道徳教育は「いじめ」をなくせるのか 教師が明日からできること

藤川大祐 著
NHK出版
1300円+税

教育現場に携わっている人ならば、ドキッとするタイトルに違いない――。本紙で「注目の教育時事を読む」を連載中の著者は、道徳の教科化を巡り「いじめ問題への対応は実質的に置き去りになってしまった」と語り、道徳教育は一歩間違えると「いじめを助長する方向に機能する恐れもある」と警鐘を鳴らす。

虐待を受けた経験がある子供、外国にルーツを持つ子供、LGBT……。社会的弱者を念頭に置くとき、学習指導要領が定める道徳教育は、常に多数派に立ち、多数派にのみ通用する価値観を学ばせるものになっているのだろうか。

著者は言う。現場の教員に求められるのは「考え、議論する道徳」で、集団の中だけでなく、地域や民間など外部からの介入が重要だと。この新しい価値観が閉じた世界の中(=クラス)でしか通用しない、ゆがんだ認知(=いじめる側の心理)を是正するきっかけを子供たちに与えると。

教員が心掛けるべきなのは「空気を変える」こと。例えば、近くの児童生徒に話しかけたくなったらあえて一番遠くにいる子供に話しかけたり、授業中ランダムに指名したり、そんな何気ないことだとも。教員が自ら「いつもと違う空気」を作り出し、それを繰り返すことで、「強い者」と「弱い者」という固定された学校でのキャラクターから子供たちを解放する。いじめ問題解決の一歩は、そんな何気ない行動の積み重ねだと本書は訴える。