残業代求め提訴した教諭に聞く 現場に懸ける思い(下)


時間外労働に残業代が支払われないのは違法だとして、埼玉県を提訴したA教諭は「超勤4項目以外に、教員に時間外労働を求めてはならない。給特法は、今では誤って運用されている」と指摘する。働き方改革の問題点と、裁判を通じて明らかにしていきたいことを聞いた。


■学校現場にとっての「本当の働き方改革」
――働き方改革をどう見ていますか。

中教審で議論を進めているのは大学などの研究者や企業人、市長や教育長、校長らで、現場で働く現役の教員は1人もいません。現場の仕事を詳しく知らない人に、現場の改革ができるのでしょうか。教員の仕事がなぜ増えたかという背景を知らない人に、本当の意味での仕事を減らせるとは考えにくいです。

――業務内容の精選や外部委託を中心に議論されていますが。

「残業代を出さない」という部分をまず見直さなければ、本当の働き方改革にならないと思います。

かつて教員は子供たちのためになると思うことを、自主的、自発的に行ってきました。教員一人一人の自由な発想で、やりがいもあった。だからこその給特法です。超勤4項目以外に、教員に時間外労働を求めてはならない。教員は自分が日々接する子供たちのため、各自が創意工夫をこらしてきたのです。

「このままではいけない」と強く訴えるA教諭

その法が、今では誤って運用されています。文科省や教育委員会、管理職は仕事を増やし、教員は膨大に増やされた事務仕事を「自主的・自発的業務」と言われて、毎日ただ働きをさせられています。残業代が出ないということが、無賃でいくらでも仕事を要求できることになってしまっているのです。

その根本を見直さず、これまで教員が長い年月をかけて築き上げてきた業務内容を、現場教員ではない人々が減らしたり外部に委託したりすることが、果たして良い結果を生み出すでしょうか。

――だから残業代を出すべきだ、と。

残業代を出すことになれば、仕事を精選する必要が生じます。そうなればおのずと、本来教員が果たすべき仕事が残っていきます。その選別を現場の教員に委ねることが大切なのではないでしょうか。

「財政に問題があり、残業代を出せない」という意見があるかもしれませんが、それは「残業代を出さない」という前提で行くと決めているように私は感じます。

■これからの裁判に向けて
――裁判に求めるものは。

インタビュー後、かつての教え子が立つ舞台を見に劇場へ

まずは、教員の労働について、広く知ってほしいと思っています。そして、関心を持ってほしい。

次に、文科省に答えてもらいたい。文科省はかつて、「教員に時間外労働は存在しない」と述べていました。それが今では「減らしましょう」と言っており、問題のすり替えが起きている。まずは、「存在しない」と何年間も主張し続けたことについて答えてほしい。

そして、教員の業務を当然のごとく増やし続けてきた文科省や教育委員会、管理職に疑問を持っていただきたい。

それがあってやっと、教員の働き方改革は次の段階へ進めると思っています。

先日、同級生と会った時のことです。彼は、高卒で消防士になり、年収が1千万円を超えたと言っていました。私の給与は59歳で年収796万5129円。残業は1年間で686時間50分ですが、残業代はゼロです。

教員の給与は、本当のところ一体いくらなのか。さまざまな職種の給与をオープンにしながら、明確にしていくべきだと考えます。

現在、「超勤4項目」や、教員に時間外労働を命じてはいけないこと、休憩時間が規定されていることを、若い教員にきちんと説明する仕組みはあるのでしょうか。少なくとも埼玉県にはないと考えています。

「自主的・自発的業務」と言われている業務は、本当に教員が自主的、自発的に行っているものなのでしょうか。裁判を通じて明らかにしていきたいと思います。

(聞き手・小松亜由子)

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