【教師力・人間力(35)】学校は宝の山

政府のGIGAスクール構想が推進され、学校現場ではオンライン授業を含め、ICTを活用した指導が今後一気に進んでいきます。また、教科書にはQRコードが記載されており、情報活用のスキルを子供たちに身に付けさせていかなければならないと思っています。

一方、映像を見て分かった気になってしまう怖さも感じています。再現できて初めて「分かった」と言えるのであれば、上手に編集された映像よりも五感を使って直接体験をする方が深く「分かった」と感じることができるはずです。そこで、可能な限り子供たちには直接体験をさせてあげたいと思っています。

以前、私が勤務した学校は何年も継続的に有田和正先生に指導をしていただいていました。「1時間で、1回も笑いの無い授業をした教師は逮捕する」が口癖で、周囲から授業名人と呼ばれた先生です。その有田先生の指導をヒントに、子供に体験させた実践を紹介します。

小学4年の理科に「季節と生物」という単元があります。春夏秋冬、年間を通して植物や動物の変化を観察しながら学習をします。その単元で、私が取り上げたのはアサガオです。アサガオのツルの向きは全部右巻きです。

そこで「ほどいて左巻きに変えて固定すると、その後は左右どっち巻き?」と課題を出しました。思い思いの予想をした後で、少しの変化も見逃さないような観察が始まりました。

小1で育てたはずなのに、観察する姿はとても真剣です。そして、やっぱり右巻きになることを確認します。そのうち、花が咲く前に、ツルの色の微妙な違いで花の色が分かることを発見した子がいます。

また、軒下に見つけたアリジゴクにアリを落として、ウスバカゲロウの幼虫が現れるのをじっと待つ子もいます。子供たちは寸暇を惜しんで校庭に飛び出していきました。

そんなある日、校内に散らばった子供たちの観察の様子を私が順に巡っていると、池のほとりでじっと植物を見つめている子がいます。話し掛けようとすると口に指を当て「シー」と制止します。

その子の見ているのは少し大きめな花で、つぼみが風に揺れています。一緒になって眺めていると、私たちの緊張した様子に気付いたのか、校庭に広がっていた子供たちが私たちの周りに集まってきました。

最初は「何、何がある?」と話をしていた子も、池の周りにしゃがみ込んで、じっとつぼみを見つめます。二重、三重に取り囲んだ子供たちは、まるで大きな声を出すことがはばかられるように、手招きでほかの場所で観察している子を集めます。

そして、クラスの子がほぼ集まった頃、スッと風が吹き抜けた瞬間、つぼみは一気にはじけて、花がぱっと咲きました。その瞬間、スタンディングオベーションです。拍手とともに、全員が口々にはじけるように咲いた感動を話しています。最初に見つけた子も満面の笑みです。私もただただ感動してしまい、20年以上たった今でもその状況を鮮明に覚えています。

「学校は宝の山」です。最近の子供は、知識は豊かで物知りですが、目の前で起きたことに感動する感覚が弱くなっている気がします。

そこで、若い先生方には学校内を探検し、子供たちが「不思議だ」と感じたり、「見てみたい」という気持ちを高めたりする「種」を見つけてほしいと思います。

時には、仕掛けが必要かもしれません。ここが教師の腕の見せ所ですし、やりがいです。先生自身も楽しみながら、いろいろな教科でチャレンジしてみてください。

(今泉一義・豊川市立御油小学校長)

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