(こだま)本紙新企画『私を支えた「この一冊」』……

本紙新企画『私を支えた「この一冊」』がスタートした。教師生活を支えた心に残る本を紹介していただき、これからの教育を背負う若き先生たちへの指針とするものである。

小生の「この一冊」といえば毛涯章平先生の『肩車にのって』で、特別な思いがある。毛涯先生は、長野県で長年教職に就かれ、信濃教育に多大な影響を及ぼした。

初めてお会いしたのは平成10年。ある講演会の講師依頼のため下伊那郡豊丘村のご自宅に伺ったのが始まりだった。さまざまなお話をうかがう中で、いただいたのがこの一冊である。

折々の随想や講話、日記がちりばめられているが、中でも書名になった随想「肩車にのって」は、教師はこうあるべきと教えてくれる。

「先生の肩車忘れていません」転入して間もないI子がせっかく仲良くなれたのに父親の勤めの都合で、また転校しなければならなくなった。いよいよお別れの日、クラス全員で玄関まで送ることにした。

「ほんのわずかしかいっしょにいられなかったから先生が玄関までおんぶしていってあげる」廊下を歩きながら高くせり上がり肩車になった。

わずかの期間であったため、せめて別れていく最後に「先生」を一番近くに感じさせてやりたかった。そのことを20年以上たっても覚えていてくれた。心を込めてしたことが、子供の心に深く残っていることを知った喜びはたとえようがないと言われる。

毛涯先生の子供を見守る温かい目、謙虚な心にくぎ付けになった。新任校長として山の小さな学校に赴任した折、先生から丁重な手紙をいただいた。その中に、先生が初めて校長として小規模校で勤務した3年間が「校長」として育ててくれたと書かれていた。不安の中にあって意を強くする思いであった。

同封された「心の教育を進めるために」の文章にも心を引かれた。「豊かな人間性」の源は、「恕(じょ)の心」と「畏れの心」、そして、それらを「実践する勇気」であると。今の教育にこそ生かしたい金言である。

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