管理職研修「審査論文をどう書くか」(96)

審査論文テーマ

インクルーシブ教育システムの考え方やノーマライゼーションの理念が進む中で、特別支援学級を対象とする障害種だけでなく、LD、ADHD、高機能自閉症なども含めた通常学級に在籍する児童生徒への対応が学校に求められています。あなたは教頭として、このことをどのように受け止め、どのように取り組むかを、現任校の現状を踏まえて具体的に述べなさい。


平成24年に中教審から出された報告「共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進」には、「教育的ニーズに応える指導を提供できる多様で柔軟な仕組みの整備」「同じ場で共に学ぶことを追求する」といった理念が示されている。

学校には、特別支援学級のみならず通常学級に在籍する障害や困り感を持った児童生徒に対しても、適切な支援を行っていく体制づくりや、多様性を尊重し、共に学ぶ環境をつくっていくことが求められている。

取り組むべき課題は多岐に渡るが、「愛知・つながりプラン2023」の方向性に沿って推進したい。論題に「現任校の現状を踏まえて」とあるので、特に重要な課題に絞って、具体的方策を述べたい。以下、小学校の教頭としての例を示す。

始めに

子供は一人一人違う。興味関心や考え方、学び方や学ぶスピード、全て違う。学校は全ての子が楽しく学び、成長できる場でなくてはならない。そして、社会参加に向けた自信と見通しを形成していく場でありたい。

そのためには、インクルーシブ教育の考え方に基づいた特別支援教育の推進が欠かせない。児童の実態を的確に把握し、教育的ニーズに応じた指導ができる体制づくりや、児童の多様性を尊重し、包み込む学校づくりをしていくことが求められる。

私は、校長の掲げる「みんなが輝く学校」という経営方針の下、次の3つの柱で、特別支援教育コーディネーターを中心にして、その推進を図っていく。

1 ニーズに応じた指導

児童の実情を的確に把握し、目標や支援方法を明確にすることが、個に応じた指導ができるかどうかの鍵となる。

まず、専門家を招いて研修や事例検討を行い、障害の特性理解や児童理解を深めていく。また、児童や保護者との相談、関係機関との連携を積極的に行わせることで、現在の支援方法を常に評価しながら、個別の教育支援計画、指導計画を作成・修正し、活用できる力量を高めていく。

多様な学び方を保障し、学び合う雰囲気をつくっていくことも必要である。そこで、教務主任に指示して、授業の中に「自分のペースで学ぶ場」や「課題を選んで学ぶ場」を設定させる。個の学び方に応じた学習ができるようにし、子供同士の教え合いも自由にさせたい。

また、グループで協力して創作や課題解決を行う活動を積極的に取り入れる。このような授業改革を通して、互いの違いを尊重し、助け合う素地もつくっていく。

多動や人間関係のトラブルが多い児童に対しては、それをマイナスに捉えない姿勢が大切である。実践的な研修を取り入れ、具体的行動から児童を見取る力を高め、「できるようなったことを褒める」指導に転換させる。児童の自己肯定感を高め、成長を認め合う学校風土を醸成していく。

2 チームでの支援体制

現在、月1回の校内委員会を開いて、児童の実情や対応を共有しているが、適時性と協働性を高めたい。特に、若い教員は、指導で困っていることが言えずに悩んでいることも多い。担当の垣根を越えて補完し合う職員集団にしたい。

そこで、校内委員会に加えて、週1回、低中高学年単位で「ミニ委員会」を行い、今困難さの目立つ児童についての対応を協議する。必要に応じて、通級指導担当、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーなども参加してもらう。支援方法を検討する中で、それぞれの役割や協力体制も確認する場とする。

3 将来を見据えた支援

教員は日々の対応だけに目が向き、対処的な指導に陥ってしまいがちである。今行っている支援が、子供の将来にどのように生きていくのか、という視点が重要である。

そこで、地域の小中高校の管理職とコーディネーターでネットワーク会議を立ち上げ、子供の成長を長いスパンで捉えていく体制をつくる。特別支援学校や福祉関係の方にも参加をお願いし、情報交換や授業参観、職員の合同勉強会などを実施する。

そして、子供の将来像や就労のイメージを共有し、支援の在り方を検討していく。また、交流活動やキャリア教育に関わる活動を、可能な限り連携して行っていく。

終わりに

特別支援教育が、障害のある一部の児童に対しての教育という発想がある限り、さまざまな課題は解決しない。私たちは誰でも、得意なこともあれば、苦手なこともある。多様性を認め合い、みんなで助け合う共生社会を実現していくためには、学校こそがそういう姿にならなくてはならない。

私は学校教育の具体的な推進役である教頭として、学校を、誰もが学びやすく、伸びる場にするため、全力で取り組んでいく所存である。

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