「赤ちゃんポスト」は、それでも必要です。 かけがえのない「命」を救うために

田尻由貴子 著 ミネルヴァ書房 2000円+税
田尻由貴子 著
ミネルヴァ書房
2000円+税

著者は、平成27年まで、熊本市にある慈恵病院に看護師として勤務。さまざまな事情でやむをえず新生児などを預ける「こうのとりのゆりかご」の運営に携わってきた。

この、いわゆる「赤ちゃんポスト」を巡る日本国内の動き、母親やその家族の切迫した電話相談、定年退職後の著者の活動などをまとめている。

運営を開始した19年度から27年度までに、同施設に預けられた命は125人。それ以上に、同院に寄せられる電話相談件数は急増しているという。望まない妊娠や複雑な事情を抱えた妊婦、周りへの相談が困難な状況があるのを、著者は目の当たりにしてきた。

今年、「赤ちゃんポスト」の設置に名乗りを上げた神戸市の事例では、市が求めていた常駐医師の確保にめどが立たず、相談窓口の開設だけに留まっている。やむをえない事情で希望する夫婦に親権も含めて移す特別養子縁組制度の利用者が増えつつあるとはいえ、十分な運用体制や社会的な認知には、まだまだ至っていない。

著者は講演活動などを通じて、命の大切さや性教育の重要性を説いている。その中で、24時間体制の相談窓口を各都道府県に1つ以上設置するのを提言している。

「社会全体が、生まれてくるかけがえのない命を大切にしようとしている」シンボルに、「赤ちゃんポスト」がなるように、小さな命と母親を救うセーフティーネットの拡充を訴える。