管理職研修「審査論文をどう書くか」(89)

審査論文テーマ

教職員の精神疾患による病気休職者数は依然として高い水準にあります。教職員が心身ともに健康で、自らの能力を十分に発揮し、よりよい教育活動を実現するためには、メンタルヘルス対策の充実と推進が不可欠です。メンタルヘルス不調の原因をどうとらえ、予防について、教頭としてどのように取り組むか、具体的に述べなさい。


厚生労働省は、「メンタルヘルス不調」について、次のように定義している。「精神及び行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活及び生活の質に影響を与える可能性のある精神的及び行動上の問題を幅広く含むもの」。この定義を踏まえれば、不調を個人の性格や学校という職場の特殊性をもって片付けてしまうことはできない。

論題には、メンタルヘルス不調について、①「原因をどうとらえるか」②「予防についてどう取り組むか」の2点で、教頭としてどう対処するかを書き述べていきたい。

以下にその具体例を示す。

はじめに

教頭は職員室の担任と言われるように、職員の様子を目にかけ、気にかけることが仕事である。そこで、顔色や表情を観察するなどして、不調のサインがないか見取ることが重要である。変化があれば決して先送りせずに、速やかにこちらから話しかけたい。そして相談にのる際に、指示や助言以上に大切にしたいことは、傾聴する姿勢である。上手に話を聞くことで、ストレスが軽減され、自分の思いを共有、共感してくれる人がいることで気丈になることが期待できるからである。

一方、不調の発生には、複合的な要因が関連する。日頃から優先的に注意を払うべき要因を捉え、その要因ごとに予防の手だてをどう講じるかが重要になる。そこで、三つの視点を挙げ対応や予防策について述べる。

1 人間関係と相互支援

他者への心遣いや同情、配慮や共感などがうまく機能していることは、よりよい人間関係づくりにとどまらず、相互支援により、生産性の向上に大きな影響を及ぼす。「風通しのよい職場」はメンタルヘルス上望ましい職場とされているが、安心感や自己有用感が醸成されている職場は、不調の予防効果があると言える。

こうした雰囲気が生じるためには、影響力のある人が、いわゆる思いやりを示すことで効果が上がる。とりわけ職員室にいることの多い教頭の気分や態度は、職場の雰囲気に影響する。あらゆる職員に平等に思いやりと柔軟な心をもって接することを心がけたい。人間関係と相互支援をもって、風通しがよく生産性の高い組織の構築、ひいては不調の予防につなげていきたいと考える。

2 在校時間のモニタリング

変化を早めに察知するのには限界もある。そこで活用したいのは個々の在校時間の情報である。長時間労働は不調の要因であるが、不調に至る過程で生じるサインの一つでもあると心したい。

現任校では、最終施錠者は職員室の出入り口に掲示された表に、氏名と退校時刻を記録している。それをもとに、役職や学年主任が声かけをする。大変なことでも起きたのか、どんな仕事に時間を費やしたのか、進捗(しんちょく)状況はどうなのか、といったことを聞き取り、改善のための手だての一つとしている。

また本市では、校務支援ソフトを使って職員の在校時間を、毎日モニタリングできるようになった。この仕組みを大いに活用して、きめ細かなモニタリングに心掛けたい。職員個々の心身の健康を守るため、変化の兆しを早めに察知するために、モニタリングを生かし不調の予防にとなる個々への助言に努める。

3 業務改善のためのマネジメント

学校現場における課題は、多様化している。業務における効率や専門性の向上のために、教員だけでなく、さまざまな職種の専門性を頻繁に活用するようなった。スクールカウンセラーや通級指導員、スクールソーシャルワーカーなど教員以外の人材や組織の活用をマネジメントするのは教頭の役割である。教務主任や特別支援コーディネーターとも連携して、組織的な対応をもって個々の負担感を軽減したい。

また、校務分掌の編成には、職員が特性を発揮できることに加え、仕事の偏りを精査し、年齢や在校年数を踏まえ、持続発展性を重視することが、管理職の役目として重要な視点である。その分掌に直接関わる者の意見も参考にして、安定した現状に保守的にならず、建設的に見直していくことは、不調の予防策として重要である。

おわりに

「ワークライフシナジー」という言葉がある。仕事と生活を充実させて、相乗効果を起こそうという、ワークライフバランスを発展させた概念である。仕事と生活、両面のバランスをとりにいくのではなく、それぞれを充実させ「相乗効果」をねらうものである。私は教頭として校長の指導のもと、メンタルヘルス不調に対して、積極的に取り組む所存である。