【教師力・人間力(42)】心に残る教師に

いよいよ退職が迫り、自分の教員生活や人生を振り返るようになりました。改めて、自分は、どうして教師になろうとしたのか考えてみると、『心に残る教師』との出会いが、大きな理由であったように思います。

『心に残る教師』の一人として、小学校6年生でお世話になった担任がいます。この先生は、放課後一緒にサッカーをしてくれました。学生時代はサッカー部で、ドリブルをする先生のボールには触ることもできないくらいとても上手でした。サッカーの話も多く、ペレや釜本選手のすごさを話してくれました。

もう一人は、高校の英語の先生です。この先生は、アメリカでの留学生活から、内村鑑三や般若心経など精神世界の話まで、幅広く話をしてくれました。英語が大の苦手だった私ですが、この先生の授業は楽しみでした。これらの先生方からは、特に教職の素晴らしさについて聞くことはありませんでしたが、自分の経験や得意なことを深く熱く語る姿、取り組む姿に感銘を受けた記憶が残っています。

どんな教師が、心に残るのかは、人それぞれです。分からないところを熱心に教えてくれた先生、思い悩んだときに話を聞いてくれた先生、部活動で一緒になって汗をかいた先生など、いろいろな先生がいるでしょう。心に残る先生になるには、自分の得意なこと、関心が深いことを通して、子供たちと交流することが必要だと考えます。もちろん、学習指導をきちんと行うことは大前提です。その上でのプラスαが大切です。それは、教師の個性であり、人間性です。

私自身は、自然が好きなので、珍しい動植物を見つけたときの感動や生物の生態などを、ことあるごとに子供たちに話してきました。「昨日、山奥に行ったら、クマが出たよ。すごいスピードで走って行ったよ」「初めて、コマクサを見たよ。山の頂上近くで、とてもきれいな花だったよ」など。また、魚釣りが趣味なので、「昨日は九頭竜川に行って、サクラマスを釣ったぞ!」などと、魚釣りの話もたくさんしました。こんな話をしているときには、子供たちの目はしっかりと自分の方を見つめ、後から、さらに話を聞こうとする姿も見られました。

だれにも、歴史・美術・音楽・読書・旅行など、自分が好きなことがあるでしょう。エピソードや奥の深い話題も、もっているはずです。その引き出しの中から、かいつまんで子供たちに見せてあげてほしいと思います。教師自身が関心のある話をするときには、自然に熱がこもり、目を輝かせています。話の深さとともに、熱心に取り組む生き生きとした姿から、教師の魅力も伝わります。そこでは、教師としてよりも、人間としての姿に子供たちは感銘を受けているのです。教師への理解が深まり、心が結び付いていきます。人間としての魅力を高めるために、自分が感銘を受けるものや好きなことを大切にしてほしいと思います。

教師は、指導力としての技能と人間力の両輪により、子供たちを育てるものだと思います。子供と教師との出会いは偶然です。どんな教師と、どんな出会いをするかによって、子供の人生に大きな影響を及ぼすこともあるはずです。教師であるなら、こんな人生を歩んでほしい、こんな人になってほしいという思いなどを、しっかり意識してもらいたいと思います。その思いを届けるため、個性をもち、人間味のある、『心に残る教師』になってほしいと思います。

(牧田重明・津島市立蛭間小学校長)