読み書きは人の生き方をどう変えた?

清水書院
川村肇 著
1000円+税

日々当たり前のように行っている読み書きは、そもそも何のために必要とされ、われわれにどのような影響を与えてきたのか。その歴史をたどり、意義を考える一冊。

現代の学校に相当する仕組みがなかった江戸時代にも、読み書きを学ぶ場として大坂の懐徳堂や適塾、長崎の鳴滝塾に代表される「私塾」があった。ここまでは多くの人が知るところだが、多くの農民、一般民衆もこの時代、すでに読み書きを習得していたのだという。本書では資料や文献をひもときながら、市井の人々が読み書きを学び、識字能力が普及していった様子を解説する。人々が生き抜いていく上で主義主張を伝えるすべが必要だった背景にも触れており、それぞれの時代の学習状況から新たな知見が得られる。

後半では読み書きの「権利」についても述べている。読み書きは人間の生存に不可欠な権利であるが、現代の日本でも何らかの事情で身に付けていない人が存在している。筆者はこうした人々にも光を当て、全ての人に等しく権利が保障されているとはいえない現状に問題を投げ掛ける。また、フェイクニュースの例を挙げ、読み書きを習得した現代人の新たな問題である「情報を読み解く能力」についても言及している。

平易な言葉で書かれており、誰にも読みやすく分かりやすい。平安時代の貴族の識字状況など、教科書には載っていないさまざまな史実から、歴史への興味関心を深める一助にもなる。