(提言)金メダリストからの贈り物

安城市教育委員会教育長 石川良一

 コロナ禍は教育の在り方について深く考える機会となりました。恐れや不安が募る中、激しい言葉や大きな声で冷静さを欠く行為に及んだ人々の姿は、未知のもの、正解のない問題に向き合ったときの人間の「弱さ」「脆さ」をあぶり出しました。新学習指導要領で求められている学びの根拠がリアルに映し出されました。その一方で、普通に歯を食いしばって、黙々と日々を積み上げていく大多数の人たちのおかげで、教育現場は力強く支えられてきました。

 賛否両論ある中で開催された今夏のオリンピック・パラリンピック。開会式前から予選が始まり、熱い戦いぶりに多くの国民を魅了した女子ソフトボール。その日本代表チームのメンバーとして、安城市ゆかりの山田恵里選手、川畑瞳選手が出場し、見事金メダルを獲得しました。その功績をたたえ、市民栄誉賞を授与する式典を開催するにあたり、両選手と懇談できる場をいただきました。

 お二人からは、コロナ禍を乗り越える励みとなる子どもたちへのメッセージをいただきました。加えて、主将を務めた山田選手に、私は次のような質問をしました。

 「もしも山田選手が学校の先生だったとしたら、日々けなげに学校生活を送っている今の子どもたちに、どんな話をしてあげますか?」

 すると、次のような言葉が返ってきました。

 「代表チームがチームとして強くなれたのは、長い時間を共に過ごし、たくさん関わってきたからです。多くの会話を通して、互いの様々な側面を知り、理解し、認め合い、信じ合える者同士になれたからです。私が必要だと思うのは、思ったことをすぐに口にせずに一呼吸置くこと。まずは相手のことを分かってあげようとする。その人の目の動きや声の調子、言葉、その人から伝わってくるものを感じ取ろうとする。思いやりと言ったらいいのでしょうか。今、マスクで顔がよく見えないからこそ、一層感じ取る力を発揮させて、相手を分かろうとする力を、この機会に育ててくださいと語ります」

 幾多の苦境を乗り越え頂点にたどり着いたメダリストからの言葉は、これからの時代を生きる子どもたちに育みたい資質・能力としっかり重なるものでした。市内の子どもたち、先生方と大切に共有したいと思います。

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