(読者の窓)目指せ110点

銘酒として知られる八海山の蔵元では、お客さまに満足いただくお酒を造るために、造り手として常に心掛けていることがあるそうである。

ある年、仮に95点と5点分マイナスのお酒を造ったとしよう。おそらく、多くのお客さまはそれに気付かないであろう。また、手間も掛からず楽にでき、利益も増えるかもしれない。しかし、造り手本人は、手を抜いてしまったという曇りが心に残ることになる。

問題はここからである。翌年からは、その手を抜いた95点のお酒が、今度は新しい100点というラインになってしまう。そして、またその翌年は、再び95点のお酒を造り、新しい100点のラインができる…。

これでは、もともとのお酒の品質からすると、90点にも満たないお酒になってしまっている。

では、常にお客さまに喜ばれる質の高いお酒を造るには、どうすればよいのであろうか。

それは、造り手が心に一点の曇りもなく、常に110点を目指し、酒造りを行うことだという。こうした弛(たゆ)まぬ努力があるからこそ、銘酒として親しまれるのである。

教育も同じである。働き方改革が叫ばれる中、時間的な縮減は大いに図られるべきである。しかしそれで、教育の質が低下しまては、学校への信頼は失われてしまう。

こうした時代だからこそ、教育のプロである私たちは、子どもたちの笑顔を心に、常に「110点を目指した」より質の高い教育実践を進めていくことが大切である。

(沼部達也・名古屋市立あずま中学校長)