みらいの教育 学校現場をブラックからワクワクへ変える

内田良・苫野一徳 著
武久出版
1500円+税

苫野が専門とする教育哲学と内田の教育社会学という、一見すると広義の教育学の両極に位置する研究者が、この国の教育の本質について語り合う。今社会で最も注目されている2人の教育学者による対話というだけでも興味深い。そして、その異なる立脚点から到達したのは「教育の特殊性」という問題だった。

第1章では近年の現場と学問の関係性に着目。両者の対談を追いかけるうちに、ここ数年で教育学と教育現場の距離が広がったことに気付かされる。第2章では一気に教育の特殊性への論駁(ろんばく)に発展する。

学校の働き方改革では、教員の長時間労働の要因として、1971年制定の給特法と教育現場の実態との乖離(かいり)が指摘されている。残業代を支払わない根拠として用いられるのが「教員の勤務態様は特殊で勤務時間管理が難しく、残業代の支払いになじまない」という教育の特殊性である。苫野は市民社会を成立させる前提である自由の相互承認の視点から「教師の仕事は『特殊』では全くない」と宣言する。内田は教育現場の信念の危うさを指摘する。

教育は果たして特殊なのだろうか。教員の仕事もまたそうなのだろうか。いつの間にか社会から切り離されてしまった学校というシステムの、社会への回帰が叫ばれている。未来の教育に向けて今求められているのは、学問領域や教育観、立場などを超えた対話による最適解の模索である。