管理職研修「審査論文をどう書くか」(94)

審査論文テーマ

児童生徒の成績情報をはじめ、さまざまな個人情報を保管する学校は、その漏えい防止に細心の注意を払う必要があります。大量の個人情報がデジタルデータとして簡単に複製・持ち運びができるようになった現状を踏まえ、あなたは教頭として、個人情報の漏えい防止にどのように取り組みますか。


さまざまな個人情報を膨大に保管しているのが学校である。しかし、置き忘れによる紛失や帰宅途中の車内放置による盗難など、個人の意識不足や学校の管理体制の未熟さを原因とする個人情報の漏えいは、後を絶たない。

本テーマは情報の中でもデジタルデータに特化しており、前提として「個人情報がデジタルデータとして簡単に複製・持ち運びができるようになった現状を踏まえ」とある。

そのため、これらのキーワードを十分に意識し、具体的な対応策を述べたい。そして、管理職である教頭として情報管理に毅然(きぜん)とした態度で取り組む決意とともに、この取り組みを通して、学校組織の活性化にもつなげていくものにしたい。

はじめに

「子供たちが生き生きと学び、成長できる学校」、それは誰もが願うことである。そして、その礎となるのが、学校と子供、保護者、地域相互の信頼関係である。

しかし、いったん不祥事が起きてしまうと、当事者だけでなく、学校全体の信頼を失墜させ、その回復には膨大な労力と時間を要する。デジタルデータをはじめとした個人情報の漏えいはその最たるものであり、最も注意を払わなければならない問題である。

そこで、私は教頭として、職員集団の先頭に立ち、学校の安心安全に寄与する情報管理のあり方について以下の3点から取り組む。

1 情報セキュリティー意識の向上

現任校では数年前に個人情報の漏えいが起き、対応に追われた経験から、教職員の個人情報管理への意識は高まった。しかし、職員が入れ替わり、さらに若手が増えたこともあり、温度差が生じている。

そこで私は教頭として、事後処理の大変さや信頼回復の難しさなど、過去の苦い経験を教職員に伝え、「少しの気の緩みが取り返しのつかないことになること」を認識させる。さらに、懲戒処分となった時のリスクを具体的に示し、個人情報への意識を高めていく。

また、情報漏えいに関する報道があった時には、事例研究会を開く。「そこから何を学び、現任校、そして自分にどう生かしていくのか」をワークショップ形式で話し合わせる。

このように、「大切なことは何度でも」の考えの基、繰り返し確認することで個人情報管理の意識を高めたい。

2 情報管理体制の確立

どんなに意識が高くても、管理体制がずさんであれば、漏えいの危険にさらされる。そこで、教頭として担当者とともに、ヒューマンエラーが極力起きにくい管理体制を構築する。

一番のリスクは、媒体が学校から持ち出されることで生じる。極力持ち出さない、そして持ち込まないことが重要である。しかし、自宅に持ち帰っての仕事を完全には禁止できない。実態にそぐわないばかりか、規律違反が出てきてしまう恐れも否めないからである。

そこで、データ複製が可能なパソコンを制限したり、管理職への届け出、寄り道の禁止を規定に設けたりするなど、「適切な持ち出しのルール」を明確にした上で、順守を促す。

そして、安易に放置、廃棄をしないことや鍵をかけて管理することなども含め、総合的に規定を整備することで管理体制の確立を目指す。また、規定が順守されるよう互いに点検をしあったり、規定をこまめに見直したりすることで、規定が生きたもの、そして強固なものになるようにしていきたい。

3 不祥事が起きにくい職員組織の確立

素晴らしい管理体制も、それが個に頼った組織では機能しない恐れがある。私は職員室の担任として、チーム皆が決めたものを皆で励行し、常に見直しが図れる風通しの良い職員集団の構築に尽力する。

そのために、教育目標(上位目標)を教職員が常に意識し、実現に向けて主体的に考え話し合う場を設定する。また、校務分掌をまとまりごとにいくつかのワーキンググループに分け、チームとして考え、協力していく組織を目指す。さらに、ミドルリーダー候補をグループリーダーに抜てきし、ボトムアップ型の学校運営にしていく。

一方、悩みや問題を一人で抱え込まず、皆で解決していく雰囲気をつくるとともに、積極的にコミュニケーションを図ることによって、報告・連絡・相談を常に意識させていきたい。多忙化解消への対応が叫ばれる中、忙しくとも心に余裕をもって行動でき、情報漏えいを引き起こさない職員集団を確立させていきたい。

私は教頭として、常に校長からの指導を仰ぎながら、教育に情熱と豊かな人間性、そして高い危機管理能力を備えた教職員集団を育成していきたい。そして、互いに切磋琢磨(せっさたくま)できる職場をつくりあげ、誰からも信頼される学校づくりのためにまい進していく所存である。

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