岡崎市中学校3校 校内フリースクール開設

令和元年度の不登校の児童生徒が全国で18万人と過去最多となる中、岡崎市では昨年度中学校において初めて「校内フリースクール」を開設した。一般に、「フリースクール」とは児童生徒に対し、学習活動、教育相談、体験活動などを独自に行う民間の施設を言い、昨今は不登校対策児童生徒を対象とした学びの場、居場所となっている。岡崎市の「校内フリースクール」は公立の中学校内に設置された数少ない取り組みとして注目されている。岡崎市のパイロット校は現在3校だが今後拡大する方針とのこと。その先鞭(せんべん)をつけた福岡中学校の活動を紹介する。

談笑のある和やかな雰囲気のF組

これまで岡崎市内の多くの学校には不登校傾向の生徒を通常学級に復帰させることを目指して「校内適応指導教室」があった。そのうち3校(福岡中、甲山中、矢作中)で発展解消し、新たに誕生したのが「校内フリースクール」である。新学級の名は、フリースクールの頭文字を取った「F組」。在籍対象者としては、長期欠席者(欠席日数30日以上のもの)に限らず、何らかの課題を抱えていて、通常の学級に入れない状態にある生徒であり、F組における指導・援助が効果的であると判断された場合であるほか、校外の適応指導教室「ハートピア」所長など、関係機関との連携により、F組在籍が適切であると判断したものとしている。現在9人(3年生1人、2年生4人、1年生4人)が、在籍している。福岡中のF組の教室は、来賓玄関奥の和室を転用した部屋を使用している。校内で一番居心地の良い場所である。担任には信頼の厚いベテラン教員を配置し、支援員、スクールカウンセラーが共に業務にあたっている。

福岡中では、これまで「コスモス」という適応指導教室があった。そこで学ぶ生徒は、在籍する学級に入って集団で生活するための準備をしたり、日本語などの基本的な学習を個別に進める必要があったりして、学校生活に適応するための指導や支援を受ける部屋だった。しかし、生徒の中には、苦しいことがあってクラスになじめなかったり、不安なことが多くて毎日がつらいと思ったりしている生徒がいる。そんな生徒たちのためにF組がある。通学しやすい地元の中学校で多様な学びの場を保障し、社会的な自立に向けて支援する。必ずしも通常学級への復帰は目指さず生徒個々の状況や希望に寄り添うことを旨としている。

F組の1日は次のとおりである。

F組の1日

〇登校後、自分で1日の予定を決定し、ボードに記入する。

学習について

〇自主学習

副教材や課題など自分で計画し、学習する。

〇タブレット学習

マイタブレットを活用し、基礎基本から自分のペースで学習する。

〇ライブ授業

通常学級の授業をライブ配信し、視聴する。

〇読書

家から持参した本、図書館から借りた本を好きな場所で読む。

〇学習で分からないところ

F組の担任や支援員に聞く。

たまった質問を教科担任に聞く。

体を動かす活動

〇技能教科の学習

美術作品や調理実習など、教科担任のサポートで行う。

〇植物の世話をする活動

〇トランプやボードゲームなどみんなと遊ぶ。

振り返り

1日にしたことを振り返り、記録して下校する。

F組の特徴は、次の5点にある。

(1)自己肯定感

校内フリースクールが学校内にあることで、特別教室を利用する環境が整っている。技能教科を学ぶ機会を多くすることで、自分の「強み」や「やりたいこと」を探せる良さがある。

(2)学校復帰

校外の適応指導教室で心のエネルギーがたまっても、学校復帰の壁やタイミングの調整が大変だが、F組は校内にあるためすでに学校復帰ができている。

(3)チーム学校

F組に積極的に関わる教職員が増えることで「チーム学校」を作ることができる。

(4)F組は学校の一部

どうしても登校という壁が乗り越えられない生徒には、校外の適応指導教室の利用を目指す。個に応じた柔軟な支援が必要である。

(5)未然防止

登校を渋り始めた準不登校生徒やコロナ禍の学校休業後、学校生活に不安を持った生徒の「心の保健室」としてF組の存在価値が高まった。

福岡中では、数年前から部活動改革や医療機関などとの連携を進めるなどの不登校対策に積極的に取り組んでいる。併せてF組が生徒たちの新たな居場所となることで、不登校生徒は徐々に減少しつつあるという。
課題もある。校門を超えられない生徒には、F組が校内にあることが逆に壁になっていることである。そうした生徒には、校外の「ハートピア」との連携が必要となる。また、「中3生徒の進路指導」も課題の一つである。F組の生徒は、通常学級の生徒のような授業における一律の評価がしにくい。そういう生徒にどのように進路指導するのか。また、日々の授業の評価の在り方、評定について解決していかなければならない。