クマと少年

あべ弘士 著
ブロンズ新社
1500円+税

遠い昔、アイヌの村。かあさんのおっぱいを一緒に飲んで、本当の兄弟のように育った、少年とクマのキムルン。アイヌの伝統には、村で大事に育てたクマを神の国へ送りかえす大切な儀式、イオマンテがあった――。

自然の中で生きるアイヌ民族の、いのちへの尊敬、畏怖(いふ)。すべてのものに神が宿っているというアイヌ独自の世界で生きる少年は、キムルンと育んだ兄弟の絆と、信仰の間に立たされて、強い葛藤を抱く。

少年が悩み、苦しみながらも矢を引き絞る姿は、読む人の胸を打つ。現代に生きる私たちも、少年と同様に誰かのいのちに生かされ、密接に関わり合っているのだと。

季節によってさまざまな姿を見せる北海道の自然を、『あらしのよるに』の作者が力強く色鮮やかに描き、静かで穏やかな語り口で息を吹き込む。