若手教師がぐんぐん育つ学力上位県のひみつ なぜ新採でもすぐに成果が出せるのか

千々布 敏弥 国立教育政策研究所総括研究官にインタビュー

教育開発研究所 2160円+税
教育開発研究所
2160円+税

本紙で「教育時事論評 研究室の窓から」を連載中の、千々布敏弥国立教育政策研究所総括研究官が、『若手教師がぐんぐん育つ学力上位県のひみつ なぜ新採でもすぐに成果が出せるのか』(教育開発研究所、2000円+税)を上梓した。全国学力・学習状況調査の上位県の、小・中学校や教委の取り組みなどを解説している。同書の狙いなどを聞いた――。

◇ ◇ ◇

――本書の狙いは。

タイトルは「若手教師がぐんぐん育つ」だが、私の気持ちとしては「組織文化が優れている学力上位県の秘密」という意図で編集した。

対象にした秋田、福井、石川の3県は、若手教師を伸ばすためだけの特別な仕組みを持っているわけでなく、組織文化が優れている点が、結果として、若手教師も伸ばしている。3県とも長い歴史の中で、学校の組織文化を高める施策を展開し、それが実を結んだことが高学力を示すに至っている。どの学校でも若手教師を育てることに成功している――ということだ。

だから執筆陣には、「どうやって自県、自市、自校のシステムを構築したのか」について書いてくださいと依頼した。執筆陣は、他書では見られない、素晴らしい人たち。私がこれまでインタビューしてきた、秋田県と福井県のエスタブリッシュメントといえる人たちが筆を執っている。「この種の依頼は全て断っているのだが、あなたからの依頼だから受けることにした」という、うれしい返事をくださった人が少なからずおられる。

――秋田、福井、石川の各県の授業力・指導力は、なぜ高いのか。

秋田県と福井県には、日本の教育を変える秘訣が、この書で示した要素以外にも数多く潜んでいると見当をつけており、その研究者的な勘は、今のところ外れていないと確信している。

石川県は最近、探究に取り組み始めた。授業研究の実施率日本一ということで以前から注目していたが、秋田、福井に注力するために、石川県の探究は不十分だった。石川県については、インタビューよりも、統計でその強みを分析している。

実は、石川県の強みは統計データで見事に説明できる。そのデータの背景となる施策について、教育委員会に尋ねると、回答の行間に、秋田県、福井県と同じものが存在しているのが見える。

それを一言で表現すると、「コンサルテーション的姿勢」となる。コンサルテーションとは、エドガー・シャインが、多くの企業のコンサルタントを重ねた経験から生み出した概念。レディーメードのマニュアルを示したり、医学的に診断して解決策を提示したりするよりも、相手がどう考えているかを尊重し、相手が自ら問題解決策を見いだすように働き掛ける姿勢だ。

秋田県の場合、秋田メソッドといえるものを県で構築して、それを県教委主導で伝達したように受け取られがちだが、歴代の義務教育課担当者によると、秋田県の学校が最も課題としているのは、学校側に受け止められる示し方はどうかで、それを強く意識している。

秋田、福井と石川は、県と市町村の関係が微妙に異なるが、学校へのコンサルテーション的姿勢は見事に一致している。

――読者へメッセージを。

以上のような編集意図を、どの程度実現できたか、まだ自信のないところではあるが、執筆陣の充実ぶりには、間違いなく自信を持っている。しかも、それぞれが思い入れ豊かに執筆している。ぜひご一読を。