管理職研修「審査論文をどう書くか」(105)

テーマ

 日本人の13人に1人が「性的マイノリティー」と言われている今、学校現場でも切実な対応が求められています。「性的マイノリティー」とは何かを明らかにし、全ての子どもが安心して学校生活を送ることができるようにするために、あなたは教頭としてどのように取り組むのか、具体的に述べなさい。


【テーマの分析・解説】

 学校現場においても切実な対応が求められるテーマだけに、書き出しでは「性的マイノリティー」の正しい理解とともに、発達段階にある子どもたちに配慮すべき課題まで明らかにしておきたい。その上で「全ての子どもが安心して学校生活を送ることができる」という主題に迫りたい。また、「安心な学校生活」に向けては、子どもだけではなく、広く保護者、地域の理解を得ていくという視点も忘れてはならない。

 それらを基盤に、教頭として、校長を補佐して学校経営にあたる構えと、学校体制の構築を含めた具体的な取り組みについて述べたい。以下、中学校の教頭としての例を示す。

はじめに

 目の前の、一人一人の「この子」のために、私たちの営みはある。つらく悲しい思いをし、不安や悩みを抱える生徒があれば、保護者の方を含めて話を聞き、学校全体の問題として取り組みたい。

 大多数の人は、身体の性と心の性、社会的な性が一致している。しかし、社会には性的指向や性自認などの「性の在り方」がそこにあてはまらない人々がいる。それが「性的マイノリティー」であり、LGBTなどそれぞれの特性がある。「性的マイノリティー」を含め、生きづらいと感じる人のない社会を実現していくために学校はどうあるべきか、そこから考えていきたい。

 中学生は、日々の学びの中でなりたい自分を見いだして、実現に向けて努力していく段階である。思春期だけに、異性への性的指向を親しい友人と語ったり、性自認に基づき自らの成長や容姿を気にしたりもする。また、自分の職業観や、家庭像について、社会的な経験の中で意識をしていく。まさに仲間との学校生活の中で成長していく大切な時期に、「性の在り方」を理由に、互いに認め合えず、さらには、いじめにつながるようないびつな人間関係が生じることがあってはならない。それらは学校全体で解決すべき大きな課題となる。

求められる学校体制

 そこで、教頭は、まず学校としての組織的な対応と支援体制づくりに努める。生徒および保護者からの相談があった場合には、広く情報を集め、管理職と関係指導部を中心に方針を立案。校長の決裁のもと、校内支援委員会や学校内外にわたるサポートチームを立ち上げる。組織・チームでは、当事者である生徒の状況や支援方法の情報交換を重ね、全教職員の共通理解で系統的な支援ができるよう整えていく。また、性の多様性に関して、教職員の理解を深める校内研修も必要となる。それらの場において、教頭は適切な助言を行いたい。「命や人権の尊重」「互いの個性の認め合い」「いじめを許さない姿勢」を中核に、校長の学校経営方針とも関わらせ、学年・学級へと浸透させられるよう説いていきたい。

 さらには、「家族にも話せない」という生徒の不安に、秘匿性をもって寄り添える環境整備も必要となる。また、生徒側からの相談を受ける前に、その意思に反した他者からの暴露(アウティング)により生徒が傷つき、自死などの痛ましい結果に至った事例もある。深刻ないじめにつながる事態も想定しつつ、生徒の尊厳を守り得る学校体制の確立に向け、教頭は関係機関との連携も含め、慎重な姿勢で調整を進める。

安心して学校生活を送るための具体的な配慮

 全ての生徒が、ともに安心して学校生活を送ることができるよう、校内支援委員会に、次に示す配慮事項を提案させる。

  1. 校内文書では、希望する呼称で記し、名簿上も自認する性別として扱う。
  2. 自認する性別の制服、体操着などの着用を認める。
  3. トイレは、職員トイレや多目的トイレの利用を認め、更衣室についてもそれと同様の配慮を行う。
  4. 体育では別メニューを設定し、部活動や宿泊活動にも特別な配慮を行う。

 例えば、3.の配慮が整わねば、周りの生徒がトイレを安心して使用できなくなる。常に、両者の立場に立って方策を考え、見直し、人間関係づくりの営みを続けていきたい。また、2.には保護者だけでなく、通学や校外活動を見守っていただく地域の方々にも理解を求めていくことになる。多様性に配慮した学校の姿勢を丁寧に発信し、地域で生徒を育むことへの協力を求めていきたい。

おわりに

 文科省が、本題に関する「きめ細かな対応等の実施」を記した教職員向けリーフレットを示して数年。各学校において性同一性障害に係る取り組みは進み、勤務校でも、生徒の悩みや不安に正面から対応できる学校であり続けたいと願っている。

 「性の在り方」に配慮した学校の体制は、生徒が互いの個性を認め、信頼し合うことにつながる。仲間とともに学ぶ、本来の学校生活の中で、生徒が自らの成長を実感できるよう、教頭は縁の下の力持ちとして、学習環境を整え続けていきたい。

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