〈いのち〉の教育のために

梶田 叡一 著
金子書房
2300円+税

人々の個性や能力の違いを乗り越え、無条件に互いを尊重し合う力を育てる――真の共生社会を実現する土台として、著者は「いのちの教育」の実現を強く訴える。

子供を狙った凶悪な犯罪が頻発し、子供自身が「殺してみたかった」という単純な理由で殺人を犯すように、大人も子供も生の実感が希薄になっている時代だからこそ、〈いのち〉の根本的な自覚と理解だと説く。前半は「自己中心的性」や「自己愛的全能感」といった現代人の心理的メカニズムに生じる問題や日本人の持つ生命観、予期せぬ死との対峙(たいじ)、〈いのち〉を引き継いでいく人間教育としての性教育など、あらゆる視点から〈いのち〉の理解を図る。

後半は学校における「いのちの教育」の授業構想について解説。小・中・高校と発達段階に応じた実践例を挙げ詳しく紹介している。保育園と連携した小学校高学年の授業例では、保育園の職員や園児との交流を通して気付いたことを発表しあい、そうした気付きを土台にして最終的に子供たちが一冊の絵本を作り上げる。高校では、生徒がホスピスなどを訪問し、〈いのち〉の大切さや、老・病・死に関わる問題を自分事として捉える授業の試みを提案している。

講義での知識理解で終わらせない提案に感銘を受ける。生徒が老・病・死の仕事に取り組むスタッフと対話し、業務の一端を体験する機会は、体験知の深化につながる。本書を機に〈いのち〉との向き合い方を改めて考えてみたい。