管理職研修「審査論文をどう書くか」(90)

審査論文テーマ

近年、異常気象が増え、学校が災害に巻き込まれる危険性が増大しています。また、従来の学校教育活動中や部活動中の事件・事故への対応など、さまざまな学校を取り巻く危機に対応しなければなりません。一方で、守りに入る学校経営に終始していては、教員の意欲も上がらず、発展も期待できません。最大の教育効果を発揮していくためのリスク・マネジメントを教頭の立場でどのように行っていくかを具体的に述べなさい。


審査論文は、テーマの中に示されている課題を見極め、正対している内容で書かなければならない。

今回のテーマから読み取れる課題は、「最大の教育効果を発揮していくためのリスク・マネジメントの方法」である。このように課題をとらえたとき、単にリスク・マネジメントについて論ずるだけでは解答として不十分である。

ここでは、「教育効果」という視点を加えながら、マネジメントの充実を図るという論で書くことがポイントとなる。

そこで今回は、「過去の事例に学ぶ」「危機管理への共通理解と連携」「環境面からのリスク予測」の3点を柱に、小学校教頭の立場でリスク・マネジメントの充実を図るという例文を次に示す。

はじめに

学校は大切な児童の命を預かる場であり、安心と安全の確保が大前提であるため、リスク・マネジメントが推進されている。ただ、リスク・マネジメントによって危険を取り除くという考え方は、教育効果という視点から考えたとき、困難を生じる場合がある。

例えば、校外学習には交通事故のリスクが伴う。危険を取り除くために校外での学習を制限すれば、教育効果の減少が危惧されるのである。

そこで教頭として校長の意をくみ、これまでのリスク・マネジメントを、教育効果という視点を加えて充実させるための対応や具体策を述べる。

1 過去の事例に学ぶ

情報の収集は、リスク・マネジメントには欠かせない。現任の小学校でも、天候や気温、健康観察記録や校内安全点検簿、登下校調査などから、児童、校内、通学路の情報収集を行っている。今後はさらに教育効果の視点も加え、過去の事故や災害の事例収集に努めたい。

私自身、小学生の徒歩遠足を計画する際、過去に同様のコースで実施したときに発生した問題や事故の情報を集め、発生原因を分析し、休憩場所を変更したことがある。このとき、想定されるリスクの内容や、事故が発生した場合の具体的な対応策が明らかになった。これにより、学年の融和を図るレクリエーションを加えることができた。

この経験から、自校情報に加え、教育関係諸機関提供の過去の事例を収集、分析し、活用できるよう準備しておけば、より多くのリスクの想定や対応策の具体化が期待でき、教育効果の最大化が進められると考える。

2 危機管理への共通理解と連携

リスク・マネジメントの充実を図るためには、危機管理に対する教員の共通理解に努めるとともに、教員と保護者、地域との連携推進が必要である。

現任校では、学校安全を担当する中核教員が校内危機管理研修を企画している。研修を通じて校内安全計画の確認、危機管理マニュアルの周知徹底が図られてきた。

教頭として、遠足の例のように、収集した情報を基に、想定されるリスクやその対策について、教員同士が協議する場を研修内に設定するよう指示する。教員自身が主体となって具体的な場面を想定することや、危機管理に対する教員同士の共通理解を図るためである。特に、教員が協議を経ることで、遠足にアイデアを加えるような教育効果の最大化も期待できる。

また、教頭が窓口となり、危機管理マニュアルについて保護者や警察、消防などとの情報交換を進めたい。学校の対策に理解や協力を求めるとともに、専門的な意見を受け、危機管理の充実を図るためである。

3 環境面からのリスク予測

リスク・マネジメントの充実を図るとき、環境整備の面からリスクを予測することが重要である。

教頭として、安全点検の充実に加え、環境と予測される事故の重大さの関係を重視していきたい。環境を原因とする過去の事故事例を参考に、児童の死亡や重大な障害につながるリスクから軽微なリスクまでを予測する。この情報を基に教員間の共通理解を図れば、最悪の状況を回避し、最大の教育効果を求める活動が計画できる。

しかし、雷の発生時や異常な高温時に屋外活動を実施するような、明らかに死亡事故につながる危険性があるときは、教育効果を求めるよりも活動自体の中止を決断しなければならない。

この場合、これまでの事故事例を検証し、協議を重ね、中止するときのルールを整備しておく。そのルールを共通理解し、全教員が納得、安心できる形で判断ができるようにしたい。

おわりに

危険管理と教育効果を求めることは、相反するものではないと考える。なぜなら、管理職が中心となってリスク・マネジメントの充実を図り、危険を回避することが教育効果の最大化につながるからである。

私は、学校の要である教頭として、児童にとって安心、安全で楽しく充実した学校をつくるために、全力で取り組む所存である。