急がれる児童生徒の自殺対策

国 SSWの配置など4つの重点施策

 小、中、高校生の自殺が増えている。文部科学省の資料によると、2020年の児童生徒の自殺者は479人(前年は年間339人)に上り、統計を取り始めた1980年以来、過去最高となった。全体の自殺者総数の中ではわずかな数値(2%以下)であるが、極めて深刻であり、自殺対策が急がれる。

 日本における若者の死因で最も多いのは「自殺」である。これは、先進7か国の中では日本だけである。では、若者たちはなぜ自殺という選択をしてしまったのか。前出の文科省の資料によると、自殺者479人の自殺の原因は、学校問題186人、家庭問題103人、健康問題100人、男女問題29人などであった。その内、学校問題の内訳は、進路に関する悩み55人、学業不振52人、学友との不和26人、入試に関する悩み26人、いじめ6人などとなっている。自殺というと「いじめ」が原因となる場合が多い印象があるが、実際は学業に関連した原因で自殺する子供が多いことが分かる。

 こうした現状を踏まえて、国では子供の自殺対策の方針として「第3次自殺総合対策大綱」で、重点的に取り組むべき4項目を挙げている。

(1)学生・生徒等への支援のSSWの配置
 全ての学校にSSWが常駐できるよう、予算の拡大や人材確保、育成に力を入れなければならない。

(2)学校における自殺予防教育の推進
 生涯にわたるメンタルヘルスの基礎づくり、SOSの出し方に関する教育、自他の命を大切にする教育、全ての子供を対象とした自殺予防教育の推進が求められる。

(3)子供支援の充実の居場所づくり
 自殺の原因として、学校問題、家庭問題が上位に挙げられる。学校や家庭以外の第3の居場所づくりに力を入れていかなければならない。

(4)若者の特性に応じた支援のICTを活用したアウトリーチ策の強化
 今後、SNS相談事業の需要がさらに高まることが予想される。SNS事業の予算拡大や支援先の確保が求められる。

県 リーフレットやメッセージで啓発
県教委のつくったリーフレット

 県教育委員会では、自殺予防のための啓発リーフレットを中・高校生、保護者用は15年に、教師用は19年に作成している(中・高校生、保護者用は21年に改訂)。

 このリーフレットは、文科省が14年に発行した「子供に伝えたい自殺予防―学校における自殺予防教育導入の手引―」などを参考に、学識経験者、スクールカウンセラー、県内の中学校、高校の管理職やPTA関係者による「作成委員会」と、中学校、高校の教員や養護教諭からなる「作業部会」によって作成された。

 教師用リーフレットから抜粋して紹介する。

○心のSOSに気付いていますか?

 子供のサインを敏感に感じ取れるよう、日頃から子供の様子を十分に把握する。
 
・遅刻、早退、欠席が多くなる。
・成績が急に下がる。
・一人ぼっちで教室移動している。

※信頼関係のない人間関係では子供は心のSOSを出さない。

○子供のSOSに気付いたら…

 子供の近くにいる教師には、〈TALKの原則〉が求められる。

Tell:言葉に出して心配していることを伝える。
Ask:「死にたい」気持ちについて率直に尋ねる。
Listen:絶望的な気持ちを傾聴する。
Keep safe:安全を確保する。

○一人で抱え込まずに、チームで対応を!

 自殺の危険の高い子供は一人で抱え込まず、多くの目で見守ることで子供に対する理解を深める。

 最後に、これまでの教師の「経験」や「勘」「思い込み」だけでなく、子供の特性を十分に理解した上で、観察することが大切。大人側がSOSの受け止め方を十分に理解し、対応することが重要であるとまとめている。

 本リーフレットは、県教委HPよりダウンロードすることができる。

  ◇  ◇  ◇

 昨年8月、県民向けに「知事メッセージ」を発信した。子供たちに向けたメッセージは次のとおりである。

 「こころが苦しくてたまらない、どうしていいか分からないときは、一人で悩まず、御家族や先生、周りの友だちなど、信頼できる人に、気持ちを話してください。(略)あなたのつらい思いを受け止め、味方になってくれる信頼できる大人は必ずいます」

 これまで子供の自殺を取り扱うことは腫れ物に触るような不安感があったのではないか。しかし、「自殺問題」は子供の命に関わること。今こそ子供の自殺予防に取り組むべき時が来ているのではないか。

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