審査論文をどう書くか(92)

審査論文テーマ

部活動中の体罰を背景とした生徒の自殺事案を発端に、「体罰」が大きな社会問題となっています。あなたは教頭として、「体罰」が発生する理由をどのように分析し、体罰の根絶に向けてどのように取り組んでいきますか。具体的に述べなさい。


平成24年の年末、1人の高校生が自らの命を絶った。残された手紙には、部活動での厳しい指導や体罰に悩む姿が書かれていた。夢と希望にあふれる子供の未来が、教職員の体罰、暴言により、奪われることはあってはならない。

体罰は、学校教育法で禁止されている。また、文部科学省は、体罰禁止の徹底を求め、各校へ通知をしている。学校は、子供たちが安全に生活できるように、校長、教頭の管理職を中心に体罰の根絶に取り組む必要がある。

論題には教頭として、①体罰の原因をどうとらえるか②どのような取り組みを行うかの2点について、対処すべき具体例を書き示す。

はじめに

「体罰はいけないこと」と全ての教職員は熟知している。では、なぜ体罰をしてしまうのか。自分がイメージする指導ができない時、子供に対して感情的になり、体罰をしてしまう。「子供に結果を出させたい」という熱い思いが、誤った力の指導を正当化してしまう。

力の指導は、子供の心身に深刻な影響を与え、やがて教職員や学校への信頼を失うことになる。子供一人一人の理解、適切な信頼関係の構築に向け、教職員は、指導力の向上に努めることが大切である。

そこで、教頭として校長の意をくみ、学校全体で体罰の根絶に向けた取り組みを進めるために、三つの視点から対応や具体策について述べる。

1. 体罰に関する正しい認識と校内研修

他に対して危害を与えるような暴力行為に対して、これを制止したり、体を抑えたりすることは体罰に当たらない。しかし、その指導が肉体的な苦痛を伴う場合は、体罰と判断される。

子供への懲戒行為が体罰に当たるかどうかは、懲戒行為をした教職員や懲戒行為を受けた子供、その保護者の主観のみで判断されるものではない。子供の年齢、健康、心身の発達状況だけでなく、行為が行われた場所や時間の諸条件も総合的に判断する必要があるからである。教頭として、体罰の未然防止を図るため、次のような取り組みを行う。

管理職、生徒指導担当教員が中心となり、体罰に関する正しい認識が得られるように、学期に複数回以上の研修の場を設定する。

「体罰と懲戒の違い」などの課題について、具体的な事例をもとに全教職員で学習会や話し合いを行う。体罰根絶の学校指導方針は、保護者や地域住民と認識を共有するよう学校便りなどで情宣する。

2. 組織的な指導体制の確立

小学校では学級内において、子供間の問題行為が発生したり、中学校では教職員の指導を受け入れられない子供が現れたりする。繰り返し指導しても子供の変化が感じられない指導者の焦りが体罰や暴言につながる。

教頭は、指導が困難な子供への対応を1人の教職員に任せきりにするのではなく、学年担当や生徒指導担当も含め、複数で組織的な指導を行うように指示する。

また、子供への指導で困難を抱えた場合や体罰と受け止められる指導を周囲が見かけた場合、進んで管理職や他の教職員に対し、報告や相談ができるように、職場の雰囲気づくりに努める。日頃から、複数の教職員で子供一人一人の良さを伸ばす意識を徹底させたい。

3. 徹底した実態把握と早期対応

管理職は教職員による体罰や暴言の実態把握に努めなければならない。教頭は、定期的に校内の巡回を行い、授業中や部活動中の教職員の指導の様子を確認し、不適切な指導や体罰、暴言が行われていないかを監督する必要がある。

体罰と疑われる事案の報告や相談があった時には、関係する教職員からの聞き取りだけでなく、子供や保護者からの聞き取りも行う。必要があれば、第三者機関の協力を仰ぎ、事実関係の正確な把握を行う。

そこで体罰の実態を確認した場合、学校長を通じて教育委員会に報告するとともに、再発防止の具体策を講じる。その内容を該当する保護者や児童に伝え、全教職員で共通理解を図り、再発防止の取り組みを行う。

おわりに

体罰や暴言が学校教育において問題とされるように、パワーハラスメントなど、力による嫌がらせが現代社会において問題となっている。人が発する言葉は、相手の受け止め方次第で、全く反対の意味として捉えられることがある。

教職員は、自ら発する言葉に責任を持ち、子供たちがその言葉をどう受け止めたのかを感受しなければならない。保護者を含め、互いが理解し合えることが重要になる。

「子供たちが安心して学ぶ学校」は子供、教職員の笑顔が溢(あふ)れている。私は、教頭としての自覚と責任をもち、子供たちの笑顔あふれる学校づくりを目指す。そして、地域や保護者から信頼される学校となれるよう教職員一丸となって体罰根絶に取り組む所存である。