【私を支えた「この一冊」(12)】「国家の品格」

藤原正彦 著 新潮文庫

「情緒」とは、「懐かしさとかもののあはれといった教育によって培われるもの」で、「形」とは、武士道精神からくる行動基準(惻隠の情)」と言える。

国語科指導員だった頃、ベストセラーになっていたこともあり、共感して読んだ本である。当時、論理的思考が尊ばれていた中で、論理の出発点を決めるのは情緒や形である。論理的でも、出発点に選ぶ仮説が間違っていれば暴走する、という氏の考えが、自分の中にすとんと落ちた。

「卑怯を憎む心を育てねばならない」「『卑怯』というのは論理を超越して、『駄目なものは駄目』ということだ」との考えも、納得できた。惻隠の情や情緒という人間の総合力を備えた子供たちを育てたいという思いは、その当時から自分の中に根付いている。

(大西裕子・岡崎市立美合小学校長)