給食アンサンブル

如月かずさ 著
光村図書出版
950円+税

給食をテーマに、中学生の成長や悩み、恋を描いた短編集。6品のメニューを巡るエピソードが、多感な中学生の心模様を映し出す。

名門お嬢様学校にいた美貴と、転校先の学校で出会った梢との関係を描いた「七夕ゼリー」。七夕の短冊に美貴が「以前の学校に戻りたい」と書き入れたことがきっかけで、互いの間に流れる空気は一変してしまう。周囲のクラスメートとも距離を置きひとりぼっちになった美貴は、七夕の日の給食に出されたゼリーに目をとめた。その、紙製のカップに入った安っぽいゼリーが、二人の離れた心を再び近付けていく。

「ミルメーク」の主人公である清野君は、勉強ができるが友人は少ない。給食時間にクラスの人気者の足立君が飲み干す「超特濃コーヒー牛乳」の味を、自分が知ることは決してないと思っている。なぜならそれは、牛乳に混ぜるとコーヒー牛乳がつくれる黒い液状の調味料「ミルメーク」を多くの友達に譲り受けて完成した飲み物だからだ。けれども、自分と正反対のはずの足立君と話すうち、清野君はあることに気付く――。

友達や周囲の人間の一挙一動に心が揺れ、それゆえにすれ違い、素直になれず空回りを繰り返す。6編に登場する中学生の姿に、まっすぐ人生と対峙しているからこそ人は真剣に悩み、傷つくのだと改めて気付かされる。懐かしい給食メニューと相まって、「あのころ」の自分にいざなってくれる。