21世紀の教育に求められる「社会的な見方・考え方」

江口勇治監修・編著
帝国書院
2500円+税

監修者である江口は、日本における法教育研究の第一人者であり、長年にわたり社会科の学習指導要領改訂に携わってきた。今日の社会科では歴史、地理、公民の各分野の中に、さまざまな今日的課題に対応した教育が組み込まれている。その教育的価値と新学習指導要領で示された社会的な見方・考え方との関係性を、社会科教育の研究者、実践者が検討を加えている。特に圧巻なのは第4章であろう。江口は冒頭の第1節で、高校公民科に新設された「公共」をはじめ、新学習指導要領の公民教育の改訂は充実したとは言えないのではないかと疑問視する。

その理由を念頭に置いた上で、後に続く論考を読み進めていくと、これからの社会科・公民科で、生徒が主体的・対話的で深い学びをどのように実現し、どんな見方・考え方を獲得するのか、さらに、それを実現する授業とはどのようなものであるかが分かる。しかし、分かったところですぐに授業で体現できる教員は少数ではないだろうか。なぜならば、その全体像を捉えようとすると、根底にある思想や社会的背景までも把握しなければならないからである。

授業実践というアウトプットは氷山の一角にすぎない。社会科を指導する教員には常に学び続け、日々変化する社会を捉え、生徒に問い続けていく姿勢が求められている。その実現によって初めて、日本の公民教育は充実したと言えるのではないか。執筆陣からそんなメッセージを受け取った。