教師力・人間力―若き教師への伝言(26)「二つのチーム」

本校の体育館では、二つの女子部活動が日々練習を積み重ねている。それは、バレー部とバスケットボール部。体育館を二つに分け、それぞれのやり方で、生徒の育成を進めている本校自慢の部活動だ。

バスケットボール部には、確かな技術と高い身体能力をもつ選手が多く所属している。指導する若い顧問A教諭の経験は浅いものの、思春期の女子生徒をまさに手玉に取った指導で、選手の意識を高める言葉かけが絶妙だ。

さらに、A教諭の指導姿勢はいつも穏やかそのもの。試合、練習にかかわらず、声を荒らげ、感情を表に出す場面は見たことがない。A教諭自身もその指導姿勢を信条としている。まさに師弟同行を実現したチームと言える。

そんなバスケット部も、この一年多くの大会で入賞を果たしてはいるものの、優勝は一度きり。県大会出場という目標をその手に収め切れていない、悔しい経験を多く重ねたチームである。

一方、バレー部は、チームワークに課題を抱えて今年を迎えた部活動である。ただ、個々の選手は真摯(しんし)にバレーに向かい合っており、先生の指示を的確にやろうといつも顧問の目を見て、指示を受けとめようと躍起であった。

これまでの大会入賞経験はわずかで、この春から新しい顧問を迎えることになった。顧問となったB教諭は、経験豊富なミドルリーダーで、これまで全国大会にチームを導くなど、数多くの好成績を収めている。以後、周囲の期待と練習の緊張感は急上昇した。徹底した技術指導と戦術の落とし込み、この光景が繰り広げられることが予想された。

だが、B教諭は赴任以来、選手に「考えろ」という言葉を掛け続けた。これまで培った技術に基づいて、試合中は自分たちが考えてプレーすることを基軸とした。そのため、練習も意図と目的を強く意識させる指導場面が多い。

確かに体育館のバレー部ゾーンは、緊張感に満ちた空間となったが、それは選手が考えている証拠でもあった。「女子で自主性を育成するって難しくないか」と疑問を投げ掛けても、B教諭は「やってみます」と力強い。

こうした全くカラーの違うチームが共存する体育館の様子は実に面白い。対照的なチームの雰囲気が刺激し合い、切磋琢磨(せっさたくま)する独特の光景だ。
ところがである、夏の大会を前に二つのチームに共通する光景が見られるようになった。それは、選手同士が話をする場面である。やがて体育館は、指導者の声ではなく選手の声で満たされるようになった。

部活動がチームとして成立している以上、勝利を追求するのが前提である。これまでの部活動ではそれが前面に出てしまうことから「勝利至上」という課題を生んだ。加熱する練習と指導に対して、本市では部活動ガイドラインが策定された。

さらに指導者である教員は働き方改革という潮流の中、惜しみなく時間を費やしてチームを育て上げる方法からの脱却が望まれている。部活動は今、その目的や方法の本質さえも揺らいでいるような気がする。

そんな中、この二つのチームの目標とその過程は、登り方は違っても、頂を目指して自分の足で歩ませるという点で共通している。大切なキーワードは、「自主性」と「人間性」を育てることなのである。

この夏、この2チームが残したもの、バスケットボール部は県大会出場まであと『一点』と迫りながら敗れた。だが、選手の表情は晴れやかだった。この子たちの多くが次の年代でもバスケットボールを続けるという。競技を愛し、探究する心を育て、次の年代につなげることができた。

そして、バレー部。残念ながら市内大会で敗北してしまった次の日、新チームでボール出しをする3年生の姿があった。聞くと『私たちは、まだチームを支えることを経験していないからです』ときっぱり言った。この子たちの人間性も成長し、また一つ大人に近づけることができた。さらに、2人の顧問からは「中学生が本気になると大人の想像を超えて成長します」と、同じ言葉を聞いた。

これからの部活動運営の道しるべをこの2人の個性的な顧問が示してくれた。

(山内貴弘・岡崎市立福岡中学校長)