管理職研修「審査論文をどう書くか」(97)

あなたが勤務する学校では、教科指導力、生徒指導力が共に高く、学校の中心的な存在として活躍する中堅教員がいます。若手教員への指導や助言にも積極的です。その結果、学校全体で熱心な教育活動が展開されており、地域や保護者から高い信頼を得ています。しかし、若手教員の一部から、この中堅教員に対して、「先輩教員の指導が厳しすぎて苦痛である。パワー・ハラスメントだと感じる時もある」と訴えがありました。あなたは、教頭としてこの事態にどのように対応しますか。目指す学校像と教職員組織や教職員管理、人材育成の在り方を踏まえて、あなたの考え方を具体的に述べなさい。


教職員一人一人がやる気を持ち、その能力を十分に発揮しながら働ける職場づくり。教頭は、校長の指導の下、円滑な学校運営ができる組織づくりの要である。

本テーマにおいては、若手教員が抱えるパワーハラスメントの問題を解決すると同時に、中堅教員の後輩を育成する気持ちも損なわないように対処していく必要がある。

この問題を、当事者の問題として片付けることなく、職場全体の問題として受け止め、パワーハラスメントの起こらない職場づくりへの強い意思表示を、毅然とした態度で示すための、具体的な対応策を述べたい。

▼はじめに

子供たちが、毎日元気に笑顔で学校生活を送り、保護者や地域から信頼される学校づくりのためには、まず子供たちの前に立つ教職員が、心身共に健康で笑顔で教育活動に専念できる環境づくりが欠かせない。

若手教員の存在は、学校にも子供たちにも活力を与える。しかし、現場はその人材育成が喫緊の課題にもなっている。若手教員も、安心して子供たちの前で能力を発揮できるような環境整備が必要である。

そこで、私は教頭として、教職員のメンタルケアを進めるともに、ハラスメントなどについて、職場全体で理解を深めることで、風通しの良い、人権意識の高い職員室づくりを目指したい。

1 事実確認と職員のメンタルケア

教員という仕事は、経験の多い少ないに関わらず、授業、学級経営をはじめさまざまな校務をこなさなければならない。若手教員の増加により、一人一人の力量向上を図るための人材育成は喫緊の課題である。現場では、その人材育成を中堅教員が中心となって担うことが多い。情熱のある指導が、時にパワーハラスメントと捉えられることもある。

まず、若手教員の訴えを丁寧に聞き取り、その気持ちをしっかりと受け止める。同時に、周囲の教員からも情報を収集し、客観的な状況を把握する。それらの内容を、学校長に速やかに報告し、パワーハラスメントに当たるかどうかの検討をした上で対応を進める。

次に訴えのあった相手の中堅教員にも話を聞く。特に、人材育成への思いが感じられれば、それに対する感謝と理解を十分に示した上で、指導・助言を行う。受け止める相手がそう感じれば、パワーハラスメントになることを押さえ、どのような言い方や指導の仕方が良いかを一緒に考える。そして、今後パワーハラスメントと取られない対応について十分に検討し、実践するよう指導する。

さらに若手教員に対しても、中堅教員の人材育成への思いを伝える。そして、今後パワーハラスメントのない職場づくりに全職員で取り組むことを伝え、安心して仕事ができる環境を作る。

また、必要に応じて、本人の了承のもと、外部の相談機関や医療機関につないでいく。

こうした対応をできる限りスピーディーに行い、早期解決に努める。

2 パワーハラスメントについて、職場全体での共通理解を深める

パワーハラスメントは、他のハラスメントと同様に、個人の働く権利を侵害するものである。したがって、今回の問題を当事者の個人的な問題として片付けず、職場全体の問題として受け止め、ハラスメントの起こらない職場づくりが必要である。

まず、管理職自らが、パワーハラスメントについての正しい見識をもち、自身がパワーハラスメントを起こさないように高い意識を持つことが大切である。その上で、職場全体でパワーハラスメントについての研修を行い、どのような言動がハラスメントにつながるのかを、具体的に示しながら理解を深める。そして、「どんなハラスメントも、絶対に許されない行為である」ということを明確にする。

また、職員会議時に児童生徒についての情報交換を実施し、学年を超えて児童生徒への共通理解を図る機会をつくる。そこで若手教員が抱える悩みを出したり、解決へのアドバイスをし合ったりできるようにする。若手教員の悩みを全体で共有することで、一対一の指導に偏らない指導や助言ができる環境をつくりたい。

さらに、教頭として、普段から職員の人間関係をよく観察し、適切に声をかけながら、情報収集を行い、風通しの良い職員室づくりに努める。それが、相談しやすい、報告しやすい雰囲気をつくり、ハラスメントを未然に防いだり、起こったりしにくい職場づくりにつながる。

▼おわりに

教職員が、人権意識の高い集団であることは、元気に子供たちの前に立てる教職員集団の基礎である。私は、組織づくりの要である教頭として、職員をつなぎ、子供たちの笑顔あふれる学校づくりのためにまい進していく所存である。