剤(ヘロイン、大麻)(3)幻覚剤(LSD、シンナー)。覚せい剤は「スピード(S)」「アイス」、MDMAは「×(バツ)」「ラブドラッグ」、大麻は「草」「チョコ」、LSDは「エル」「紙」などの俗称で流通していると説明。液体状のLSDが「紙」と呼ばれるのは、絵はがき状の紙に染み込ませて売られることがあるから。小片を切り、口の中で噛んで使用し、これにより至高の幸福感か、死の恐怖を味わう幻覚のどちらかがほぼ16時間続く。恐怖の幻覚がそれだけ続くと精神に異常をきたしやすいという。
 このようなドラッグはネット上で隠語で売買され、入手が容易になっている。「『×2諭吉2』との掲示があれば、×(バツ)2はエクスタシー(MDMA)2錠、諭吉2は2万円といった意味になる」という。
■誘い文句の真意
 “合法ドラッグ”については、現行の取締法で列挙されていない法の網をくぐり抜けた化学合成された薬物であり、薬物であることには変わりはなく、取り締まられると化学組成を微妙に変えて流通させ、有害な混合物などが加えられることもあると説明。駅の周辺や路上で「なんか悩み事ない? やせたいとか?」「集中力がつくよ」などと、女子中・高校生などが思わず関心を示すような言葉をかけ、「このサプリメント、効き目あるから試してみて。最初だからあげるよ。また欲しくなったら、2時間後でもいいから電話ちょうだいね」などと誘ってくるという。
 こうして手渡される合法ドラッグの錠剤は色がきれいで、人気ブランドの偽ロゴやアニメのキャラクターが刻印されている、かわいらしさを装ったもの。
 「2時間後にでも」との誘い文句の裏には、摂取後の高揚感などがほぼ2時間で切れてしまうので、同じような感覚が欲しくなり、それを求めて再び使用すると、次第に使用量が増えていき、依存度を高めていくというからくりがある。
 さらに、注目しなければならない点として「フラッシュバック」について言及。
 薬物は、摂取をやめても脂質内に微量な成分が長く残留し、薬物を使用したときの情景や音などをきっかけに、幻覚などがよみがえってしまう。これがフラッシュバック。10年間薬物をやめていた女性が、パーティーの会場でてんぷらを揚げていたとき、手のひらからゴキブリが次々にはい出てくる幻覚のフラッシュバックに襲われ、両手を高熱のてんぷら油につっこんで大やけどを負ってしまった悲惨な事例などがあると話した。
■基礎知識を踏まえ真実を伝えて
 藤根さんは、自身も薬物乱用で苦しんだ。「中学生のとき、先輩に囲まれて勧められるままに薬物をやってしまった。1人だけ断っていた大の友人はひどいいじめに遭って転校したので、親友を失ってしまった。親に頼み込んで部屋に監禁してもらい、一生懸命に自分とかかわってくれたすべての人を思い出したとき、こんなに涙がでるのかと思うほど泣いて、なんとか立ち直ることができた」と語った。
 参加者の1人で中学校保健体育の教師から「薬物についての授業で、体験者が語る映像を生徒に見せると、『薬物やっても、この人たち立ち直って『やっちゃだめ!』と話しているでしょ。ちゃんと立ち直れるんだったら、少しぐらいやっても大丈夫じゃない』と言った生徒がいた。この生徒に、しっかりしたことが言えなかったが、どう伝えたらいいのか」との質問があった。
 これに対して藤根さんは「立ち直った人の話だけでなく、依存や再犯率の高さ、フラッシュバックの深刻さ、リハビリのたいへんさ、人間関係や信頼など失うものの大きさも含めて、生徒に真実を伝えてください」とアドバイスした。




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