(提言)創造と継承の狭間で

三河教育研究会長 浅井 英雄

ほんの1年前。今のこの世の中の状況をいったい誰が予想していたでしょうか。新型コロナウイルス感染症の拡大によって、私たちの生活は一変してしまいました。

全国一律一斉の臨時休校、政府による緊急事態宣言の発出、第二波・第三波の襲来等々、思いもよらなかった事態が次々と沸き起こり、私たちは混乱の渦の中に巻き込まれました。学校現場にも甚大な影響を及ぼしました。

昨年6月。学校が再開されるにあたって、改めて学校の役割とは何かを問うてみました。

あれこれ思いを巡らし、たどり着いたのが、学校の役割は、大きく分けて2つあるという自分なりの結論です。

1つめは、「新たな価値観や学校文化の創造」です。変化の激しい現代社会にあって、前例にとらわれない新たな価値観を生み出したり学校文化を創造したりすることは、マストです。新型コロナウイルス感染症の拡大は、私たち人類にとってかつて経験したことのない危機であるだけに、前例にとらわれていては立ち行かないことばかりでした。なにもかも手探りの状態の中から、できることとできないことを仕分け、感染リスクを最大限回避しながら教育活動を展開していく。その営みは、まさに新たな価値観と学校文化を創造する作業そのものだったように思います。新型コロナウイルスという外的要因があったにせよ、GIGAスクール構想が一気に前進・加速したことも新たな学校文化の創造の1つではないでしょうか。

もう1つの役割は「伝統の継承」です。各学校には、それぞれの地域に根ざした歴史と伝統があります。歴史と伝統の上に現在の学校があります。さまざまある伝統を継承していくことも学校には求められているのです。今般のコロナ禍にあって、いかにして伝統を守り継承していくのかを深く考えさせられました。活動を中止することは簡単なことですが、伝統が途切れてしまいます。途切れてしまった伝統を掘り起こし蘇らせることは容易なことではありません。苦渋の判断や決断の連続でしたが、新型コロナウイルス感染症の拡大は、創造と継承の狭間で、人間力を鍛えられた機会になったような気がしています。

(豊橋市立青陵中学校長)

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