(こだま)星野富弘と相田みつを……

 コロナ禍の閉塞感に耐え切れず、以前から行きたかった旅に出かけた。そこは群馬県みどり市。星野富弘氏の故郷である。

 今さら彼の経歴を紹介するまでもないが、体育教師になったばかりの6月、クラブ活動の指導中の落下事故で頸椎を損傷し手足の自由を失った。入院中に口に筆をくわえて文や絵を描き始めて今に至っている。同じ教師の道を歩み始めたころに彼の詩画集に触れ、その繊細さに驚くとともに、道半ばで教職の道が閉ざされた無念さを思った。

 草木湖(みどり市)のほとりにある富弘美術館を訪れた。溢れる詩画の中に、「折れた菜の花」という作品がある。「私の首のように/茎が簡単に折れてしまった/しかし菜の花はそこから芽を出し/花を咲かせた/私もこの花と同じ水を飲んでいる/同じ光を受けている/強い茎になろう」菜の花に自分を重ね、そして菜の花の強さに心動かされた気持ちが表れている。生きる力強さが伝わってくる。この詩から勇気をもらった人は多いのではないか。

 さらに旅を続ける。草木湖を源とする渡良瀬川は、相田みつを氏の故郷・栃木県足利市に至る。川に沿って車を走らせる。相田氏は戦中戦後の動乱期に青春時代を過ごした経験から、命の尊さや生き方、人との関わりをテーマにして、「自分の言葉」と「自分の書」による独特のスタイルを確立した。国宝鑁阿寺(ばんなじ)など氏ゆかりの地を巡った。

 北関東という同じ風土から生まれた二人の作品が多くの共通性をもっていることに改めて気付かされる。「悲しみも苦しみもあって私が私になってゆく」(星野富弘)「この世はわたしがわたしになるところ」(相田みつを)二人が直接会ったことはないそうだが、大きな挫折を味わった二人には心の深い部分で通じ合うものがあったのかもしれない。

 相田みつをのカレンダー1月の言葉は、「永遠の過去 永遠の未来 その一しゅんのいのち いまここに生きて あたらしき春に逢う ありがたきかな」

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