子どもの貧困

渡辺由美子 著
水曜社
1400円+税

「大学生ってほんとうにいるんだ」「夢なんかない、働きたくなんかない」。貧困家庭の子供たちのための無料塾「キッズドア」の門を叩く子供たちは、こんな言葉を口にする。運営する渡辺由美子氏は「彼らにとって大学生は野球選手のように特別な人がなれるもの」「毎日パートを掛け持ちして疲れ切って帰宅する親御さんの姿を見ていて、仕事のイメージが偏っている」と、子供たちの言葉に潜む悲しい本音をおもんぱかる。

貧困だから塾に行けない、参考書が買えないという単純な問題だけではない。直接的な教育の前に生活や文化の環境で、裕福な家庭と大きな差があるという。子供部屋や勉強机を持てず、食卓の隅でテレビを見る家族を横目にノートを広げたり、布団の上にお盆を置いて受験勉強したり、家庭学習さえ苦労する子供もいるのだ。

彼らが救いを求めるキッズドアでは大学生や社会人ボランティアが一人一人の子供たちと向き合う。渡辺氏が掲げるのは「学力向上」。居場所を提供するだけでは事態は好転しないので勉強を通し社会で生き抜く力を育みゆくゆくは貧困の連鎖を断ち切ってほしいと強調。子供たちは勉強だけでなく社会生活に必須のルール、例えば▽決められた時間に来る▽欠席や遅刻の連絡をする▽勉強をやりきる――も身に付けていくという。

家庭環境が多様になりつつある現代。見落とされがちな「貧困」に身を置く子供たちへの対応を、今一度考えさせられる。