管理職研修「審査論文をどう書くか」(101)

「特別の教科 道徳」が設けられて小学校で2年、中学校で1年が経過し、さらなる道徳教育への充実が求められています。「特別の教科 道徳」の現状を踏まえ、あなたが勤務する学校での道徳教育を充実させるために、教頭としてどのような方策をとるのか具体的に述べなさい。


道徳教育は、人間形成の基盤となる重要な教育活動であることは周知の事実である。学校現場でその意義や価値を伝え「チーム学校」としての自覚を促し、教職員の力を引き出す教頭の役割は極めて重要となる。

本テーマは、「特別の教科 道徳」の現状を踏まえ、学校現場で具体的に実践する方策を記す必要がある。①道徳科の特質を踏まえた授業改善②教育活動全体で取り組む指導体制の充実③学校・家庭・地域の連携による開かれた教育の推進の視点から教頭としてどのように対処するのか書き述べる。学校や教職員の実態を踏まえた上で、改善策を示し、道徳教育の充実を図る主体的な取組を論述したい。以下にその具体例を示す。

▼はじめに

心の教育の充実が叫ばれ続けている。学習指導要領の根幹にも「確かな学力」「豊かな心」が明示され、その理念は揺るぎない。さらに、現任校の教育目標にも「豊かな心の育成」が掲げられ、日々、重要性を反芻している。しかしながら、心を育む教育の一翼を担う「道徳教育の充実」については、見直す点がある。「豊かな心」には「他者と協調する心」「自らを律し規範ある行動をとること」「他者を思いやる心」などの価値が内在する。こうした側面をとらえ、道徳教育の充実を図る。そのため、私は教頭として校長の指導を仰ぎ、次の三点の具体的な取組を実施していく。

1 めざす授業の明示と校内研修

「特別の教科 道徳」に示される「考え、議論する道徳」。授業の質的転換を図るため、私は校内研修を充実させる。週一時間、年間三十五時間の道徳の授業において現任校の教師の中には、読み物資料を範読するだけの教師主導型の授業に終始してしまっている教師もいる。また、生徒の実態に合わせた道徳的価値の意義を十分に理解せず、教育活動全体で道徳教育を推進する力が育っていない。このような実態を踏まえ、私は道徳教育推進教師と協働して、めざす授業のあり方を提案する。教職員が授業を参観した後、ワークショップ形式を取り入れ、グループ内で意見交換を行う。「生徒の実態に即した教材であったか」「生徒が互いに協調し、対話的な学びから認識を深めていたか」「ポートフォリオ評価は妥当であったか」などの各テーマに基づき、真剣に協議する。すると、教職員一人ひとりが、授業を自分事としてとらえ、「考え、議論する道徳」の方針を実感でき、能動的に授業を改善し、新たな視点で授業を構想するようになる。若手教員は、研修で示された授業展開を自ら実践しようとし、ミドルリーダーは、生徒の実態に合わせ、目標に迫るための教師支援や評価を導こうとする動きが予想され、道徳教育を推進できる。

2 子供たちを取り巻く問題に対応した指導体制

心の活力・エネルギーを取り戻し、子供たちの心を豊かにしていくには、「道徳科の時間」だけでは不十分である。本校の生徒の実態に合わせた道徳的価値の認識を深め、教育活動全体で指導体制を整えていく必要がある。

学級活動の時間、毎日の学校生活の場面に合わせて「規範ある行動」の重要性を学べるようにする。OJTにより、若手教員に「朝の会や帰りの会で、生徒同士のよさや善行を取り上げて称賛する」という手だてを実行するように助言する。また、シニアリーダー、道徳教育推進教師と連携・協働してカリキュラム・マネジメントを遂行する。各教科・領域と道徳的諸価値とのつながりを「見える化」した「カリキュラム・カレンダー」を完成させる。すると、道徳科で実践した内容と他教科・領域で学ぶ内容とのつながりが明らかとなり、その意義を深く理解できる。つまり「点から線へ」の教育課程の質的転換が実現可能となる。私は教職員が行う、道徳科を中核としたPDCAサイクルによる授業改善を支援していく。

3 地域や家庭との連携による道徳教育推進

道徳科や教育活動全体で得た、子供たちの価値認識が、実生活の場面で生かされ、再認識できるようになるとその意義は高まる。私は教頭として学校新聞、PTA新聞の掲載記事に、本校の道徳教育の様子を示して発信し、理解を促す。また、地域の老人宅訪問、学区ボランティア活動の意義を情宣した上で、生徒が主体的に活動し参画できるようにする。そして、地域の方々の声を生徒にフィードバックする。すると、他者を思いやり、助けた善意ある行動が認められ、生徒の自己肯定感も高まるに違いない。体験から得た内容は深い学びとなる。

▼おわりに

以上の三点の取り組みから「道徳教育の改善・充実」に向けて全力で挑んでいく。現在、学校教育が抱える多くの諸課題や多様な問題を乗り越え、教職員がやりがいをもち教育活動に邁進できるよう力を尽くす。私は教頭として校長の意を汲み、自己研鑽を積み重ね、鋭意努力していく覚悟である。