教師力・人間力―若き教師への伝言(53)「当たり前」を形に

 教員生活を振り返り、先人、諸先輩方から教えていただいた数々の教えから、今も大切にしていることを「若き教師への伝言」としてお伝えしたいと思います。

 「時を守り、場を清め、礼を尽くす」。これは、哲学者であり、教育学者である森信三氏の言葉です。

 まず、「時を守る」とは、この言葉どおり、時間を守ることです。教育現場では、日課を守り、時間前には活動場所にいること、そして、終わりの時間を守ることが大切です。部活動の顧問をしていた時、ある先輩教師から、「活動場所には一番に行き、安全を確認すること。終了時刻を過ぎてだらだらと練習しても、子供たちは集中力を欠き、技術は向上しない」と教えていただいたことを思い出します。相手の時間を大切にすることは、相手を尊重することです。そして、それは自分の信用を積み重ねていくことにもつながっていくのです。だからこそ、職場では、期日を守ることが仕事の第一義だと思います。

 次に、「場を清める」とは、整理整頓をし、掃除を施すということです。目で見て分かることから、自分を正し続けることとも言えます。自分の机上から始まり、足元のごみを拾うことまで。本校では、黙働清掃に取り組んでいます。時間いっぱい黙って掃除をします。掃除を通して、気付く人になり、心を磨くことができます。おのずと謙虚になり、周りへの感謝の心が芽生えます。この夏の野外教育活動では、子供たちが掃除する姿を見て、施設の方々からお褒めの言葉をいただきました。「一人も遊ぶことなく、黙々と掃除場所を見つけて掃除をしてくれてありがとうございました。掃除道具入れの中まで掃除をしてくれた学校は初めてです」まさに、本校の目指す黙働清掃が「当たり前」の姿として形になった時でした。

 最後に、「礼を尽くす」とは、あいさつをすること、「はい」と返事をすることです。あいさつは、社会人としての基本です。どちらからではなく、気付いたらどんどん声を掛けていくことが大切です。相手のことを考え、温かい人間関係をつくるスタートラインです。そこに、笑顔が加われば最高です。笑顔でいるだけで、きっと周りの人は明るくなると思います。

 ある寿司屋の店員さんから聞いた話です。職員室に出前を持って行った時の話です。「学校の先生は授業後も忙しいですね」実は、あいさつも少なく、ほとんどの教職員が机に向かって仕事をして顔さえ上げないということでした。これでは、学校理解や協力を得ることは難しいと思いました。「こんにちは」、たった一言で、信頼や喜びにつながる簡単な魔法の言葉なのにと残念に思ったことを思い出します。コロナ禍の中、本校ではあいさつの声が小さくなりました。

 あいさつができない子も増えてきました。その都度、全校にあいさつの大切さを話します。子供たちは、素直です。その日から、笑顔であいさつをしてくれます。立ち止まってあいさつをしてくれる子もいます。ただ、長続きしません。繰り返し、繰り返し心のつながる喜びを子供たちの心に届けていかなければなりません。

 これら3つは、全て「当たり前」のことです。その当たり前のことを形にしていくことが私たちの仕事だと思います。

 そして、「学びひたり、教えひたろう、優劣のかなたで」大村はま先生の言葉の中で、子供たちが、教職員が、そして私自身がひたり続けていたいと願っています。

 (大平正美・一宮市立大和南小学校長)

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