(読者の窓)秘伝のたれ

 本園は、大正2年創立の歴史ある幼稚園である。転勤や転居のため、途中入園児や転園児が毎年数人おり、その内の一人の保護者から、本園での2年間の思いをつづった手紙を受け取った。

 「(前略)この園に入って、引っ張り上げることより、一緒に歩むこと、ほんの少し背中を押してあげることが、幼児期には一番大切ということを学びました。(中略)先生や保護者の方の温かさ、優しさは、人が入れ替わっても〝秘伝のたれ〟のように継ぎ足されて作り上げられてきたものなのですね(後略)」…宛名は園長と主任になっていたが、この保護者の思いは、この親子が出会った職員皆の関わりがあってのこと。その日のうちに全職員に手紙を回覧し、前任の園長に知らせた。名古屋市立幼稚園は、幼児一人一人の 思いを受け止め、個々の発達段階に寄り添いながら成長を促していくということを大事に教育している。

 このことは何十年もの間変わることなく、私たちの中に培われてきた精神、まさに〝秘伝のたれ〟である。今回の手紙は、この精神を脈々と受け継いで来られた先輩方、そして、名古屋市立幼稚園の教育そのものに宛てられたものであるとひしひしと感じる。手紙の最後には「コロナ禍の中、子どもたちの日常を守り続けてくださってありがとうございました。どれほど子どもたちと親にとって、幼稚園が安心できる場所だったか…」と書かれていた。

 この先もずっと、子どもと保護者の心のよりどころとなるべく、先輩から受け継いだバトンを次の世代に確実に手渡していきたい。

 (奥地美喜・名古屋市立第二幼稚園園長)

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