(こだま)教師の品格……

コロナ禍で昨年のプロ野球は、試合数や観客数を制限して行われた。多少盛り上がりに欠ける中ではあったが、1人の野球選手が引退した。中日ドラゴンズの黄金期を支えた吉見一起投手である。テレビに映し出される彼の引退メッセージを見ていてふと10年前の思い出がよみがえってきた。

当時の在任校が会場となって少年野球教室が開かれ、吉見選手をはじめ浅尾選手や山井選手らあこがれの選手からキャッチボールや素振りから、守備、バッティングに至るまで直接指導を受けたことは、子供たちにとって一生の思い出となった。

会場校の校長として若手ドラゴンズ選手に接して高い技量もさることながらその礼儀正しさ、言葉遣いの丁寧さに驚いた。そのシーズン、チームをリーグ優勝に導き、飛ぶ鳥を落とす勢いの中心選手たちである。マスコミにも盛んにもてはやされている。少しは慢心した気持ちや横柄な態度が見られるのかと思いきやそのような態度が見られない。こちらの依頼や質問にも丁寧に対応し、全く粗雑なところがない。これこそが一流の証しなのであろう。仕事だからと言ってしまえばそれまでだが、夢を与える立場であることを自覚した言動は感動に値するものであった。道を究めたアスリートの不祥事を耳にするにつけ、その人に備わった「品格」を思う。

平成28年に兵庫県の中2女子生徒がいじめを苦に自殺した問題で、部活動の部員らがいじめについて書いたメモを顧問らが破棄したことが判明した。その経緯については、顧問らは第三者委員会に「紛失した」と話しており、破棄を隠蔽(いんぺい)しようとした可能性がある。

小学校の恩師をモデルに『先生』という映画を撮った新藤兼人監督は、恩師からの言葉「うそを言うな、真っすぐ生きよ」が一生の支えとなったという。

「教師の品格」とは何か。偉大な人格でも、高学歴でもない。子供たちの目線に立って、悩み、苦しみ、涙し、悔しさ、喜びを共有できる「心」ではないか。