教師力・人間力―若き教師への伝言(57)忘れられないことば

 教員生活を送ってきた中で、忘れられないことばがいくつかある。

 ◇ ◇ ◇

 「君の授業は、授業ではないけれど、子どもたちはよく頑張っているね」

 新任の頃、授業を見てくださった先生のことばだ。授業技術がまるで駄目で、授業としての基本を一から学んでいたころである。それでも、子どもたちは教師の拙い働き掛けに懸命に対応してくれた。今にして思えば、休み時間に子どもたちと遊んでいたことが、そうした関係性を生み出したに違いない。

 授業は、教師がするのではなく、子どもたちと一緒につくるのだという実感がもてた。

 「心を込める」

 ある会合で、先輩の先生から心を込めることの大切さをお話いただいた。私は早速、心を込めて、お礼の気持ちを伝えようと語気を強めて発声した。先生は、「声を大きくすることではないね」とおっしゃった。どきっとして、とても恥ずかしい思いをした。それ以来、心を込めるとはどういうことかと考え続けている。いまだに、答えは出ていない。

 今は、相手のことを一生懸命に考えて伝えるということを心掛けている。自分の発したことばに心を込めていたか、内省することを繰り返していこうと思う。心を込めて伝えたときにこそ、心を込めて伝え返してくれると信じている。

 「笑顔で伸びる」

 「子どもたちが笑顔で生活して、成長していけるといいね」

 尊敬する先輩が大切にされていることばだ。今でも私の信条としている。

 子どもたちが来たくなる学校、学級であってほしいと願い、楽しく安心できる集団、わくわくする授業をつくりたいと考えてきた。

 子どもたちが「〇〇したい」と思い、友達と「〇〇したいよね」と話し、「じゃあ、△△しなくちゃだね」と相談し、「やってみたら、□□した方がいいね」と修正する。

 子どもたちが笑顔でわくわくしながら、お互いのよさがスパイラルで伸びていく、そんな教育活動をしていきたい。

 「人生は面白い」

 事務室に飾られていたことばである。

 この先輩の事務職員さんは、趣味である登山を心から楽しまれている。時折、頂上からの景色の写真が届く。私もその景色が見たくて山に登る。今では、紹介していただいた山が、私の大のお気に入りである。

 教職はなりたくてなった職業だし、子どもたちと過ごすことに、このうえない幸せを感じてきた。自分にとって、教職は天職だと思っている。それでも、人生の仕事以外の部分を楽しむことはとても大切なのだと思う。そこを大切にすると、子どもたちのために頑張りたいという思いが強くなる。子どもたちも、人生は面白いと感じている先生から学びたいと思っているに違いない。

 ◇ ◇ ◇

 自分の姿を見つめ直し、よりよい教育活動を目指して、日々積み重ねていきたい。そうしたとき、これまで、先輩たちが掛けてくださったことばを改めてかみ締めることで、また一歩一歩進むことができる。

 (村松敦雄・設楽町立田峯小学校長)

あなたへのお薦め

 
特集