ヒトは「いじめ」をやめられない

小学館 中野信子 著 780円+税
小学館
中野信子 著
780円+税

「いじめ」が社会問題化し、国をあげて根絶に乗り出しても、自殺する児童生徒のニュースは連日のように報道される。会社、ママ友、SNS、「いじめをなくそう」と言う大人の世界にもいじめはある。倫理観に訴える対策だけでは限界があると、多くの人は気付いているのではないだろうか。いじめは本来人間に備わった「機能」であり、「根絶」ではなくいかに「回避」するかを脳科学の視点から探るという、新しい方法論を示したのが本書だ。

いじめの根源は、集団を作り、高度な社会性を持つことで生きながらえてきたヒトが、共同体を存続させるために、それを脅かす人間を制裁・排除する機能を脳に備えたことによるものと解説。また、日本人には「安心ホルモン」と呼ばれるセロトニンを使い回せる遺伝子型が少なく、不安傾向が強いために、裏切り者への糾弾意識が強いという。集団の中で悪目立ちしたり、常識外の言動をすればたちまち異分子扱いされてしまうのはそのためだ。個性を大事に、と言いながら、同調を強く求められる環境下に子供たちがいることを改めて思い知らされる。

回避策として、人間関係を薄めたり、空間的に距離を置くといった方法に加え、第三者の介入や防犯カメラの導入を提案している。狭いコミュニティーの中で生きる子供たちが自らの力だけで逃げ出すのは難しい。彼らに差し伸べるべき本当に必要な方策は何か、重い課題を突き付けられる。