『職業としての教師』 著者の佐藤明彦氏に聞く

佐藤明彦著 時事通信社 1400円+税
佐藤明彦著
時事通信社
1400円+税

月刊「教員養成セミナー」の編集長として、YouTube連動企画を立ち上げるなど、同誌の全面リニューアルを実行した佐藤明彦氏。昨年6月に編集長を退任後、今年2月に教員志望者向けの入門書として単著『職業としての教師』(時事通信社、1400円+税)を上梓した。「教師」という職業を他職種と比較・分析した上で、具体的な仕事内容、ライフキャリアなどを紹介している。同書の狙いなどを聞いた――。

◇ ◇ ◇

――本書の狙いは。

ここ数年、教員採用試験の受験者数は減少傾向にあります。民間の就活が売り手市場なことも影響していると思いますが、私が気になるのは「教員=忙しい」「教員=大変」というイメージが、広く高校生や大学生に浸透していることです。実際、「自分に務まるだろうか…」と不安を吐露する教員志望者の声を、よく耳にします。最近は、学校をブラック企業のように報じる記事もあるので、その点が少なからず影響していると思います。

確かに、教員が忙しいのは事実ですし、仕事の大変さも増しています。部活動の負担が大きいこと、残業手当が4%の一律支給となっていることなどは、改善が必要でしょう。しかし、利益追求を目指して従業員に圧力をかけ続けるブラック企業と、学校の大変さは質的に違います。実際、どの調査結果を見ても、教員の職業満足度は総じて高い。こうした現実とイメージのズレを補正し、教員を目指そうかと迷っている人を後押ししたいというのが、本書を出した理由の一つです。

――教員志望者を増やす重要性とは。
著者の佐藤明彦氏
著者の佐藤明彦氏

公立学校は一見、国が定める学習指導要領に基づき、粛々と進められているように見えます。しかし、実際には教員個人のパフォーマンスに負う部分が、非常に大きい。長年、現場で培われた職人技が、ベテランから若手へと継承されることで、「分かりやすい授業」や「円滑な学級経営」が成立してきた側面があります。つまり、「仕組み」よりも「人材」の質と量が圧倒的に重要で、どんなに学習指導要領が優れていても、それを実践する教員に力がなければ「絵に描いた餅」と化します。その点で、教員定数を改善すること、教員志望者を増やして優秀な人材を確保することが、私は最重要課題だと捉えています。

――「職業としての教師」には、教師の「一生」「1年」「1日」なども書かれている。

私たちにとって、教師ほど身近な職業はありません。小・中・高と、ずっと目の前にいたわけですからね。しかし、私たちが児童生徒として見てきた教員はA面にすぎず、B面には教材研究や研修、校務分掌など、実にさまざまな仕事があります。それらA・B面を含めたリアルな教師像を知ってもらいたいというのが、本書に込めた思いです。通して読めば、ただ「子供が好き」では務まらない仕事だということなども分かってもらえると思います。

――本書の特色は?

私自身は、教員経験者ではありません。そんな人間が、職業としての教師論を書くことに、当初は多少のためらいもありました。一方で、多くの先生方と交流してきた民間人の立場だからこそ、冷静かつ客観的に書ける部分があるのではないかと考えたのです。冒頭、いきなり初任給の話から入り、給料や退職金、恋愛事情なども書いていますからね。その点は、これまでの教師論にはない本書の特色だと思います。

また、後半には、教師を目指す方向けに、教員免許状の取得方法や、教員採用試験の内容・対策なども掲載しています。採用試験では面接を重視する自治体も増えていて、その点で持つべき心構えなども書いていますので、教員志望者には参考にしていただきたいと思います。

――読者へメッセージを。

人生において、職業選択ほど難しいものはありません。教師という身近な職業においても、よく理解せずに就けば、ギャップに苦しむことがあります。教員志望の方々には、本書を通じてリアルな教師像を知っていただき、自分がやりたい仕事かどうか、自分に向いているかどうかをよく考えてみてほしいと思います。

また、学校関係者にも、外部の人間が教師という職業をどう見ているかを知る上で、ぜひ読んでいただきたいと思います。