ベスト・エッセイ 2017

日本文藝家協会 編 光村図書出版 2000円+税
日本文藝家協会 編
光村図書出版
2000円+税

新聞や雑誌などに、昨年寄せられたエッセイから、75作品を厳選した。世相や自然、食べ物、出会いと別れ、ふとしたきっかけでよみがえる情景。書き手独特の視点や語り口でつづられる文章に、思わずくすりと笑わされたり、はっとさせられたりする。

戦後初めて日本に渡り、69歳という国内最高齢で天寿を全うしたアジアゾウのはな子。その飼育を長年担当し、「殺人ゾウ」と恐れられていたその心を開き、信頼関係を築くまでの、親子二代の物語(山川宏治「はな子、親父をよろしく」)。

流行語にもなった「保育園落ちた日本死ね」というフレーズ。幼稚園に行きたくて、独りで歩いてたどり着いた4歳の頃の自分を重ね、このフレーズに「力のある文章を名文といわなくて何と言おうか」と共感する(瀬戸内寂聴「名文とは」)。

弱者に対して隠し持っていた後ろめたさが、いざ自分が障害児の父親となった瞬間に「『喜び』と呼ぶしかない感情」に変わった(高橋源一郎「ぼくたちには弱さが必要なんだ、ということ」)。

好きな作家から読み始めても、気になるタイトルを「つまみ食い」してもよい。一通り読んでみれば、新しい気付きがきっと得られるだろう。その気付きが、さらに未知の作家や本との出会いにつながる扉となる。

この夏、何を読めばよいのか分からないという子供への、書誌案内にもなろう。