(提言)書くことの大切さ

岡崎市立竜海中学校校長 伊豫田 守

 三河に「形成の会」という作文教育の研究会がある。年間6回の例会を三河各地で開催し、子供の作文を題材に作品研究を通して、指導の在り方を学んでいる。

 「形成の会」の「形成」は人間形成を意味している。「国語教育の究極の目標は、『言語の形成』を通しての『人間形成』である」という考え方に基づいている。生活の中で、思いや考えを言葉にすることで、自分の考えが明確になり、自己理解が深まることはよくある。授業を考える際、頭の中の授業のイメージを言葉にして誰かに話すことで具体的になり始め、授業案に書くことで自分の考えている授業が見えてくる。言葉にすることは、物事への認識を深めたり、考えをまとめたりすることだと実感する。

 作文指導は「作家を育てているのではない」といわれる。例えば、夏休みの課題作文などで、部活動をテーマにした作品が多くみられる。この作品を読んで感動したり、共感したり、考えさせられたりする。

 しかし、本来、作文を書くのは、読者のためではなく、作者自身が、自分の感じた価値を明らかにし、認識するためである。作文指導では、作者の部活動を振り返らせ、「楽しかった」「やってよかった」「頑張った」と感じたその中身を明らかにさせ、何に価値を感じたのかを認識させていく。最後までやり通した自分の姿や、自分と友達の関係、支えてくれた周りの人の存在など、作文を書くことで自分の姿を振り返り、自分にとっての価値を明らかにしていく。その過程は、自己理解を深め、自分の成長を認識していく過程であるともいえる。出来上がった作品が稚拙であっても、作者が自分の姿に価値を見いだし、成長を認識できるものであれば、それは素晴らしい作品である。そういう指導をしていくべきであることを「形成の会」で学んだ。

 作文指導は時間がかかり、なかなか授業では難しい。しかし、せめて、普段の授業の中で考えをノートに書く時や授業日記、生活記録を書く時、頭にあるぼんやりしたイメージを、自分の「考え」や「思い」として認識するために、言葉にして書くことを大切にしたい。これこそが「思考」であり、自己認識を深め、自己を確立することにつながると考えている。

(岡崎市立竜海中学校長)

 

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