『弁護士秘伝!教師もできるいじめ予防授業』 著者インタビュー

真下麻里子 著
教育開発研究所
2000円+税

NPO法人ストップいじめ!ナビの理事として学校を訪れ、いじめに関する授業や講演会を行っている真下麻里子弁護士。そんな法のプロが中・高校で実施した授業内容を、教員向けにアレンジ・解説した書籍『弁護士秘伝!教師もできるいじめ予防授業』が、3月20日に発売された。真下弁護士に同書に込めたメッセージや狙いを聞いた。

――この本の狙いは。

「法」という裏打ちのある視点から「いじめ」を考え、その基準や軸を教員や児童生徒、学校全体で認識することだ。

一章では私たちが取り組んできたいじめ予防授業を紹介する。教員自らが実践できるようにアレンジし、授業中陥りがちな課題点や児童生徒の導き方を整理した。

二章は、私が教員研修として実施してきた「いじめ防止対策推進法」を解説。それを踏まえ、リスク管理の視点から法律の活用法などを提案している。

――一章の「いじめ予防授業」の事例を実践するにあたり、注意する点はどこか。

誰かの尊厳を傷つける手段をとる以外は基本的にOKという寛容さと、そう言い切る勇気が必要。けんか両成敗のように、むやみに「どちらも悪い」という結論に至るのは危険だ。

例えば本書で紹介した授業事例の一つ、「AさんがBさんから借りたDVDに傷をつけて返したことがきっかけで、仲間はずれにされる」といったテーマ。子供たちからは「Aさんも悪いからいじめではない、皆悪い」という意見がよく出る。これは大人ですらも陥りがちな考えだ。

しかし、いじめ防止の観点から考えて、「どちらも悪い」と結論付けるのは非常に危ない。お金で買えるDVDと、お金では買えないAさんの心を同じ価値で考えるということだ。児童生徒には、たとえ相手に落ち度があったとしても、相手の「尊厳」を傷つける手段は決して選ぶべきではないとメッセージを送らなければならない。

法視点を取り入れたこれらの授業の特徴は、加害者にレッテル貼りするものではないところにある。

法は「人格」ではなく「行為」に対象を置き、指摘する。その点を留意しながら授業展開すると、子供たちは一層深くいじめの問題性を考えられ、いじめについての物差しを学級で合わせることができるだろう。

――二章のいじめ防止対策推進法の解説には、どのようなメッセージを込めたか。

いじめ防止対策推進法を「教員がいかに活用するか」の視点から読み解く内容だ。弁護士として、教育現場は教員自身を含め教員を守る存在が少ないと感じてきた。そして熱意がある人ほど、自分の身を守ることに非常に罪悪感を持っている。しかし教員が自己防衛しなければ、結局そのしわ寄せは子供たちにいってしまう。

もちろん、重大事態の場合の証拠隠蔽(いんぺい)や虚偽証言は悪だ。しかしトラブル回避スキルとしての「護身術」は、専門職の基本として備えておく必要がある。ベテランの教員は経験則としてスキルを持っているだろうが、新人の教員は直接的に指導を受ける機会は少ないのではないだろうか。

護身術として触れているのは、「情報共有」や「記録」など基本的なこと。こういった当たり前のことを、忙しい日常業務の中でいかにポイントを抑えてこなせるかが重要だ。ここで解説する内容を平面として読み流すのではなく、自らの業務に落とし込み立体的に捉えてほしい。

――読者にメッセージを。
著者の真下麻里子弁護士

教員が肩の荷を下ろすきっかけにしてほしいと願いを込め、この本を執筆した。学校はさまざまな背景や利害関係を持つ人々が集まる、とても慎重な対応が求められる場所だ。それにも関わらず現場の教員は、あまりに守られていないという危機感がある。

この状態を改善するためには外部の協力はもちろん、教員一人一人が自らの職域がどこまでかを今一度考え、負える責任と負えない責任を明確化することが必要だ。

そして、その責任の範囲を教員主体でどんどん発信していく必要があるだろう。