教師力・人間力―若き教師への伝言(51)徹底・二つ

 振り返れば、教師として歩んできたこの三十数年間に、幾度となく子供たちに語り掛けたり、自分自身に言い聞かせたりしてきた「2つの徹底」があります。

 1つは「凡事徹底」です。文字通りこれは、当たり前のことを徹底して行うということです。学校生活において当たり前のことは数多くありますが、中でも私は、「掃除の徹底」を学級で大切にしました。それには理由があります。

 新米教師だったころ、職場の先輩に誘われて、「日本を美しくする会」相談役の鍵山秀三郎氏の講演を聴いたのがきっかけでした。鍵山氏はイエローハットの創始者でもあり、「人間の心は、そう簡単に磨けるものではありません。ましてや、心を取り出して磨くことなどということはできません。心を磨くには、取りあえず、目の前に見える物を磨ききれいにすることです。人は、いつも見ているものに心も似てきます」と語られました。この言葉が脳裏に焼き付き、翌日さっそく教室で、子供たちに掃除の意義を語り伝えたのが、つい昨日のことのようです。

 世界に目を向けたとき、学校教育に掃除の時間を設定している国は、あまりないことに気付きます。かつて、文科省国際教育課勤務の経験をいただいた私は、各国を視察する中、日本では、掃除が子供たちの大切な教育活動の一環として位置付けられていることの意義を改めて考える機会を得ました。国内のみならず、国が違っても、玄関やトイレをきれいに掃除し、環境を整えている学校は、例外なく児童や生徒が落ち着き、活力が漲っていました。

 学校だけではありません。通勤途中、早朝より会社や店舗周辺を掃除している従業員の方々をしばしば見かけます。きっとよい職場なのだろうと思うと同時に、決まって、鍵山氏の言葉が浮かんできたりします。本校でも毎日、校長室と職員室を6年生が丁寧に掃除してくれます。黙々と真剣に取り組む姿を何よりうれしく思います。

 2つ目は「称賛徹底」です。新卒で赴任させていただいた学校の校長先生は、山本五十六(連合艦隊司令長官)の名言「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ」を引用し、折に触れて諭してくださいました。褒めて子供を育てることの大切さです。子供だけではなく、担任である私たちのささやかな頑張りを、機を捉えて職員朝礼で褒めてくださいました。そんな職場は、毎日、和やかでした。

 ある教育情報誌で、「広島県呉市の全小中学校で、褒める活動を徹底する」という内容を目にし、この校長先生のことが思い出されました。いじめなどの問題行動をなくすための活動と書かれていて、納得しました。

 子供たちが成長していくためには、時に叱ることが必要です。一方、やる気を引き出すためには、やはり褒めることが不可欠だと実感しています。目の前の子供たちの頑張りに期待して、ついつい多くを要求してしまったり、多くの指示を出してしまったりと、私は反省することばかりです。認め合える雰囲気づくりや、自尊感情を育む環境づくりの大切さを改めて感じる今日このごろです。

 子供たちの成長を願い、今現在も本校の先生方と共に、この2つの徹底を心掛けています。日々教育活動に奮闘している若き教師の皆さんの参考になれば幸いです。

 (小田昌男・岡崎市立岡崎小学校長)

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