【教師力・人間力(29)】やっぱり子供のおかげ

うまくいけば自分の手柄。できなければ子供のせい

私が初めて担任を持ったのは中学3年生の学級だった。今、思えば初めての担任なので、学級がうまくいかなくても当然であった。

当時は今以上に学級対抗行事が多かった。体育大会や合唱コンクールだけでなく、球技大会やレクレーション大会、資源回収の回収量、学習コンクールなど、常に学級で競い合わせ順位をつけていた時代だった。

そして、私の学級は対抗行事には勝てない。勝てないだけでなく、給食や清掃、朝の会や帰りの会も落ち着かない。授業でも騒がしくなり、居眠りをする子供もいた。
先輩方の学級と比べて、自分の学級のできなさ加減に悩み、落ち込んでいた。そんな私に先輩が「そう落ち込むな。うまくいけば自分の手柄。うまくいかなければ子供のせいにすればいい」と助言してくれた。

その言葉を聞き、私は本当に救われた。精神的にスッと楽になった。それ以来、行事で負けても「子供が頑張らないから仕方がない」朝の会が騒がしくても「騒ぐ子供たちが悪い」授業中に寝ている子供がいても「やる気のない子供が悪い」たまに対抗行事で勝つと「自分の指導が良かった」と自分を褒めた。気が楽になり、それまで悩んでいた自分が嘘のようであった。

うまくいけば子供のおかげ、できなければ自分のせい

相変わらず対抗行事で勝てない、学校生活も落ち着かない日々が続いていた。しかし心の余裕ができたのか、ある時、ふと「これでいいのか」と思った。「このままじゃ、教師としてどうなんだろう。教師として、成長もできないんじゃないか」と。

そして、少し考え方を変えてみた。これまでとは真逆に考えてみようと思った。うまくいったときは子供のおかげであり、うまくいかないのは自分の指導の責任と考えるようにした。

行事で負けたときは子供に謝った。「私の指導が足りなかった。すまない」。授業中に寝ている生徒がいると「つまらない授業をして申し訳なかった。君が眠らない授業をする。すまない」。そして、たまに対抗行事に勝つと「君たちは素晴らしい。私はうれしい」と子供たちを称えた。

すると、子供たちが変わってきた。私が「すまない」と謝ると、「先生の責任じゃない。僕たちの頑張りが足りなかったんだ」という子供が現れてきた。子供たちを褒めると「先生のおかげです」という子供も出てきた。

一部の子供が変わってくると、その流れは大きくなり、多くの子供に影響を及ぼすようになった。いろいろな対抗行事に勝てるようになり、朝の会や帰りの会、給食、清掃も落ちついてきた。授業で寝てしまう子供もいなくなった。

教師の心の持ち方で子供は変わる

子供たちが変わったのは教師の言葉だけではなく、教師が謙虚な気持ちを持ち、指導を工夫するようになったからである。

子供は教師をよく見て、感じている。教員の心がどうなっているかで子供は変わる。教師としてのプライドを持つ、その指導に責任を持つ。失敗したら、その原因を自分に求め、次こそ成功するように自分のレベルアップを目指す。成功したら、子供たちを称える。素晴らしい子供たちに出会えたことを感謝すればいい。それはきっと子供たちに伝わるだろう。

ただ、うまくいかないことをいつも自分のせいだけすることない。そんな風にしていればストレスがたまり教師自身の心の健康が保てなくなる。時には自分で自分を褒めたり、自分を許してあげたりする余裕も持ちたいものだ。

(加藤祐介・刈谷市立雁が音中学校長)

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