(提言)「もう一回」

愛知県公立小・中学校女性校長会長 稲吉 久美子

「先生たち、堅い!」

夏休みの教員研修として学校に授業名人を招いた。教員たちが子供役となり、小四算数「変わり方」の模擬授業に挑んだ時の、講師さんの叫びである。

子供の身になって、子供の思考で、子供の言葉で授業に参加することを目指した。しかし、なかなか挙手できず、言葉に詰まり、大人の解き方から脱せられない。変な汗まで出てくる。「先生は数字と式が大好き。正答が大好き」と講師さん。

学びのプロセスに焦点を当て、学びを介助するのが教員の仕事なのに、教員こそが結果にとらわれているではないか。子供の思考に寄り添うなんてかっこいいことばっかり言っちゃって。授業中の子供の気持ちなどわかってなかった。深い反省とともにカルチャーショックを受けた。

何を学ぶのか、どのように学ぶのか、何ができるようになるのか。

もう一回、誰一人落ちこぼさない授業作りに向けて頑張ろう。

夏休みの自宅に一冊の本が送られてきた。新任から3年間、担任した教え子からのものだった。「突然ですが、ひょんなことから本を作りました。先生とのエピソードも活用しました。(中略)自分が本を書くなんて本当に信じられないです。でも、先生に評価してもらったことを思い出し、(当時は意味がわかりませんでしたが)創作の後押しをして頂きました。(中略)いつか先生に挿絵を描いてもらえたら最高です」三十ウン年前の担任の顔に戻る。そう言えば彼女はクールで俯瞰(ふかん)的にものを見るタイプ。けれど、基本ポジティブで、事象を面白がっていたなと。

あまりに昔過ぎて、彼女の何を評価したのかは全く覚えていない。多分、その表現力の輝きを伝えたのだろうと思う。何が芽吹くのかは時がたたないとわからない。定年イヤーのご褒美の一冊になった。

もう一回、困っている子たちに彼らなりの輝きを伝えよう。

教育改革の真っただ中。

今までの考え方を転換しなければならない場面が多々ある。顔には出さずとも、正直、いつも迷っている。

教員なら常に学び直そう。何歳になろうが新たな気づきにはっとすることばかりだ。わかったつもりが一番怖い。「もう一回」と勇気を奮い立たせ、向き合おう。だめだったら、また「もう一回」。

(蒲郡市立塩津小学校長)